2016年11月29日火曜日

☆『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』(日本コロムビア/COCX39821-5)5CD ☆『冨田勲映画音楽の世界』(松竹レコード/SOST3025)


CD5枚組の『冨田勲 手塚治虫作品 音楽選集』はおススメだ。作品や曲のセレクションに少しクエスチョンマークはあるが、90点あげてもいい。というのも私は昔から「シンセサイザー時代より前の子供番組の曲を作っていた冨田勲」の熱烈なファンだからだ。宮崎駿らのアニメーションが好きな自分は、マンガと180度逆でアニメの手塚治虫にはまったく興味がないのだが、冨田は手塚アニメの音楽を多く担当しているので、自分の冨田コレクションに手塚作品は多い。こうして音だけあればいいのでDVDは不要で大変助かる。この時代の冨田作品は今のなお、他を寄せ付けないハイセンスで優美、荘厳、そして高揚感のある曲が作れる第一人者だった。山下毅雄、宇野誠一郎という日本のトップ3の作曲家の中でこの時代の冨田はずば抜けている。私はこの時代の冨田の音楽は全てコレクションしているので、本ボックスの素晴らしい点と惜しい点がよく分かるのでそこを紹介しよう。もちろん素晴らしい点の方が遥かに多い事は保障する。CD5枚組。ディスク1は『ジャングル大帝』。冒頭はあの平野忠彦(シングルは三浦弘名義)による壮大なオープニングテーマ。放送は1965年、日本最初のカラーTVアニメで、家に届いた、まだ珍しい(1968年でも普及率4.4%。ただし1971年には85.8%と急増)到着したカラーテレビで、「ジャングル大帝」のオープニングを見た時の感激は覚えている。この頃のカラーテレビは相当な高額だったが、それだけのお金を払ってもカラーでTVを見たい!という気持ちを大きく助長したのがこの『ジャングル大帝』だったという。知らない方に話しておきたいのはこの『ジャングル大帝』と『リボンの騎士』は、マンガで超売れっ子だった手塚治虫が、自分のマンガの儲けをアニメーション作りに回して、その潤沢な資金で、TVシリーズなのにフィルムを先にアップしてそれを見ながら冨田勲がその都度曲を作って録音するという贅沢な方法で作られたことだ。クラシック好きの手塚は、壮大なスケール感のある冨田を高くかっていて多くのアニメの音楽を冨田に依頼した。手塚の虫プロダクションが満を持して制作したカラーTVシリーズの第1弾第2弾はこうして冨田にまかされ、その期待をはるかに超える音楽を作った。

ディスク1のジャングル大帝の音楽は、その当時LPが出て後にCD化された、リレコされた『ジャングル大帝ヒットパレード』というアルバムがあったがTVシリーズの音楽とは雰囲気が大きく違ってこれを除外したのは正解だ。ようやく当時の曲を集めたのが1998年の『懐かしのミュージッククリップ35ジャングル大帝』(東芝EMI)で、歌の入った部分の曲が22曲(「ジャングル大帝進めレオ」のタイトル曲含む)収められた。そして2007年にCD4枚組の『ジャングル大帝』(Emotion)では先のミュージッククリップの内容を含みつつ(2曲少ないが、別の2曲が入った。歌は21曲)遂に当時のBGM88曲を中心に109曲が収録されたが、冨田勲がこの頃の音質が満足いくものではないということで回収騒ぎとなり一部にしか出回らなかった。それで今度のディスク1は60曲、内歌が入っているものは既発表の12曲でBGMが中心、ようやく万人に『ジャングル大帝』のBGMの素晴らしさを誰でも味わってもらうことができた。この48曲のBGMは、先のCD4枚組のBGM88曲とダブりがたった2曲!特に「きちがい雲」3曲、「さすらいの死神」7曲は本作のみで、美しいバイオリン中心のストリングスで彩られる曲や、冨田の真骨頂の金管楽器が響く曲など、素晴らしい曲ばかりを堪能できた。おしむらくは、この『ジャングル大帝』と『リボンの騎士』のテーマソングは、TVサントラとは別ヴァージョンのフルコーラスだが、演奏の緻密さはこのレコード・ヴァージョンが群を抜いていいので、他のCDで聴けるとはいえ収録してほしかった。またミュージッククリップ収録の挿入歌で落ちた弘田三枝子が歌う「たまごの赤ちゃん」は美しいメロディと優しい歌声の名作なのでこれは落とすべきではなかった。続けて放送された「ジャングル大帝進めレオ」のBGMは初収録で貴重でありここに記すことにする。「大草原の対決」6曲のうち進めレオのフレーズも一部入れた荘厳なM-13M-14、「月光石の秘密」1曲のあとは「密猟者の森」2曲で勇壮なM-1,M-4が光る。「石のとりで」2曲のうちM-7は心惹かれるパートがあり。6曲の「王城に陽は昇る」はM-14が金管のメロディが光っていていい出来だった。ただこの主題歌は三木鶏郎が担当したが壮大なオープニングは冨田のアレンジで、ミュージッククリップには2ヴァージョン入っていたがここには収録されず。

