2003年6月14日土曜日

Steely Dan : 『Everything Must Go』 (Warner/Reprise 48435)

 

72年のデビューから80年の活動休止を経て、20年振りにリリースした前作『Two Against Nature』がグラミーの”アルバム・オブ・ジ・イヤー”を受賞し順風満帆に復活劇を果たした、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの鬼才二人組からなるスティーリー・ダンの最新作。

デビュー当時からその鉄壁さを誇るクリエイティヴなアテチュードには同業者からのシンパシーも多く、ミュージシャンズ・ミュージシャンと呼べる数少ない存在として知られる。 当然この最新作『Everything Must Go』にも大きな期待をしていたが、それを裏切らない完成度に早くも興奮気味である。
先ず本作でのサウンド・アプローチで注目すべきポイントは、収録トラック全てにおいてリズム・セクションのパーソナルが固定化された事だろう。
と言うのも、デビュー当初から二人のクリエイトする曲を表現するには高度な演奏能力を必要としていたため、74年の『Pretzel Logic』から曲毎にセッション・ミュージシャンを多く招き、その完成度を高めており、さらに膨大なバジェッド(制作費)と時間を費やして制作された77年の『Aja』と80年の『Gaucho』でその頂点を極め、ポピュラー音楽史の中でも伝説として語られていたからだ。 結果的にそうなってしまったと言うべきなのか、とにかくこの二人は曲の一小節にまでその偏狂的な拘りを見せつけていた訳だ。

説明が長くなったが、そんな過去のスタジオ・ワーク人生から一転した、昨今の多くのツアー活動も今回のフォーメーションに影響しているのだろう。 演奏自体も前作より輪郭が際立ち、さらにタイトになった感じだ。
冒頭からベッカーらしいアーシーなギター・ソロが鳴り始め、バックビートにアクセントを持つ軽快なソウル・フィールなシャッフル・ナンバー(スティーヴィの「Isn't She Lovely」もこのパターン)の「The Last Mall」。『Gaucho』でもその特徴的なプレイを披露したヒュー・マクラケンは右チャンネルのリズム・ギターを弾いていると思われる。
続「Hey Nineteen」と言うべきか、スティーリー流ジャンプ・ナンバーの「Blues Beach」は本国では、アルバム先行でシングル・カットされているご機嫌な一曲だ。こういったタイプの曲でもアレンジの隅々に仕掛け的なマジックが施されているのも彼らの真骨頂で、何度聴いても飽きさせないのには感心させられる。
スティーリー史上初めてベッカーがリードをとる「Slang Of Ages」は、決して巧いとは言えないが味のある枯れたヴォーカルを披露し、アルバムの中でも良いアクセントになっているだろう。 最も一般層に好感を持たれるであろう、「Pixeleen」の優雅なロマン派調のリフレインに身を委ねるのもまた一興だ。ここではバックヴォーカルのキャロリン・レオンハート(兄マイケルはトランペッターで、やはり前作から参加している)がフューチャーされている。
従来のスタイルに近いスリリングなジャズ・ファンク調の「Lunch With Gina」では、フェイゲンによるエキセントリックなのシンセ・ソロまで飛び出し、聴く者を興奮へと駆り立てる。 ラストのタイトル・ナンバーでは、かのジョン・コルトレーンを彷彿させる(インパルス時代)、ウォルト・ワイスコフの冴えまくるテナーのインプロとソロから始まる。この曲のブリッジ後半では、嘗てフェイゲンがジェニファー・ウォーンズに贈った「Big Noise, New York」のラインも引用されていて、熱心なファンは驚喜すると思う。

アルバム全編に渡り、シニカルなアイロニーを散りばめた歌詞も健在で、テーマも”離婚”や”テロリズム”等ヘヴィーなものから、テクノロジーを皮肉ったものまで彼ら一流の世界を構築している。
(ウチタカヒデ)

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