2008年12月31日水曜日

相対性理論:『ハイファイ新書』 (みらいRECORDS/XQFA-1233)

 

今年5月にリリースされたデビュー・ミニアルバム『シフォン主義』で、多くの音楽ファンの話題をさらった相対性理論(そうたいせいりろん)が、初のフルアルバムを09年1月7日にリリースする。
音源を入手して約1ヶ月聴き込んでの感想だが、前作では垣間見られなかった彼らの新たなスタイルを発揮した傑作に仕上がっていると思う。 

個性的なヴォーカリストやくしまるえつこと、全てのソングライティングを手掛けるベーシストの真部脩一を中心とするバンド・サウンドのコントラストの妙というべき、前作『シフォン主義』の世界観はそのままに、更にポップスの可能性を広げたその内容に、聴き込む毎に耳を奪われている。

本作『ハイファイ新書』は、彼らのMySpaceでデモ・ヴァージョンで発表されていた、「テレ東」や「四角革命」をはじめとする全9曲から構成され、既にライヴ披露されていた曲も含まれるが、先ずは、会場に足繁く通う熱心なファンにも馴染みの薄い曲から紹介しよう。 「品川ナンバー」はシカゴ・ハウスのエッセンスを持った80年代末期の打ち込み系シティポップ(今井美樹「キスより吐息より」etc)のサウンドを、彼らなりの解釈で料理したダンスナンバーといえるだろう。またどことなく、桐島かれんをヴォーカルに起用した頃の再結成サディスティック・ミカ・バンド(Sadistic Mica Band)をも彷彿させる。 「バーモント・キッス」はキーボード主体のサウンドに、ピュアなヴォーカルが乗るバラード調の曲。歌詞の世界観とのギャップは相変わらずだが、ピーター・ガブリエルのサウンドに近いかも知れない。 キックの4つ打ちとマルチタップディレイをかましたリズム・ギターが印象的な「テレ東」は、洗練された16ビートのポップスというべきか。アルバム・トップのリード・トラックとしての完成度は随一である。
70年代末期イギリスのニューウェイヴ系ギタリスト(アンディ・サマーズ,アンディ・パートリッジ)的な非トニックのインパクトあるギター・リフで始まる「地獄先生」は、そのサウンドとやくしまるのコケティッシュなヴォーカル・スタイルのギャップが実に新鮮で、真っ先に興味を持ってしまった。因みに先行配信された本曲のPVは、映画『パビリオン山椒魚』で知られる冨永昌敬が監督し、女優の洞口依子(故伊丹十三作品からトレンディ・ドラマまでこなす一流女優)らが出演しており、早くも業界内でリスペクトを集めているようだ。 「四角革命」も70年代末期ニューウェイヴ・サウンドの影響が強く、2トラックに配したギターのアルペジオのコンビネーションやスネアの残響処理は、スティーヴ・リリィホワイトが手掛けていた頃のXTCを彷彿させ、コーダのリフレインの雰囲気などは、まるで「When You're Near Me I Have Difficulty」(『Drums And Wires』収録)だな。
一方「学級崩壊」ではサウンドがポリス的で、ギタートラックの構築はアンディ・サマーズの影響が強そうだ。またこの曲では、やくしまるのウィスパーヴォイスが効果的に使われていて艶めかしい。 「さわやか会社員」 はタイトル通りというか、80年代初期ネオ・アコースィック・サウンドを彷彿させる、ロディ・フレイム(Aztec Camera)的なソングライティング・センスが素晴らしく、歌詞を含めた完成度では個人的にはベスト・トラック候補である。 

アルバム全体を通した印象としては、前作で聴かれたラウドなギター・サウンドが後退し、ポップスの方法論を模索した結果出来上がったサウンドではないかと感じられる。 実際バンド内でもメンバー間で生じる化学変化というべき、偶然性の産物的アプローチが繰り返されているのではないだろうか。前途有望なバンドの成長とはそういうものであろう。
(ウチタカヒデ)

2008年12月29日月曜日

MISIC FILE 新春放談 2009(2009/1/1、1/2)宮治淳一&濱田高志&佐野邦彦

MISIC FILE新春放談20092009/1/1)(2009/1/2
 

放送予定:   2009/1/1(木)22:00-23:00   2009/1/2(金)22:00-23:00


濱田高志セレクション 1. 私はイエスがわからない(スーパースター)...オリジナル・サウンド・トラック 2. When The Laughter Is Over...Swing Out Sister 3. Alone Again...小曽根 真トリオ feat. Tiffany


佐野邦彦セレクション 1. I'm Into Something Good...Brian Wilson feat. Carol King 2. Just Like Me And You...Brian Wilson 3. Heaven...Brian Wilson


宮治淳一セレクション 1. Stop The Music...Lenn & The Lee Kings 2. I Never Had It So Good...Brown Rice 3. Something Stupid...Carson & Gaile

2008年12月24日水曜日

☆Various:『三沢郷大全』(コロムビア/COCP35285-6)

