2012年4月16日月曜日

☆Arnold,Martin,Morrow:『Can't Smile Without You 1966-1977』(Angel Air/SIPCD378)

お恥ずかしいことにこのCDの存在を今まで知らず、濱田高志さんから電話で「アーノルド,マーティン,モロウ(以下AMMO3人のコンポーザーの頭文字)CDなんて出ていましたよね」と言われ、「え?それって何!」と慌てて注文した次第。Radio VANDAAMMOの特集をした時に、間違いなく日本では初めての特集で、世界的にもあるのかどうか...などと言った気もするが、10数年来、浅田洋さん、上野慎二さんという3人だけの間で秘密結社のように音源を交換し、どうせ誰も知らないし、興味も持ってくれそうもないからな...と自嘲しながら音源を集めていたから、こんなCDが出るなんて驚天動地だった。
我々3人の交換ネタは、AMMO以外はイギリスのポップ・コンポーザーのトニー・マコウレイとクック=グリーナウェイ、そしてセッション・ヴォーカリストのトニー・バロウズだった。マコウレイ、グリーナウェイには膨大なヒット・シングルがあり、バロウズはセッション・ヴォーカリストのリビング・レジェンド。それに比べAMMOで大成功したのは全米3位になったバニー・マニロウの「Can't Smile Without You」くらいで、Guy's & Dollsの「There's A Whole Lot Of Loving」の全英2位はあるが、AMMO3人が歌ったシングルではバタースコッチの「Don't You Know」が全英で17位になっただけで、比べるのも悲しいくらい。確かにとびきりキャッチーなフックがないので大きな成功は掴めなかったのだが、ポップな佳曲を数多く残し、ソフトロック系の、それもポップでキャッチーなサウンドが好きな私のようなタイプにはヒットした。ただしほとんど知られていない。AMMOのディスコグラフィを作ったのはVANDA編でシンコーミュージックから出した「ポップヒットメーカーデータブック」しか無かった。
しかし考えてみるとこのCDを出した会社はその前にAMMOで唯一少しだけ成功したバタースコッチのCDを出していたのだ。このバタースコッチのCDが出たのも嬉しい驚きだったが、そのレビューを201110月にWeb VANDAで書いた時に、CDに「Don't You Know」のシングル・ヴァージョンが入っていない、シングルの「In This World Of Loving You」が入っておらず残念と書いたが、こういうミスを犯すなんてダメだなとタカをくくっていた。その認識が甘かった。何しろこのCDにはその2曲のみならずAMMOのシングル曲(アルバムはバタースコッチしか出ていない)が40曲も入り、我々秘密結社の3人も知らなかった音源も多く、参りました、ごめんなさい!と平伏してしまうしかない。海外のCDメーカーって本当に、こんなものが作れるから凄い。それに比べて日本のリイシューは似たようなアルバムをとっかえひっかえ出すだけで、それも中途半端なセレクションで、申し訳け程度にモノを入れたり、シングル・ヴァージョンを足すくらいでいつもながらガッカリである。紹介する気もしない。洋楽のポップ系のリイシューに関してはセレクション出来る人材がいないので、これからも海外に期待するしかないだろう。
さてCDの内容だが、フェード・イン、フェード・アウトしないバタースコッチの「Don't You Know」(シングル・ヴァージョン)をようやくオフィシャル音源で聴くことが出来た。VANDAでこの名曲はソフトロックの超名曲!と書いてから20年近く経つがようやく出会えて感慨もひとしおだ。そして同じくバタースコッチ名義の、トニー・マコウレイのような高揚感がある「In This World Of Loving You」も収められた。バタースコッチでは、同じくトニー・マコウレイっぽいポップ・ソウル風の「Is It All In Your Mind」がいいし、ファルセットが快調な陽気なポップ・ナンバー「This Way That Way」が収穫。AMMO名義のシングルではバカラック風のワルツ「I Only Have To Look At You」が素敵だし、ドラマティックな小品「It's A Pity That The Ship Is Sinking」もいい。そして完成度が高いのが「Close Your Eyes」。美しいメロディと、AMMOにしてはヴォーカルが力強く、感動的だ。流麗なメロディの「Sweet Angeline」とバカラック風の洒落た「Is It Yes Or No」も魅力的だし、転調が巧みな「We Got A Home To Go To」も捨てがたい。他では「Lazy Weekend」などいい曲が点在するのに、もったいない。
それ以外では最も古いこの3人がMoonlighters名義で出した「We'll See It Through」がマージービート風で楽しいが、1966年ではちょっと古すぎただろう。デビッド・リー・マーティンのソロ名義の「A Man Before His Time」も爽やかだが、これも1967年じゃあどうか。その7年後に再びデビッド・マーティンのソロで出した「Days」はシャッフルビ-トのきれいなチューンだったが、インパクトに欠けた。合わせて前述の「Can't Smile Without You」もリリースしたのだが、その当時は注目されずに終わっていた。
もう1曲紹介しよう。Sky & Company名義の軽快なシャッフル・ビートのポップ・ナンバー「True Feeling」を聴き逃さないように。ファルセットのヴォーカルも素晴らしい佳曲だ。
しかしこれだけ完璧に押さえたようなCDなのに、AMMOレーベルで出し、AMMO自身が書いたトニー・バロウズのシングル「Take Away The Feeling/Lazy Weekend」「Have You Had A Little Happiness Lately/Can't Live With You,Can't Live Without You」と、DJMレーベルのオリジナル・キャストのもう1枚のシングル「Look At Us/Can't You Hear The Song」はなぜか収録されなかった。中でも「Have You Had A Little Happiness Lately」と「Look At Us」はもったいない佳曲なので惜しいが、Angel Airはそのうちトニー・バロウズ作品集など作ってくれそうなので期待したい。(佐野)
追記:バタースコッチのシングルで1曲「One Day I'll Write A Book」が落ちていたので調べたが、これはAMMO名義の「Is Everybody Happy」と同じものだった。これはどう見てもバタースコッチのレーベルミス。曲が違っているのに、B面なんでどうでも良かったのかな。






 

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