2010年7月13日火曜日

☆Beach Boys members:『The Boys Of Summer』(Endless Summer Quarterly/ESQBBCD2010)

ビーチ・ボーイズの最強のファン・サイト、Endless Summer QuarterlyCD付ヴァージョン会誌はいつも大注目だが、今回の2010年夏号(issue88)はいつもにも増して豪華な内容になった。
まずはCDにはなっていない前述のアルのニューアルバム『A Postcard From California』から「Drivin'」と「Honkin'  Down The Highway」が収録されている。CD化というわけだ。そしてHallmarkでしか売っていなかったので日本に輸出してくれなかったビーチ・ボーイズのライブ・アルバム『Songs From Here And Back』の中だけに収録されていたブライアンの名作「The Spirit Of Rock & Roll」と、マイクの新作「Cool Head,Warm Heart」が、しっかりと本コンピに収録されていたのも注目だ。他はブライアン1曲、カールはBeckley-Lamm-Wilsonのアルバムから2曲、デニス1曲は既発のアルバムより。このあたりは当然、持っているものと判断して省略させていただく。その中でマイクは未発表の「Love Like In Fairytales」を提供。純粋な意味でこの曲が唯一の本コンピでしか聴けない曲だ。マイク作とは思えないヴォーカルの、穏やかでアコースティックな佳曲。先のマイクの曲と合わせ、予定されている『Mike Love.Not War』(冗談ではない。これがタイトル)用の曲と紹介されていたが、本当に出るのだろうか...Itunesという手もあるので、それなら出るかも。あとはデビッド・マークスの曲が3曲、ジャン&ディーンの曲が1曲、収められた。それにしても、レコード会社から許諾をもらい、メンバーからは新作を提供してもらうこのEndless Summer Quarterly、本当に凄いサイトだ。下記のサイトで入会してもらおう。会誌(会誌の内容も凄い!)3回分で$38PayPalで払えるから、あっという間に手続きは終わる。(佐野








2010年7月12日月曜日

DANIEL KWON:『DANIEL KWON』(MOTEL BLEU/MBRD022)

 

  DANIEL KWON(ダニエル・クオン)はコリアン・アメリカンのシンガーソングライターで、本作は今月14日にリリースされるファースト・ソロアルバムである。
  プロデュースをLampの染谷大陽がプロデュースしたということで早速紹介したい。

  本作は昨年韓国BEATBALL RECORDSからリリースされた『LAYIN IN THE CUT』を国内正規流通仕様として、タイトルを『DANIEL KWON』に変えジャケット・デザインも一新したものである。 ダニエルは以前より交流のあったLampのメンバーの誘いで来日し、現在も日本をベースに活動している新鋭アーティストで、レコーディングは2007年の夏に行われている。 同時期Lampは『ランプ幻想』の制作中で、そちらにダニエルはバッキング・ヴォーカリストとして2曲に参加している。 彼がクリエイトする音楽の特徴は、ポップ・ミュージックの中に独特なコード及びスケール感覚を奇妙に同居させていることだろう。
  フェイヴァリット・アーティストにエミット・ローズと同列にジョン・フェイヒィを挙げているのも頷ける。なにより超拘り派のLampがメンバー全員で彼をバックアップしていることで、その才能と可能性は計り知れるだろう。 またダニエルとLampはChildrenというユニットも組んでおり、双方単独のサウンドとは異なる煌めきを放っており、そちらの作品の正規リリースも待ち望んでいるのだ。


  冒頭の「A Tiger's Meal」はフェイヒィ風のフィンガーピッキングのアコースティックギターの弾き語りを中心に、60年代中期(ビートルズ、トラフィック、ドノヴァンetc)のサイケデリックなコーラス・ギミックをちりばめて一種のトリップ感を高めている。成る程彼の歌声はフェイヴァリットに挙げるエミット・ローズに似ている瞬間があり、ソフトロック・ファンにもアピールしそうだ。
  続く「Against the Grain」は『Runt』、「Hope is for hell to Decide」は『A Wizard, a True Star』の頃のトッド・ラングレンをそれぞれ彷彿させるソングライティング・センスだが、ギミックのうっちゃりも一筋縄ではいかない。
  ラストの「Quietly」がアルバム中最もアレンジ的に完成度が高そうだが、後半ジョン・レノンの「I Want You (She's So Heavy)」のように混沌とした演奏とホワイトノイズから一転、カットアップされたピアノ主体の別パートが挿入され、狐につままれた様なエンディングを向かえる。
  アルバム全体的に未整理な部分(意図的だろう)があるので、本作をプロデュースした染谷率いるLampの諸作の完璧さとは別次元の作品であることは十分考慮すべきだろう。
  ただアーティスティックなダニエルの個性を理解した上で聴くと、非常に面白いアルバムであることは間違いない。こういうアーティストこそ、定石の上で成り立つ洗練さだけを追求した昨今のシーンへ一石を投じる存在として必要なのである。VANDA読者では特に60年代ソフト・サイケ系アーティストが好きなファンに大いにお勧めできるので是非チェックして欲しい。
(ウチタカヒデ)