濱田高志さんがプロデュースするTVAGEシリーズの新作は作曲家、三沢郷の作品集である。

この名前を聴けば私はすぐに「デビルマン」!と反応してしまう。TVシリーズの「デビルマン」を愛してやまない私にとって(マンガはもちろん名作だが、惚れた女のためだけに闘うアニメ版の不動明の姿勢が大好きだからだ。「人類のため」なんて崇高な目的はどうにも信用できないし、「国のため」なんてきな臭い理由も嫌。やはり惚れた女のため、大事な家族のため、これだけが真実だ)オープニングの歌を作った三沢郷の名前は、忘れるはずもない。あの緊張感のあるオープニングの歌は、哀調を帯びた都倉俊一のエンディングテーマと合わせて、TVアニメ主題歌のベスト10に必ず入る傑作である。その他は「ミクロイドS」。オープニングテーマの冒頭のあの不安なコード進行が実に印象に残る。そして「エースをねらえ!」。止め絵がメチャクチャ多かった初代「エースをねらえ!」だが、オープニングの歌はキャッチーかつ流麗で好きな曲のひとつだった。(蛇足だが同じ出崎統=杉野昭夫という同じ制作スタッフで後に作られた「劇場版エースをねらえ!」は日本アニメーション史上に残る永遠の名作なので、見たことがない人は必ず見て欲しい)しかし自分の中で三沢郷の知識はこれしかなかった。この濱田さんの制作した作品集の冒頭は「サインはV」、おお、これも三沢郷だったんだとビックリ。久しぶりに聴いてみると弾むリズムが心地よい快作である。そして「アテンションプリーズ」、キャッチーな曲で、これも傑作だ。パンキッシュなアニメの「ジャングル黒べえ」もそうだったんだ、エンディングの「ウラウラ・タムタムベッカンコ?」はよく聴いてみると「ミクロイドS」と繋がっていくな。あの勇壮な特撮の「流星人間ゾーン」も三沢郷だったのか。アニメ版「月光仮面」は、マイナー、メジャーの切り替えが実に巧みでこんなスマートな曲だったのかと実に楽しく聴くことが出来た。ディスクは2枚あり、2枚目は企画もののシングルやアルバムの曲が中心に構成されている。中には伊東ゆかりのアルバム収録曲もあるが、J.ガールズのアルバムなんて無名デュオに三沢流のジャパニーズ・ポップスを歌わせたものだ。CM用に録音された「カペラのテーマ」や、競合盤となった「エベレスト」などが聴きものだが、007シリーズをモチーフに書き下ろしたジャズタッチのインスト集や、あの子供心に緊張感で手に汗を握った傑作SF映画「アンドロメダ...」と同モチーフのアンドロメダストレインのテーマ」なんていうものもあった。後者は牧歌的なインストで映画のイメージとはまったく違うなと思ったら、まだ映画化される前に書いた曲だという。そしてこの曲とカップリングはエロい英語のナレーションを被せた「白い闇の彼方に」という曲で、このシングルはエロジャケ好きなら大喜びのキワモノだった。三沢郷本人は昨年他界してしまったが、濱田さんが往復書簡を交わしてしたため、謎のベールに覆われていた三沢郷という人物像が初めて明らかになった。もちろん本邦初公開の貴重な情報である。東京大学時代に音楽以外で食っていく道がないと悟った三沢は独学で音楽を勉強、その後、初見で歌えることを誇りにしていたフォー・コインズというヴォーカル・グループの一員として12年を過ごす。メンバー一人の事故死でグループを解散したあと作曲家に転向する。しかし日本での作曲家としての活動は7年だけで、その後はハワイに移住、その後はずっとアメリカでCMやライブ・ショー、ミュージカルの作曲家として活動していた。日本で作曲したのはたったの7年しかないため、これだけ曲が少ないのだ。しかしそれまで作曲をしたことがなかったというのに、いきなり書き始めてこれだけの曲が書けるのだから恐れ入る。これらのインタビューも面白いので、是非、入手して欲しい。

(佐野)
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☆Tommy Roe:『Paisley Dreams』(Rev-Ola/CRREV269)

