2017年4月14日金曜日

手塚治虫の連載当時のままのカラー復刻の第一人者である国書刊行会の「手塚治虫カラー作品選集全3巻」が少女マンガを集めた『こけし探偵局』で完結した



国書刊行会の「手塚治虫カラー作品選集」全3巻が完結した。大半は講談社の「手塚治虫漫画全集」(以下「全集」)の中で読めるが、手塚の作品、特に昭和30年代の連載は多くの4色フルカラー、2色のページが多く、また全集で変えられてしまった部分があるのでこうやってカラーで読まないとその素晴らしさが分からない。みな111000円するが、この中の本をカラーで読むには当時の雑誌を集めるしかなく、まずどうやっても集められないだろうし、見つかっても雑誌1冊で軽く1万円以上なので、この1冊は軽く200万以上必要で安いものだ。1巻の『ジャングル大帝』はまず『ジャングル大帝ディズニーランド版』から始まる。もちろん昭和20年代の「漫画少年版ジャングル大帝」ではない。1964年から1965年に「ディズニーランド」に連載されたヴァージョンでこれが初単行本化だ。話は大幅に違っていて冒頭のパンジャの死と船からの母との別れは同じだが、あとはレオが人間や人間に飼いならされた悪い動物をこらしめてパンジャの王国を守るぞと言うところで終わり。幼児向け雑誌だったのでレオはズボンをはいているし、基本的に子供向けにしている。4色と1色の構成で、この「ディズニーランド」は古書でも出ることは稀で大変なレア本。同時収録の「ほんご」は1964年の「小学一年生」連載のフルカラー、「ぼっかち」は1969年の「小学一年生」連載でフルカラーと2色の交互、最後の「リンリンちゃん」は1960年の「ひとみ」(秋田書店)連載の2色とモノクロの構成。後半の3作は全集に収録されているが、色もないし、毎号の扉もない。2巻以降はこの扉の件が初なのと、全集に入っているのは特記しない。2巻は『チッポくんこんにちは』はまず「チッポくんこんにちは・たのしい三年生版」は1957年連載でフルカラー、そして1973年~1974年と大分空いた「チッポくんこんにちは・二年の学習~三年の学習版」で1回目だけフルカラーを使ったマンガで2回目からは2色を使った絵物語。こちらは手塚治虫文庫全集のみだった。「ピンピン生ちゃん」は1958年の「たのしい三年生」連載で全編フルカラー。主人公のアニキがちょっと情けない手塚治虫本人キャラで楽しい。「とべとべるんちゃん」は1959年「たのしい一年生」でこれもフルカラー。1959年主婦と生活の愛らしいフルカラーの少女マンガ「テレビ国のあやちゃん」は全集には入っていなかったので嬉しい収録だ。次いでフルカラー絵物語4連発で1958年の「つるのおんがえし」、同年の「白ゆきひめとおうじさま」、「びいこちゃん」、1959年の「じゃっくとまめのき」も全集には入っていなかったので収穫。1960年「たのしい幼稚園」~1961年「たのしい一年生」のフルカラー「らびちゃん」は現行品では手塚治虫文庫全集のみ。1946年、1947年の育英出版の「ハローマンガ」の諸作品は2色もあり、全集には入っていない。「新寶島」の広告には驚くだろう。1954年漫画少年の「鉄路の白バラ」は全集未収録。1962年ひかりのくにの「みらいのくに」、1963年少年ブック夏の増刊号の「ヤッホー夏山にいこう!」はフルカラーで2Pと1Pの絵物語で単行本初収録だ。1963科学の教室三年のマンガ「こぐまのブブ」の完全版も初収録だ。モノクロながら貴重。この手の幼児誌、学習雑誌は入手困難度が高く12960円も安い、安い。最後の3巻は、昭和30年代の少女マンガが大好きな私にとって最も欲しかった少女マンガ集『こけし探偵局』だ。この時代の手塚治虫、石森章太郎、水野英子、ちばてつや、赤塚不二夫、松本あきら(零二)の少女マンガは最高で、復刻本は全て買うし、単行本未収録の雑誌や付録も集めている。がただし手塚はバカ高くなるので復刻のみで済ませている。手塚は手塚しか集めない人が大半で、人生をかけている人も多数。多趣味の自分はとても太刀打ちできない。さて3巻の冒頭は1957年のなかよし連載の作品で扉4色、本編2色で、主人公の兄の手塚治虫キャラが情けなくていい味を出していて、最後に次の連載の「リボンの騎士」(単行本時は「双子の騎士」)が予告で入ってくるのが楽しい。1959年りぼん連載の「あけぼのさん」は42色交代で4色の表紙も肝心なのでこの本じゃないと半減だ。「雑誌のそのまま復刻」なので昭和40年代まではファンレター用にマンガ家の住所を表記するのが当たり前、前者は手塚の住所は渋谷区代々木で、後者は兵庫県宝塚で、東京―大阪を飛び回っていた手塚らしい。1962年なかよし連載の「ヨッコちゃんがきたよ!」は4色少しとモノクロで構成、「リボンの騎士」の現代版風の設定が興味深い。この時には手塚のファンレターは編集部あてになっていてさすが。凄い?のは他の本でもそうだが、文通相手募集の人の住所と名前をそのまま掲載してして、住所表記は変わっていてもまだ同じ場所が実家という人もいるかも?「のばらの精」の予告ページのあとに、1957年に続いてなかよし連載の「のばらの精」も4色少しとモノクロでみなカラーの扉が美しい。これがないと魅力半減だ。少女マンガにはめずらしく最後は革命ものになる。この3冊の帯の端の応募券を送ると稀少カラーマンガの「のっことぽろ」を全員がもらえるサービス付き。国書刊行会の単行本がともかく作りが丁寧で、マンガ復刻出版社で圧倒的トップだ。監修は濱田高志氏。手塚のカラー復刻で他に特筆しておくとジェネオンエンタテイメントの『手塚治虫カラー秘蔵作品集』は未だに全集・文庫全集では読めない少女マンガが多く、サイズは小さいが価格は5000円と安い。同じくジェネオンの『リボンの騎士・少女クラブカラー完全版』は19531956年の少女クラブに連載された当時のままに42色モノクロさらに付録が混在しているが当時のままで読めて価値が高い。5400円だったがすぐに売り切れていたため、最近、復刊ドットコムが7020円で復刻したが、ジェネオンに付いていたリボンの騎士すごろくを省略していて、値上げしてこれでは価値が薄い。まあその復刊ドットコムも『リボン騎士なかよしオリジナル版復刻大全集BOX1巻~4巻』は1~3が19631966年のお馴染みのもの、4巻が19581959年の単行本時『双子の騎士』のもので、当時の形式でカラー、付録入りで復刻した。ただし139936円、4が13500円と高く、その価格ならトレス線や文字のつぶれなどきちんとしてほしかった。また4の付録の裏表紙の当時の出版社である講談社の懸賞が、他はそのまま復刻しているのにそこだけ大きく空白にして「既に終了しています」のコメントしているのは、何か理由があるのかもしれないが「不完全版」で残念な仕上がりである。(佐野邦彦)

 


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