ディスク2は嬉しい1967年『リボンの騎士』のほぼ初といってもいいBGM集。昔1997年に『懐かしのミュージッククリップ28リボンの騎士』で31曲収録、歌が入ったものが12曲で残りはBGM、しかしセリフが入っているものもあった。今回はディスク2全部とディスク56曲で計72曲収録、主題歌「リボンの騎士」のインスト版と歌入り王女編、「リボンのマーチ」のTVサイズはダブったが、王女編インストルメンタルは初収録、「リボンのマーチ」もTVサイズの別ヴァージョンが加わった。BGMでコーラス付3曲があったが、ミュージッククリップの挿入歌の「囚人のうた」「チンクのうた」「使用人たちのうた」「うれしいたいかん式」「王子入場」「サファイヤのうた」「リボンの騎士はチャンピオン」とTVで使われたセリフ入りの王子編歌入り「リボンの騎士」とTVサイズより30秒長い(しかしレコードよりは1分短い)「リボンのマーチ」の9曲は落ちた。特にスティールギターを使った愛らしい「チンクのうた」は傑作だったので惜しい。さてBGM68曲もあり壮大な「王子と天使M-4‘’」と美しいワルツを使った「踊れフランツM-4」、そして本作のハイライトBGMであるサファイヤとフランツがカーニバルで踊るときのバイオリンによるあまりに甘く美しいワルツの「サファイヤのカーニバルM-7」、王宮の宮廷音楽のように華麗な「サファイヤのカーニバルM-10」はBGMのレベルをはるかに超え、まさにクラシック。楽しいカーニバル音楽「サファイヤのカーニバルM-13M-13‘」、あのワルツをさらにゆったりと演奏した「サファイヤのカーニバルM-15」も後半が素晴らしい。牧歌的でストリングスが美しい「七匹の仔やぎM-15」、BGMの中に華麗さがちらつく「王様バンザイ!!M-6」と荘厳な「王様バンザイ!!M-21」、前述のワルツをアレンジした美しい「燃えるシルバーランドM-14」、後半の新しいワルツが魅力的な「シルバーランド幸せにM-2’」、バイオリンの高音の旋律に心を奪われる「シルバーランド幸せにM-2’’」、後半が荘厳でかつワルツのメロディも使った「シルバーランド幸せにM-10」、まるで「キエフの大門」かのような荘厳な「シルバーランド幸せにM-11’」と名曲BGMがズラリ。ディスク5ではアコーディオンがフランスをイメージさせる美しい「ふしぎなカガミ」、壮大なイメージの「おちゃめなテッピーM-18」が光る。ここで手塚作品での冨田は頂点を迎えた。

ディスク3は初登場の手塚アニメの快作1969年「どろろ」のBGM集なんと68曲。コアな手塚ファン、そして映画音楽まで好きなコアな冨田ファンにはここは一番待ち望んだディスクだろう。マンガは手妻作品の中でもベスト5に入れる大好きな作品だ。これをアニメで表現するとビワの音と低い男性コーラスのハミングで、応仁の乱で乱れた世の中、妖怪と戦って妖怪に奪われた自分の体を取り戻していく百鬼丸を描こうとすればこういう重く陰鬱なサウンドのBGMになるのは当然の帰結であり、こういう曲は冨田が映画音楽で得意とするサウンドである。しかし私は残念ながらこの手の曲はあまり好きではない。コミカルながら歌の裏のコーラスがその異様な世界に誘ってくれる主題歌の「どろろ」は大好きだが。その中、美しいメロディを持つ「みおの章2M-78」、「ばんもんの章2M-79」、哀愁漂う「どろろの歌ヴァリエーション3M-28T2」、浮き浮き感もある「二人旅の章3M-5T5」、日本的な哀調を帯びたメロディが美しい「妖怪かじりんこんの章 3M-1」、どろろの主題歌をスローなインストにした「妖馬みどろの章 3M-30 T2」が個人的には気に入っている。メインテーマは「メインテーマ2 (百鬼丸のテーマ) (1M-1 T2)」の方が重々しさがあって雰囲気が出ているが、この作りはまさに後述の時代劇の映画音楽の冨田そのもの。ディスク5にもパイロット版用BGM6曲と葵交彦が歌う「百鬼丸の歌(別ヴァージョン)」があり後者はどこが違うか聴き比べたがイントロでレコード版は13秒過ぎにコーラスが入って21秒から始まるのに対してこの別ヴァージョンは13秒から歌が始まっていた。

ディスク4は映画1969年の『千夜一夜物語』のサントラだ。当時、この映画はサントラ盤LPが出ていたが、12曲中A2曲目の「アルディンのテーマ」のオリジナル・ヴァージョンではなく別ヴァージョンが収録されたが、もう1曲を除いて他は全曲収録された。入れなかった理由はレコード用のマスターが見つからなかったというが、盤おこしをすればいいだけで、本ディスクではマスターでも盤おこし以下の音質のものもあり、こういう変なこだわりは迷惑だけという事が分かっていない。14曲がヘルプフル・ソウル、1曲はヘルプフル・ソウル+フール・サンズ、フール・サンズは24曲で39曲の構成だ。ヘルプフル・ソウルはあのチャーリイ・コーセイ(宮崎駿・大塚康生・高畑勲の名作『旧ルパン三世』のオープニング・エンディングを歌ったヴォーカリスト)がいた伝説のブルース・ロック・バンドで、冨田に気に入られ本アルバムは8曲とアルバムのメイン、そしてオリジナル・アルバム1枚をリリースしてたった2年で解散した。冨田色が出るのはフール・サンズ(オーケストラ)が担当した曲で、アラビアン・ナイトの世界を彷彿とさせるエキゾチックで荘厳な「メイン・タイトル」「エンド・タイトル」、用いられたのは濡れ場のシーンだが、美しいバイオリンによる「魅惑の夜」とコーラスが入った「いとしのミリアム」がアルバム曲ではいい。ただし今回マスターで収録された映画用の「ミリアムのテーマ」の方が、後半がストリングスで出来は上。ミリアムの娘のジャリスの曲は3曲あるが、対位法のコーラスが耳障りなので初音盤化の短いシンプルな「ジャリスの竪琴」がベスト。ヘルプフル・ソウルの曲は「アルディンのテーマ」のようなベースのリフガカッコいい曲が多いがアルバム曲の「モーレツ男」は歌の入ったVocal Mix Versionに変えられているのでこれも注意。余談だが、この映画は1969年でこの年にヘルプフル・ソウルは解散したが、翌1970年に大阪万博の東芝IHI館のための曲で、非売品EPで作られた12分の大作「東芝IHI館グローバル・ビジョンのためのマルチプル・サウンズ」には壮大なフール・サウンズ・オーケストラの演奏の後、六文銭の演奏、そして中盤からチャーリー・コーセイ(当時はチェイ光星と名乗っていた)の歌が入ったバンド演奏で、この大作がCD化されないのはあまりに惜しい。

