1998年11月6日金曜日

☆John Lennon : Anthology (東芝EMI/65002~5)


  この4枚組のアルバムは、ジョンとヨーコが暮らしたアスコットの邸宅、ニューヨークでの権力と抑圧との闘いの時代、ヨーコと別居し毎晩飲んだくれていた「失われた週末」、そしてヨーコと再開しダコタ・ハウスで主夫として暮らした平和な最後の時の4期に分けて、数多いジョンのデモを集約してある
なんとその数、93トラック!一番多いのはアルバム収録曲のデモや完成前の別テイクだが、シンプルな演奏でも曲は十分に魅力的だ。それにしてもジョンのヴォーカルはなんて存在感があるのだろう!どんなバッキングで「壁」を作っても、ジョンの声はいとも簡単にそれを壊して耳元へ生々しく現れる。こんなヴォーカリストはジョンしかいない。「Lost Lennon」のシリーズで馴染みのテイクが多いが、その中でもジョンとしての未発表曲が収録されたのは嬉しい。リンゴに書いた "I'm The Greatest"  "Goodnight Vienna" 、ニルソンに書いた "Mucho Mungo" のジョンのデモなど聴くとなにか旧友に久しぶりに会ったようで、嬉しくなってしまう。レア・トラックだったElastic Oz Bandの "Do The Oz" や「Roots」収録の "Be My Baby" も初めて CD 化された。ジョンの死後、ジョンのデモにポール、ジョージ、リンゴがオーバー・ダビングした "Real Love" の元のヴァージョンもある。そして個人的に私が最も気に入ったのが、ジョージ・マーティン・プロデュースの "Grow Old With Me" だ。ジョンのナンバーの中でも私にとって最も好きな一曲だが、カセットのみのホーム・レコーディングで録音状態が悪いのがずっと大きな問題だった。ジョージ・マーティンはこれにストリングスを加えて素晴らしいバラードに蘇らせた。異論はあるのは分かるが、私はビートルズ・ファン、この二人の組み合わせはそれだけで嬉しいし、それよりも曲の完成度という点で実に良く出来ていた。ジョンはこの曲を結婚式のスタンダードにと望んでいたという。そしてこのジョージ・マーティンのプロデュースのヴァージョンは、結婚式の場に相応しいものに仕上がったと思う。(佐野)


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