2013年5月5日日曜日

The Bookmarcs:『音の栞 ~Favorite Covers~』(small bird records)


 好評発売中のVANDA30号にて筆者と「今更ながらポール・マッカートニーの魅力を語る」を対談しているミュージシャンの近藤健太郎が参加するThe Bookmarcs(ブックマークス)が、魅力的なカヴァー・アルバムを配信でリリースしたので紹介しよう。

 The Bookmarcsは以前、本サイトで紹介したアコースティック・ユニット"manamana(マナマナ)"を主宰していた作編曲家でギタリストの洞澤徹と、ポップ・グループ"Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)" のリーダーでヴォーカリストの近藤健太郎が2011年に企画した男性ボーカル・ユニットで、これまでにEP『Transparent』を配信リリースしており、70年代ソフトロックやAORのテイストを持つソングライティングと仄かに80年代を感じさせるサウンドに、近藤の甘いヴォーカルをフィーチャーした大人のためのポップスで洋楽ファンも魅了している。
 今作はそんな彼らのルーツともいえる洋楽や邦楽曲のカヴァー6曲をはじめ、今月3日に韓国の全州国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門で作品賞を受賞したばかりの日本映画、『風切羽~かざきりば~』(小澤雅人監督・6月22日公開予定)の劇中挿入歌である「君と」(『Transparent』収録)のリアレンジ・セルフカヴァー収録と、話題性にも事欠かないアルバムとなった。
 ではVANDA読者も興味をひくであろう、主なカヴァー曲を紹介していこう。
 伊藤銀次の作品でシュガー・ベイブのライヴ・レパートリー(この初期Verでは山下達郎が詞を加えていた)でもあった「こぬか雨」(『DEADLY DRIVE』(77年)収録)。ここではミッドテンポのアーバンな打ち込みAOR風サウンドで、スムージィーなホーン・アレンジは女性シンガーNeoによる01年の「あまく危険な香り」のカヴァー・ヴァージョンにも通じる心地よさだ。



 ダン・フォーゲルバーグの80年の全米ヒット曲で、日本では国産高級車のCM曲としても知られた「Longer」(『Phoenix』(79年)収録)。深い比喩の歌詞の世界観をフィードバックさせた様なアレンジは、シンプルな原曲の魅力を削ぎ落とすことなく成功している。
 筆者との対談絡みではないが、ポール・マッカートニーがビートルズ時代に作った「The Fool On The Hill」(『Magical Mystery Tour』(67年)収録)。哲学的な歌詞を持ちポール・ソングの中でも多くのカヴァーを生んだスタンダードとなっているこの曲、リアレンジするのは結構難しいと思うが、アコースティック・ギターのコードを基本としてシンセによるストリングスや木管からSEを駆使してスピリチャアルな空間を創り上げた。 他にもエア・サプライの「Lost In Love」(80年)や高野寛の「夢の中で会えるでしょう」(95年)、バート・バカラックの「Alfie」(67年)とポップス・ファンを唸らせる選曲をしている。 なお本アルバムは配信のみのリリースとなっているので、興味をもった方は下記のITunesサイトから購入して聴いてほしい。

 ITunes音の栞 ~Favorite Covers~

(テキスト:ウチタカヒデ


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