まるでVANDAの別働隊のようなRev-Olaレーベルがついにトミー・ロウの2大名作、1967年の『It's Now Winter's Day』と1968年の『Phantasy』を2イン1にしたCDをリリースしてくれた。
このアルバムを強くプッシュしたのは1996年、12年前に音楽之友社から出した『ソフトロックA to Z』の単行本だったけど、遂に夢のひとつがまた実現した。当時、MCAビクターってところがこのアルバムの権利を持っていて、勧めたけど、ソロシンガーは売れないからとか何とかいって出してくれなかったっけ。こうやってRev-Olaなど、海外のリイシューレーベルはいいものは時間が経ってもリリースしてくれる。それに比べ日本のレコード会社の洋楽部門はつぶれかかっているので、有名アーティストのアルバムを紙ジャケばかりで出しなおし、ロクでもないCDばかり出して、目も当てられない惨状だ。何度も何度もリリースされたスモール・サークル・オブ・フレンズの1stアルバムを、ボーナストラックも付けず、たった20分程度しか曲が入っていないままで紙ジャケでリリースされていたが、あんなものに何の価値があるのか、呆れて物も言えない。
さて、本題に戻って、この2枚のアルバムは、前者はヴォーカル・アレンジがカート・ベッチャー、後者がボールルームのジム・ベルで、バック・コーラスはその二人に加えサンディ・サルスベリー、リー・マロリー、ミシェル・オマリー、ドッチ・ホームバーグらと、ミレニウム、サジタリアス、ボールルームのメンバーで固めているので、文句なしの仕上がりになっている。特に『It's Now Winter's Day』は、カート・ベッチャーが、トミー・ロウが自分の声が聴こえない!と怒らせたほど斬新なハーモニーを付けまくり、ポップ・サイケの傑作としても評価されるアルバムにしてしまった。特に「Moon Talk」は、高度なコーラスワーク、サウンドに逆回転も使いながら、サイケデリックでありながら少しも難解でないというカート・ベッチャーの才能が全開した快作。冒頭の「Leave Her」から「Moon Talk」を挟んで「Aggravation」までの3曲は、ビートが効いたナンバーでありながら、カート・ベッチャーのコーラス・マジックで全編が覆われ、ポップ・サイケの最高の形を見せてくれた。アルバムのB面に当たる部分の「Long Live Love」「Night Time」「Sweet Sounds」「It's Now Winter's Day」は牧歌的な美しいメロディとサウンドに、虚空からふっと現れるようなミレニウム、サジタリアス・スタイルの極上のハーモニーが付けられ、こちらはソフト・ロックの傑作となった。これだけのクオリティの曲が詰まったアルバムは、めったにない。カートの才能はもちろんだが、全ての曲を書いたトミー・ロウの才能もまさに頂点にあった訳で、両者の才能が頂点でシンクロしたからこそ、この名盤が生まれたといえよう。なお、このアルバムはステレオで、モノアルバムで聴いていた私は、「Moon Talk」のイントロに笑い声や話し声が入っていたのに驚かされた。この時代が一番、ステレオとモノで違いがある。そして『Phantasy』は、トミー・ロウがカートのやり過ぎのハーモニーを嫌ったため、カートのボールルームの仲間であるジム・ベルにアレンジャーを代えてリリースしたアルバムだ。そのため、マッドな感覚は影を潜め、トミー・ロウの牧歌的なメロディが前面に出て、ある意味では聴きやすいアルバムになった。ファンタジックな「Plastic World」「Melancholy Mood」は、実に美しいソフトロックの傑作で、トミー・ロウの作曲の才能と、持ち前の甘いヴォーカルの魅力を体感させてくれた。B面にはサンディ・サルスベリーが書いた2曲が入るなど、こちらも聴きどころは多い。ファンタジックなアルバムにするためにハーモニーは控えめに付けられているがやはり高度なものだし、サウンドはストリングスを生かし練られている。
両者とも聴きどころ満載で、最高のアルバムと太鼓判を押すが、Rev-Olaには苦言をひとつ。
これだけの名盤なのに、肝心なバッキングのスタッフへの言及が無いに等しく、そのクレジットが裏ジャケの写真だけで、それもピンボケでよく読めないのはあまりに手抜きだ。取材がない解説は無くてもいい程度。この前のペパーミント・レインボウのアルバムが全シングルをボーナストラックで追加と内容面でがんばっただけに、ちょっと残念だ。
なお、このCD1219日現在、日本でも海外のamazonでも未入荷で、年明けの入荷とされているが、Rev-Olaを出している元のCherryredレーベルで普通に買える。送料込みで10.95£と安かった(円高は助かるね)ので注文してみたが、1週間で届いたので、amazonに回すだけのプレスが出来なかったのだろう。(佐野)

商品の詳細





2008年12月17日水曜日

Radio VANDA 第 105 回放送リスト(2009/1/08)


Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。

 

特集:外国語ヴァージョン特集



1.    I Want To Hold Your Hand(German)...Beatles

2.    She Loves You(German)...Beatles

3.    In My Room(German)...Beach Boys

4.    The World Through A Tear(German)...Neil Sedaka

5.    Pavardigar(German)...Pete Townshend

6.    Kokomo(Spanish)...Beach Boys

7.    Groovin'(Spanish)...Young Rascals

8.    Alice In Wonderland(Spanish)...Neil Sedaka

9.    As Tears Go By(Italian)...Rolling Stones

10. A Beautiful Morning(Italian)...Young Rascals

11. See You In September(Italian)...Happenings

12. I Remember(Italian)...Harmony Grass

13. Breaking Up Is Hard To Do(Italian)...Neil Sedaka

14. Look Through Any Window(French)...Hollies

15. Distant Shores(French)...Chad & Jeremy

16. You Are She(French)...Chad & Jeremy

 



2008年12月4日木曜日

☆Neil Young:『Sugar Mountain-Live At Canterbury House 1968』(Reprise/516758-2)

アコースティック・ギター1本で歌うニール・ヤング最古のソロ・ライブがリリースされた。曲目を見たらファンなら泣くだろう。
まずバッファロー・スプリングフィールド時代の曲が「On The Way Home」「Mr.Soul」「Expecting To Fly」「Out Of My Mind」「Nowadays Clancy Can't Even Sing」「Broken Arrow」と6曲も披露された。壮大なジャック・ニッチェのオーケストラがない「Expecting To Fly」がどうかなと思っても、弾き語りになれば何の違和感もないし、「Nowadays Clancy Can't Even Sing」もしかり、特にアレンジが次々変わる「Broken Arrow」なんてどうなるんだろうと若干の危惧があったが、この手の変拍子のナンバーは逆にアコースティック・ギターだけの方が自由にストロークを変えられるので、極めて自然に聴くことができた。そしてファースト・アルバムから「The Last Trip To Tulsa」「The Loner」「If I Could Have Her Tonight」「I've Been Waiting For You」「The Old Laughing Lady」と5曲が入り、特にこの当時以外ライブで聴くことなど不可能であろう「If I Could Have Her Tonight」「I've Been Waiting For You」「The Old Laughing Lady」の3曲が聴けたのは嬉しかった。地味な曲だがキラリと光る部分がある。コードの選び方が美しい。そして残るはシングルB面で使われた「Sugar Mountain」と、『After The Gold Rush』に収められることになる「Birds」の2曲だが、ギター・ヴァージョンの「Birds」はシングルB面で披露されていたので、このアコギヴァージョンも特に違和感がなく聴けた。ニール・ヤングは彼が歌えばオリジナルがどんなアレンジで作られていたとしても、全てニール・ヤングそのものになってしまう。まさにワン・アンド・オンリーの存在だということが痛感させられた。ニール・ヤングは本当に素敵だ。なお、付属のDVDだが、映像はずっと同じ止め絵で曲はCDと同じという理解に苦しむ代物、いったい何のために付けたんだろう...。(佐野)
Sugar Mountain: Live at Canterbury House 1968