ディスク5はまず1962年東映動画長編アニメーションの『アラビアン・ナイト シンドバッドの冒険』から4曲入っているが、これは1996年リリースの『東映動画長編アニメ音楽大全集』に23曲入っていてそこからのセレクション。エキゾチックで転調が見事な「サミール姫のうた」がないのは納得いかない。この10枚組の『東映動画長編アニメ音楽大全集』には、まず宮崎駿・高畑勲・大塚康生の3人が初めて中心になって作った1968年の日本アニメーション史上に輝く最高傑作『太陽の王子ホルスの大冒険』、この作品のヒルダを描いた森康二の奇跡のアニメーションが見どころで間宮芳生の一世一代の音楽の美しい音楽のもほぼ全体が収録されていた。さらに宮崎駿がアイデアの中心の担い森康二が作画監督を担当した傑作1969年の『長靴をはいた猫』と1971年の『どうぶつ宝島』、さらに森康二が中心となり大塚康生、月岡貞夫が持てる力を発揮、音楽が伊福部昭という1962年の『わんぱく王子の大蛇退治』という東映動画長編アニメーション4大作品を含む全ての音楽が収録された最重要CDボックスだったが、長く廃盤なのがあまりに惜しい。本ボックスには冨田が音楽を担当した1965年の『ガリバーの宇宙旅行』のBGMも入っていてこちらの方が魅力的な曲を書いていたが、坂本九が主人公で歌を歌っていたからか一切歌が入っていないセレクトだった。ほとんどの作品はTVサイズ&劇場サイズの方が耳に馴染んでいるし出来もいいのだが、冨田の場合タイトル曲はシングルになるので気合が違うというか、レコード用のヴァージョンの方がステレオで広がりがあって出来がずっと良かった。『ジャングル大帝』『リボンの騎士』がそうであったように、この主題歌の「ガリバー号マーチ」もレコード・ヴァージョンの方がはるかに上(ただし気合が入っているのはA面のみ。必ずTV・劇場と同じ歌い手を使うのがポイント)で、1991年の『オリジナルアニメ原盤によるアニメ主題歌メモリアル1』にはその金管の広がりが素晴らしく高揚感に溢れたレコード・ヴァージョンと、カップリングの劇場版とは違う本間千代子&高橋元太郎が歌う「遊園地のうた」が収録されていた。でも実は1998年の『東映動画アンソロジー劇場編1958-1971』(日本クラウン)では劇場版サイズの「ガリバー号マーチ」と「遊園地のうた」をコロムビアのレコードのクレジットを付けて入れたのは確信犯?というのも後者の歌はサントラなので歌は坂本九…。まあどちらにしてもDVDでは坂本九の歌は全て聴けるがCDは全て廃盤だ。本ボックスになぜ『シンドバッド…』だけ入れて『ガリバー…』を入れなかったのは全く納得できない。次いでこれも嬉しい1964年の『ビッグX』、かつて1997年にリリースされた『懐かしのミュージッククリップ22ビッグX』(東芝EMI)からの抜粋でオープニングとエンディングの歌とBGMを細かく分けて14曲にしていれた。M-7M-9のような西部劇調のBGMが魅力的だがBGMは全部で14分ちょっと。それに比べミュージッククリップは40分もあり、ここを手抜きにしたのはもったいない。ミュージッククリップにはあの胸の高鳴るテーマ曲の色々なアレンジを集めたインストルメンタル集やBMG集2の金管を生かした勇壮なマーチもあったのに収録せず惜しいことばかり。ここでも出来のいい主題歌のレコード・ヴァージョンを落としていた。初収録は手塚のデビュー作を劇場作にした1965年『新宝島』から「タイトル~出航」。曲ではなくBGMで特に胸躍るものではない。同じく劇場作の1966年『展覧会の絵』から「プロムナード」と「キエフの大門」。もちろんムソルグスキーの傑作で、後者の方が、出来がいい。その後の『ジャングル大帝進めレオ』『リボンの騎士』の補遺、『どろろ』の補遺は前述のとおりで、最後は『千夜一夜物語』に次ぐアニメラマ、1970年『クレオパトラ』より主題歌の由紀さおりが歌うエキゾチックな「クレオパトラの涙」が収録されていた。かつて1991年の『ぼくらのテレビ探偵団Vol.4』だけに入っていた曲なので未入手の方には貴重だ。

続いて『冨田勲映画音楽の世界』(松竹レコード/SOST3025)を紹介しよう。まず重厚で重々しい1965年の『飢餓海峡』より2曲、1968年の美輪(丸山)明宏主演の『黒蜥蜴』からはサスペンス風の2曲、1970年「座頭市あばれ火祭り」1971年「新座頭市・破れ!唐人剣」は1曲づつでこれぞ『どろろ』のBGM(この2作品は『座頭市音楽旅其之参』(キング)に8曲、7曲収録)1972年の『びっくり武士道』はコミカルな作品に合わせてシンセサイザーを使ったコミカルなものを2曲、1973年の『しなの川』は作品世界に合わせて哀調溢れる2曲、これが入ったおかげで『しなの川』のDVDを処分できた。『同棲時代』との2枚組、どちらも由美かおるのヌードが売りのDVDセットだったが、病気で既に女性への煩悩が消滅した自分にはまったく興味がなくなり瞬時に処分、まあ楽で良いともいえる。1974年の怪作『ノストラダムスの大予言』はシンセサイザーも使った大袈裟な感じの曲だった。残りはもうどっぷりシンセサイザー時代以降の1990年以降なので『学校』4作、『たそがれ清兵衛』『隠し剣鬼の爪』『武士の一分』『母べえ』『おとうと』『おかえり、はやぶさ』などあるが調査担当外なのでこれまで(佐野邦彦)

 
 
 
 
 

2016年11月28日月曜日

PlayStationVRを自宅で体験、ゲームの革命が起きた!ヘッドセットで見える画像は左右も完全な3D、自分の首や手の動きでバーチャル空間を操作できる。夢の実現だ。


