2010年3月23日火曜日

☆Cowsills:『The Cowsills (Expanded Edition)』(Now Sounds/CRNOW13)

Cherry Red系のレーベル、Now Soundsよりカウシルズのファースト・アルバムがモノでリイシューされた。

このアルバムはRazorTieよりステレオでCD化されており、オリジナル・モノ・マスターでリイシューと裏ジャケットでも強調されているが、このCDを買う人の何人がそのことを評価してくれるだろうか。およそコレクターなどいそうもないバンドだからねえ...Expanded Editionというからその言葉を期待したら、「Rain,The Park And Other Things」のシングルをモノで再度収録してあり、どう聴いても同じテイクだった。そしてMGM以前、ブレイク前の音源を集めた『The Cowsills Plus The Lincoln Park Zoo』からフィリップス時代のシングル3枚、6曲が収録された。この中で最後のシングル「Could It Be,Let Me Know」は作曲・プロデュースともにコーンフェルド=デュボフコンビなので、MGMのカウシルズのシングルそのもので出来がいい。ただこのアルバムでは関係ないLincoln Park Zoo2曲は当然入らないとして、残る「Hold On Tight」「I Know,Know,Know,I'll Never Love,Love」の2曲はクレジット上カウシルズだし、歌も初期のカウシルズだと思うが、なぜカットされてしまったのだろう。シングルにならなかった未発表曲だったからか、このあたりの事は調べてもまったく分からない。誰か教えて!なお、ファースト・アルバムは、他のカウシルズのアルバム同様、シングル以外はイマイチの曲が多い。アルバムはこのNow Soundsから既にCD化されたサードの『Captain Sad And His Ship Of Fools』が一番出来がいい。(佐野)
The Cowsills












☆Various:『Curious George 2 Follow That Monkey』(Denon/COZ17781)

ブライアン・ウィルソンが参加した子供向けのオムニバス。最近、ブライアンはBlue MooとかSponge Bobとかの子供向けオムニバスで1曲参加というのが続いていてチェックが怠れない。
ここでは1964年にRivierasが歌って全米5位になった「California Sun」のカバーを提供、ドラムから始まるロックンロールに仕上げている。キーボードにギター、ベースと60年代そのもののシンプルな演奏で、本人はなんだか楽しそう。ただハーモニーはサビのパートだけで、まあコレクター以外は不要の代物だ。それにしてもこのジャケ、どこかで見たことがあると思って調べたらやはり「ひとまねこざる」だった。子供の頃、これと「ちびくろさんぼ」は好きでよく読んだなあ...。「ちびくろさんぼ」で覚えているのは例のトラのバターの件だが、「ひとまねこざる」はエーテルでふらふらになってしまうところだ。小さい頃はエーテルって言っても当然、なんだか分からなかったが、これってジエチルエーテル、全身麻酔薬だね、きっと。(佐野)








2010年3月21日日曜日

相対性理論:『シンクロニシティーン』(みらいレコーズ/XNMR12345)


 渋谷慶一郎とのコラボレーションによるトリプルシングル、『アワーミュージック』が記憶に新しい相対性理論が、2枚目のフルアルバム『シンクロニシティーン』を4月7日にリリースする。 『シフォン主義』(08年)、『ハイファイ新書』(09年)とそのスタイルはアルバム毎にモディファイされ進化しているが、このバンドが持つ独特な魅力は普遍的ですらある。
 ここでは、相対性理論の集大成的サウンドを持った楽曲群と、新たなエクスペリメントを施した新曲を収めた本作について一足先に紹介したい。

 メンバー4人によるセルフ・プロデュースとアレンジは前2作と同様だが、ソングライティングにおいてギタリストの永井聖一の単独及びティカ・αとの共作による提供曲が、スタジオ録音で初出となるのが注目されるポイントだろう。前作で様々なスタイルのギタープレイでサウンドを構築していた「四角革命」や、ハイライフ的センス(ジョニー・マー経由)を持ち込んだ「さわやか会社員」など、アレンジングでは彼の貢献度が高かっただけに、そのソングライティングには興味を惹いた。
 そして彼らの最大の魅力は本作でも貫かれており、永井にベーシストの真部脩一とドラマーの西浦謙助のプレイヤー3人によるヘッドアレンジでの化学変化のスパークと、極めて個性的なやくしまるえつこのヴォーカルで独特の歌詞が乗ることで、相対性理論らしさが創造されている。
なお前回『アワーミュージック』の対談レビューで協力してくれた、アーティストのフレネシさんからのコメントもポイントで掲載しておくので合わせて読んで頂きたい。

