2010年9月2日木曜日

フレネシとblue marble対談レビューVol.1

フレネシ:『メルヘン』(乙女音楽研究社/OTMSH-003)
blue marble:『ヴァレリ(乙女音楽研究社/OTMSH-004)



9月15日に音楽レーベルの乙女音楽研究社より同時にリリースされる、フレネシの『メルヘン』とblue marble(ブルーマーブル)の『ヴァレリー』。両アーティストが共に参加したコンピレーションアルバム『Easy Living Vol.1』(2006年)を監修、共同プロデュースした筆者だから聞ける、両作の魅了と制作中のエピソードを対談レビューというかたちで2回に渡っておおくりしたい。 参加してくれたのはフレネシ氏とblue marbleを主宰するショック太郎氏。
ウチタカヒデ(以下U):まずは『Easy Living Vol.1』に共に参加されたお二人ですが、ショックさんがフレネシさんのサポート・メンバーとして参加するようになったのはどういった経緯で? また同じレーベルに所属することになったのもその流れからですか?


ショック太郎(以下 S): 確かフレネシさんから、「イベントを企画しているので、ぜひblue marbleで出演してくれませんか?」みたいなメールがいきなりきたような。コンピつながりで、ボクらを知ってくれたんでしょうね。嬉しかったです。まぁ、出演は、お断りしたんですが(笑)。でも、今度はボクがフレネシバンドのピアノに誘われました。その後、一度だけフレネシとblue marbleが一緒にライブをやったことがあったんですよ。で、それを観ていたレーベルの社長さんが、blue marbleも気に入ってくれて。まぁ、そんな流れでしょうか。
U:なるほどフレネシさんからのラヴ・コールが始まりなんですね。スタイルやサウンド的には異質だけど、コンピがきっかけで交流に結びついていたとは、プロデュースに関わった者として非常に嬉しいエピソードです。またそれが今回の『ヴァレリー』リリースにも繋がっていく訳ですし、縁というのは大切なんですね。


フレネシ(以下 F):『Easy Living Vol.1』の中で、最も心を掴まれた楽曲がblue marbleさんの「懐かしのバイアーナ」だったのですがその存在が謎につつまれていたので、何とかお会いして謎を紐解いてみたいという思いでお声をかけたのが最初です。
それで、フレネシ主催イベントへの出演を依頼したのですが、ここでは振られまして。。
その時は、ショックさんに紹介された男性シンガーソングライターの方に出演していただくことになったのですが、サポートとして参加していたショックさんの超絶ピアニカテクニックが素晴らしくて、これはただごとではないぞ、と自分の中で確信し、ぜひピアノでサポートして下さいとおねがいしたのが、お手伝いしていただくようになったきっかけです。
レーベルメイトになったきっかけは乙女社主催の「ささやきナイト」に呼ばれた折、「共演したいささやきアーティストはいませんか」と聞かれたのでblue marbleさんをリクエストしたところ、今度こそ共演することができまして...。そのステージに魅了された社長がblue marbleさんをスカウト、という流れだったと思います。

U:「懐かしのバイアーナ」に心を掴まれたというのが素晴らしいエピソードですね。私も『Easy Living Vol.1』の候補曲として、ショックさんから聴かせてもらったデモの中から「バイアーナ」が特に惹かれました。実は初めて聴いた時からコンピのラスト曲に相応しいと考えていて、共同プロデューサーの近藤君(the Sweet Onions)も同じ意見だったんです。
フレネシさんの興味を強く引いたのも頷けます。
ではショックさんにお聞きしますが、そもそもblue marbleを結成した経緯を教えて下さい。
また今作『ヴァレリー』へ至るまでの活動についても伺いたいです。

S:ふたりとも同じ音楽大学の作曲科の生徒同士だったんですよ。それで、とんCHANが何気なく書いた曲に、ボクがアレンジと作詞をしたりして、ふたりでデモテープを作ったのが最初かな。
その後、ヴォーカリストを募集して送られてきた数十本のテープの中から、オオノさんを発見したんですよ。あの声でしょ。目立つ目立つ(笑)。とたんに盛り上がって、一気に15曲ぐらい作りましたね。でも発表する機会を見失って、ずっと何年も音源はお蔵入りしたままでした。
だから『スマイル』のように、かつて挫折したアルバム作りを、もう一度トライしたのが今回の『ヴァレリー』なんです。もともとblue marbleって、時代性にまったく関係ない音楽だから、発表するタイミングなんて、正直いつでもよかったんです。10年前でも10年後でも。

