2010年4月14日水曜日

Robert Lester Folsom:『Music And Dreams』(RIVERMAN MUSIC/ BTR051CD)



今年の2月にアナログ盤がリイシュー(MEXICAN SUMMER/ MEX030)され再び一部で盛り上がっていた、Robert Lester Folsom(ロバート・レスター・フォルサム)の幻の自主製作アルバム『Music And Dreams』(76年)が、韓国のRIVERMAN MUSICからリマスターを施して紙ジャケ+ボーナストラック付きで新装CDリイシューされた。

そもそもこのアルバム、本誌佐野編集長の企画監修による『SOFTROCK AtoZ』(96年)にて発掘されたことで知られ、96年にKeystone(SR-9606)から世界初CDリイシューされて耳にしたソフトロック・ファンが多いと思う。
近年キリンジの堀込泰行氏はソロユニット"馬の骨"の同名アルバム(05年)にて本作収録の「My Stove's On Fire」をカバーしているが、彼もVANDA読者だったようでその審美眼にも納得してしまった。機会があれば選曲の動機などを聞いてみたいところだ。

とにかく情報が少なく謎が多い本作なのだが、アーティストとして無名のロバート・レスター・フォルサムが、ハイスクール・バンドの延長で1曲のデモをアトランタのとあるスタジオでレコーディングした際、ジミー・リードや後年オールマン・ブラザーズのエンジニアリングを手掛けるスタン・ダカスにその才能を認められ、自主制作アルバムとして発展したようだ。当然ローバジェットのため手練なセッション・ミュージシャンは参加しておらず、ロバートの仲間達によるAbacusなるバンドが集められてレコーディングされており、演奏的な荒を探せばきりがないが、偶然性による独特のサウンド効果によって、希有なソングライティング・センスで磨かれた楽曲群の魅力を引き出している。

 

例えばアイズリー・ブラザーズの「If You Were There」とフィフス・アヴェニュー・バンドの「One Way Or The Other」を掛け合わせたような「My Stove's On Fire」などは、洗練されたリズム・セクションでは絶対出せないグルーヴで、シュガーベイブの「DOWN TOWN」にも通じる。つまりは当人達が意図しないところで、90年代の日本で幻のソフトロックとして発掘され再評価されること自体ミラクルなのではないだろうか。
タイトル曲「Music And Dreams」のサウンドとコーラスの奥行きや響きは、ベースとドラムのリズム隊が弱い分独特の浮遊感を醸し出しているし、アルバート・ハモンド風の西海岸サウンドにアープオデッセイのアクセントが印象的な「Biding My Time」や、ダウントゥアースなフォークロック調の「April Suzanne」など比較的ストレートな曲にも佳作は多く、バースの曲調がロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムス作の「Out In The Country」を彷彿させる「Spanish Lady/Brown Eyed Lady With Blonde Hair」は特に素晴らしい。
アコースティックギターとストリングシンセサイザーをバックに、深いリバーブが掛かったヴォーカルが乗る「Show Me To The Window」は遅れてきたサイケデリアと呼ぶべきか。




未発表のボーナストラックは本作以降の録音と思われるが、垢抜けたサウンドにヴォーカル・スタイルが別物になっているパワーポップ風の「Blues Stay Away」は好みではないが、長いインストパートを持つ「Warm Horizons」にはユートピア(トッドの趣味的プログレバンド)に通じる素晴らしさがあり好きにならずにいられない。
また今回はリマスタリングの効果もあり、サウンドの分離や音質が向上している点も評価したい。非常に入手困難な本作だけに、興味を持ったソフトロック・ファンはこれを機会に手に入れて聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)

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