 では本作の主な収録曲を紹介していこう。『ハイファイ新書』収録の「テレ東」や『アワーミュージック』の「スカイライダーズ」と同様に、西浦のドラミングによる四つ打ちキックにバックビートにアクセントを持つハイハットのコンビーネーションが冴え渡る、真部作の「シンデレラ」。こういったダンス・ナンバーでも歌ものポップスとして機能しているのは、やくしまるのヴォーカルによってビートの熱にサーモ機能が掛けられているからだろう。
 ライヴでは常に人気が高く、サビのリフレインが耳から離れない「ミス・パラレルワールド」は、「Loveずっきゅん」にも通じるオリエンタルなギターリフが印象的だ。学園SFテイストな歌詞は真部とティカ・αの創作による、このバンド特有の世界観であり大きな魅力の一つである。

フレネシ:「言葉遊びのセンスには毎度のことながら唸らされっぱなしですが、呪文のような繰り返しの詞が出現した瞬間、魔法が掛かりますよね。「ミス・パラレルワールド」のサビで出現する繰り返しフレーズの強烈なインパクトは、四度のコーラスによってさらに引力を増しています。また「チャイナアドバイス」の駄洒落詞も、いい加減なことしか言っていないようで実は的確に駄目出しして諭す、『AERA』(朝日新聞出版)の中吊り的社会風刺アドバイスだったりするんでしょうか。何故だかそんな気がしてなりません。ちなみに、譜割含めて一番ぐっときた詞は、永井さん作詞作曲の「(恋は)百年戦争」です。歴史を変えたとかいちいち大げさに言いたい、女子の煩わしさや傲慢さをよくもこんなに可愛く描くなあと」

 永井とティカ・αによる共作の「人工衛星」は、彼らにしては珍しくストレートな曲調であるが、初期のバンド・サウンドが楽しめる。ここでは真部の饒舌なベースプレイがかなり素晴らしい。同じく「三千万年」では、マイナーのコード進行にモータウン・スタイルの3連のベースフレーズをぶつけた理論版「マンイーター」(Hall & Oates,82年)と呼ぶべきか。
 真部とやくしまるによる「ペペロンチーノ・キャンディ」も紹介すべきだろう。ライヴで一際異彩を放つこの曲のカオス的魅力はスタジオ録音でも健在だ。西浦のドラミングが忙しなく展開を演出し、永井のギターソロがブルース・フィールを醸し出しているギャップがまたいい。
オルタナ度フルアクセルの「気になるあの娘」は、初期の名曲「スマトラ警備隊」や「夏の黄金比」にも通じる、"スリー・ミニッツ・オブ・パッション"と呼ぶべき傑作で、荒削りながらファルセットまで駆使した表現力など、やくしまるのベスト歌唱が聴けるのはこの曲ではないだろうか。

フレネシ:「キッチュであったり、アンニュイであったりとさまざまな声の表情を持つやくしまるさんですが、本作では場面が変わる毎に一人、また一人と新たな人格が生み出されていくようで、彼女のシンガーとしてのさらなる進化を感じました。例えば「人工衛星」のサビではエクトプラズムのように重なるREBECCA時代のNOKKOの幻影が、少なくとも3回、私には見えた気がします」

 新曲となるラストの「ムーンライト銀河」は6分を超える永井とティカ・αによる大作で、これまでの彼らのサウンドからはイメージ出来なかったスタイルだ。西浦のステディなプレイとループとをシームレスに繋いだスロージャム風のドラム・トラックに、アコースティックギターのミニマルなアルペジオが響き、音程感のないシンベのシンプルなラインがグルーヴを作り出す。時折入るエレキのリフやパッド系シンセも空間を効果的に演出する。曲の世界観を見事にクリエイトした無駄のないアレンジで、筆者個人的にも本作のベスト・トラックとして推す名曲である。
 では最後に本作『シンクロニシティーン』のトータル的印象を、同じ個性派アーティストとしてフレネシさんが的確にコメントしてくれたので紹介しておこう。