☆Brian Wilson:『That Lucky Old Sun(plus 3 bonus tracks)』(BRIMEL/5099923616127)Best Buy Only

先に紹介したブライアンのこのアルバムはビルボードで21位まで上がり、ソロとしては前作の『Smile』の13位に続く好成績、オリジナル曲の新作としてもビーチ・ボーイズ時代の1966年の『Pet Sounds』以降最高のチャートと、ブライアンの復活がファンだけでなく一般へも普及したのは嬉しい限り。その中で、またもBest Buyがやってくれた。
ここはアメリカの大手の家電量販店なのだが、オマケを付けて付加価値を付けたCDをしばしば販売している要チェックの店なのである。以前はフーの『Live At The BBC』にレアトラック満載のボーナス・ディスクを付け度肝を抜いたことがあった。そして今回はボーナストラックを3曲追加している。まずはキャロル・キングをフィーチャーした「Good Kind Of Love」。ただしここではキャロル・キングはTaylor Millsと同じパートしか歌わないのでまったく違いが分からないといってもいい程度。この曲と違って価値があるのは同じくキャロル・キングをフィーチャーした「I'm Into Something Good」だ。キャロル・キング自身が書き、ハーマンズ・ハーミッツでヒットしたナンバーのカバーだが、ブライアンと交互にリード・ヴォーカルを取るなど、彼女の存在がはっきりと分かる。この手のロックンロール・ナンバーを歌うとブライアンは楽しそうだ。最後の1曲は、作曲のクレジットがないので分からないが、おそらくブライアン書下ろしの未発表曲「Just Like Me And You」である。雄大なメロディ・ラインが心地よく、この3曲の中でも最も出来が良い佳曲だ。アルバムに入れても上位の曲になったはずで、ファンなら是非聴いておきたい作品である。なおBest Buyの通販はアメリカ国内のみなので、eBay、もしくはアメリカのamazonで買おう。ちなみに私はアメリカのamazonから買ったが(直販はない)、送料込みでも3000円以下で簡単に買えるので今のうち。(佐野)






2008年12月1日月曜日

石橋英子:『drifting devil』(RHYTHM TRACKS/XQFL-1004)

 

90年代から活動しているオルタナティヴ・ロックバンドPANICSMILEのドラマーであり、町田康(町田 町蔵)をはじめ様々な個性派アーティストのレコーディング・セッションでも活躍するマルチ・ミュージシャン、石橋英子のセカンドアルバムがリリースされる。 

2006年のファーストアルバム『Works for Everything』から、元on button downのアチコとのユニット石橋英子×アチコ名義での二作、『ロラ&ソーダ』(2007年)と『サマードレス』(2008年10月)を挟んでリリースされる本作は、全てが書き下ろしの新曲で、長期に渡るレコーディングでは石橋自身によるオーヴァーダビングも多くされ、マルチ・ミュージシャン振りをいかんなく発揮している。 そのような高度なミュージシャンシップもさることながら、個々の楽曲のクオリティも極めて高く、ポップ・ミュージックのもう一つの在り方を強く感じさせるのだ。

アルバムは、『Hot Rats』の頃のフランク・ザッパを彷彿させる変拍子ジャズロックの「Dizzy Dance」でいきなり幕を開け、続く「Fearless【STOP】」では70年代末期ニューウェイヴ・サウンドを意識した雰囲気が懐かしくも新しい。音の重ね方など、その音像にはホルガー・シューカイの影響も感じさせる。 「Last Sky」やタイトル曲の「drifting devil」でも、アバンギャルドな実験性とポップ感覚が同居し ており、ジャンルではカテゴライズ出来ない、"石橋英子ミュージック"たる唯一無二な個性を強く印象付けてまったく飽きさせない。 ポップ・ミュージックが持つ構成美だけに囚われない、広い間口を持ったリスナーは元より、多くの音楽ファンにも聴いて欲しいアルバムといえる。 12月3日リリース。
 (ウチタカヒデ)

2008年11月28日金曜日

☆ Who:『The Who Live At Kilburn1977』(Image/ID5145WQDVD)DVD☆Who:『Amazing Journey:The Story Of The Who』(Universal/61102505)DVD