U: まさかヴォーカリスト募集に、あのオオノ(大野方栄)さんが応募してくるとは想像もつきませんよね。ムーンライダーズとのセッションやCM音楽で既に実績のある一流ヴォーカリストさんですからね。 当然オオノさんもblue marbleの音楽性に引かれた訳ですね。
少し話が出てきておりますが、blue marbleでは完全分業なのですか?とんCHANさんが作曲、ショックさんがアレンジと作詞というように。

S:いえ、完全分業というわけじゃなく、ボクが曲を書く時もありますし、とんCHANがアレンジを考える時もあります。ふたりで一緒に曲を書く時もありますね。「惑星」なんかはそうです。歌詞に関してはボクですが、「惑星」だけはオオノさんが作詞をしてくれました。
男女のソングライター・コンビってあるじゃないですか。ゴフィン&キング、バリー&グリニッジ、マン&ワイルとか。そういうのに憧れていたというのもあります。バンドというより、ソングライター・チームなんですね。 U:なるほどソングライター・チームとしてお互いを補っているところは、メンバーの資質の高さを感じさせます。
ではアルバム収録曲について伺っていきます。まずはリード・トラックになっている「街を歩くソルジャー」から。この曲は以前聴かせてもらったデモ集には入っていなかったけど、今作のために書き下ろした新曲なのですか?

 

 S:古い曲かな、これも。アレンジは新しくやり直しましたけど。リード曲をどれにするかって、完全にレーベル側に任せちゃっています。
この曲は、「イントロなしで、タイトル歌い出し」ってのが、いいかなぁと。ビートルズが、よくやりますよね。「She Loves You」とか。

U:活動自体は長いから曲のストックはアルバム何枚分かありそうですね(笑)。
この曲はアレンジ的に変わったということで興味を引きますが、音像のトータル・コンプレッションが80年代的な音でもあり、一方でトッドの『A Wizard, a True Star』(73年)みたいに凝縮されたポップスで魅力的です。
「スティール・バンド・トリニダード」や「懐かしのバイアーナ」みたいな南米風のエキゾチシズムって、blue marbleサウンドのエレメントの一つだと思うんですけど、その辺りの引き出しのきっかけとは?

S:エキゾチシズムは、ほとんど自然な流れですね。でも、ワールド・ミュージックにはハマらなかったなぁ。あくまでポップス経由のエキゾチシズムが好きなんですよ。
「懐かしのバイアーナ」は、ブラジルというよりルビー&ザ・ロマンティクスの「燃ゆる初恋」みたいな曲を作りたくて。「スティール・バンド・トリニダード」は、ガーデン・クラブの「花のうしろで」を意識していましたし。こんな話、VANDAじゃなきゃ、しませんが(笑)
(注:「懐かしのバイアーナ」のPVはアルバム収録のオリジナルの尺を編集してあります)

 

U:バイアーナの元ネタは「燃ゆる初恋」(「Our Day Will Come」63年)なんですか!(笑)VANDAというかソフトロック・ファンにはスパイラル・ステアケースやフランキー・ヴァリのカバー・ヴァージョンも知られていますが、アレンジ的にはオリジナルの方が完成されていると思います。そこがヒントにしたポイントなんでしょう。「花のうしろで」(「Little Girl Lost-And-Found」68年)はアレンジ的にはオリジナルのガーデン・クラブのサイケデリックさより、ヤン富田のカバー・ヴァージョンやヴァン・ダイク・パークスの『Discover America』(72年)などに通じるカリプソ・サウンドですね。
フレネシさんにお聞きしますが、以前心を掴まれたといわれる「懐かしのバイアーナ」の魅力とはなんでしょうか?

