2010年2月25日木曜日

☆Pilot:『From The Album Of The Same Name』(RPM/RETRO857)☆Pilot:『Second Flight』(RPM/RETRO858)☆Pilot:『Morin Heights』(RPM/RETRO859)

紹介が遅くなってしまったが、大好きなパイロットのファーストからサードまでが、全てボーナストラック入りでリイシューされたので紹介しよう。
アルバムについてはファースト、セカンドはキャッチーでポップで歯切れがよくて、ポップ・ロックの最高峰、ソフトロックの好きな人なら必ず好きになるキラーアルバムだ。ただパイロット自体に関しては特集もしているし、同じ事を何度も書くことになるので、ボーナストラックのみについて記すことにしたい。ボーナストラックは4曲ずつあり、まずファーストから。「Pamela」という初めて聴く曲は、デビッド・ペイトン=ビリー・ライオール作のパイロットの未発表デモで、ポップさが乏しいフォーキーな1曲。デビュー前のパイロットがScotch Mistの名前で出したシングルで、A面はスチュワートが歌った「RA-TA-TA」という曲(くだらない曲だとか。ただこれはスチュワートのソロ)なのだが、バックはペイトンとライオールが担当したらしい。B面が必要だというのでこのパイロットのデモを出したそうだが、せっかくならA面も入れて欲しかった...。最もレアなシングルとわざわざ書くんだから。次は名曲「Magic」のデモ。まだサウンドは薄く、テンポも若干遅いが、十分ポップでとても楽しめた。そしてシングルのみリリースの「Just Let Me Be」のデモ。もともとB面用なので地味な印象の曲だが、ストリングスが入らず、サウンドとコーラスが薄いというのはすぐ分かる。そしてラストの「Cold Stories」は未発表曲でこの曲のみペイトンの単独作。アルバム用のつなぎ用には使ってもよさそうなちょっとポップなデモだった。セカンドアルバムのボーナストラックは全てデモ。「You're Devotion」はリードギターが欠落し、バックコーラスも薄い。逆にロックっぽい。「Love Is」はテープ状態が少し悪いかな。少しスローテンポだが、逆に力強く聴こえてなかなか良い。名曲「January」はデモながらとてもキャッチーでパワフルな素晴らしい出来栄えだ。ストリングスは入らないし、完成ヴァージョンのバッキングのアコースティックギターはよく聴こえないが、ハーモニーも十分だし、ヴォーカルも力強い。「Lady Luck」はアルバム未収録のA面曲のデモで、こちらはストリングスや管楽器が入らないことが、オフィシャルヴァージョンのドラマティックな雰囲気が感じられず、逆にああ、デモヴァージョンだなと感じてしまう。セカンドの4曲はこの曲のみ作者がペイトンで、他の3曲のライターはライオール。最後はサードアルバムのデモ。この時にはライオールがグループを離れソロになっていたので、曲は全てペイトンの曲だ。内、「Penny In My Pocket」のみサードアルバム収録曲で、バッキングが少なく、荒削りな分、パワフルな印象がある。残りの3曲は未発表曲だ。「Scorpio」はなかなか味わいのあるメロディを持つ佳曲で悪くない。「Goldmine」はマイナー調のナンバーだが、アルバム用なら使えるレベル。「When The Sun Comes」はクリアーなサウンドのビート溢れるナンバーでこれはロックナンバーとしていい出来だ。やはりサードはトータルで聴いてライオールが離れたことが大きい。ペイトン一人で空回りしている印象だ。最後にひとつ苦言。せっかくボーナストラックを作ったのだから、アルバム未収録曲の「Lady Luck」「Just Let Me Be」のオフィシャルヴァージョンと「Are You In Love」、そして「Just A Smile」の2回目のシングル化の時の別ヴァージョンをなぜ入れなかったのか。あとたったの4曲だったのにね。『A's B's & Rarities』のCDで聴けるのでお忘れなく。(佐野)

パイロットセカンド・フライトMorin Heights







 


2010年2月19日金曜日

Radio VANDA 第119回放送リスト(2010/3/4)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。
Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集:Neil Sedaka Part2 1973-1975

 

1.Love Will Keep Us Together

2.Alone In New York In The Rain

3.The Other Side Of Me

4.Caribbean Rainbow

5.Our Last Song Together

6.The Immigrant

7.Laughter In The Rain

8.Love Ain't An Easy Thing

9.Endlessly

10.Your Favorite Entertainer

11.New York City Blues

12.The Hungry Years

13.Goodman Goodbye

 

 

 

 




