2015年5月15日金曜日

☆ましまろ:『ガランとしてる』(ソニー/BVCL643)

真島昌利とヒックスヴィルの真城めぐみがユニットを組んだ「ましまろ」(同じくヒックスヴィルの中森も参加)のマキシ・シングル『ガランとしてる』がリリースされた。ネットのチェックが甘い私はマーシーの新しいシングルだ!と相当前に予約していたがユニット名の意味が分かっていなかったのでこれで納得。何しろ私にとって日本のアーティストで最大のインパクトがあったのはブルーハーツだった。はじめて聴いて人生が変わると思った。同じブルーハーツファンのしりあがり寿さんが、まだキリンビールの社員でもあった頃の話だが、しりあがりさんも初めて聴いた時に人生が変わったと思って、その後の営業はとても強気に望めた(笑)なんて言っていたことを思いだす。ブルーハーツ時代も好きだが、ハイロウズ時代も大好きな曲が多い。これはヒロトの曲だが「14才」なんていつも聴くと涙ぐんでしまう。これって俺だ!なんで分かるんだっね。ヒロトは超名曲を残すが、マーシーも負けていないどころが、平均的にはマーシーの曲の方が好き。詩人であり、ロマンティストであり、そして怒りを持つロックンローラー。ロックでもフォークでもこの3つのどこかに特化してしまうミュージシャンが多いが、マーシーはその全てにバランスが良く、そしてメロディ・メーカーでもある所が凄い。そしてだ。マーシーの私にとって個人的に最大の魅力は、安っぽい表現に聞こえてしまうかもしまうが「少年の心」を持ち続けていることだ。それは小学生から高校生までの楽しさや、やるせなさや、心のときめきや、折れそうな気持ちを持ち続けていて歌にしてくれる。しかしそれはブルーハーツやハイロウズ、クロマニヨンズでは一部しか出せない。例えばブルーハーツでは「青空」や「Train-Train」「1000のバイオリン」などの普遍的な名曲もいいし、先駆的な「チェルノブイリ」を作り「イメージ」でロッカー的な視線も素敵だ。でも「ホームラン」を聴くと、身も心も解放されて、あの楽しかった、幻想の子供時代に一瞬トリップできる。小学生の頃には河川敷などなく、高校の頃神宮外苑でテニスボールの草野球をやっただけで実際はまったく違うのだが、そのイメージは目に浮かぶのだ。メロディもサウンドも爽やかで、個人的には超名曲のひとつ。ハイロウズでもマーシーのこういう曲はあるが、やはり、その内面をさらけだすのは、ソロ活動になる。マーシーは最初のソロを出したのは3枚目の『Train-Train』でグループが頂点を迎えた感がある翌年の1889年に『夏のぬけがら』を出し、サウンド的には頂点と思える『Bust Waste Hip』の翌年にセカンドの『Happy Songs』をリリースする。『夏のぬけがら』ではハードなサウンドの曲は少なく、メランコリックな少年時代のマーシーの歌が心を打った。吐き出すようなマーシーの声は、アコースティック・ギターにピッタリ合う。その中でも軽快な「カローラにのって」が好きで、実際に自分の車で日野橋を渡ってみた。「花小金井ブレイクダウン」にも引かれて花小金井にも行ってみた。それほどマーシーが好きだった。『Happy Songs』では、スペクター・サウンドやボサノヴァを取り入れたポップな曲が多くなり、聴きやすいアルバムになった。実はこの2枚は、マーシーがブルーハーツ加入前に在籍していたブレイカーズ時代での旧友である篠原太郎さんと一緒に録ったデモから作らており、当時B-Jacks(後のBrick's Tone)というバンドを作っていた篠原さんにみんな聴かせてもらった。