2017年2月1日水曜日

☆Pen Friend Club:『Wonderful World Of Pen Friend Club』紹介


2014年から年1枚アルバムを出しているPen Friend Club、待望の4枚目のアルバムがリリースされた。①『Sound Of…』②『Spirit Of…』③『Season Of…』に続いて今回は④『Wonderful World Of Pen Friend Club』で、次は何の文字でつなぐのかなという待つことも楽しい。オリジナル曲を作るPen Friend Clubに失礼だが、根っからの洋楽人間である自分にとって最も楽しみにしているのが、他の日本のバンドでは決してカバーしないであろう、マニアックな60s70sのカバー曲の数々である。これが完璧に自分の好きな曲と一致しているのでアルバムが出る度に嬉しくなってしまう。この4枚で必ず登場するのがフィル・スペクター・プロデュース作品だ。①でロネッツの「Do I Love You」、②もロネッツの「How Does It Feel」③はダーレン・ラブの「Long Way To Be Happy」、そして今回の④はロネッツの「Born To Be Together」になんとビックリ、アイク&ティナ・ターナーの「River Deep Mountain High」だ。スペクターのWall Of Sound60年代に完成していたので、70年代のスペクターの曲を入れないのは正解だ。さらに「Be My Baby」を選ばない所にセンスの良さが出る。本来はアルバム収録曲順に紹介するのが当たり前だが、他のライターがそうするだろうから、自分はカバー曲から紹介していこう。「Born To Be Together」は深いエコーは残しつつ、深淵なWall Of Soundの奥まで狙わないで、ヴォーカルの爽やかさを生かしたアレンジにしていた。ロックンロールのブリッジの部分も良くできている。スペクターのオーバー・プロデュースの極致ともいうべき「River Deep Mountain High」は、さすがにティナ・ターナーのダイナマイト・ヴォイスではないので、これも爽やかに、しかしロックンロールの部分はしっかり残している。後半のホーンやパーカッションが錯綜する部分も上手だ。続いて同じく愛してやまないのがビーチ・ボーイズのカバーだ。①では「When I Grow Up」「Darlin’」と2曲のカバーにプラス、ビーチ・ボーイズ加入前のブルース・ジョンストンの奇跡の傑作、ブルース&テリーの「Dont Run Away」で3曲、②は「Please Let Me Wonder」とグレン・キャンベルに書いた「Guess Im Dumb」、さらに一番マニアックな、映画のオープニングでもレコーディングでもビーチ・ボーイズがバッキングを担当したアネットの「The Monkeys Uncle」とこれまた3曲カバーしたので、③はお休みだった。しかしこの④では1965年の未発表曲「Sherry She Needs Me」という絶妙のカバーを持ってきた。この曲は後にブライアンが2ndソロでリレコしているが、このトラックは最も当時のビーチ・ボーイズを感じさせてくれるサウンドと歌声で最も楽しめた。キーボードの音像もいいし、リード・パートが平川氏に切り替わるのがとてもいい。そして最後に私が特に気になるマニアック枠。①ではトレードウィンズの「New Yorks A Lonely Town」(ただしイクイノックス時代にブルースらがカバーした「Londons…」やデイヴ・エドモンズの「New Yorks…」のテイストも感じられる)があり、②ではジミー・ウェッブ作・グレン・キャンベル歌の珠玉の名曲の中でもベスト1の「Wichita Lineman」、70年代のニール・セダカに惚れ込んでいる私にとって嬉しい「Love Will Keep Us Together(キャプテン&テニール用とは言わない)、そしてマニアックさでは最も泣いた1965年にシングルのみでリリース、サンディ・リンツァー&ダニー・ランデル作でボブ・クリューがプロデュースしたまさにフィリップス時代のフォー・シーズンズというラグ・ドールス「Dusty」がカバーされた。こんな曲をカバーするバンドがいまだかつてあっただろうか?そして出来上がりは音楽ファンなら誰でも大好きなフォー・シーズンズ・サウンド、知らなかった人には目から鱗という素晴らしいチョイスだった。③では先のグレン・キャンベル&ジミー・ウェッブの作品で2番目に好きな「By The Time I Get To Phoenix」、トレードウィンズのカバー「Summertime Girl」、初めての日本人ミュージシャンのカバーはなんと山下達郎、数ある名曲の中でも5本の指に入るほど好きな「土曜日の恋人」のカバーしてくれていた。しかし最も嬉しかったのは、大好きなテディ・ランダッツォ作・プロデュース、ロイヤレッツの「Poor Boy」のカバーだった。テディ・ランダッツォの凄さが分かる=プロ中のプロの証。今から20年くらい前に山下達郎さんの命を受けてコレクティングをしている方と知り合いになったが、その一人はご存知バリー・マン・ワークス。もう一人はその頃に日本人でほとんど誰も注目していなかったテディ・ランダッツォのワークスで、さすが山下さんだと嬉しくなった思い出がある。④は?さらに渋いフィフス・ディメンション6枚目のアルバムのタイトル曲「Loves Lines,Angels and Rhythms」のカバーで、声も歌い方もマリリン・マックーにとても似ていて、実はリードの方はこのタイプの曲を歌いたかったのだろうと一瞬で理解できた。そして前回の山下達郎に続くチャレンジ曲は、なんと大滝詠一の『Each Time』から「夏のペーパーバック」だ。大滝・山下、それも最も華麗なプロダクションの曲にチャレンジしようとするミュージシャンはまずいない。あのゴージャスでキラキラ輝くような大滝サウンドを忠実に追っても仕方がないと、ライブ用のシンプルなサウンドにしたのが良かった。さてここからようやくオリジナル。「ふたりの夕日ライン」はオープニングにふさわしいアップテンポでポップな快作、中間のギターもどこか懐かしくいい響きだ。「微笑んで」はミディアムテンポの佳曲でベースラインとちょっとヘヴィなリード・ギターが印象に残る。「ソーダ色の空」はカントリー・テイストの爽やかなタッチの佳作。「8月の雨の日」は本作のオリジナル曲で一番好きな、メロディアスで少し哀調があって爽やかでと…と全てが揃った傑作。絶対に聴いて欲しい作品だ。「Wonderful World Of Pen Friend Club」はギターのリフやブラスの音など、ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」と「Lets Go Away For Awhile」を思い起こされる印象的なインストで、高いセンスに舌を巻いた。相変わらず洋楽ファンをも満足させてくれるこの4thアルバム、おススメである。(佐野邦彦)

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