フレネシ:「漫画に例えるならば、戦闘シーンに重きを置いた乙女ラブコメディとでもいうのでしょうか。本来少年誌に連載されている少年漫画だけれど女子読者も多い、あるいはその逆、といった・・・。
ともあれ、相対性理論というバンドの魅力を再確認した本作、素晴らしい内容でした。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルというごくありふれた編成にも関わらず、微塵もありふれた音に感じないのは、彼等が誕生したその歴史の前に、具体的な肖像が見えないからかも知れません」
(ウチタカヒデ)



2010年3月19日金曜日

Radio VANDA 第 120 回放送リスト(2010/4/1)【祝放送10周年!】

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Neil Sedaka Part3 1976-1980


1.Bad And Beautiful


2.Summer Nights


3.Perfect Strangers

4.A Song

5.The Leaving Game

6.Alone At Last

7.Tin Pan Alley

8.All You Need Is The Music

9.Born To Be Bad

10.City Boy

11.My Friends

12.Shoud've Never Let You Go

13.Amarilo



※2010 4 月より Radio VANDAは偶数月の隔月放送になります

2010年3月10日水曜日

The Goggles:『Music From The Original Soundtrack And More』(BIG PINK MUSIC/BIGPINK 056)


 VANDA読者にはお馴染みのクリエイター、ロッド・マクブライエンが70年に米NBC系テレビ番組の企画で結成したグループ、The Goggles(ゴーグルズ)の唯一のアルバム『The Goggles』(71年)が、韓国のBIG PINK MUSICから世界初CDリイシューされたので早速紹介したい。

 そもそもSalt Water Taffy解散後のロッド・マクブライエンがThe Goggles結成に関わる経緯だが、『NBC Children's Theatre』(63~73年)という土曜の朝に放送していたファミリー向け番組のシリーズ、"Looking Through Super Plastic Elastic Goggles"(70年)の企画によるものだという。この辺りについては、本誌佐野編集長によるマクブライエンへのインタビュー記事に詳しいのでそちらを参照して頂きたい。
The Gogglesはマクブライエンと彼の友人でNYのセッション・ギタリストとして知られるデヴィッド・スピノザの他、テレビ番組出演を考慮して男女それぞれ1名の俳優が参加しており、実際のレコーディングで彼らは、ヴォーカルやコーラス・パートのみに参加していると考えるべきだろう。後に映画『ファントム・オブ・パラダイス』(74年)などに出演する女優のジェシカ・ハーパーがリードを取る曲は3曲のみだ。
 本作は"Looking Through・・・"にミュージカルディレクター?的立場で関わっていたとされる、Audio Fidelity Records(以下AFR)のA&Rマンであったエディ・ニューマークがプロデュースとアルバムの10曲中6曲(内4曲は共作)のソングライティングを手掛け、マクブライエンはスピノザとの共作で1曲のみ提供している。その「The Start Of A New Day」は、70年代初期BB5というかブルース・ジョンストン風のミディアムなサンシャインポップで、美しいコーラスを含む音数少ないサウンドに身を委ねたい。
 ニューマークが手掛けた楽曲はバラエティに富み、60年代バブルガム・ミュージックの名残を彷彿とさせるアップテンポのテーマ曲「Super Plastic Elastic Goggles」、プロコル・ハルム風のパートを持った「The Colors Of The Mind」、フィフス・アヴェニュー・バンド的なプレ・ブルーアイドソウル感漂う「Looking At The World Through Goggles」など歌モノ・テレビ・サウンドトラックの域に留まらない充実したものが多い。


 アルバムを通して最も完成度が高いのは、ヘレン・ミラーとエステル・レヴィット(昨年『Is It Lonely Together』(74年)が世界初CDリイシューされた!)のソングライティングにより、シングルとして先行リリースされた「Don't Say You Don't Remember」ではないだろうか。複雑な転回にコール・ポーター風のフックが止めを刺す、実にドラマティックな名曲なのだ。ジャズ・ピープルの素養を持ったピアニストとドラマーの演奏やオーケストレーションなど、全てが完璧でクラシックと呼べるクオリティだ。翌72年に女優兼シンガーソングライターのビバリー・ブレマーズがオーソドックスなアレンジながら、全米でロングヒットさせ曲の完成度が証明される。