フーの初単独コンサートにタイアップしたかのように、フーの充実した2枚のDVDが同時にリリースされた。
まずは前者の紹介から。これは1977年、キース・ムーンのほぼ最後のライブを収録したものである。ピートとロジャーの服装を見て分かるが、『The Kids Are Alright』の名演であるシェパートン・フィルム・スタジオの時「Baba O'Riley」「Won't Get Fooled Again」の時とまったく同じであり、あの緊張感溢れる高いテンションはここでも見事に保たれている。「Won't Get Fooled Again」の最後のロジャーのシャウト、ピートの大ジャンプは迫力満点、ピートはその後、マイクスタンドにハイキックをかましていて、ロック本来の魅力である暴力的なまでのエネルギーに圧倒されてしまう。カッコいい!演奏では「My Wife」がメンバーの演奏テクニック全開で存分に楽しめる。「Smoke On The Water」風になった「I'm Free」のギターも面白い。完成したばかりの「Who Are You」が聴きごたえ十分。曲は全15曲、約1時間の収録でちょっと短い。しかしボーナス・ディスク、こいつが凄い。こちらは1969年、ロンドン・コロシアムでのライブが71分収録されていて、『Tommy』を出したばかりの乗りに乗った最盛期のフーのライブが楽しめる。ピートとロジャーの服はウッドストックと時と同じ、音のバランスはこちらの方がずっといい。少々ヴォーカルにエコーがかかり過ぎの感はあるが、音がスカスカだったり、ピートのギターの音が小さすぎたりする60年代のライブの中ではいい出来だ。全体的な内容的もキルバーンに比べこちらの方が演奏、歌ともにソリッドで、個人的にも好きなのだが、いかんせんカメラが悪すぎる。冒頭の「Heaven & Hell」なんて名演なのにカメラはピンボケのまま。2曲目からピントが合うのだが、カメラワークがあまりに工夫がないため、それでボーナス・ディスク扱いになってしまったようだ。しかし内容はいい。「Tattoo」「I'm A Boy」「Happy Jack」なんて実にうれしい選曲だ。このライブは『Tommy』のライブでの初演になるのだが、特に嬉しいのは数あるフーのナンバーの中でも私が最も好きな「Go To The Mirror」のライブが見られたことだ。1970年のワイト島のライブより出来がいい。「See Me Feel Me」のハーモニーもきれいだし、本当に堪能させてもらった。この輸入盤、2枚組でたった2500円、おまけにリージョン・フリー、これは即、買いである。日本盤もいずれ出るだろうが、まったく必要ない。
後者はフーのヒストリーである。演奏は貴重なシーンが挟まるのだが、それも一部だけで不満が残る。マーキーのライブなんて1曲まるごと見たかった。ストーリーはピートとロジャーの話を中心に当時のスタッフ、家族(ジョンの最初の奥さんが出てきたが、太ったすごいおばさんで母親かと思った...)、そしてスティングなどのミュージシャンのインタビューで綴っていく。嬉しいのは、クリス・スタンプ、シェル・タルミー、グリン・ジョーンズといった伝説の人物の証言が聞けたことだ。まだみな健在でよかった。ただし英語力がないので内容はよく分からず、こちらは日本盤を待とう。嬉しいのはボーナス・ディスクで、本編では断片で入っていたハイ・ナンバース時代のライブが2曲、丸ごと楽しめた。「Ooh Poo Pah Doo」「I Gotta Dance To Keep From Crying」の2曲で、まだ本当に初々しい4人のメンバーに釘付けになってしまう。画質もいいし、音質も十分だ。あと、メンバー4人のミニ特集?があるのだが、その中で、他のミュージシャンがまず普通にギターのコードを弾き、そして「I Can't Explain」に合わせてドラムを叩いたあと、それぞれピート風のコード・カッティングはこれ、キース風にドラムを叩けばこれ、と披露してくれる部分が面白かった。ジョンのベースの比較は出てこなかったが、フーのメンバーがいかに独創的だったのか、よく分かる。なおこちらの輸入盤はリージョン1である。
ところで私はフーのコンサートは初日の横浜アリーナに行ったのだが、冒頭のピートの「Hello New York!」のギャグには、みんなブーイングで答えて欲しかった。あれじゃあピートはすべった感じ...。でも年をとるほどピートは渋さがましてカッコよくなるな。会場の外で、ピートがよく来ていたユニオンジャックのジャケットで歩いている人がいたので、おっと思ったが、近づくと頭は見事なてっぺんハゲ。昔から好きだったんだろなー好きでハゲたわけじゃないもんな、と同じ中高年のロックファンの悲哀をちょっと感じてしまった。みんながんばろうぜ。Rock bands will come,Rock bands will go,but Rock'n'Roll is  gonna go on forever!
(佐野)


 

2008年11月20日木曜日

Radio VANDA 第 104 回放送リスト(2008/12/04)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:The Harmony Grass


1.    I Remember

2.    Move In A Little Closer Baby

3.    Happiness Is Toy Shaped

4.    What A Groovy Day

5.    Summer Dreaming

6.    My Little Girl

7.    I've Seen To Dream

8.    Good Thing

9.    I Think Of You

10. Teach Me How

11. (It Ain't Necessarily)Byrd Avenue

12. Chatanooga Choo Choo

13. It Takes A Lot Of Loving(from Take A Girl Like YouOriginal Version。未CD)

14. I Can Guarantee You Love...Tony Rivers The Castaways

15. The Grass Will Thing For You...Tony Rivers The Castaways

16. Summer Dreaming(Early Version) ...Tony Rivers The Castaways

17. Move In A Little Closer Baby(Radio Live Recording)

 







2008年11月13日木曜日

Lamp:『ランプ幻想』(IN THE GARDEN/XNHL-16001)

 

2003年のアルバム・デビュー以来、ここWEB VANDAでは新作毎に紹介してきた若きポップグループLamp(ランプ)。この度待望のニュー・アルバムが12月3日にリリースされる。 純粋なオリジナルアルバムとしては、2005年の三作目『木洩陽通りにて』から3年半振りとなるのだが、実質的なレコーディング期間が十数ヶ月に渡った成果が、こうして聴けると思うと感慨深いものである。 僕が音源をもらったのは9月半ば頃だったが、今でも手放せなく聴き続けており、聴き込む毎に新しいLampの世界に引き込まれている。とにかく良質なポップスを求めている音楽ファンは、この前文を読んだだけで直ぐに予約すべきだ。 