PlayStation VRは自分で予約して10月に届いていた。発売時のゲームは、サード・パーティーはクソゲーがほとんど、まずはバーチャルリアリティーが確実に体験できる、ソニー(SIE)本体が発売した「PlayStation VR World」も買った。届いて驚いたのは息子2人だ。「お父さん良く手に入れられたねー」そりゃそうだ。こんな久々に現れたゲーム革命を体験しないなんてアホだ。でも自分はベッド上で動けないのでいつもの事だが息子達へのプレゼント。ゲーム機のセットが大変だが先ほどベッドまで持ってきて接続してくれた。スゲー。最初は海中、目の前の全てが立体空間、前後左右に目を動かしても魚や他の探査艇、母艦の影が見え、首の動きに合わせてヘッドライトがその位置の手すりを照らし出す。途中、ホオジロザメに何回か襲われるが、その巨大さに度肝を抜かれた。続いて公道レーシング。ハンドルはなく自分の首の傾きをカメラがとらえてそれでハンドルが回る。もの凄いスピードで急カーブに突っ込むが小さな車からトラックまで車線にいるのでノーブレーキでかわしても別車両が目の前に!何度も衝突したが特に構わず続行する(笑)コース取りを正確に覚えてもかわせるか不明だが、バーチャルだと迫力十分。次のゲームはシューティングで目の前に浮かぶ銃を、コントローラーを持った手を伸ばせば掴めてボタンでシューティングできたのだが、介護用のベッドのオーバーテーブルの上のテレビに付けたカメラ(自分の動きを捉えるカメラ)の調整に少し手こずっていたのでもういいよ、十分VRの凄さを体験できたからと終わりにした。VRで、ゲームの世界は一変する。最近はスマホのゲームなんていう原始的なゲームでお茶を濁すライトユーザーが増えていたが、これでコアなゲーマーは一気にVRへ戻る。まだ体験型のVRだが、来年1月には「バイオハザードVR」が出る。バーチャル空間で逃げも隠れもできない世界でのゾンビとの戦いは考えただけでもあまりのリアリティに冷や汗が出てくる。武器はゾンビの奥にある。その横をすり抜けて行かないと倒せない。その武器は自分の手を伸ばして掴みすかさず振り向いて脳天を撃ちぬくのだ。バーチャルといいながらいわば現実空間での戦いは今までのゲームを陳腐なものにしてしまうだろう。PlayStation4はオンラインで世界中のゲーマーとタッグを組めるので、戦争ゲームもほどなく出る。完全な三次元空間での戦闘だ。味方に右と左に旋回の指令を出して敵を発見し倒す。しかし敵もチーム、どこに隠れているか分からず弾は前後左右から突然飛んでくるだろう。ドキドキ感はmax、こんな面白いゲームはあるだろうか。最初はコントローラーを振動させるぐらいだろうが、振動マットのようなものが出て、着弾の衝撃が受けられるとますますリアリティが増す。子供の頃に空き地で、銀玉鉄砲で遊んでいた自分としては、こんなゲームができる子供が羨ましい。外を走り回れないなんて可哀そう?そういう部分もあるが、一番好きだったのはコンバット・ゲームだったので、VRの圧勝だ。スーパーファミコンからの世代なので(ファミコンは後から買ったがセーブが酷いのであまりやらず)、ゲームの世界が劇的に変わったと思ったのは1996年のNINTENDO64の「スーパーマリオ64」だった。ゲームが初めて3Dなったのだ。子供達がマリオを画面の奥にひたすら自由自在に走らせているのを見て「ゲームの革命が起きた」とみんなで感激したもの。そして2016年のVRはそれ以上の革命になる。自分はもうゲームはやらないがゲームを見るのが好き。子供が幼稚園の時に肺炎で入院した時、隣のベッドの子のゲームボーイのマリオを借りて夢中になっているのを見て、退院した時に買ってあげたのが最初。あの分厚い、コントラストが悪くて明るいと良く見えない初代ゲームボーイだ。それからスーパーファミコン、1994PlayStation、セガサターン、1996NINTENDO641998年ドリームキャスト(いいゲーム機だったがセガは販売力が乏しく惜しい機種)、2000年にPlayStation2、2001年ゲームキューブ、X Box2005X Box3602006年にPlayStation3、Wii2013PlayStation4、X Box Oneで遂に2016年にPlayStationVRが出現した。携帯ゲームもゲームボーイから1998年ゲームボーイカラー、2001年ゲームボーイアドバンス、2004年ニンテンドーDSPlayStation Portable2011年ニンテンドー3DSPlayStation Vitaとまあ揃えたものだ。ハードの大半は自分が買ってきた。Wiiの時は高校生の息子2人と妻も入れた4人で真冬に2時間交代でゲーム屋の前に徹夜で並んで入手した時もあった。残念ながらWiiはそれほどの価値はなかったが(笑)ゲームの最新テクノロジーを見たい、テクノロジーの進化を見たい、その一心だ。自分は大分前からやっていないので息子2人はゲームがメチャクチャ上手い。その腕前を見ているだけで十分満足なのだ。(佐野邦彦)

2016年11月25日金曜日

☆『宇野誠一郎ソングブックⅡ』(TV AGE/UNOCD1002)