 昨年英Now Soundsから世界初CDリイシューされたThe Golden Gateの『Year One』(69年)と同様に、AFRの数少ないポップス系アルバムとして、オリジナル・アナログ盤がレアとされる本作の初CD化を喜びたい。ただし今回のリイシューには当時のデータや当事者か評論家の解説、リマスターに関してのクレジットがブックレットに一切記載されていないのが気になった。一応AFRの現在のカタログを持つMilestone Recordsのライセンスを明記しているので公式リイシューと受け取っていいだろう。(エビデンスはないので念のため)
 音質的には単純にデジタルコンバートしたというものなのか、特段向上しているとは思えないが、一般的なオーディオで聴く分には申し分ない。
コレクター心をくすぐるオリジナル盤のデザインを再現した、丸形特殊ジャケット(三つ折り)や帯に価値観を見出すのもいいだろう。
6月にVIVID SOUNDからのリリースも決定したようなので、興味をもったソフトロックファンは早速予約しよう。
(ウチタカヒデ)





2010年3月4日木曜日

☆Small Faces:『Small Faces+13』(ユニバーサル/UICY94169)☆Small Faces:『There Are But Four Small Faces+15』(ビクター/VICP70111)

昨年のCDを今更紹介というのはお恥ずかしいことだが、「いつもの紙ジャケの出しなおし」と高を括っていたのが大間違い、今まで一度もCD化どころか当時のリリース以外一回もリイシューされたことのない音源が全て収録されていた驚異の企画が今回のリイシューだった。
まずは『Small Faces13』から。この中で、私が敬愛する犬伏功さんの手による、未だに入手できないフレンチEPが都市伝説だったとする素晴らしいライナーがあったのでそこから紹介しよう。今までボーナストラックで愛聴していたフィードバックギターから始まる「What'cha Gonna Do About It」や「Shake」「Hey Girl」は全てEPなんかに入っていたものではなく、70年代にフランスでリリースされたLPThe Small Faces』(DiscAZ STEC112)で登場したもので、ここにはCDAlternate Versionと表記されていた別テイクの「You Bettter Believe It」「Own Up Time」「Take This Hurt Off Me」「Baby Don't You Do It」も入っていて、別テイクの嵐のコンピだったという。1996年のリイシューの時に前者はみなFrench EP Versionと誤表記されていたので、この都市伝説が広がってしまったのだそうだ。(「E Too D」のFrench...と表記されたものは米盤コンピLPBy Appointment』で登場したもの)正真正銘のフレンチEPはお馴染みの「Come On Children」と「Don't Stop What You Are Doing」の2曲だけという。ではこれからが初登場音源。それはその「Don't Stop What You Are Doing」(French EP Version)で、イントロのギターのリフからサウンドが違うので一発で分かる。演奏がLPヴァージョンと比べてずっと大きくミキシングされているので迫力がある。歌い方もだいぶ違っていて、エンディングのリード・ヴォーカルはオフィシャルに比べて流す感じでバックコーラスが目立ちフェイドアウトは10秒も長い。もうひとつは私も間違えてフレンチEPとしていた「What's A Matter Baby」(Alternate Version)で、印象は似ているが、こちらはコーラスがほとんど聴こえず、エンディングのリード・ヴォーカルの歌い方が明らかに違う。なおこちらは先のフランス盤LPコンピで登場したものだそうだ。このデッカのSHMCDはいったん売り切れたので4月に再プレスとなる。
もうひとつはイミディエイトなので違うシリーズでリリースされた『There Are But Four Small Faces15』。このアメリカリリースのコンピ盤のボーナストラックにはエンディングのピッチが下がらないで終わる「Here Comes The Nice」(US Single Version)が入り、これは初リイシュー。またスタンリー・;アンウィンの語りをカットして編集した「Mad John(US Single Version)もおそらく初リイシューだ。加えて他のコンピCDには入っていた「Wham Bam Thank You Mam」のまったくの別テイク(歌がハモッている)でイタリアシングル化されたヴァージョンが「Me You And Us Too」のタイトルで収録された。さらにP.P.Arnoldをリード・ヴォーカルに据えたコラボ曲「Groovy(Alternate Take By P.P.Arnold With Small Faces)も収録されたが、これは後述のCDでも聴ける。
今回の一連のリイシューで収められなかったスティーブ・マリオットのソロであるMoments名義の「You Really Got Me/Money Money」やジミー・ウィンストンの幻のセカンドソロシングル、Wisnton's Fumbs名義の「Real Crazy Apartment/Snow White」はRepertoireからリリースされた『The Definitive Anthology Of The Small Faces』のCDでしっかり聴けるのでお忘れなく。(佐野)

スモール・フェイセス+13ゼア・アー・バット・フォー・スモール・フェイセス+15(紙ジャケット仕様)