まず本作『ランプ幻想』の大きな特徴は、アルバム一枚を通したトータル性を強く感じさせることだろう。青春の幻想と喪失感を描いた11曲の物語の1コマ1コマが、一つの大きなストーリーへと紡がれているようである。
アルバムの幕開けとなる染谷作の「儚き春の一幕」から、永井作の「密やかに」と「夕暮れ」への流れはストリングス・アレンジの施し方を含め、コリン・ブランストーン『One Year』を思わせるトータル感が美しく心地よい。特に「儚き春の一幕」は、コーラスのリフレインがない複数のパートから構成されたクラシックのソナタ風で、作者の染谷によるとこの曲の構成は、ブラジルのミナス系音楽の影響が強いとのことだが、印象的なカウンターラインを奏でるアコーディオンの音色も相まって、画も知れぬサウダージ感を受けてしまう。

   

アルバム中最も洗練されたシティポップの「雨降る夜の向こう」は、イントロから高い完成度を誇っており、ヴァースへ掛けての不思議なムードは、スティーリー・ダンの「The Fez(トルコ帽もないのに)」もかくやと思わせるほど格別である。 またこの曲同様にリズミックで円熟した演奏が聴けるのが、後期ビートルズやポール・サイモン風の「白昼夢」だ。染谷による独特な歌詞の世界や、永井と榊原のダブル・ヴォーカルの感触は『風街ろまん』(はっぴいえんど)あたりにも近い。 Lampのカラーの一つである、女性ヴォーカリスト榊原のナイーヴな魅力は、「ゆめうつつ」や「日本少年の夏」(作詞も榊原)で聴けるだろう。オリエンタルな「二十歳の恋」も含め、このような世界観は彼女のヴォーカルなしではありえない。 めずらしくストレートなバラードで、永井がリードを取る「冬の影は哀しみ」(染谷作)は、ジョージ・ハリスンの「Isn't It A Pity」あたりがモチーフになっていそうだが、かつての「ひろがるなみだ」(『恋人へ』収録、永井作)を思い起こさせる青春の喪失感に泣けてくる。

アルバム全体を通して感じたのは、染谷と永井のソングライティングから醸し出される60~70年代洋楽ポップス(そういえば、ジャケットはトッドの『Something/Anything?』を和風にした感じだ)のgene(遺伝子)から得られるカタルシスと、日本語の美しさを秘めた繊細な歌詞の世界感だ。 また綿密に練られたアレンジと、レコーディング(アナログ録音らしい)やミキシングのレベルの高さもさることながら、永井と榊原による美しいコーラス・ワークが、Lampサウンドの核となっているのも聴き逃せないポイントである。
さて本作を聴くまで、本年度の個人的ジャパニーズ・ポップス・ベスト1は、以前紹介したマイクロスターの『microstar album』だと確信していたが、ここにきて順位が変わりそうだ・・・。
(ウチタカヒデ)

2008年11月4日火曜日

☆Hollies:『beat beat beat』(ABC/ABCVP106DVD)



先にスモール・フェイセス、キンクスで紹介したドイツのTV番組、『beat beat beat』のホリーズの登場DVDを紹介しよう。19671月の収録で、当然リアル・ライブ。4曲しか収録されていないがそのクオリティは十分過ぎてお釣りがくる。

まず「Stop Stop Stop」だが、トニー・ヒックスの12弦のエレキ・ギターに乗ってきれいにハーモニーが重なり、スタジオ・バージョンよりビートがあって楽しめる。次の「On A Carousel」の冒頭はグラハム・ナッシュのソロ、画面にナッシュが大写しになるとファンとして嬉しくなってしまう。歌いながら巧みにリフを入れるヒックスのギターにも注目。いいライブだ。そして大好きな「Bus Stop」。メロディも歌詞もいいし、名曲中の名曲だ。ライブでもクオリティは落ちず、間奏はヒックスとナッシュのツイン・リードで決めていた。それにしてもこの曲の歌詞はとても分かりやすい英語なので、このロマンチックな曲を聴かせて英語の勉強をすればきっと英語の歌を楽しく聴けるようになるんじゃないかとずっと思っていた。でも肝心な自分の子供には忘れちゃった...。最後は「Instrumental」とその名の通りのロックンロールのインスト。ヒックスのギター・ソロがカッコいい。ホリーズはテクニシャン揃いという訳ではないが、ライブでもアンサンブルがとれたバンドだなと、その実力を再認識できた。(佐野)
Beat Beat Beat [DVD] [Import]















2008年10月28日火曜日

V.A. : 『TOKYO CITY POPS』 (Happiness Records/HRBD-10) ゲントウキ田中潤インタビュー

 

70~80年代ジャパニーズ・シティポップは、一部ではいまだに根強い人気がある。WEBVANDAでは以前からゲントウキや流線形、オオタユキ、最近ではsummer softといった、現在進行形のシティポップ・アーティストのアルバムを紹介してきた。
そんな彼らを含む9組の代表作や新作をコンピレーションした画期的なアルバムが、11月12日にリリースされる。タイトルは『TOKYO CITY POPS』。 ここではその『TOKYO CITY POPS』に書き下ろしの新曲「アメーバー」を提供した、ゲントウキの田中潤氏に話を聞いてみた。

今回の新曲の話題にとどまらず、ゲントウキの名曲群について、そして定期誌VANDAの愛読者で、大のソフトロック・ファンだった(現在でも)という彼との話は尽きなかった。
U) 先ず今回の『TOKYO CITY POPS』に、新曲を提供することになった経緯を教えて下さい。


田中潤(以下:T) saigenji(サイゲンジ)さんが好きで、ライヴによく行っていまして、ハピネスレコード周辺の方々と知り合いました。
その後、コンピレーションアルバム『TOKYO BOSSA NOVA』に参加しました。それで今年の春くらいに、平野さん(ハピネスレコード・プロデューサー)からシティポップもやるから、曲を提供してってメールがあって。
U:依頼を受けてから曲作りへの着想はスムーズにいきましたか?