1年遅い紹介だが、宇野誠一郎の遺した膨大な楽曲から、「江草啓太と彼のグループ」による再録音の第2弾だ。2014年にⅠ,2015年にⅡ、そして今月Ⅲが出るが、Ⅲはまだ聴いていないのでⅡの紹介である。今回の収録曲は20曲。前作は「ムーミン」「ふしぎなメルモ」「長靴をはいた猫」「チロリン村とクルミの木」「さるとびエッちゃん」「一休さん」「ネコジャラ市の11人」「アンデルセン物語」「山ネズミロッキーチャック」などの主題歌・挿入歌16曲で構成されていたが、今回は20曲、「W3」「悟空の大冒険」「ひょっこりひょうたん島」「さるとびエッちゃん」「ネコジャラ市の11人」「アンデルセン物語」という有名曲だけでなく、ラジオドラマでは初期で有名な「一丁目一番地」や初音盤化の「渥美清のドン・キホーテ」の「うちのドン・キホーテ」、これも初音盤化の人形劇「大どろぼうホッツェンプロッツ」、あの「ブンとフン」の挿入歌「悪魔ソング」、少年ドラマシリーズの「暁はただ銀色」、さらに舞台曲から小学校の校歌まで幅広い選曲ながら、腕利きのミュージシャンにかかると宇野メロディーがいかに美しく、温かく、素晴らしいか思い知らされる。歌は増山江威子、熊倉一雄、宮本貞子などが担当し9曲が歌入り、11曲はインストルメンタルで、実に軽快に楽しめる。時代がまちまちだと音質に大きな差があり、またスコアしかないものなどは再演するしかないのだが、こういう素晴らしいミュージシャンの手にかかると、統一性があって実に素晴らしい。今、朝この紹介文を書いているが、BGMにこれほど爽やかなものはない。慶応出身では冨田勲、山下毅雄、小林亜星が知られているが、早稲田には宇野誠一郎、中村八大&永六輔、大滝詠一がいて一歩も引けをとらない。洒落た曲を得意とする慶応グループに対して、早稲田グループは心が開けていくような開放感のある美しい曲を得意とする。宇野さんの素晴らしい楽曲を再び蘇らせてくれる江草さん達の演奏と歌がさえるⅢも是非。(佐野邦彦)
 

 

2016年11月24日木曜日

☆Frankie Valli:『‘Tis The Seasons』(Rhino/081227943127)


フランキー・ヴァリのクリスマス・アルバムだ。なんと御年82歳!あの魅惑のハイトーン・ヴォイスはさすがにどうなのかと心配したが、まったくの杞憂、フォー・シーズンズで1962年にリリースした『The 4 Seasons Greetings』に、本作の「The Christmas Song」も入っていたので妻に両方聴かせてみたら、なんと本作の声の方が若く聴こえるというのだ。今から54年前、28歳の時より、82歳の方が若々しいという奇跡のヴォーカリスト、フランキー・ヴァリ、ソロとしては初のクリスマス・アルバムを聴いてみよう。まず紹介の前に書いておきたいのが、プロデュースがボブ・ゴーディオということだ。これだけでファンなら期待値maxである。冒頭は「Joy To The WorldDo You Hear What I Hear?」のメドレー。「Joy To The World」はダンサブルなビートに乗せて歌われるが気づかないほど自然に「Do You Hear What I Hear?」が織り込まれこちらはハーモニーが美しく素晴らしい出来栄え。特に後半でサビのようにビートをいったん消し、その後両方の曲がハーモニーで重なる美しさはボブ・ゴーディオならでは、アルバムのハイライトの1曲だ。前者は『The 4 Seasons Greetings』で「Joy To The World Medley」の最後で、ハーモニーとビートのフォー・シーズンズ・スタイルで歌われていた。この時のプロデュースはもちろんボブ・クリュー。「The Christmas Song」はピアノとストリングス(打ち込み)でしっとりと歌われ、うっとりしてしまう。『The 4 Seasons Greetings』ではアコースティック・ギターとストリングスでやはりしっとりアレンジされていた。「Winter Wonderland」はハッピーなアレンジでハーモニーが絶妙で見事。「Merry Christmas BabyFeaturing Jeff Beck)」は、唯一余り好きではない。というのはジェフ・ベックを起用したことに合わせてR&B調のアレンジにしたので、本作の中で浮いて聴こえるからだ。「Frosty The Snowman」のアレンジはまさにフィリップス、黄金時代のフォー・シーズンズの思わせるキャッチーなビートに乗せて浮き浮きしてしまう。さすがにハンドクラップではなく鈴だったが(笑)「Have Yourself A Merry Little Christmas」は打ち込みのビートで始まるが、途中からゴージャスなハーモニーに彩られ、ああフォー・シーズンズだと嬉しくなる。そしてメドレーのように「リボンの騎士」頃の冨田勲を彷彿とさせる美しいバイオリンに導かれ「Jingle Bell Rock」がスタート。数あるクリスマス・ソングの中でも最も浮き浮きさせてくれるこのナンバー、軽快なロック・ビートで仕上げている。「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」もハッピーな曲だがこちらはジャズ・タッチでアレンジだ。そして「Blue Christmas」はピアノのバッキングでしっとりと歌い上げる。中間で女性コーラスを挟んでモータウン時代のフォー・シーズンズのような重量感あるドラムの後にアレンジを変えていくのがまさにボブ・ゴーディオのセンスそのもの、アルバムのハイライトのひとつ。「What Are You Doing New Year’s Eve」は軽快なビートの佳曲。「White Christmas」はアコースティック・ギターのリフに乗せてしっとりと歌う。バッキングの一部のように溶け込んでいるハーモニーのセンスが素晴らしい。『The 4 Seasons Greetings』ではバック・コーラスが対位法で重なった高度なアレンジでこれも忘れられない。「O Come All Ye FaithfullAngels We Have Heard On High」は最も讃美歌風の曲なので、逆にビートを付けてメドレーにしている。「Angels We Have Heard On High」と書くと何の曲か分かりづらいがあの「Gloria」、知らない人などいない有名な讃美歌だ。『The 4 Seasons Greetings』では「The Excelsis Deo Medley」の一部で逆の「The Excelsis Deo= Angels We Have Heard On High)」~「O Come All Ye Faithfull」の順で讃美歌風に歌われた。ちなみに私の通っていた幼稚園はキリスト教の幼稚園だったので、コーラス部分はラテン語で「グローリア イン エクセルシス デオ」と歌っていたのを思い出した。もう一曲、冒頭の「Joy To The World」もよく覚えていて、「もろびとこぞりて」のタイトルだったが幼稚園児には「モロビトコゾリテ…シュワキマセリ」もラテン語みたいなものだった。ラストは「We Wish You A Merry Christmas」は子供達のコーラスから始まるのでしっとりと讃美歌風と思いきや、ビートに乗せて転調を繰り返すなどやはりボブ・ゴーディオ。全曲、フランキー・ヴァリの美しいハイ・トーン・ヴォイスと、ボブ・ゴーディオの巧みなアレンジで綴られた快作である。今年のクリスマスはこのアルバムで是非。『Phil Spector:A Christmas Gift For You』『The Beach Boys' Christmas Album』『The Ventures' Christmas Album』という名作と是非一緒に。(佐野邦彦)
 

