1999年2月7日日曜日

☆Brian Wilson:Andy Paley Sessions 1996 (Crux/2024)

  内容はタイトルのとおり、ブライアン・ウィルソンとアンディ・パレイが1996年にセッションした時のデモだが、そのクオリティは十分に高い。



まず1曲目の "Gettin' In Over My Head" が素晴らしい。ピアノのバッキングだけのシンプルなデモかなと思っていると、ブリッジで心引かれるメロディと演奏、コーラスが一気に現れ引き込まれてしまう。サビには得意のパーカッションも。2曲目の "You're Still A Mystery" と4曲目の "Soul Searchin'" はバッキングがなんとビーチ・ボーイズで、マイク・ラヴのバス・ヴォイスなどの効果でコーラスに幅が出ている。前者はコーラスのからみと、サビの一瞬のメロディの冴えが聴きもの。後者はオールディーズ・タイプのロッカ・バラードだが、これはコーラス・ワークなど完全にビーチ・ボーイズだ。そしてリード・ヴォーカルもカールだろう。意表をつく歌い出しから心地良い広がりを見せる "Must Be A Miracle" 、明るく軽快な "Marketplace" と "Mary Anne" の3曲はポジティヴなブライアンが感じられていい。そのポジティヴさが最も出たのが "I Get Around" や "Be My Baby" のフレーズを一瞬織り込んだ "Slightly American Music" で、なかなかの力作だったが "Smart Girls" に次いで、この手の過去を振り返る曲は連続して没になってしまった。 オモチャ箱を引っ繰り返したような得意のサウンドの曲は "Saturday Morning In The City" 。いかにも没曲なのがブライアンがしばしば書く凡庸なR&Bタイプの "Chain Reaction Of Love" と、 "I'm Broke" 。あと "It's Not Easy Bein' Me" もメロディに冴えがなかった。その他ではホット・ロッド・スタイルのシンプルなインストの "Desert Drive" があるが、何に使うつもりだったのだろうか不明だ。さらにこのセッション時の録音の "This Song Wants To Sleep With You Tonight" と "In My Moondreams" も収められていた。そして "Proud Mary" が3テイク、順に完成していく模様が分かるが、この曲は実は94年頃に知人からカセットに録音してもらっていたので、これはアンディ・パレイ・セッションのものではないはずだ。嬉しいのはボーナス扱いの「The Wilsons」の目玉だった "Everything I Need" の親子のデモ。 CD とは違い主にブライアンが歌い、娘達がブリッジを担当、聴いていてとても幸せな気分になれた。最後は美しいフックを持つピアノの "This Isn't Love" のデモで終わる。
(佐野/Special thanks to 萩原健太)

☆Hollies:For Certain Because(EMI/4-98952-2)

 EMIのホリーズ紙ジャケ再発は遂にここまで進んだ。68年リリースのこのアルバムはホリーズのサウンドが成熟していく過渡期にあるアルバムなので、目立った曲は少ないが、R&Bスタイルの曲が1曲だけになるなど、アルバム全体にホリーズらしいポップ色が出た好盤に仕上がっている。キースが歌ってヒットしたエキゾチックな“Tell Me To My Face”や、マイク・ヴィッカースがアレンジした映画の主題歌のようなアダルトな“Crusader”のような異色作がおもしろいが、アメリカで28位まで上がった“Pay You Back With Interest”が、その様々に変化する凝ったサウンドとリズムで、アルバムのベスト・ナンバーと言えるだろう。もちろんループする不思議なメロディとエコーをかけたバンジョーで、独特の雰囲気を醸し出した“Stop!Stop!Stop!”もベストの1曲。この曲は全英で2位、全米で7位と大ヒットになっている。もちろんCDはモノとステレオの2ヴァージョン入ったコレクター泣かせの仕様。次はいよいよ「Evolution」だ(佐野)
For Certain Because...

1999年2月1日月曜日

☆Brian Wilson : Imagination (ビデオ Warner-Reprise Video/38508)

 ブライアンの健康面・精神面でのポテンシャルは今が最高だろう。再婚直後再び太った体型も引き締まって初めての本格的なソロ・ツアーを実施中であり、テレビにもしばしば登場し、昨年末にもアメリカのテレビ・ショーで数曲を歌うブライアンを見た。そして昨年の「Imagination」と同タイトルのビデオ・ソフトまで発売された。内容的にはライブで7曲を歌い、間はブライアン、ブルース・ジョンストン、グレン・キャンベル、スティヴィー・ワンダー、エリック・クラプトン、エルヴィス・コステロなどのインタビューで綴ったものだ。グレン・キャンベルが "Dance Dance Dance" のセッションに参加していた時にギター・リフを間違えて弾いたところ、それがいいとブライアンにその場で採用されたエピソードなど面白い。肝心な歌だが見事にブライアンは回復している。音程が不確かだったり、ぶっきらぼうに歌うような様は微塵もなく、正確に、そして表情豊かに歌う。登場するナンバーは "California Girls" "In My Room" "South American" "She Says That She Needs Me" "Lay Down Burden" "Don't Worry Baby" 。バッキングには嬉しいことにブルース・ジョンストンがコーラスで入り、クリストファー・クロス、ティモシー・シュミット、ジミー・バフェットに 10 数人編成のオーケストラまで加わり、アルバムと何の遜色もない厚いサウンドを聴かせてくれた。今は亡き二人の弟の映像を交えた "Lay DownBurden" は感動的だ。ラジオ局にゲストで出演した時に DJ から、最近リリースされたばかりのロニー・スペクターの "Don't Worry Baby" を突然聴かされたブライアンの嬉しそうな様子などブライアン・ファンなら「おいしい」見所は十分。価格も 2800 円程度と安いので是非お薦めしたい。(佐野/Special thank to 伊藤博道)