F:「懐かしのバイアーナ」の魅力は、曲そのものやアレンジが素晴らしいのは勿論ですが、
私が特に心惹かれたのは、サウンドの隙間を満たす空白の潤い感というか...。
その瑞々しい残響に、何ともいえないノスタルジーを感じたのです。オオノさんの声も少女のようにかわいらしくて、でも他のどんなささやきシンガーとも似付かない個性を放っていて、強烈に耳に焼きついて離れませんでした。

U:次はオオノさんのヴォーカル・テイストに最も合っていると思われる、「降り続く雨はいつでも」なんですが、この曲のモチーフは?ラグタイムっぽいフレーズが入るピアノはショックさんのプレイかな?個人的にもアルバム中最も好きな曲です。

S:ありがとうございます。ピアノはボクですね。シチュエーションは「夏のカフェにひとりでいる女性」ですね。白昼夢みたいなボンヤリ感。バラードですが、泣きのバラードには絶対したくなったですね。むしろ、眠くなるような感じです(笑)。もともと映画音楽のようなオーケストラ・アレンジだったのですが、ちょっと大げさかなと思い、最終的にオケを全部カットしました。オオノさんのヴォーカルに的を絞った感じです。シンセの使い方とか、スティービー・ワンダーの「You And I」(『Talking Book』収録72年)に影響受けていますね、かなり。
オオノさんは録音の時、絶対1回か2回ぐらいしか歌わないんです。歌詞とか歌入れの時に初見だったりするのに、よく歌えるなぁ。数多いCM音楽の製作現場で鍛えたワザなんでしょうか。

U:スティービーといえば、「未来都市ドライブ」のシャッフルも白人のそれではなく絶妙な横ノリになっていて、バック・ビートにおけるシンセのアクセントにもモロ影響を感じますね。
オオノさんの歌入れの話も興味深いです。ベテランの職業シンガーさんらしいエピソードです。
ショックさんは自宅にスタジオを構えているらしいですが、今作ではベーシックから歌入れまでそちらで全て録ったんですか?その他にレコーディング中の面白いエピソードはありますか?

S:ベーシック・トラックは自宅ですが、歌入れや生楽器などは近所の公民館の音楽スタジオでした。かなり安い値段でレンタルできるんですよ。「政府の税金の無駄使い」の恩恵を見事に受けていますよね(笑)
「スティール・バンド・トリニダード」では、近所の子供たちにコーラスに参加してもらいました。キッズヴォーカルは、絶対にヘタクソな感じの方が可愛いと思ったので。でも学校の新任の先生みたいになった気分で、現場はとにかく大変だったなぁ。

U:興味深いエピソードありがとうございます。
では曲作りからレコーディングなどアルバム制作中、はまっていたアーティストのアルバムや映画など、少なからず影響を与えてくれた作品はありますか?

S:80年代の邦楽をよく聴き直していましたね。5枚だけ選ぶとしたら、鈴木さえ子の『緑の法則』、Shi-Shonenの『Singing Circuit』、チャクラの『さてこそ』、ポータブル・ロッU:『緑の法則』と『Singing Circuit』は私も80年代のフェイヴァリット・アルバムに入っております。
ではフレネシさんが『ヴァレリー』を聴いたファースト・インプレッションはどうだったですか?

F:私自身、リリースをずっと待ちわびていたファンの一人なので新作を聴けるということが純粋に嬉しかったです。
初めて聴いた時、最初の曲のイントロの音圧が、一瞬にして視界をビビッドカラーに彩色しました。そして次に、何色もの透明水彩絵具で描いたラインが幾重にも交差する絵がふっと浮かんできました。そして最後は、確かにここに存在するのに、数日間の後には跡形もなく消えてしまう移動遊園地の残像をみているような、そんな非現実感に包まれて、終わりました。

U:ショックさんから『ヴァレリー』の聴きどころをアピールして下さい。

S:変にマニアックで敷居の高い音楽ではなく、普通に誰でも楽しめるポップスだと思いますので、家でも、歩いてでも、車でも、いろんなシチュエーションで聴いていただけたらと思ってます。あと、本間藍さんのイラストが本当に素晴らしいので、そういう視覚的な部分でも充分に楽しんでいただけるアルバムではないでしょうか。 以下Vol.2(フレネシ編)へ続く
●フレネシ オフィシャルHP
http://www.otomesha.com/frenesi/
●blue marbleのマテリアル・ワールド(ショック太郎blog)
http://d.hatena.ne.jp/bluemarble/




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