T:実はシティポップはやりたくなかったので、レゲエにしたいって言ったら(笑)、平野さんに「あんまりシティポップから離れてほしくない」と言われたんです。
それで、なるべくポップにメロディアスにしました。

U:「シティポップはあまりやりたくなかった」とは、いきなり問題発言だけど(笑)、それはアルバム『感情のタマゴ』までに、自分達のスタイルを極めたからということでしょうか?
田中さんのソロプロジェクトになってから、方向性が変わったという感じはしていますが。

T:ドリー(ドリーミュージック)時代は、シティポップとソフトロックの中間をやっていたような気がします。 その後『路面電車とチーズケーキ』で、一瞬フォー・リズムのロックなバンドサウンドになったけど。いわゆる歌モノって括られることには飽きたという感じはあります。
シティポップ(AORも含む)は大好きなんだけれど、青春時代がそういうのがアンチな時代だったんです。少しの差でカッコ良く感じたり、ダサく感じたり、好き嫌いの線引きがとても難しいジャンルなんです。
ホール&オーツはダメで、スティリーダンは大好きっていう。とにかく線引きがむずかしい!

U:成る程これまでのゲントウキが、シティポップとソフトロックの中間という感じは分かります。
既に「鈍色の季節」と「素敵な、あの人。」で、そのスタイルは完成されていましたからね。
では今作のレコーディング中のエピソードなどはありますか?

T:レコーディングはハピネス・スタジオでスリー・リズムを録音して、その他のダビングを自宅録音しました。

U:スリー・リズムをレコーディングする時は、事前にアレンジを固めていたんですか?
それともヘッドアレンジ的に、ベーシストとドラマーの個性を活かす余地を残した指示だけだったとか?

T:だいたいはデモで大まかにリズムパターンを打ち込んで聴かせます。
で、シンコペーションの位置が記されたリズム譜を書いて、そのグルーヴの上で自由にやってという指示の出し方です。

U:ゲントウキの久し振りのシティポップ作品として、楽しく聴かせて頂きました。
では次に、そのゲントウキの名曲群についてお聞きします。
まずはメジャーデビュー・シングルの「鈍色の季節」。
この曲は2004年頃、Lampというグループにインタビューした時、偶々メンバーに聴かせたことがあったんですが、リーダーの染谷君がいたく感動していました。
優れたソングライターである彼をして名曲と言わしめる、そんな完成度の高い曲だと思います。この曲の着想はどんなものだったんでしょうか?

T:へーそんなエピソードがあったんですね。それは嬉しいですねー。
同時に、渋谷の女子校生達に名曲っていわれない感じはありますけど(笑)。
この曲のイメージは何かをモチーフにしたような気がする。
なんだったかな、クラウデッドハウスのヒット曲「DON'T DREAM IT'S OVER」かな。
あんなバラードが書けたらなあと阪急電車に乗りながら思った、という断片的な記憶が残っています。 ただ、ずいぶん前なので、別の曲かも知れないし正確ではないです。
歌詞の方は、やはりデビュー曲なので大衆性のあるものを書きたかったんだけど、文学的に面白い表現をしなきゃあいけない年頃(25歳)だったので、普段マンガしか読まないくせに難しい言葉を探していました。
リズム録音の日、ギリギリまで書いていましたね。

U:クラウデッドハウスの「DON'T DREAM IT'S OVER」でしたか?僕はリアルタイムでアルバムを買って聴きましたよ。確か86年だから、もう22年前の曲ですね。
成る程、あの美しい曲をモチーフにしたのですね。なんだか感動しました。多くを語りたくない感じです。 「鈍色の季節」も同様に、聴く人の記憶に残る曲だと思いますよ。 このイントロのピアノが流れる度に、記憶の風景が浮かんでくるような感じです。
では次に「素敵な、あの人。」。 FMで一聴して直ぐに入手したシングルです。
この曲はソフトロック・ファンも飛びつきますよ。個人的にはジェリー・ロスが手掛けていたキースを連想させますね。 風光明媚な歌詞が軽快なシャッフル・ビートで彩られる。
今でも本当に大好きな曲です。 この曲についてはどうでしょうか?

T:この曲は渾身の一曲でした。
歌詞とメロディー、コード、基本リズムのみで言及すれば完ぺきだったと思います。ただアレンジがソフトロック、あるいはナイアガラ過ぎたかなあと。
そこは、プロデューサーの佐橋(佳幸)さんと一緒にやったんだから、ある程度予測していたことだけど、最初のデモの頃はジェリーフィッシュ的なイメージだったんですよ。
それが、ライヴでやるようになってベースのイトケン(伊藤 健太)がタワー・オブ・パワーのロッコ(プレスティア)風のベースを入れて、けっこう図太いシャッフルだったんですが、レコーディングが始まって、プリプロしていくうちに変わってきた。
自分でいうのもなんですが名曲だと思います。
歌詞は完全言葉遊びでつくりました。ほとんどパズルです。表現と物語性のつじつま合わせが大変でした(笑)。最終的なモデルは北斗の拳のラオウです(笑)。 当時インタビューではジャッキー・チェンって言っていたような気が。

U:あの曲にロッコ風のベースですか?(笑) そういったヘッドアレンジ的要素も音像全体の面白さを生んでいるんでしょうね。
この曲はドラムのフィルも結構難度が高いんじゃないですか。

T:そう、Aメロの部分ベースが超動いていた。
シャッフルだから音切ってハネ易いから意外とはまっていましたよ。
プリプロ中にああいう抜いた感じになった。
ドラムのフィルですか?難しいんですかね?? わからない(笑)
とにかくトリッキーな曲だと思います。プラス作ったやつはケンカ弱い感じが出ています(笑)

