2000年4月24日月曜日

☆5th Dimension:『Up,Up And Away』(Buddha/99665)☆5th Dimension:『The Magic Garden』(Buddha/99667)☆5th Dimension:『Stoned Soul Picnic』(Buddha/99663)☆5th Dimension:『The Age Of Aquarius』(Buddha/99666)☆5th Dimension:『Portrait』(Buddha/99665)

遂に、待望久しいフィフス・ディメンションのオリジナル・アルバムが、1枚目から5枚目まで一気にリリースされた。フィフス・ディメンションと言えば2曲のナンバー1ヒット、加えて5曲のトップ10、13曲のトップ40という素晴らしい実績を持つアメリカを代表するソウル・コーラス・グループ。ところがこの5枚のアルバムの内4枚のプロデューサーがボーンズ・ハウ、アレンジャーにボブ・アルシヴァー、主要コンポーザーがジム・ウェッブを筆頭にローラ・ニーロ、ニール・セダカなど、そしてバッキングがハル・ブレイン、ラリー・ネクテル、ジョー・オズボーン、トミー・テデスコ、マイク・デジーと、このまばゆいばかりの最強スタッフがすべて白人だったため、このグループの評価は後に曖昧なものになってしまう。要はソウル・ファンからはポップスと見なされ、ポップ・ミュージック・ファンからはソウル系とされて、中古レコード店で置き場所もない存在が長く続いていた。しかしVANDA19号で5th Dimension特集をした数年前より、新しく生まれた多くのポップス・ファンが、音楽をスタッフで聴くようになり、同時にフィフス・ディメンションの魅力に気づいていった。アルバムは『The Magic Garden』を中心に中古で「売れる」アイテムに変わったものの、オリジナル・アルバムのCD化はなぜか実現せず切歯扼腕していた。そうした中、待ち望まれていた時のこのリイシュー、CDは5枚揃って飛ぶように売れているという。このフィフス・ディメンションの魅力はアメリカで最高のポップスを生み出した素晴らしいスタッフと、グループ5人の華麗なハーモニーが見事に組合わさったことに尽きる。5人のハーモニーは声量がありながら重すぎず、また軽すぎず、そのバランスの良さは最高のヴォーカル・グループと言う表現にふさわしい。まずデビュー・アルバムの『Up Up And Away』だが、67年のグラミー賞最優秀歌曲賞を受賞したジム・ウェッブ作のタイトル曲「Up Up And Away」が何と言っても光る。どこまでも上昇していくような爽快感が最高だ。そして全11曲中5曲がジム・ウェッブ作品と、ジム色は既に出ているものの、その前の2曲のヒットがスローン=ヴァリ、ジョン・フィリップス作と、全体的にフォーク・ロック色の方がより強く出ているアルバムと言えよう。そして次作『The Magic Garden』はジム・ウェッブがカバーの1曲を除き全ての曲を書き、アレンジと指揮も担当したジム入魂のアルバムになった。何しろジムはこの年にもグレン・キャンベルの「By The Time I Get To Phoenix」でグラミー賞最優秀歌曲賞を連続受賞しており、作曲家としての才能がピークにあった時だったので、そのクオリティの高さは筆舌に尽くしがたい。プロローグとエピローグ、曲と曲の間にはつなぎの別のメロディを惜しげもなく入れるなど完全にトータルなアルバムとして作られた。そしてプロデュースには、同時期にアソシエイションでソフト・ロックの大傑作アルバム『Birthday』を作り出した名プロデューサーのボーンズ・ハウが付き、アレンジャーにはその右腕のボブ・アルシヴァーと、最強のスタッフがバックアップに回る。そして以降のアルバムはこの2人が製作を担当していった。高揚感のある「The Magic Garden」や「Carpet Man」、素晴らしい転調が冴えるドラマティックな「The Worst That Could Happen」、幻想的な「Dreams/Pax/Nepenthe」など、ソウルというカテゴリーはここには完全になく、ポップスの理想の姿が結実していた。当時はまったくヒットしなかったが、今やこのアルバムは永遠の名作として高い評価を得ているのはご存じのとおり。3枚目の『Stoned Soul Picnic』ではローラ・ニーロの「Sweet Blindness」「Stoned Soul Picnic」、そして黒人ライターアシュフォード=シンプソンの「California Soul」の3曲がヒットしたが、これらは前作とうってかわってソウル色の強い作品になった。ただアルバム曲はジェフリー・コムナー作の4曲などポップな曲が並び聴きやすい。そして彼らの名前を決定づけた「Aquarius」のヒットを受けて作られたのが『The Age Of Aquarius』だ。全米1位を獲得したタイトル曲はいつ聴いても本当に素晴らしい。特に2回目のAメロが出て来た時のハーモニーのからみを聴くのは、至福の瞬間だ。ローラ・ニーロの「Wedding Bell Blues」も全米1位、同じくローラ・ニーロの「Browing Away」、ニール・セダカの「Working On A Groovy Thing」も大ヒットを記録、ポップとソウルが融合したフィフス・ディメンションの世界がここで確立したと言えよう。5枚目の『Portrait』にはニール・セダカの「Puppet Man」、ローラ・ニーロの「Save The Country」というポップ・ソウルのヒットが生まれているが、最もヒットしたのが2位まで上がったバード・バカラック作の「One Less Bell To Answer」だった。こういった洒落たポップ・ナンバーを歌えるから、フィフス・ディメンションは魅力的だ。ソウル・ファンから冷たく扱われたフィフス・ディメンションだが、ソウルから離れた独自のスタンスを取っていたため、今になると逆に錆び付いて「ない。なお各CDには貴重なボーナス・トラックも付いているので5枚まとめて買う必要がある。彼らを聴かなくてはポップスは語れない。(佐野)
Age of AquariusPortrait

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