2010年1月23日土曜日

manamana:『空のとびかた』(HAPPINESS RECORDS/HRAD-00041) 洞澤徹インタビュー


 ジャズヴォーカリストの伊藤ふうかと、作編曲家でギタリストの洞澤徹が2005年に結成したアコースティック・ユニット"manamana(マナマナ)"が初のフルアルバム『空のとびかた』をリリースする。2008年のミニアルバム『光る石』からサウンド的にも幅を持たせ、味わい深くなった今作は、これからの季節に聴くのにぴったりのアルバムかも知れない。
 ここではメンバーでアルバム全曲の作編曲を手掛けた、洞澤氏に話を聞いてみた。

ウチタカヒデ(以下U):先ず初のフルアルバムを制作するに当たって、全体的なテーマにしたのはなんでしょうか?



洞澤徹(以下H):特にはっきりとしたテーマはありません。あえて言えば「はじめまして、manamanaです」といった挨拶的な感じでしょうか。前作は完全自主制作で流通もごく一部のみでしたので、今回が全国的には名刺代わりになるのかなと。
昔からお世話になっているハピネスレコードからmanamanaで一枚出さないかとのお話をいただいたので、今までの自信曲をさらにブラッシュアップしたものと、できるだけ多くの人に受け入れられつつ、今やりたいと思う曲を数曲作り、manamanaらしさを全面に出すために仕上げようと思いました。


U:なるほど、では率直に言って、manamanaらしさとはどういったことだと思いますか?
結成時からヴォーカルのふうかさんとのコラボレーションで得られた世界観とは?

H:manamanaらしさとは、僕にとって伊藤ふうかの歌の魅力が一番伝わる形のポップスだと思っています。僕はコラボレーションするヴォーカリストにより曲やアレンジをかなり変えていくのですが、彼女の場合、言い方は悪いかも知れませんが、どこか枯れた感じというか、暖かさの中にある寂寥感を感じるので、それをうまく楽曲で活かすのが「らしさ」かなと思っています。
得られた世界観は"暖かさと寂寥感の狭間に揺れるノスタルジー"
ん~難しくなっちゃった。言葉が下手なものですみません(笑)


U:前作からサウンド的にもカラフルになっておりますが、曲作りやアレンジをする上でのヒントになったポイントや苦労話などをお聞かせ下さい。

H:いろんな曲を聴いて、アレンジや曲作りの参考にしましたが、フレーズや音色そのものを引用するというよりは、その曲を聴いて頭に残った残像の雰囲気を大事にインプットしました。アルゼンチン音響派のアーティストとかよく聴いていたような気がします。
参考にしたのはやはりアレンジそのものより、ちょっとした肌触りみたいなもの。
難しくならないように、聴き易さというポイントを重点に置いて。
本来アレンジに必要以上に凝るのはあまり好きじゃないです。歌がよく聴こえるアレンジは好きだけど。それと違う例としてはハピネスの平野さんと飲んでいるとき、「すごくいいチェリストがいるよ」って言われて、僕もチェロの音色が好きだから「じゃ、チェロが入るアレンジをやろうかな」というノリもなかにはありました。


U:アルゼンチン音響派というとファナ・モリーナやフローレンシア・ルイスですか。音像の感触には独特なものがありますね。
また外部スタジオのエンジニアである、平野さんからのヒントも興味深い話です。
今回ベーシスト(ウッドベース)とドラマーが参加した経緯も同じ様なエピソードですか?

H:ファナ・モリーナやリサンドロ・アリスティムーニョという人の「39°」というアルバムをよく聴きました。
ベーシストとドラマーも平野さんに紹介していただきました。ハピネスでは他のアルバムでもバリバリ録音されている方たちですので、腕も達者ですがこういった曲の雰囲気を理解してもらうのが早かったです。


U:作詞を担当している、ふうかさんとは分業作業だと思いますが、洞澤君から特にサゼッションしたことはありましたか?

H:基本的にデモを聴いてもらって、湧いたイメージで自由に詞を書いてもらいます。
言い方は悪いですが「丸投げ」です。特にできあがったものを「ここ変えたら?」ということもないですね。でも彼女は自分なりにとっても考え抜いて詞を書いてくる。
作詞の経験はmanamanaで初めてらしいですが、アーティストが考え抜いて出してきた詞はそれがすべてだと思います。一度くらいデモテープ渡すときに「この曲はこんな世界観でいったらどうだろう?」くらい言ったことはありますが。


U:レコーディング中のエピソードなどは?
それがアルバム作りに影響を与えたことなどはありましたか?

