2016年12月12日月曜日

☆『宇野誠一郎ソングブックⅢ』(TVAGE/UNOCD1003)


日本でTVやアニメなど児童向けの作曲家の中でも飛び切りハイセンスな人は3人だけ、それが冨田勲、山下毅雄と、宇野誠一郎である。このシリーズは宇野の書いた児童向けの曲を、ピアニストの江草啓太とそのグループによって、新しくレコーディングしたシリーズの第3弾である。さて、今度は手ごわい。というのは今までは、旧知の曲が多く、こういうアレンジでプレイしてくれたかというこちらの引き出しがあったが、この第3弾の曲はほとんどを知らない。全15曲中、大人向けTVの主題歌が6曲、大人向けラジオの主題歌が1曲、舞台などの劇中歌が4曲、アニメでもソノシート用企画ものが2曲、「山ねずみロッキーチャック」の曲は企画盤の曲でTVの曲ではないので聴いたことがない。唯一有名な「小さなバイキングビッケ」は残念ながらその当時見ていなかったので、あわててYou Tubeでオリジナル・ヴァージョンを知ったという次第で、要は私個人にとって事前の知識は全滅である。しかしだ。逆に知らないから純粋に宇野メロディを味わえる。するとアンニュイな「江分利満氏の優雅な生活」はとても心地いいし、あの有名な江戸時代の天才発明家「からくり儀右衛門」にも日本的なオープニングから素敵なメロディが織り込まれている。さらに「女房をだます法」はアコーディオンとストリングスのからみが素晴らしく、ここは地中海か?と思うほど。その中でもハイライトともいえる流麗なメロディが堪能できるのは「家庭戦争」だ。バイオリンのメロディにうっとりとさせられた。ライナーを読むとみな初音盤化の曲のこと、スコアだけ残っていたのだろうが、こんな名曲がまだまだ見つかるなんてさすが宇野誠一郎である。(佐野邦彦)


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