2016年11月20日日曜日

☆Who:『My Generation(Super Deluxe Edition)』(Polydor/5372740)5CD


さあいよいよフーの『My Generation』のSuper Deluxe Editionだ。CD5枚組、これでコンプリートが期待できるかも。なにしろ『My Generation』はステレオ化が始まってからでも2002年の『Deluxe Edition』と『Collectors Edition』、そしてパートが不足した部分を完全化した2014年のiTunesのみの配信があったので、今回のBOXで細大漏らさず入ったと期待値はmax。ラインナップを見るとiTunes配信のCD化を除いても15曲の未発表トラックに9曲のデモ、その中には大好きな『Sell Out』の「Sunrise」のデモ(なんと64!)もあるというのだからもう待ちきれない。さて結果は。買う価値は十分。絶対購入すべき。でもFull Lengthと書いてあってFade Outだったり、完奏があるのに入れなかったり、Deluxe Edition等にあるのに落としたり、納得いかないものもあり、結局は前述の盤はひとつも処分できないのでご注意を。ではまずメリットから順に紹介。ディスク1はオリジナル盤のモノなのでパス。

ディスク2はオリジナル盤のステレオ。Deluxe Editionでの問題点はiTunes版『My GenerationStereo)』で改善されていたので、以下の部分がiTunes版のとおりになり、初CD化となる。「My Generation」の1分後の欠落していたカウンターのギターが入り、リード・ヴォーカルがシングル・トラックになっていた「La-La-La Lie」「The Kids Are Alright」「The Good’s Gone」はダブル・トラックに戻る。「A Legal Matter」も欠落していた43秒、27秒のリード・ギターのリフが復活した。「Im A Man」は大きすぎたパーカッションを抑えてミックス、「The Ox」はバカでかいリード・ギターをセーブし聴きやすくなったが前のステレオより6秒短く、ファイドアウトになった。Deluxe Editionでは完奏していたのに、オリジナルがそうだしiTunes版通りとはいえ、それならFull Length版としてディスク4にも入れるべきだった。

 ディスク3は同時期のモノ作品を集めたもの。12曲目まではオリジナルと同じとあるが「Instant Party Mixture」はiTunesの『My GenerationMono)』で初登場したものでリード・ギターがやや大きく、エンディングのアドリブのギターなど5秒長い。「Circles」は『My GenerationCollector’s Edition)』で初めて登場した「Circles(Alternate Version)」の方で、通常のモノはずっとジョンのホルンが全面で鳴っているが、こちらはやや控えめで一緒に入っているコーラスも聴こえる。続くフランス盤EP(トップは「I Cant Explain」)のみ収録の、リード・ヴォーカルのメロディ・ラインが違う「Anyway Anyhow AnywhereFrench EP Version)」は、オリジナル・モノは初CD化。このEPは€200くらいするレア盤なので今回の目玉のひとつ。ただ残念なのはカウンター・コーラスが欠落したステレオが『My Generation: Collector's Edition』にAlternate Versionとして入っていたのにカットされていて非常に残念だ。付け加えておくとDeluxe Editionのア・カペラの「Anytime You Want MeA Cappella)」もカットされている。「Out In The Street (Alternative Guitar Break Version)」は134秒からのリード・ギターがスウィッチングなど使わず全く違うコードを弾く。「Out In The Street (Alternative Early Vocal Version)」はバック・コーラスが無い。続いてDeluxe Editionで、ステレオで収録済みだがモノは初なのがまず1分38秒長い「I Dont Mind(Full Length Version)」と30秒長い「The Goods Gone(Full Length Version) 」で自然終止するまで入っている。「My Generation (Alternative Version)」は5秒のスタジオ・チャットが入り、13秒からのリード・ギターは欠落、最後にキースの激しいドラムに部分に単音のリード・ギターが加わっている。「I'm A Man (Version 2 / Early Vocal Version)」は中盤の歌詞stand up in a big longlineのあとの57秒からの歌詞が違い、15秒で歌をやめてしまい、115秒までの絶叫するI tell you baby you did nothin wrongの歌が無く、歌の最後で盛り上がる部分で歌うTell all you women Dont do me no wrong Now Im a manの歌もまったく無い。「Daddy Rolling Stone (Alternative Take)」はイントロが長く、バック・コーラスが無く、58秒からのカウンター・コーラス部分にリード・ギターが入るなどギターパートが全く違い、さらに完奏するのでオリジナル・モノより20秒長い。「Lubie (Come Back Home) (Alternative Mix)」はギターがクリアにミックスされている。「Shout And Shimmy (Alternative Mix)」はカウンターのコーラスが欠落している。「Circles (Alternative Mix)」は6秒スタジオ・チャットが入り、ホーンが本ボックスには収録されなかった通常モノよりホルンがさらに大きくにフィーチャーされ、曲のメインのように鳴り続ける。ちなみにシングルの「Circles(Instant Party)」ははるかにスピードが速く、演奏からまったく違いロック色が強い。曲も約1分早く終わる。

