2016年12月12日月曜日

☆『T.A.M.I. Show The Big T.N.T. Show』(Shout/SF17008)Blu-ray



2016年の映像のベスト3が遂にこの年の瀬になって登場した。2つはこの前に紹介した500分近い貴重な証言でアメリカのミュージック・シーンを明かした超大作『The Wrecking Crewe』と、封入されたBlu-ray8枚のほとんどが初のオフィシャル映像という『Pink Floyd The Early Years 1965-1972』で、他に続くレベルのものは存在しなかったが、ついに今まで散々ブートやらVHSなどで画質の悪い映像で見るしかなかった『T.A.M.I. Show The Big T.N.T. Show』がなんと完全版かつBlu-rayの最高画質で登場した。何度も見た映像なのにもかかわらず夢中になって計205分、画面に釘付けになった。どれだけもの凄い内容なのか紹介しよう。このBlu-rayは2つの映画になったビッグ・フェスティバルのライブをカップリングものだ。前者は19641028日・29日にサンタモニカのコンサートで、ジャン&ディーンの司会でスタート、まずはチャック・ベリーとジェリー&ザ・ペイスメイカーズが交互に歌うような編集でチャック・ベリーは「Johnny B.Goode」「Sweet Little Sixteen」などを披露、そしてスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズが「You’ve Really Got A Hold On Me」「Mickey’s Monkey」の3曲を歌いマーヴィン・ゲイが4曲熱唱する。個人的にはストーンズがカバーした「Can I Get A Witness」「Hitch Hike」がカッコいい。コーラスは真ん中にダーレン・ラブを挟んだブロッサムズだ。そしてレスリー・ゴーアが「It’s My Party」「Maybe I Know」の6曲、司会のジャン&ディーンの「The Little Old Lady From Pasadena」の2曲を挟んで、本映画のハイライトのひとつ、ビーチ・ボーイズが「Surfin’ USA」「I Get Around」「Surfer Girl」「Dance Dance Dance」の4曲を歌い、実力の違いを見せつける。今では見慣れたライブだが、今から30年以上前にこの映像の一部を初めて見た時にどれだけ興奮したことか、思い出される。そのあとはビリーJクレイマー&ザ・ダコタスがレノン=マッカートニーからもらった3曲を歌うが、見た目がおっさんくさいし、なんとも違和感が…。そして歌姫、ダイアナ・ロスを擁するスプリームス(シュープリームスは酷過ぎるのでこの表記)がNo1ヒットの「Baby Love」「Where Did Our Love Go」を含んだ4曲を披露、バーバリアンズをはさんで、伝説のジェームス・ブラウン&ザ・フレイムスの4曲の登場だ。JBの熱唱も凄いが、その華麗なステップに惚れ惚れしてしまう。4曲目の「Night Train」は会場が一番熱狂したのではないか。そしてトリを努めるのがなんとローリング・ストーンズである。「Around And Around」「Off The Hook」「Time Is On My Side」「It’s All Over Now」「I’m All Right」の5曲を披露、ストーンズのカッコ良さは群を抜いていて、会場の熱狂は最高潮に達する。笑顔のキース…若い時の映像はやっぱりたまらないね。最後はストーンズが演奏をしながら「Let’s Get Together」という曲で全員が登場してフィナーレだ。ストーンズと一緒にビーチ・ボーイズ、マーヴィン・ゲイ、JB、チャック・ベリー、スプリームス、スモーキー・ロビンソンが同じステージなんてまさに夢だ。凄すぎる。こちらの『T.A.M.I. Show』は2010年にDVD化され、とうにWeb VANDAの方では紹介済み。長く書いたのは、もし見ていない人がいたらどれだけ凄いビッグ・イベントだったかと知らせたいから。出演者数は少なくても後の『Woodstock』や『The Monterey Pop Festival』に少しも引けを取らない。

さてこのBlu-rayの目玉は後者の『The Big T.N.T. Show』で、この英文ライナーは詳しくて、昔日本のみのLDで、1987年に『That Was Rock』という題名でこの両方の映画の抜粋版がリリースされていた事まで書かれていた。このLD、手元にまだ残っているが、前者ではビーチ・ボーイズもローリング・ストーンズが全面カットで、後者はロネッツだけが目当て他はバッサリと削られた。ライナーを読むと、後者もVHSだけは出たようだが、まったく一般には知られていない。コンサートは19651129日にロサンゼルスで収録され、翌年映画化された。初めと終わりはなぜかデビッド・マッカラムが指揮するインスト。もちろん0011ナポレオン・ソロだが足が短いなあ。こちらは前者と違って人選がバラバラ。登場順もあちこち飛ぶので最初の登場順にしか紹介しない。レイ・チャールズは「What’d I Say」「Georgia On My Mind」を安定の披露、続いてイギリスからペトラ・クラークが「Downtown」など2曲、その後に嬉しいラヴィン・スプーンフルの「Do You Believe In Magic」「You Didn’t Have To Be So Nice」が2曲。初めをわざと間違えたか楽しいライブで、陽気なギターのザル・ヤノフスキーの存在がライブで必要だったことが分かる。この映像は後にスプーンフルのDVDにも収録されていた。ジャングル・ビートのボー・ディドリーが2曲、まだ美しいジョーン・バエズが「500 Mile」など2曲を歌い、その後、『The Big T.N.T. Show』最大のハイライトであるフィル・スペクターがピアノを弾きながら指揮、そのバッキングでジョーン・バエズが「You’ve Lost That Lovin’ Feelin’」を歌う。ライチャス・ブラザースと違って当然、独唱、ハーモニーも掛け合いもないが、ジョーン・バエズの堂々とした歌声と、何よりもフィル・スペクターの計算されたオーケストレーションで見事な出来となった。その後は今まではLDでしか見られなかったロネッツの「Be My Baby」「Shout」の2曲もハイライト。パンタロンに身を包んだ3人はやはりひと際華やかだ。その後はカントリー・シンガーで大ヒットを連発していたロジャー・ミラーが4曲歌って新進気鋭のバーズが登場する。「Turn Turn Turn」「Mr.Tambourine Man」など3曲、非常に爽やかでロジャー・マッギンの12弦ギターが光る。まだ髭のないデビッド・クロスビーは、バーズでは存在感が薄い。イギリスからドノヴァンが4曲ギターの弾き語りで歌うが、今となってはなんとも地味。最後はアイク&ティナ・ターナーが5曲。ティナはダイナマイト・ヴォイス全開で、「Please Please Please」なんてJBに一歩も引けを取らないド迫力、さすがだ。ただこちらのエンディングは出演者が誰も登場しないのであしからず。(佐野邦彦)



0 件のコメント:

コメントを投稿