1998年9月28日月曜日

☆Ballroom : Preparing For The Millennium (Rev-Ola/058)


  遂に待ち望んでいた CD がリリースされた。ボールルームは、カート・ベッチャー、ミシェル・オマリー、リー・マロリー、ジム・ベルの4人のグループで、アルバム1枚分の録音はあったと伝えられながら、結局はワーナーからのシングルが1枚リリースされただけで、終わってしまった幻のグループなのだ。
ボールルームの録音にゲイリー・アッシャーが手を加えてサジタリアスの「Present Tense」に使ったのは有名な話。サジタリアス、ミレニウムもカート・ベッチャーが中心になって作った一連のスタジオ・ワークスなので、ボールルームからミレニウムまではひとつのものとして考えた方が分かりやすい。この CD のタイトルもそういう意図から来ている。さてまずボールルームの録音11曲だが、ミレニウムのメンバーでもあったサンディ・サルスベリーの2曲が持ち前のポップ・センスが発揮されて心地よい。浮遊感漂う "Magic Touch" の気持ち良さは格別。 "I'll Go Stronger" も実に爽やかだ。カートのペンによるボサのリズムの "Forever" はコーラス・ワークがいかにもカートらしく巧みでハッとさせられる。カートの美しいリード・ヴォーカルが聴きもののサイケデリックな "It's A Sad World" 、この頃の流行とも言ってもいいノスタルジックな "Crazy Dreams" 、カートがプロデュースした初期のアソシエイションそのものの "You Turn Me Around" と、同じアプローチのカートの "Love Fatal Away" 、サジタリアスのヴァージョンの原型 "Would You Like To Go" "Musty Dusty" 、さらにシングル・カットされたフォーク・ロック・タッチの "Spinning~" と最もサイケデリックな "Baby,Please Don't Go" (シングルと違ってエンディングのガラスの割れる音が3回多い)と、どれも完成度は高く、ボールルームの実力を十分に味わうことが出来る。続いてボールルームからミレニウムへ続くデモの8曲へ移るが、サジアリアス、ミレニウム名義で何度も録音されていた "Another Time" のカートのギターの弾き語りによる美しいデモ・ヴァージョンにまず聴きほれてしまう。サンシャイン・カンパニーにカートが提供した "If You Only Knew" のデモは、サンシャイン・カンパニーのヴァージョンなど足元にも及ばない素晴らしさで、こんないい曲だったっけと驚かされた。 "Keeper Of The Games"  "The Island" のデモはサジタリアス、ミレニウムの原型で印象が同じだが、弾むようなバックトラックに乗った "I'm Not Living Here" はサジタリアスと印象が異なっている。 "Believe You" は陰鬱なメロディ・ラインを持ちいかにもカートのナンバーだが、 "Sunshine Today" はカートの曲とは思えない、まるでサンディが書いたような流麗なポップ・チューンで、それぞれ違うカートの顔を見せてくれた。シンプルなデモ "It's A Sad World" はきれいなチューンだが、カートのピアノの弾き語りというのは珍しく、新鮮な印象があった。全22曲、こんな凄い音源発掘の CD にはそうそう出会えるものではない。Rev-Olaレーベルから VANDA で紹介して欲しいと直接アプローチがあったが、こちらこそRev-Olaの労力に感謝したい。(佐野)


 



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