H:今回も前作に続き大枠は自宅録音なので、自分のパートにおいては気に入らなかったら延々録り直し、録音しながらミックスもまとめて、ミックスも延々直すといった宅録にありがちな延々地獄に一度ははまりました(笑)。
ミックスまでやるというのは大変ですけど(苦手意識もあり)、最初から自分でミックスダウンまで想定した段取りで進められるし、違ったらいつでも戻ってやり直しもできるのがよいところですね。おかげでイメージ通りにはなったと思います。
少し機材の話をしますと、アルバム制作のためにマイクを新調しました。楽器屋で5、6個マイクを並べて同行したふうかさんにサビのフレーズを歌ってもらい、一番しっくりきたAKGのC411Bというマイクを選びました。ちょっと高かったけど、このマイクのおかげでクオリティは確実に上がったと思います。ひとつでも新しい機材を用いることによってモチベーションも上がるし、新鮮さもできていますからやっぱり作り手にとって大事だと思います。商業スタジオのように一通りのマイクが揃うような環境ではないので、一つの買い物に気合いが入りますが、そこで愛せるものに出会うと作品も変わると思います。

U:アーカーゲー(AKG)のコンデンサーマイクですね。ヴォーカリストの声の特性に合わせて選ぶのは重要ですよね。その出費も報われると思います。
収録曲について少しお聞きします。「あの場所へ」で、メロディが下降して2トラックのコーラスが入るところが凄く素晴らしいんですけど、この曲のヴォーカルトラックはいくつ使っていますか? 曲毎で異なると思いますが、コーラスアレンジやヴォーカルトラックの構成などはどのように進めていますか?

H:「あの場所へ」のコーラスは同じハモリを2本重ねてプラグインで広げてあります。
なので、意外に少なく3トラックです。ヴォーカルトラックの構成とコーラスアレンジはすべて僕が考えてふうかさんに伝えます。
ヴォーカルテイクのディレクティングは、基本的にふうかさんを中心にやってもらって、気になるところは僕が意見を言う感じですね。


U:「雨音」の途中デュエットしている男性ヴォーカルはどなたでしょうか?
またこの曲の間奏や「微睡日和」の弦楽器はウクレレですか?非常に効果的だと思いますが、やはり洞澤君がプレイされているんでしょうか?

H:「雨音」のデュエットは恥ずかしながら僕です。歌は得意ではないのですが、サビの高揚感が欲しくて、ふうかさんの声に重ねてみたら結構悪くないなと思ったので録音してみました。「もしも」の2サビでも同じようにユニゾンで歌を重ねています。
レコーディングでは声の混ぜ具合で多少苦労しましたが、いまの録音ソフト(Protools)はいろいろ便利な機能があるので助かりました。とくにピッチ系(笑)。
ウクレレも僕が弾いているんですが、指摘していただいて素直に嬉しいです。自分でも気に入っているんです。思い出しました、「雨音」の間奏は某テレビ局のウェザーニュースのBGMを聴いてインスピレーションが湧いたんです。
そういえばウクレレは「微睡日和」用に購入し、一生懸命コードを覚えました(笑)


U:タイトル曲の「空のとびかた」は、ふうかさんのヴォーカルをよく活かした音域幅ではないかと思いますが、職業作曲家でもあるということで、ヴォーカリストの個性を活かす作曲方法で心掛けていることはなんでしょうか?

H:ヴォーカリストの個性を活かすという意味では、ユニットで作曲する者にとってもとても勉強になります。最もヴォーカルのおいしいところはどこかを探って、ここ一番で使うのが楽しい。しかしながらmanamanaの場合、ある程度こういうふうに歌うだろうと想定して作曲はしますが、ふうかさんがおもいっきり自分の解釈(僕の想定外)でデモを歌ってきたりすることがあるので面白い。それが素晴らしいときがあります。
ですから最近心掛けているのは「決めてかからない」ということでしょうか。もちろん仕事で違う女性ヴォーカルの方と仮歌録音するときは、イメージがかっちり決まっているので細かく指示しますが。


U:最後にリリース後のライヴスケジュールなどをお願いします。

H:直近のライブ予定は、1月28日に渋谷の「青い部屋」、2月11日にやはり渋谷のdressで演奏します。それ以降は詳細決まり次第ブログにアップしますので、チェックしていただけたら嬉しいです。
今後は地方でのライブも考えていこうと思っておりますので、是非イベンターさんはお声を掛けて下さい!

(インタビュー設問作成、本編テキスト:ウチタカヒデ