2009年8月5日水曜日

The Golden Gate:『Year One』(Now Sounds/CRNOW 12)



1910フルーツガム・カンパニーのサードアルバム『Goody Goody Gumdrops』(68年)でカセネッツ=カッツとの共作をはじめ、マショマロ・ウェイの『Marshmallow Way』(69年)の全面的なソングライティングとプロデュースを手掛けた、ホイットロウ&カール・プロダクションのリード・ホイットロウとビリー・カールによるスタジオプロジェクト・グループ、The Golden Gateの唯一のアルバム『Year One』(69年)が、英Cherry Red Records系の Now Sounds(またしても快挙!)から、ボーナス・トラック7曲を加えて世界初CDリイシューされた。
稚拙なバブルガム・ミュージックとは一線を画すその内容に、拘り派のソフトロック、ポップス・ファンは必ず入手して聴いて欲しい。

オリジナル・アルバムは主としてジャズやモンド系レーベルとして認識されているAudio Fidelity Records(54年~84年)からのリリース作品なのだが、今年3月に惜しくも亡くなった、ロッド・マクブライエン(Salt Water Taffyで知られる)がTV番組企画で急造したグループ、ゴーグルズの『The Goggles』(71年)など、同社でのポップス・アルバムのリリースのきっかけとなったのが、この『Year One』ではないだろうか。因みにSalt Water Taffyの『Finders Keepers』(68年)で、ホイットロウはマクブライエンと「I'll Always Be True to You」を共作しており、同アルバムのアレンジャー(主にホーンだろう)だったミーコ・モナルドは本作でもホーン・アレンジを担当している。
このようにマクブライエンとホイットロウの関係は興味深いのであるが、本誌佐野編集長によるマクブライエンへのインタビュー記事に詳しいのでそちらも読んで頂きたい。
The Golden Gateはホイットロウとビリー・カールがプロデュースとアレンジ(リズムセクション・アレンジだろう)を手掛け、ソングライティングに一部リチャード・ベルを加えたサウンド・ラボ(Sound Laboratory)と考えていいだろう。レコーディングには演奏面でブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ、ヴォーカル・パートにトレイドウインズの各メンバーが参加していたようだ。
中心人物であるホイットロウは、後にノーザンやフィリー系ソウル・ミューックのプロデューサーとして名を馳せるのだが、感覚的にはジェリー・ロスに近いクリエイターといえる。
ホーン・アレンジャーのミーコについても少し触れておこう。NYのイーストマン音楽院出身で、在学中に同期生のチャック・マンジョーネらとジャズバンドを組んでいたようだ。トロンボーン奏者だったことでホーン・アレンジに強いのも頷ける。70年代後半には所謂ディスコ・アレンジ系のアルバムで世界的に知られるようになるが、特にジョン・ウィリアムズの「Star Wars Theme(/Cantina Band)」を16ビート解釈したカバー・ヴァージョンが有名で、日本でも子門真人の歌唱による迷カバー・シングルがリリースされ(後にクレームにより回収された)、このヴァージョンを下敷きにしていた。

さて本作『Year One』は、アルバムを通して捨て曲がない素晴らしい内容なのだが、主な収録曲について解説しておこう。ピアノやホーンのリフがファンデーションズの「Build Me Up Buttercup」を彷彿させる「High On A Melody」、この1曲目でホイットロウ&カール作品の中でも特別なものと感じさせる。

   

ストレートなサンシャイン・ポップといった感の「Monday After Sunday」はセカンドシングルとしてカットされた。
ファーストシングルの「Diane」は、短いイントロダクションの後ハーパス・ビザールの「Come To The Sunshine」風イントロのホーンにエコーを効かせた女性の呟きが決まる軽快なラヴソングで、コーラスには初期BB5の影響を感じさせる。
三連符のピアノと木管アンサンブルにヴァイブやウインド・チャイムのアクセントが加わる、バカラック・スタイルの美しいバラード「I Never Thought I'd Love You」。
本アルバム中個人的に最も惹かれたのは「In A Colorful Way」だ。イントロから転調を繰り返す曲構成に、やや未完成な部分も残るがとにかく耳に残るアレンジとミックスがたまらない。間奏のエレクトリック・ハープシコード・ソロや、やたらと多用するウインド・チャイム、唐突なドラム・ブレイクなどアレンジングの危うさに、突っ込みどころが多過ぎて好きにならずにいられない。
今回のライナーにあるホイットロウ自身の曲解説によると、この曲はフィフス・ディメンションの『The Magic Garden』(67年)を意識していたようだ。
「Lucky」は完全無欠のソフトロック・チューンで、キースの「Easy as Pie」をジェリー・ロスと共作したビリー・カールらしさが出ている愛すべきシャッフル・ナンバーだ。この曲面白いのは、サビのリフレイン・ラインをオクターブ下で解決させたり(さすがに最終パートのサビは上のオクターブで締めている)、エンディングの不自然さがEuphoriaの「Sitting In A Rockin' Chair」に匹敵する怪しさなのである。
ボーナス・トラックはシングル2枚分4曲のモノ・ヴァージョンに、未発表の3曲は「Monday After Sunday」の別テイク・モノ(ヴォーカルのテイク違い)、「Lucky」のホーン・セクション無しミックスのモノ、また唯一シングルカットされていない「In A Colorful Way」のモノではミックスの関係なのか、間奏のエレクトリック・ハープシコードのソロが音切れしている。
最後に念を押すが、ソフトロック・ファンを自認するなら入手して聴かねばならないアルバムであることは間違いない。
(ウチタカヒデ)


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