そのまま使われなかった曲もあるが、大半はそのまま、ほとんど同じようなアレンジでアルバムに入った。そしてこの1991年にマーシーは伝説のソロ・コンサートを行う。日清パワーステーションで行われ、私も見に行ったが、バックには先の元ブレイカーズの篠原太郎さんだけでなく、ドラムの大槻敏彦さんも入り、旧友を大事にするマーシーの人柄も感じられ素晴らしいコンサートだった。今でもこのコンサートはDVDLive Another Summer』で購入できる。その後は1992年の3枚目のソロ『Raw Life』は全2作とは一転、ロックンローラーのマーシー全開で、「俺は政治家」などメチャクチャカッコいいロックナンバーが並ぶがその中にも一服つけるように陽光溢れる「ドライブしようよ」を仕込んでくれた。4枚目のソロは1994年で、もうブルーハーツがバラバラの時代。『人にはそれぞれ事情がある』が今考えると意味深なタイトルで、アルバムも今までの要素をミックスしたような内容。インストもあった。そして翌年の1995年にはブルーハーツを解散し、ヒロトと共にハイロウズをスタートさせている。そのハイロウズは10年後の2005年に解散、マーシーはソロを作らず、ヒロトはその頃ヴォーカリストとして色々ゲスト参加していたがソロには至らず翌2006年に三度、ヒロトとマーシーでクロマニヨンズをスタートさせた。歌詞の意味をギリギリまで削いだクロマニヨンズ、新しい試みでアルバム8枚を昨年までリリース。今年は3月までツアーを行い、そして久々のマーシーのソロ活動?となった。このましまろはライブを9月から10月に行い、秋にアルバムもリリースされる。ただ、?マークを入れたのは、曲のリード・ヴォーカルは基本的に真城であり、マーシーは一節をソロで歌ったり、ハーモニーを入れるだけ。4曲の内3曲がマーシーの作詞・作曲で、1曲はバディ・ホリーの「ハート・ビート」にマーシーがまったく違う?日本語詞を付けたものなので、音楽的中心は明らかにマーシー。サウンド的には、アコースティック色が強いサウンドで、曲もメロディアスで、歌詞は詩的だが、ノスタルジックな想いを織り込んでいてマーシーの初期のソロを思い起こさせる。ただ血を吐くようなマーシーのヴォーカルではないので、爽やか度が強い。「公園」なんてまさに夏、飛行船、クワガタ、ギターとマーシーの世界で、マーシーのソロ部分が出てくるとそこが楽しみになってしまう。「しおからとんぼ」は嬉しいマーシーのソロから始まり後半、真城へ移る。このフォーキーで爽やかなサウンドは、セカンド・ソロの「休日の夢」と共通したもの。マーシーは再び、ソロでバンドではできないサウンドと、詩の表現をしたくなったようだ。レーベルはソニー内のariolaで変化なく、公認のソロ活動と言えるだろう。2014年にはTBS日曜劇場『ごめんね青春!』のサウンドトラック盤でマーシーは9曲のインストを提供しているが、曲は全てマーシーで、ギターがマーシー、ベースが小林、ドラムが桐田なのでまさにヒロト抜きのクロマニヨンズ。リズム隊との関係もいいようだ。ただ来年でクロマニヨンズも10年。ブルーハーツ、ハイロウズと10年ごとに解散して、リフレッシュしてきたが、どうなるんだろう。もし新しいバンドになったとしてもヒロトとマーシーは離れない。これほどお互いをリスペクトして、必要としているコンビはちょっと他にはない。ミックとキースだって険悪な時期があったのに、この二人にはない。しばらくましまろでリフレッシュして、アルバムでマーシーの穏やかで詩的な一面を味あわせて欲しい。(佐野邦彦)

