2016年6月9日木曜日

☆Kinks:『Everybody's In Show-biz(Legacy Edition)』(RCA/88875112367)


キンクスのLegacy Editionだが、3年経ってようやく1972年の傑作『Everybody's In Showbiz』がリリースされた。さすがのLegacy EditionだけありCD1枚増えて2枚組、2枚目のCDにはオリジナルのリリースでは197233日のライブ中心だったが、ボーナスの2枚目には1日前の32日のライブが入り、他に未発表曲とか未発表別テイクなど17曲が収められた。ただし1998年リリースの1枚もののボーナストラックの2曲は33日、同じ曲がこのLegacyにもあるが32日のライブなので、勘違いして処分しないこと。さてアルバム本体の内容は、キンクスファンなら知らぬ者などいないので省略し、ボーナスディスクの内容のみ紹介させていただく。ただ一言、自分のスタンスとして書いて置きたいが、一番売れなかったこのRCA時代こそキンクスのベストな時期で、RCA時代が最も好きと言う事がキンクスファンの証みたいな事を言う人がいるが、それはただのその人の趣味と思うこと。自分が1番好きなのはPye、次はRCAの後のAristaで、RCAはその後だ。このアルバムの後の『Preservation』シリーズは楽しいが、マニアック過ぎ。1曲丸々女性シンガーに歌わせるとかやり過ぎで、覇気もない。さて話は戻ってディスク2。冒頭の「‘Til The End Of The Day」は以降と同じニューヨークのカーネギーホール197232日のライブで、2006年版のボーナストラックに入ったのに比べ冒頭に16秒の3コードを搔きならずオープニングが多く入っている。後の曲を途中で止めるアレンジは同じ。続く「You’re Looking Fine」は嬉しや、Pye時代のカバーだが、アレンジを変えていてそれが楽しい。ベースラインをまったく変え、デイヴの激しいギターソロがこの曲をブルースからロックに変えた。「Get Back In Line」もPye時代。ここでもアレンジを変えていて全体的にスローで、特にイントロはオリジナルがアルペジオのギターのバックで歌うところがほぼア・カペラ(微かにギターは聴こえるが)だった。RCA時代の前作収録の「Have A Cappa Tea」は前作より1分近く短くアレンジしているが曲の楽しい雰囲気は同じ。ただイントロがオリジナルはバックがピアノだが、このライブではあえてギターのコード弾きのバックからはじめている。「Sunny Afternoon」はもちろんPyeを代表する名曲。基本的な進行は同じだがイントロにあの特徴的な下降するベースをあえて外し、フェイドアウトするエンディングはコミカルなピアノで終わらせる。「Muswell Hillbilly」はライブ同士でオリジナルが33日、こちらが32日で、イントロがメンバー紹介になっている構成は同じだがなぜかボーナス盤の方はちゃんと歌が始まるコードに合わせてアドリブの演奏をしているが、一日後のオリジナル盤の方はアドリブのコードがバックでスムーズではない。歌が始まるとカントリーロックで前作と同じだ。「Brainwashed」も同じライブ対決?だが、こちらはミックスでオリジナル盤の方はオルガンの音が目立つが、ボーナス盤ではオルガンが小さくミックスされギターが大きく聴こえるのでロック色が強い印象になった。「Acute Schizophrenia Paranoia Blues」も同対決。オリジナル盤のライブではイントロと歌の初めでホーンとリードギターが同時に鳴ってうるさい印象だったが、ボーナス盤の方ではホーンを小さくしてリードギターがよく聴こえるのですっきりとした。「Holiday」も同対決。オリジナル盤のライブの方は後半若干シャウト気味に歌う。ボーナス盤のライブはミックスだと思うが冒頭の1番のバックはピアノ、2番ではホーンがすっと入ってきていい感じに仕上げていた。「Alcohol」も同対決。これは大きく違い、ボーナスのライブはオルガンがバックで鳴る中、30秒近い謎の曲(聴いたことがあるのだがタイトル不明)をソロで吹く。その後もオルガンとギターのコードがなってレイのセリフが入っているので歌は145秒から始まる。オリジナル盤のライブは冒頭からオルガンで15秒から歌が始まったのでトラックの尺が1分半近く違っていた。「Complicated Life」でやっと32日のみのライブになる。オリジナルはRCAの前作だが。印象的なラリラリラーラーのメロディ部分を1回目の後56秒後に2回目とタイトに編集、オリジナルはその間が150秒と長いので全体的にその分長尺となった。ライブの方が、編集がうまい。「She’s Bought A Hat Like A Princess Marina」はまたライブ対決だが1998年版のCDのボーナストラックが相手となる。この曲はPye時代の曲でオリジナルは静かにピアノで始まり最後テンポアップして激しく終わるのだが、どちらもイメージを忠実に、ライブを行っていてその差はほとんどない。そしてここまで続いたライブの終わりは32日のみの「Long Tall Shorty」。このデイヴ・デービスが歌う曲はなんとデビューアルバムからという驚きの選曲。当時のギターのリフは、最初はピアノが担当、そしてオルガンに変わるとデイヴのへヴィなギターが活躍、途中はレイも歌っている。これは聴きものだ。そしてこのディスク2の目玉、未発表曲の「History」だ。レイ・デービスが作った曲で、ヒット性のあるキャッチーな曲ではないが、心惹かれるメロディがある佳曲でボツはもったいない。197331日に録音された曲だ。「Supersonic Rocket Ship」は197229日に録音された初期ヴァージョンで、322日と530日録音されたものがこのオリジナル盤の方に収録された。いわばスタジオ対決?である。完成版の方が、マリンバがずっときれいに鳴り続けておりホーンの入り方もきれいで、それに比べ本ディスクの方が全てに少しずつ粗削りだ。でも基本的なアレンジは完成している。またsupersonic rocket ship2回目のサビは222秒だがオリジナルはそのままAメロを繰り返して終わるが、ボーナスの方は2Aメロを繰り返し322秒に3回目のサビがありAメロの繰り返しとなって終わるので一分近く長い。次の「Unreal Reality」のスタジオ対決でオリジナル、ボーナスとも収録が197261日なので編集の差となっている。完成版は歌が全部終わったあとすぐにスローのパートで終わるが、ボーナスの方はしばらく歌がリフレインした後にスローパートになるので26秒長い。最後は「Sophisticated Lady」というロックのインストだが、これは後の『Preservation Act2』の「Money Talk」のオケの原型で1973322日の録音で、前述のトラックにも1973年録音があり、本盤発売後なので本当はおかしな話なのだが、次作『Preservation Act1』の録音が19733月からなので、ギリギリ本盤に収録されたと思われる。(佐野邦彦)
 

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