ディスク4は同時期のステレオ集。17曲目までは既発表とあるが補足説明がかなり必要だ。一番問題は「The Good's Gone (Full Length Version)」。ヴォーカルがダブル・トラックになったもののDeluxe Editionでは同じステレオで完奏するのになぜかフェイドアウトしてしまう。よって5秒短い。これは最大のミスだろう。Deluxe Editionから改善されたのは「I Cant Explain」に欠落していたタンバリンが入った。中間のハーモニカがデカすぎる「Bald Headed Woman」は普通の音量になり長さはモノより22秒長いまま。「Daddy Rolling Stone」はカウンターで入るリード・ギターがはっきり聴こえるようにミックスされた。144秒でモノにはない「ワー」のコーラスが入り、148秒から26秒までのカウンターのコーラスが欠落するのはDeluxe Editionと同じだが微かに聴こえる部分もある。「Daddy Rolling Stone (Alternative Version)」はディスク3の同タイトルのStereo Versionだが頭に2秒スタジオ・チャット入り。「Leaving Here」はディスク3や『Whos Missing』のステレオ・ヴァージョンと違って127秒後の間奏のギターのカウンターの「アー」のコーラスが入っていない。「Motoring」はリズムギターがクリアに聴こえるようにミックスを変えた。「Anyway Anyhow Anywhere」はこれしか書いていないが、これはディスク3French EP Versionのステレオで、Deluxe Editionと同じもの。きちんとクレジットしないとダメだ。初登場は「CirclesNew Mix)」で、Deluxe Editionではイントロ以外ジョンのホルンが欠落し、リード・ヴォーカルがシングル・トラックだったが、ここではダブル・トラックになってジョンのホルンが全面にフィーチャーされた。ただし、iTunes版の「Circles(Stereo)」はホルンがもっと控えめで、こちらは未CD化のまま。「Daddy Rolling Stone (Alternate Take B.)」はtwoのカウントからスタート、「Daddy Rolling Stone (Alternative Version)」は1分の時に通常ならカウンター・コーラスの部分にギターを入れていたが、このテイクではそれがなく自然であり、エンディングは終止するがきちんとした終わり方ではなく終わる。「Out In The Street (Alternate Take 2)」は134秒でリード・ギターがスイッチングなどしないでコードを弾くヴァージョン。「I'm A Man (Alternate Version)」はディスク3の「I'm A Man (Version 2 / Early Vocal Version)」とまったく同じで前半の歌が短く、最後の歌が無い。

ディスク5は1曲を除き1965年のピート・タウンゼンドのデモである。トップの「My Generation (Version 3 )」は1982年の書籍「Maximum R&B」に封入されていたソノシートで、エコーがビンビンなるデモ、これでしか聴けなかったので朗報だ。四角のソノシートで針を落とすのが大変だったからだ。「My Generation (Version 2 )」はハンドクラップも入ってより完成したデモ。「The Girls I Could've Had 」はまるでボイス&ハートが書きそうな軽快なロックンロール・ナンバーだ。「Its Not True」「A Legal Matter」「Much Too Much」のアルバム収録曲は非常に完成度が高くまさにもうフーのヴァージョンが出来上がっている。デビュー期からピートはここまで作っていたのだ。「As Children We Grew」は、洒落た感じの曲だが、もうひとひねりピートはしたかったのだろう。これも初めて聴く。そして個人的に本ボックスの目玉、「SunriseVersion 1)」だ。フーの1967年の傑作アルバム『The Who Sell Out』の中でもひと際輝くピートの弾き語りの美しいアコースティック・ナンバーだが、この曲はなんと1964年に書いていて、ピートの最も早いデモだという。ジャズ・コードを知らなければ書けない洒落たコード進行とギタリストとしての上手さ、そして類まれな美しいメロディ・ライン、まだフーとしてデビューする前にこれだけ高度な曲を書いていたことにピートの底知れぬ才能の凄さを思い知らされた。「My Own Love」は牧歌的でキャッチーなナンバーで、お蔵入りにしていたのが惜しいナンバー。もう1曲は『Scoop』収録曲、この10曲だけでもこのボックスを買う価値がある。最後にCDの入っているブックレットの写真は見ているだけでこの時代のイギリスを感じられるので、それも楽しみに。(佐野邦彦)

 

2016年11月17日木曜日

☆Pink Floyd:『The Early Years 1965-1972』(Parlophone/190295950255)10CD+8Blu-ray(+9DVD+5EP)


さて、もうこれ以上ない凄いものが出た。あまりのヴォリュームに頭がクラクラする。こういった今まで聴いたことも見たこともない音楽と映像の両方を集めたボックスのアーカイブはこのピンク・フロイドぐらいだろう。シド・バレット時代から『狂気』未満までの未収録音源とほとんど初登場の映像を恐ろしいまでに集めて収録した。Blu-rayDVDは同じものなので、本ボックスはCD10+Blu-ray8枚のボックスと言って良い。音源も凄いが、映像の方がより凄い。というのもコンサートを丸ごと収録というものはなく、ほとんどが各国のテレビで放送されたスタジオ・ライブやPVなのだ。これはファンにとって最高の贈り物で、大枚払う価値は十分過ぎるほどある。本ボックスの次のアルバムは『狂気』であり、こちらは既に様々な音源を集めたボックスが発売済みだ。要はこのボックスで極端な話、ピンク・フロイドは完成する。自分はピンク・フロイドに1970年に出会ってからのファンだが、こうやってボックス全部を紹介するにあたって、自分の趣味趣向が反映されるので、その事だけあらかじめ書いておきたい。まず自分はシド・バレット時代のピンク・フロイドに思い入れがない。次の「A Saucerful Of Secret」は大好き、『Umagumma』はライブ・サイドは大好きだが、あまりに前衛的なスタジオ・サイドは大の苦手。そしてロジャー・ウォータースが不満を言おうが自分にとってピンク・フロイドに目覚めた『原子心母』こと『Atom Heart Mother』は燦然と輝く最高傑作。『Meddle』も大好きだが『Atom Heart Mother』が劣るとは思わない。そして『The Dark Side Of The Moon』も明らかな最高傑作。今までの試行錯誤は全てここに結実したと言える。以降のアルバムは『The Wall』を頂点に評価は高いが、もう本ボックスのような素材までは集めたいと思わない。サントラの『More』と『Obscured By Clouds』は、それぞれ光る曲があり、個人的には後者の方が好きだが、サントラなので同一視はできない。こういう偏見で紹介させていただこう。