U:次は「満たされて心は」ですね。 この曲にも強烈に惹き付けられました。
個人的なエピソードですが、偶々コンビニの有線で耳にして買い物をする手が止まって、少しして我に帰って気付くってことがありましたよ(笑)。
ゲントウキのライヴでこの曲を聴いて、時間が止まるような思いを何度も体験しました。
ライヴではそういったことはなかなかないですよ。他ではsaigenjiくらいかな。
この曲ってバースはバカラック風だけど、サビでトッド(ランングレン)になる(笑)。黒人コーラス・グループにいかれた東海岸SSW風な感じがして、アル・クーパーやローラ・ニーノとか。

T:まさしくそうですね~。トッドが首吊っているあの感じですね。(『Runt: The Ballad of Todd Rundgren』)
そういえば有線でがんばったな~、この曲。
この曲は、高円寺で天一を食っている時にかかったんですよ。
誰も分かるはずないのに妙に恥ずかしくなって、早く出ようと急いで食って、レジでお金を払っている時にちょうどエンディング。
「どこへ行くのかー♪」
って、そういうオチかって、ひとり納得しました。
また、ああいう生活したいなー。 その日暮らし的な(笑)

U:田中さんは定期誌VANDAの愛読者でもあったそうですが、かなり拘り派のポップス愛好家とお見受けします。
ではそんな60~70年代ポップスやソフトロックとの出会いと、好きなアルバムやアーティスト、プロデューサーについてお聞かせ下さい。

T:出会いはやはり、一番はロジャニコですね。
あれを聴いた時の衝撃に大人になってから、なかなか出会ってないですね。
あれ以来、曲作りの趣向が劇的に変わりました。
あと、VANDAのコンピは最高でした。2枚目の1曲目「The jet song」(Groop)は、ソフロの名曲5曲の中に入るんじゃないでしょうか? 無名だけど超名曲です。
マニアックなところだとクリサリス、サンダウナーズ等サイケ系も好きでした。他にもペパーミントレインボウ、イノセンス、スパギャン、カーニバル、レモンパイパーズ、フリーデザインetc。
切りがないですね~。 もう一回集めなおしたいです。当時は学生だったんで、はした金欲しさにフリマで売ったやつとかもあるし、どこにいったかわからない盤もいっぱいある。
あと意外かも知れないですが、クレジットには興味なくて、プロデューサーという観点からはあまり聴いたことがないんです。でもロイヤレッツは好きなので、テディ・ランダッツォは好きだと思います(笑)。今はプロデューサーとかプレイヤーには興味ありますけどね。

U:『Roger Nichols & The Small Circle Of Friends』が出会いなんですね。
日本でのソフトロックの夜明けじゃないですか。正統派ですね。
VANDAのコンピとは、佐野編集長の監修と解説による『It's A Soft Rock World』シリーズですね。2枚目というと、『Sitting In A Rockin' Chair』だ。このコンピがリリースされた当時(96年)は、正かアルバム『The Groop』がCDリイシュー(2007年)されるとは思ってもみませんでしたね。
またソフトロックのCDやアルバムを集め直したいって人は、結構多いかも知れません。
是非先々大人買いで再入手して下さい(笑)。
しかし、プロデューサーやアレンジャーなど制作スタッフを基準に集めていなかったというのは意外でした。

T:『The Groop』はリイシューされていたんですか??
うわ~、アンテナは張っていないとダメですね。『Sitting In A Rockin' Chair』から10年越しの夢が実現ですね。早速注文します。
多分、当時は渋谷系の末期(笑)だったと思うんですが、僕は関西にいて、しかも高校の時は兵庫の姫路って街にいて、大阪から電車で一時間の田舎町ですが、幸いタワーレコードがあったんです。そこで入手した米国音楽やVANDAを読んでいた。 姫路で渋谷系って笑えますよね。
その後、大阪の大学に進学したので、当時、雨後のタケノコのように次々と出店した中古レコード屋に足を運んでは、買えないオリジナル版を眺めていましたね(笑)
音楽は完全にファッションでしたね。 これ聴いているおれ、カッコいいみたいな。でもそれは全然間違ってなくて、そういうところがないと逆につまらない。
ファッションをどれだけ血肉にできるかどうかで、作る人かDJかに分かれるんじゃないでしょうか。僕は前者だった。

U:ゲントウキ(=田中潤氏)の魅力は、アレンジやサウンドを超えたところで曲自体が完全に自立しているから、ギター一本でも成立しそうなところだと思うんですよね。
その点ではソフトロックの中でも、ロジャー・ニコルスやジミー・ウエッブあたりを引き合いに出したくなります。

T:ありがとうございます。
そうですね。それはあるかも知れません。

U:では最近の田中さんの活動や、今回の『TOKYO CITY POPS』リリース以降の予定も聞かせて下さい。

T:今年春にシガキマサキくんのアルバム(『ハミングムーン』)で数曲プロデュースしました。
あとは曲作りですね。rhythm Zoneと作家契約しました。全然採用されていないけど(笑)。デモは作っているのですが、全てrhythm Zoneに預けているので、採用されれば誰かの作品になるし、そうでなければ自分の作品になるといったタームですね。
自分自身の作品ですが、ゲントウキでの作風とはまったく変わりますよ。
録音物自体は完全に宅録の方向に移行するかと思われますが、いわゆるウタものの打ち込みではないです。って、リリースの予定は決まっていませんが、そのうち。でも来年は出すつもりです。ライヴも作品もガラッと一新したですね。