2023年5月3日水曜日

青野りえ:『Live in Tokyo 2022』(aonote / AONT-1004)


 昨年3月16日発表のセカンド・アルバム『Rain or Shine』(VSCF-1776)が音楽通から高評価されているシンガー・ソングライターの青野りえが、同アルバムのリリースライブ音源をライブ・アルバムとしてCDで5月10日にリリースする。 
 このアルバムは、昨年3月26日に東京・神保町試聴室で開催されたライブから厳選した7曲に新たにジングルを追加し、ライブ会場とオフィシャル・ショップ(※文末で紹介)のみで限定発売する自主制作盤である。
 なおこのアルバムからは3月28日に先行シングルとして、「片影」(カタカゲ)と「さよなら、こんにちは」の2曲を先行配信リリースしているので、既に耳にしている音楽ファンもいるかも知れない。 

 本作のバッキング・ミュージシャンはファースト・アルバム『PASTORAL』(2017年/ VSCD-3197)と『Rain or Shine』をプロデュースしたシンガー・ソングライターの関美彦をはじめ、レコーディングにも参加したEASY PIECESと銘々されたメンバー達である。
 幣サイトでも高評価している流線形のサブメンバーでドラマーの北山ゆう子とギタリストの山之内俊夫、ユメトコスメ主宰の長谷泰宏がアコースティック・ピアノ、そして細野晴臣や堀込泰行のレギュラー・サポート・ベーシストである伊賀航と鉄壁なメンバーが勢揃いしているのだ。またミックスとマスタリングは、スタジオ・アルバム同様にマイクロスターの佐藤清喜が担当している。


 ここでは収録した全曲を解説していく。
 冒頭の「Jingle 2022」は昨年4月にTBSラジオの人気番組『アフター6ジャンクション』に青野がゲスト出演した際、プロデューサーの関が特別に制作したジングルで、実際にライブ音源と共にオンエアーされている。モチーフは「Rain Rain」の間奏のコーラス・パートで、新たにバックトラックを加えたものだ。80年代中後期のチャカ・カーンに通じるサウンドで導入部として新鮮である。 
 本編は『Rain or Shine』の冒頭曲「Waiting for you」から始まる。アレンジ的にはスタジオ版を踏襲しており、青野の歌唱とリズム・セクションの見事な演奏に耳を奪われてしまう。シンセ・ブラスなどオーバーダビング・トラックが削ぎ落された分、長谷のピアノや山之内のギターの各プレイが際立って聴けて、伊賀と北山のリズム隊もスタジオ版から遜色ないコンビネーションで、やはり選ばれしミュージシャン達のプレイは他とは違うと感じた。
 因みに『Rain or Shine』からは同曲以外に「九月の水」「Rain Rain」「片影」「雨に唄えば」の合計5曲が収録されており、各曲共に青野のヴォーカルとバンドによる生演奏の緊張感と空気感を楽しめる。
 「九月の水」では山之内と長谷が各々スタジオ版のソロを発展させた尺の長いインタープレイを繰り広げ、北山は3拍子のドラミングに巧みなフィルを披露する。
 「Rain Rain」でも16ビートからサンバにリズム・チェンジしてテンポ・アップする際、青野のヴォーカルは声量とピッチ共に乱れることなく安定したままで、リズム・セクションも合わせてギャロップしていく様は見事なものだ。 

青野りえ「片影」『Live in Tokyo 2022』より

 スタジオ版ではアコースティック・ギターだけをバックにした「片影」は、ここでは関のエレピ(フェンダー・ローズ系)を中心としたバンド演奏で、荒井由実の『ひこうき雲』(73年)や『Misslim』(74年)に通じるサウンドでリアレンジしており、青野の表現力のある歌唱をよくバックアップしている。
 「雨に唄えば」でも関はスタジオ版とは異なるチェンバロ系のキーボードをプレイし、サウンドの表情を変えている。元々テンポ感が難しい曲だけに青野の歌唱と演奏の空気感をより感じられるだろう。

 収録順としては「片影」に続く「さよなら、こんにちは」は、『Rain or Shine』の先行予約特典CDRとして配布した音源で、この曲もスタジオ版ではアコースティック・ギターとシンセサイザーだけの小空間なサウンドだったが、本作ではスティーリー・ダンの「PEG」(『AJA』収録/77年)を彷彿とさせるテンポ・アップしたシティポップとして生まれ変わった。青野の溌溂としたヴォーカルのバックで、関はソリーナ系シンセを担当しており、山之内のギター・ソロに至ってはジェイ・グレイドンを意識したプレイで唸ってしまった。
 ラストの「PASTORAL」は同名アルバム冒頭に収録されたタイトル曲であり、このライブ・アルバムのハイライトと言って過言ではないベスト・パフォーマンスである。 
 スタジオ版同様、伊賀によるラテン・スタイルのベースラインから始り、青野と各ミュージシャンが最高の歌唱と演奏でこの曲を表現している。間奏のインタープレイがスティーリーの「AJA」のそれを彷彿とさせているのは以前にも触れたが、そんな高度なアンサンブルが演奏可能なメンバーを揃えたというのが、プロデューサーである関の審美眼とミュージシャンシップであり、青野のこのライブ・アルバムでの一期一会セッションとして結晶されているのだ。 

 なお本作のリリース記念として、6月にワンマンライブが予定されているので、興味を持った音楽ファンは早期に予約しよう。


▪️2023年6月10日(土)
 「青野りえ『Live in Tokyo 2022』発売記念ワンマンライブ」
【会場】南青山ZIMAGINE http://zimagine.genonsha.co.jp/ 
東京都港区南青山6-2-13 ファイン青山B1 TEL: 03-6679-5833
【時間】OPEN 15:00 / START 15:30 
【料金】予約¥3,500/当日¥4,000 (+1drink) 
【予約フォーム】https://forms.gle/WvY2t6NTsmc7vyXZ9
【出演】 青野りえ(Vo.) 関美彦(AG.) 伊賀航(B.)
北山ゆう子(Dr.) 山之内俊夫(G.) 長谷泰宏(Pf.)


【青野りえのサインCD屋さん】https://aonorie.booth.pm/items/4630179 
※本作『Live in Tokyo 2022』はライブ会場と上記オフィシャル・ショップのみの限定発売で3月21日から予約を開始している。また3月に幣サイトで紹介した下記ライブの会場では、発売日前に先行発売をするそうなので、生演奏を楽しめるライブも含めて予約しよう。

▪️2023年5月6日(土)
「Saturday Concert Series」

【会場】渋谷7th Floor http://7th-floor.net/
【時間】open 12:00 start 12:30
【料金】adv.3000/at door 3500yen(+1order) 
【予約フォーム】https://tiget.net/events/235028
【出演】青野りえ〔伊賀航(B.)北山ゆう子(Dr.)
長谷泰宏(Pf.)関美彦(AG.)〕

 (テキスト:ウチタカヒデ

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