2012年12月10日月曜日

☆Roger Nichols & The Small Circle Of Friends:『My Heart Is Home』(ビクター/VICP75089)

長く素晴らしいものを続けて生み出していくことは難しい。音楽の世界の栄枯盛衰は誰もがご存知のところ。マンガにしても同じ人が描いているのに絵は微妙に変化していき、いつまでも絵が素晴らしい作家は一握りだ。グループによる音楽は、そのメロディだけではなく、声質、ハーモニー、サウンドなど大きく変わっていくのが常。
ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーというヒットを途切れずに出してきた超人たちも、コアな分は変わらないが、それ以外はかなり変わって生き残ってきた。その中、このRoger Nichols & The Small Circle Of Friends(以下SCOF)は、1969年の1stを出して以来、SCOFの活動はしていなかったが、濱田高志氏の尽力により2007年に奇跡と言われた2ndを発表、大評判となり、さらにその5年後にこの3rdアルバムが生み出された。驚かされるのはロジャー・ニコルスの作曲家としての能力が少しも衰えていないことがまず挙げられるが、同じようにロジャーとマレイ&メリンダ・マクレオドの声質、ハーモニーが34年の時を経ても少しも変わることがなく、1stの心地よさから、連続して違和感なく、時間の隔たりを経ず聴けることだ。これは奇跡に近い。この2ndはロジャー・ニコルス名曲集(もちろんSCOF以外)の色彩があり、様々なアーティストの、それもなかなか入手できないレコードでしか聴くことができなかったロジャーの60年代を中心とした名曲を一挙、SCOFヴァージョンで聴くことができ、それはひとつの夢がかなった瞬間だった。しかし今回の3rdMy Heart Is Home』ではロジャー作のカバーは、誰でも知っている「We've Only Just Begun」と、ネスカフェのCMで日本では有名な「The One World Of You And Me」の2曲。目玉曲は「Something From Paradise」。この曲は最初期につまり60年代にSCOFでデモが録音されたがそのままオクラになっていた曲。濱田氏が偶然そのアセテートを入手し、そのロジャーらしい転調の見事さに惚れ惚れしていたが、遂に40数年後に新録音し正規リリースすることができた。曲の中にはジャズタッチのスウィングナンバーが2曲あったり、クリスマスに相応しい美しいクリスマス・ナンバーがあったり、バラエティに富んだ曲も楽しめる。冒頭の3曲はもちろん素晴らしいが、従来のSCOFのファンなら「Show Your Love」「Take Me Home」「My Heart is Home」を絶対に気に入るはずだがその中でもピカ一の曲がある。ボサノヴァタッチの「Girl With a Complicated Heart」はメロディ、ハーモニー、サウンドとも完璧。この曲が気に入らない人間がいたとしたら私はその人とは音楽の話をしない。それほどの名曲だ。それにしてもSCOFほどユニゾンが美しいグループを私は他に知らない(佐野)
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