2010年7月7日水曜日

JIMMY WEBB:『JUST ACROSS THE RIVER』(E1 Music/E1ECD2068)

 

バカラックやブライアンと並び称されるソングライター兼アレンジャー、そしてシンガーのジミー・ウェッブのニューアルバムがリリースされた。
96年の『Ten Easy Pieces』同様に主はセルフ・リメイク集(+新曲1曲)であるが、今回は豪華アーティストのフューチャリング・ヴォーカルでの参加と、『Angel Heart』(82年)以降ウェッブ作品に貢献してきたフレッド・モーリンのプロデュースによるナッシュビル・レコーディングが功を奏し味わい深い名作となった。

スタジオ・アルバムとしては『Twilight of the Renegades』(2006年)から4年振りとなるが、前作は新録4曲(国内盤は5曲)と80、90年代からの未発表曲8曲を編集した変則的体裁だったため、トータル的なニューアルバムとしては『Ten Easy Pieces』以来実に14年振りとなる。
今作でまず目を惹くのはフューチャリングされたゲスト・アーティストの豪華さだろう。
以前からウェッブが楽曲提供している盟友のグレン・キャンベルをはじめ、ウィリー・ネルソンやリンダ・ロンシュタント、ポピュラー界ではビリー・ジョエルやマイケル・マクドナルド、ジャクソン・ブラウンといったビッグネームの名前も見られる。また70年代ウエストコースト・ロックを支えたJ.D.サウザーや元ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーなど通好みのアーティストから、カントリー系シンガーソングライターのヴィンス・ギル、現代フォーク界の女王と称されるルシンダ・ウィリアムズが一挙に参加しているので、アルバム1枚を通してウェッブ・ソングの新たな魅力を発見出来る。これも偏にレジェンド・オブ・ミュージシャンズ・ミュージシャンたる、ウェッブの才能と人望の賜だろう。



リズムセクションのレコーディングとオーバーダビングはナッシュビルの複数のスタジオでおこなわれ、マスタリングはニューヨークのSterling Soundで名匠グレッグ・カルビが手掛けている。
2001年にナッシュビル移住後ロブ・ガルブレイスの『Too Long At The Fair』など名作を手掛けているフレッド・モーリンの元、現地ミュージシャンによるバンド・アンサンブルはナッシュビルの土地の音というべき芳潤な響きを持って、このアルバムのサウンドの要となっている。
ビリー・ジョエルとヴォーカルの掛け合いをする「Wichita Lineman」は、マンドリンの刻みにスティールギターやドブロ、フィドルが有機的に絡み合うサウンドが絶品で、特に思い入れのあるウェッブ・ソングで新たな感動を得ることが出来た。
キャンベルとの再演が嬉しい「By The Time I Get To Phoenix」は、漂うウーリッツァーとアコギの刻みにハモンドオルガンとアコーディオンが空間の奥行きを演出し、スティールギターがアクセントを加える。やや長いフェイドアウトで燻し銀のギターソロを弾くのがマーク・ノップラーというのも憎い演出で、最良のロード・ソングとして蘇った。そのノップラーは「The Highwayman」でヴォーカルを掛け合っており、ギタープレイ同様に円熟の歌声を聴かせる。アレンジ的にはティン・ホイッスルによるアイリッシュ・サウンド風のコーダが非常に美しい。
最新のウェッブ・ソング「Where Words End」は、歌詞の一節「JUST ACROSS THE RIVER」がアルバムタイトルにもなっているキー・ソングで、曲調は今回リメイクされたクラシック群に比べ洗練されているが、じわじわとフックへ登りつめていくコード転回など随所にウェッブらしさを感じさせる。ここではマイケル・マクドナルドの深みのあるハスキーヴォイスのコーラスも聴きどころだ。
ニューレコーディングされたウェッブの名曲群は、どれも聴く人を選ばないエヴァーグリーンという言葉が似合う曲ばかりなので、是非とも多くの音楽ファンに聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)