2015年4月29日水曜日

Kidsaredead:『The Other Side Of Town』(Botanical House / BHRD-002)



Lampのメンバー3人が新たに立ち上げたレーベル、Botanical House(ボタニカルハウス)から早くも第2弾のアーティスト、Kidsaredead(キッズ・アー・デッド)のファースト・アルバム 『The Other Side Of Town』が5月1日にリリースされる。
Kidsaredeadはフランス人のVincent Mougel(ヴィンセント・ムジェル:以下ヴィンセント)によるソロ・プロジェクトで、00年代後半からネット音楽通の間では注目されていたらしい。
因みに本作は13年にベルギーのHot Puma Recordsからリリースされた同タイトルに、ボーナス・トラック4曲を加え日本独自に新装しており、Botanical House第1弾の新川忠と同様にLamp染谷の熱望によって今回実現した。
プログレ好きの父とソフトロック好きの母に育てられたというヴィンセントだが、影響を受けたミュージシャンとしてビーチ・ボーイズ、トッド・ラングレン、10ccを挙げており、WebVANDAで取り上げない訳にいかないのだ。

Kidsaredeadはヴィンセントが一人で全てのソングライティングとアレンジ、主なインストルメントのプレイをしているソロ・プロジェクトで、そのスタイルの祖といえるトッド・ラングレンに通じる感覚の持ち主なのだろう。つまり頭の中で鳴っているサウンドをめざし、自らワンパートずつ構築していく典型的な自己完結型の才人なのだ。
では拘り抜かれた楽曲を収録した日本初リリースとなるこのアルバムの主な曲を解説していこう。

冒頭の「Sistereo [ Part I ]」は"Sister"と"Stereo"の造語と思われるタイトルから、妹を題材にルイス・キャロル的世界を現代風に表現したのだろうか。本アルバムにはPart IとPart IIの2ヴァージョンが収録されており、アルバムの中でもヴィンセントは拘りを持っていそうだ。
5拍子を軸にした変拍子で刻まれるヴァースから始まるこの曲、Part Iではエフェクティヴな処理は控えめに尺も約2分半でフェードアウトしている。全編でプログレ系のキーボーディストに愛されたイタリア製のヴィンテージ・シンセCrumar Multimanの音が聴ける。
一方8曲目収録されたPart IIでは、トッドの「International Feel」(『A Wizard, A True Star』収録・73年)よろしくエフェクティヴな音像によって混沌とした世界観に仕上げている。
このヴァージョンでは生ピアノ、フェンダー・ローズにローランドのアナログ・シンセSH系の音も聴ける。テンポ感などから「International Feel」のオマージュの一つであるのは間違いないだろうが、オペラ風コーラスにパート・チェンジしていく様は10ccやクイーンをも彷彿とさせる。
なお同曲のアコースティック・セットでのスタジオ・ライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして収録されており、そちらも必聴である。



「Band From The Past」は筆者が音源を入手して真っ先に飛びついた曲で、フランク・ザッパやスティーリー・ダン(テンプレートは「Pretzel Logic(さわやか革命)」だよね?)のエッセンスもあり聴き応えがある。基本はブルース進行風コードをローズで刻み重い8ビートでドライヴしているが、ゴスペルやフィリー・ソウル風のコーラスからSHシンセのフレーズやカントリー・ブルース風のバンジョーまで飛び出す折衷感に脱帽してしまう。
ベックの「Where It's At」(『Odelay』収録・96年)を初めて聴いた時の衝撃にも近いというか、個人的にはこのアルバムを代表する一曲として大推薦したい。
パワー・ポップの「Taking A Walk」は、4分弱の尺ながらパート転回や全体の構成もよく練られており、トッド以外にブライアン・ウィルソンや10ccの影響も感じさせる。金属的なリフはギター・シンセだろうか、Crumar Multimanのパッド音やSHシンセとのコントラストも素晴らしい。
一転して内省的な「School Returnz」は、ヴァースにジョン・レノン作の「Julia」(『The Beatles』収録・68年)に似たメロディを持つバラードで、続くエモショーナルなセカンド・ヴァースを聴いてこのパターンでサビへ大団円するのかと思いきや、唐突に転調パートが挿入されて一筋縄ではいかない。
「She Loves Me」はアルバム中屈指の名バラードで、Crumar Multiman(多用し過ぎだが、プログレ好きの父親に買ってもらったお気に入りなのか?)の儚く美しいパッド音に導かれて入ってくるコーラスが実に効果的である。音数少なく空間が狭い感じはロバート・ワイアットのソロ作にも通じ、クワイア・コーラスのパートが挿入される瞬間は崇高な気持ちになってしまう。
デイヴ・ギルモア風の抑制されたギター・ソロもマッチしており、さすがにこの曲は自信作なのだろう、極端にムードを逆撫でする転調はない。
WebVANDA読者必聴といえる『SMILE』的世界観の 「Van Dyke Parking Carol」をアルバムのラストにしたのはヴィンセントの拘りだろうか。多くは語らないが、この脳内箱庭サウンドは彼の指向を如実に現している。

