2014年11月10日月曜日

☆宮崎駿監督、日本人2人目のアカデミー名誉賞受賞!


宮崎駿監督が日本人2人目のアカデミー名誉賞を受賞した。1人目の受賞者は黒澤明。宮崎駿は黒澤明と肩を並べたわけで、実写、アニメーションのそれぞれ頂点に立ったこの2人の受賞に誰も異論はあるまい。ただし残念ながらこの2人に続く才能は、現在の日本には誰もいない。みな小さな自分の世界を構築するような監督ばかりで、この2人のようなダイナミズム溢れる作品を作れる人材はいないのだ。他の監督には「想像力」が決定的に欠けている。自分が宮崎作品に出会ったのは1976年に池袋の映画館で見た「太陽の王子ホルスの大冒険」だった。東映動画に入社してまだ日がたっていない新人の宮崎駿が、親友である高畑勲が初監督、大塚康生が初作画監督を任されたこの作品で、映画のイメージをストーリーボードにして次々と描きあげ周囲を圧倒、「画面設計」という特別のクレジットをされる。この作品では作品の核である悪魔の妹と信じ込まされているヒルダという少女の揺れ動く心を、ほんのわずかな表情の変化で描きわけた森康二の奇跡のアニメートもあって、アニメーションとはこれだけの世界を作ることができるのかと衝撃を受け、自分でミニコミを作る原動力になった。それから30数年、形は変わったけどミニコミを作り続けるのだから人生を変えた映画といって間違いない。
自分にとって人生を変えてくれたのはアニメーションが「ホルス」、マンガは手塚治虫の「W3」、音楽は最初に買ったビートルズのレコード(「抱きしめたい」が入ったコンパクト盤)だった。


宮崎駿は続く長編「長靴をはいた猫」でも数々のギャグの大半のアイデアを描きあげ、森康二は宮崎駿の出現に「諸君、脱帽したまえ」という感じだったと述懐している。写真は自分が1982年にそのミニコミでインタビューした時のもの。(左から宮崎駿氏、マンガ家の高橋葉介氏、佐野、演出家の岩本保雄氏)宮崎駿はこの頃気難しいと言われていて、その前にインタビューした森康二、大塚康生、両氏に頼んでも尻込みされ、ええい、ままよと、その頃宮崎駿がいた制作会社に直接「佐野と申しますが、宮崎さんお願いします」とさも知り合いのように電話をして、すぐに取り次いでくれたので、そこで「はじめまして。私は...」と挨拶、インタビューをお願いしたら快く受けていただいたという今考えると冷や汗ものの図々しさで実現できた。この頃、制作していたシャーロック・ホームズ(2年後に「名探偵ホームズ」としてやっと放映)の権利関係がクリアにならず、せっかく作ったアニメーションが塩漬けになっていた。「世界の宮崎駿」の作品があわやオクラ入りなんて、今では信じられないだろうが、そんな時期が宮崎駿にもあったのだ。そのインタビューの中で心に残った部分を紹介しておこう。「こういう時期に一番大事なことは、風刺したりなんかすることじゃないんですね。一番大事なことは何かっていうことを...。つまり子供に向けて作るんだったら根源になるものは何かっていう...。何が美しいのか、何がすばらしいのか、何が楽しいのか...それが一番大事だっていうふうに。どれほどこの世相は暗くて、お前ら学校で飼育され、管理されたんだから反乱して立ち上がれ、なんてアピールを送ったところでね、それはうまくいって利用されるだけの話で、言い訳のために使われるだけでね。そうじゃないだろうと思うんですね。」「本当の冒険物語っての凄く難しいんですね。今、ますます難しくなっている。世界の果てに行ったら地球の裏側があるだけじゃないっていうかっていうね、受け手の精神の構造の中に荒野が無いっていう...。だけどそれはこの世の中が平和だった事にも関係あるって思うんですね。あらゆる情報が、受けきれないくらい流れ込んできてる。で、だからみんな分かったような気になっちゃう。テレビの疑似体験で、なんかもう、女と別れた経験も何度もあるような気になってくるしね。たいていの事はたいてい...。そういうふうになってんですよ。やらないうちから。だからだいたい自分がやる事分かっているからね。あとはもう、いかにふざけて遊ぶかって事になってるだけでしょう。だけど違うはずだと僕は思うんです」「昔から伝えられた物語というのはみんな、実ははじまる前の話なんですよ。本当の人生というのはメデタシメデタシの後から始まっていくんですね。そこでオムツを洗ったりね、そういうことが実際にはじまるのは、それは皆さん、自分で体験しなさい。物語はここで終わりにします...。だけど、要するに、子供に対して、そういうふうにやっていけるもんですよという、はげましなんですね、じつは。そのままいじけてね、ずーっと今の子供のまま親の言う事をきき、まわりのいう事をきき、いじけて生きていくんじゃなくて、必ずあなたのすばらしさを見つけてくれる人がいるもんだとか、それからあなたを助けてくれる魔法使いが出てきたりするもんですよ、この世の中には...。そういうふうな、こう、メッセージが込められているもんだと思うんですよ。で、そのメッセージを受けとって、それでメデタシメデタシから実際人生始まって、だからそのあとは自分で体験しなさい、死ぬまで幸せで暮らしましたでいいんですね。だからあのーそうじゃなくなっているんですね、今の世の中ね。じゃ何故そうじゃなくなったかっていったら、たいしたこともどうせ、起こらないと思っているからなんです。どうせこんなもんだと思っているから。だからそうじゃない事を考えている人間が許せないんですね。」(佐野邦彦)


 



 

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