2021年6月12日土曜日

1971年Led Zeppelin初来日、日本武道館公演(Part-2)

  (Part-1より)
 遂に公演の9月24日を迎えた。空は晴天で絶好の体育祭日和に、私と友人OはZep公演13時の開場に間に合わせるべく、静岡発10時代の新幹線で東京に向かった。東京駅から「中央線」でお茶の水、そこで「総武線」に乗り換え、「日本武道館」の最寄り駅「九段下」のある地下鉄「東西線」に乗り継ぐ「飯田橋」で下車した。飯田橋辺りからは1万人近く収容するコンサートに向かう人込みに紛れることになった。
 「九段下」を下車して、徒歩で「日本武道館」に向かう途中、同行したOは周囲に聞こえるよう「いや~、Chicago以来だなぁ~」とコンサート常連を装い、見栄を張って入場口に向かっていた。 

  初めて入場した「日本武道館」の入り口では、レコードやパンフレットが販売されていた。パンフレットは当時発売されていた「臨時増刊号」並みの値段ながら、かなり薄い仕様で当時の私は手を出す気にならなかった。

 指定された2階席は、すり鉢のふちのようで、ステージにセットされた楽器類は、プラモデルのようにしか見えないような距離だった。
 定刻を少し過ぎて、会場の明かりが消え、ステージにスポットが当たると同時に、ロバート・プラントの「Ah~Ah~」というシャウトと共に<Immigrant Song(移民の歌)>が始まった。遠くながらもメンバーもしっかり確認でき、気分はかなりハイになった。リズムを強調したエンディングのステージ・アクションは、「ドリフみたいだ!」などと不埒な連想をしていた。 
 続いてはジミーのギターが唸る<Heartbreaker>で、ステージにくぎ付けとなった。ところが3曲目の<Since I've Been Loving You(貴方を会いしつづけて)>は『Ⅲ』の予習が甘かったこともあり、ライヴ初心者の私には睡魔が襲ってきた。

 そんなうとうと状態でカセットの進み具合を見たところ、何と不覚にも停止中になっており、慌ててスイッチをオンにした。 そして4曲目はまだリリース前の新曲<Black Dog>、聴きなれない曲の連続で、またもやうとうとしてしまう。ところが間奏のヴォーカル「Ah,Ah,Ah~」の後に入るボンゾの凄まじいドラミングの音で目が覚めた。続く<Dazed And Confused(幻惑されて)>はジミーの演奏は聴いたことある程度だったが、間奏での弓を使ったギター・プレイには目が釘付けになった。 
 そして6曲目はこれも未発表だった<Stairway To Heaven(天国への階段)>がCSN&Y風に椅子掛けスタイルで始まった。このロック史上燦然と輝く一大名曲をリリース前に体験する幸運に恵まれながら、前半はかなり単調な演奏でまたしても目が虚ろになっていた。とはいえ中盤からアコースティックがエレクトリックに移り、ボンゾのドラムがけたたましく乱入してくる後半には、目も耳も完全にステージへ集中するようになった。 

 ところが続く『Ⅲ』の<That's The Way>、未発表<Going To California>、再び『Ⅲ』からの<Tangerine>のアコースティック絡み3連発は、Zep初心者の私には窮屈な時間だった。 
この辺りになるとカセットのブザー(注1)が鳴らないタイミングで裏返しをする操作をうかがっていた。 

  裏返した直後の11曲目は私のお気に入りナンバーのひとつ<What Is And What Should Never Be(強き二人の愛)>が始まると、俄然ライヴが楽しくなった。間奏でジミーが会場に向けて、ギターでコール&レスポンスを仕掛けるアドリヴもあって、会場内の熱気に包まれた。
 さらにインストルメンタル<Moby Dick>ではボンゾのドラミングが凄まじく、途中から素手で叩き始め、その振動たるや最後尾近くの私にまでズシンと響き渡るほど迫力があった。 
 そしていよいよラスト・ナンバーとなるキラー・チューン<Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)>が登場、イントロだけで会場内総立ち、エンディングに向け最高潮に達した。途中から<Hello Mary Lou><Oh, Pretty Woman>といったオールディーズを交えたメドレーに突入していったようだが、当時の私の知識では全く何を演奏しているのか皆目見当もつかなかった 
 とはいえ会場の雰囲気でノリノリ気分にさせられた。この演奏中にはジミーが “ダック・ウォーク”(注2)を披露していたようだが、さすがに二階席からではそのしぐさまで確認することは出来なかった。
 このメドレーのエンディングから、ジョン・ポール・ジョーンズのオルガンに移り、<Thank You>の演奏でステージを降りた。 
 その後、場内のアンコールに答え<Communication Breakdown>の演奏で武道館公演の幕は下り、私の初参戦は終わった。 