ボーナス・トラックは「Sistereo」と「She Loves Me」(美しい!)のアコースティック・セットでのスタジオ・ライヴ・ヴァージョンの他、"Breakfast Science Remix"と題された「Captain Achab Boyfriend」の別リミックスと未発表インストと思われる「Toothbrush」の計4曲である。
筆者の解説で興味を持った読者や音楽ファンは直ぐに予約して入手すべきである。とにかく唯一無二のニュー・クリエイター(兼シンガー・ソングライター)であることは保証しよう。



(ウチタカヒデ)




2015年4月27日月曜日

竹迫倫太郎:『HARMONIES~The Best Of The CLIMAX Years~』(K&T RECORDS/CRCD-5114)



昨年11月にシングル『Master Of Xmas』を紹介したシンガー・ソングライターの竹迫倫太郎が初のベスト・アルバムを今月29日にリリースする。
Climax Entertainment時代にリリースしたミニアルバムとシングルから、竹迫自身により選び抜かれた良質なポップス11曲が収録されているのでWebVANDA読者にもアピールできるので紹介したい。

前回も紹介したが、竹迫が琉球大学医学部在学中に発表した自主制作アルバムが認められ沖縄のインディーズ・レーベルClimax Entertainmentと契約したのが02年、その後05年までに4枚のミニアルバムと1枚のシングルをリリースしている。
昨年の『Master Of Xmas』のリリースを機に本格的に活動を再開するべく、これまでの集大成として本作のリリースに至ったようだ。
では主な収録曲を紹介しよう。



冒頭の「Prelude」は04年のシングル『陽炎』のカップリング曲で、後の「Master Of Xmas」にも通じるキーボードのリズム感が印象的なブルー・アイド・ソウル風味のポップスである。コーラス・パートはビーチ・ボーイズ、サウンド的には70年代後半のエリック・カルメンを彷彿とさせる。
『A LONG VACATION』(81年)~『EACH TIME』(84年)期の大瀧詠一サウンドを彼なりに消化してアプローチした「夏のエピローグ~Endless Daydream~」と「遠い夏の日のロマンス~Dreaming Driveway~」は多くのナイアガラーには聴きものである。
共に03年のミニアルバム『Endless Daydream』収録されていたが、前者は「恋するカレン」~「幸せな結末」からの影響を強く感じるメロディ・センスとサウンドで、後者はインロト及びヴァースに「Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語」、ブリッジに「カナリア諸島にて」を各引用しており、microstarの「スウィート・ソング」(『lovey dovey plus』収録・01年)を思い起こしてしまった。
前出のシングル『陽炎』のタイトル曲は深い内容の歌詞を持つレクイエムで、山下達郎の稀代の名曲「蒼氓」にも似た崇高な曲調と、デジタル・エレピを中心としたデリケートなサウンドにデヴィッドTを意識したギターのフレーズが絡んでいく。アカペラとドラム・マシーンだけのパートなどアレンジ的にも工夫されており、筆者的にはこのベスト・アルバム中のベストとして挙げておきたい。

ソフトロック・テイストの「風の贈り物」(『Youthful Collage』収録・05年)は最もWebVANDA読者にお勧めかもしれない。心地よいシャッフルのリズムがそう感じさせるのだが、サウンドが今日的なコンボ指向であるためクリス・レインボウ(惜しくも今年2月に亡くなった)から杉真理までもイメージ出来る。
続く「秋風に吹かれて」(『Youthful Collage』収録・05年)は一転して70年代西海岸のシンガー・ソングライター風の小曲で味わい深い。手練なアコースティック・ギターのプレイは沖縄を中心に活動している伝説のロック・バンド"紫"の元メンバー佐藤圭一氏である。
敬愛するブライアン・ウィルソンの捧げたという「Hey! My Mr. Music」(『Youthful Collage』収録・05年)にも触れておこう。彼曰く"Mr. Music"とはブライアンを指しており、歌詞の端々にBB5マニアは耳を傾けて欲しい。

アルバム全体を通して整理されたアレンジではあるが、ソウル・ミュージックから裏打ちされた16ビートの洗練さがサウンドに希薄なため、竹迫のヴォーカルと歌詞に耳が集中してしまう傾向がある。またそれが昨今多く存在するネオ・シティポップ派とは一線を画す彼の魅力なのかも知れない。興味をもったポップス・ファンは是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)