2005年3月18日金曜日

☆One World Project (Various):『Grief Never Grows Old (DVD Version)』(One World Records/OWRD1)

 94年12月26日のインド洋大津波は30万人という未曾有の死者・行方不明者を生んだが、その被害者救援のチャリティ・レコードが、この CD だった。
 ブライアン・ウィルソン、クリフ・リチャード、バリー&ロビン・ギブ、ボーイ・ジョージ、スティーブ・ウィンウッド、ゲイリー・バックレイ、ジョン・アンダーソンなどが歌い、ビル・ワイマン、ケニー・ジョーンズ、ゲイリー・ムーア、リック・ウェイクマンらが演奏を、そしてジェフリー・フォスケットらがバック・コーラスを受け持った。
この CD はSingle Version,Orchestra Version,Choral Versionの3つのテイクが収められた CD がリリースされていて(OWR1) そちらは既にお聴きになったことだろう。
哀調が漂う美しく、悲しい曲だ。ただこの手の多数参加のチャリティものは映像を見ないと誰がどのパートを歌っているのか分からず、消化不良の思いが残ってしまう。
ところがちゃんとこのチャリティを企画したイギリスでは DVD ヴァージョンが出ていたのだ。
それぞれの歌っているパートがはっきりと分かり、これでこそ価値がある。ブライアン・ウィルソンは当然ながら予想通りの場所で歌っていた。
ケニー・ジョーンズがシンバルを叩いている場所が見られたり、よく目をこらしてみよう。
DVD のOrchestra Versionで、ストリングスは子供達の演奏だったのかと分かり、驚かされた。
そして DVD のみのVideoと題されたパートは、曲をバックにクリフ・リチャードらのインタビューで綴るインタビュー集。
イギリスなのでPAL、購入は amazon.co.uk、送料込みで7ポンド(1400円)程度だ。(佐野)
   

                                 

2005年3月9日水曜日

サノトモミ:『サイレント・フライト』(APRIL RECORDS ALCP-2006)


 サノトモミはnoanoaや流線形といったシティポップ・グループでゲスト・ヴォーカリストとして活動していたシンガーだ。
 本作は彼女の初ソロ・アルバムで、元流線形のキーボーディストである林有三(アレンジャーや角松敏生のバッキング・メンバーとしても活躍している)が作曲、アレンジも含め全面的にプロデュースしている。

 所謂AOR的方法論を活かしたサウンドは時としてBGMと流される一面も内在している訳だが、ここでは曲作りの根幹たるクオリティーの高いソングライティングにより、それをクリアしている様に思う。またサノのフラット気味なヴォーカルもサウンドに上手く溶け込んでおり高度にプロデュースされた賜物といえるだろう。 
 正にメロウ&スイートなタイトル曲をはじめ、フィリーソウル的ドラミング(アール・ヤング風)が冴える「追憶の鏡」等聴きどころは少なくない。林が弾くフェンダー・ローズやアナログ・シンセの音色は元より、スラップ・ベースのアクセントやギターのエフェクター処理からエンジニアリング・センスに至るまで相当70年代後半を意識しているのが全然古さを感じさせない。 
 それもジャンルが細分化された現代東京の音楽シーンの在り方だと納得するも、あの時代への憧憬を捨て去る事が出来ない世代にも大いにお薦め出来る作品である。
(テキスト:ウチタカヒデ

2005年3月4日金曜日

THE GOLDEBRIARS:『THE GOLDEBRIARS' STORY "WHATEVER HAPPENED TO JEZEBEL?"』 (CD-Rom Book:Apple Core/0412RK070)


 書籍『ソフトロックA to Z』で、その唯一無二のコーラスアレンジや革新的なサウンドについて語られてきたカート・ベッチャーであるが、最近では『Chicken Little Was Right』がリイシューされた事が記憶に新しい。
 今回紹介する作品はカートが学生時代、最初に結成したグループであるTHE GOLDEBRIARS(ゴールドブライアーズ:63年2月~65年5月)に関するCD-Rom・Bookだ。 

 著者はカートと共に同グループのメンバーである、女性ヴォーカリストのドーティー・ホルムバーグその人で、今では数少ない生き証人として当時の興味深いエピソードがドーティーの目を通して描かれる。
 中でも見物はストーリーに合わせた当時の珍しいスナップだろう。(幼少時のカートのスナップ等も収録されている!)勿論貴重なジャケットをはじめ、ライナーノーツや歌詞も掲載されているので資料性も極めて高い。
Bookは192ページのPDF形式で英語版と日本語版の両ヴァージョンが収録されているのだが、最大のボーナスとして貴重なライヴ映像がMPEGファイルとして付く。
 内容は当時ABCが放映していたフォーク・ファン向けの番組"フーテナニー・ショー"に出演した時の映像で、収録は64年1月21日となっている。ゴールドブライアーズはトラッド曲の「Saro Jane」を演奏しているだが、ギターを弾きながら歌うカートの姿がばっちり確認出来る非常に貴重なものだ。
 その他にも66年録音で未発表となったドーティー作の「Hopscotch」がWavファイルで収められている。

 CD-Rom・Bookという特殊なスタイルながら、カート・ベッチャーをこよなく愛するファンには必携の作品と言えるだろう。
 ドーティー・ホルムバーグ(DOTTI HOLMBERG)のオフィシャルウェブサイトにて、paypal支払い等で購入出来るので、興味を持ったソフトロック・ファンはアクセスして欲しい。
 最後に、このTHE GOLDEBRIARSがその短い活動期間に残した『The GoldeBriars』『Straight Ahead! The GoldeBriars』の2作品と、録音されたが未発表である幻の3rdアルバムが早期にリイシュー化される事を心から願うばかりだ。
(テキスト:ウチタカヒデ