 この日の公演は夕刻には終演していたので、帰路の途中に銀座に立ち寄り、周辺のレコード店を散策した。そんな中、銀座YAMAHAでは輸入盤バーゲンが開催されており、その売り場に陳列されていた米国盤『Led Zeppelin Ⅱ』を1,600円で購入した。そもそもレコードは再販品で新譜も旧譜も定価販売(注3)で、この価格はとても魅力だった。更にこのレコードはビニール・シートでパッキング(注4)され、ジャケットには「Gold Disc」のステッカーが貼られており、その珍しさもあっての衝動買いだった。

 帰宅後その晩に針を落としたところ、とてつもない迫力のサウンドが耳に飛び込み、オリジナル盤の音質の良さに驚かされるばかりだった。なお日本国内盤のように歌詞カードはなかったので、後日友人から国内盤を借りて手製の歌詞カードを作っている。

 なお翌日の新聞にこの日のコンサートについての寸評が掲載されていた。その内容は「これまでのロック・コンサートでは聴衆が大騒ぎすることが多かったが、このレッド・ツェッペリン公演では聴衆が慣れてきたこともあり、静かに聴く場面も多く見受けられた」とあった。
 その場にいた私からすれば、このZep公演は新曲も多く、アコースティック・ナンバーも随所に盛り込んでいたので「そりゃ当然だよ」という思いだった。マスコミは単に「ロック・コンサート=GFR」という認識で、このように捉えたのだろうと感じた。 

 なお彼らは9月27日に広島でチャリティー公演を開催し、その収益700万円を原爆被災者に寄付するといった慈善活動に貢献している。世界的ビッグ・グループとなっていた彼らの行為は、その翌日の「スポーツ・ニッポン」でも紹介され、音楽雑誌以外でも大きく報道されいた。
 この当時はまだチャリティーが一般には浸透していない時代だった。その先駆けとしては、「Bangra Desh難民救済コンサート」(George Harrison主催)が同年8月にN.Y.で開催され、世界的に話題となったばかりだった。 

 また余談にはなるが、その日の公演にはThe Alfeeの高見沢俊彦さんも駆けつけていたようだった。その事実を知ったのは、1988年福岡に在住していた頃、勤務していた会社で高見沢さんの追っかけをしていた部下の女性から偶然の発言だった。
 彼女はその時期に開催したThe Alfeeの福岡公演の打ち上げに参加する予定があり、「高見沢さんに聴かせたい!」とせがまれ、公演テープのコピーを渡している。 

 そんなZepは1980年にドラムスのジョン・ボーナムの急逝で解散しているが、2007年12月10日にAtlanticレコードの創始者アーメット・アーティガン追悼コンサートに再結成(ドラムはジョンの息子ジェイソン)で出演。その公演チケット2万席には世界中から2,500万人にも及ぶ応募があり、そのペア・チケットにはオークション・サイトでは83,000ポンド(約1,900万円)もの値がいている。そして、それを支払った事実も確認されていたという事で、バンドのブランド価値に世界中が騒然となった。 
 個人的なZepの話題としては、1993年にジミーがDeep Purple三代目のヴォーカリストでありWhitesnakeのヴォーカリスト、デヴィット・カヴァーディルと組んだCoverdale-Pageの12月21日大阪城ホール公演に行ったことだ。
 この日本公演のみ実現したツアーでは、カヴァーディルのヴォーカルではあるがZepナンバー<Black Dog>も披露(注5)され、初ライヴ参戦の想い出がよぎった。


注1当時のカセット・レコーダーには、テープが反転するリヴァース機能が無く、テープが終われば単に回転が止まるだけだった。ただSonyのレコーダーにはテープ(Sony製のみ)のエンディングに終了を知らせるブザーが鳴る設定になっていた。

(注2) ロックンロール始祖のひとりチャック・ベリーのトレード・マークとなっていた奏法。ギターを弾きながら腰を曲げて後方に歩く仕草。 

(注3)当時の国内盤LPの価格は2,000円が相場。Mono版で1,700円、ベスト盤で2,100~2,200円の価格設定になっていた。

(注4)通称ヴァージン・シール、国内盤でもCBS・SONY(現:SME)から発売されていた洋楽盤はこの様式だった。

(注5)この公演では<Rock And Roll><Kashmir><In My Time Dying><Out On The Tiles><Black Mountain Side><Black Dog><The Ocean>と7曲のZepナンバーを演奏している。
 
(文・構成 鈴木英之)

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