このボックスは7枚の箱に分かれていて、ここで明確に区別される。

まずはセット1でシド・バレット時代の音源が集められている。時代はCDの冒頭を除き全て1967年。CD2枚で、ディスク1の最初の6曲は1964年から65年にロンドンのデッカ・スタジオでの録音で、昨年『1965 Their First Recordings』で公開された初期キンクスやストーンズのようなR&Bタッチのロック・ナンバー。他に1stアルバム未収録シングル曲の他、2010年にリミックスしたバレットの曲が並び有名な未発表曲「In The Beechwoods」「Vegetable Man」「Scream Thy Last Scream」がオフィシャル初登場。この時期の「Jugband Blues」も初。最初の曲はインストで洒落たコードを使っていて面白い。他の2曲はいかにもバレット。CDのディスク2はスウェーデンのストックホルムのクラブのゴールデンサークルでのライン録音のライブが7曲。ただしヴォーカルは入っていない。演奏の迫力と質は最高で、スタジオ録音よりはるかにロックであり、バレット時代のベストではないか。あのポップな「See Emily Play」が重厚なロック・サウンドになっていて驚かされた。その他は前衛アーティストのジョン・レイサムとのセッション9曲が並ぶが、前衛音楽であり個人的にはまったく興味がない音源。映画用に作られたが映画自体未発表で終わる。ヨーコ&ジョンのザップル作品といい、前衛音楽は自分にはまったく不要だ。

本ボックスの目玉はCDではなく映像であり初見のものが多い。基本的にBlu-rayDVDが入っているが全く同じもので、どちらにも対応できるようにしているというある意味無駄な作りだ。

セット1の映像は、カラーで画質もよくサイケデリックなインストを演奏し続ける「Nick’s Boogie」、演奏はないが冒頭でバレットが変な漢字のハッピを着ている画質の良いモノクロの「Arnold Layne」のPVは聴きやすい。ナレーションが入りサイケな演出が入るBBCThe Look Of The Week』の「Astronomy Domine」はまあまあ。演奏がないPVだがカラーで画質が抜群によくOut Takeと合わせて2通り撮影された「The Scarecrow」、リップシンクのカラーPVJugband Blues」、モノクロのリップシンク「Apples And Oranges」などレア映像のオンパレードだが、曲が面白くないなあ…その点、画質は悪くても『Top Of The Pops』でのリップシンクの「See Emily Play」は嬉しい。その他は前衛音楽だったり、映像がアメーバ状だったりで、個人的に苦手。

続いてのセット2は1968年の音源。CD1枚で冒頭の4曲はリーズナブル。シングルのみでコンピでしか聴けない5枚目のシングル「It Would Be So Nice」「Julia Dream」と7枚目の「Point Me At The Sky」「Careful With That Axe,Eugene(Studio Single Version)」が冒頭の4曲。次の2曲はLA822日に録音された未発表トラックで「Song 1」「Roger’s Boogie」は、前者がマイナー調の『More』っぽいインスト、後者は前半がア・カペラの歌の実験的なもの。そしてBBC625日収録の3曲で、最初の2曲はタイトルは違うが「Careful With That Axe,Eugene」と「A Saucerful Of Secret」。そして「Let There Be More Light」は演奏がシンプルかつ間奏のデイブ・ギルモアのギターがロックっぽく「Eight Miles High」みたいで面白い。「Julia Dream」は間奏の幻想的なギターがない。そして1220BBC収録の「Point Me At The Sky」「Embryo」「Interstellar Overdrive」もスタジオ・ライブなので、既発表ものと違う。「Point…」はキーボードが薄いし「Interstellar…」はイントロがリフではなくキーボードとまったく違う。

さて肝心な映像は、まず218-19日にベルギーのブリュッセルのTVで放送されたモノクロの7曲で全て音はレコード、バレット時代の曲が多いがギターはギルモアだ。この中で、スタジオでリップシンクながらライブのような映像は「Corporal Clegg」「Set The Controls For The Heart Of The Sun」でこれがベスト。ちなみに「See Emily Play」は野外でのコミカルな最も見たことのあるPV。別番組だがベルギーで同時期放送の「Apples And Oranges」はリップシンクの演奏ものだが曲に合わせておふざけ気味。そしてこのボックス2で最高の映像がカラーで220日パリで放送されたリアル・ライブの4曲だ。その曲が「Astronomy Domine」「Flaming」「Set The Controls For The Heart Of The Sun」「Let There Be More Light」で選曲も素晴らしい。ニック・メイスンのドラミングがなんともカッコ良く、レコードよりよりロック色が強く文句なしだ。他映像処理されている曲は省略で、4月にローマで放送されたカラーの「It Would Be So Nice」は1分半もないがリップシンクの演奏もので存在自体珍しい。5月にローマで放送された「Interstellar Overdrive」はギルモアがいない別録音の演奏で、ギターがいない違和感があるが迫力があって聴きもの。レコードでは2分半ぐらいに出てくる通信音みたいな奇妙なリフだが、冒頭でロジャー・ウォータースがベースで弾いていて、弾き方にも驚かされた。8月にベルギーで放送されたモノクロでリップシンクの「Astronomy Domine」にもギルモアは映っていない。そしてここから先はギルモアも入って4人での演奏になる。9月にパリで放送されたモノクロでリップシンクの「Let There Be More Light」「Remember The Day」はスタンダードな映像ながら好きな「Remember The Day」が珍しいので嬉しい。もう一つの目玉の10月のパリでの「Let There Be More Light」「Flaming」は、カラーで観客も入ったライブで内容が素晴らしい。前者は重量感が増して迫力あるロック・ナンバーになっており、後者も好きな曲ではなかったがライブでは聴ける曲になっていた。そして「Let There Be More Light」はスタジオ・ライブで11月にパリでカラー放送、さらにテンポが遅くヘヴィな演奏になっていてさらにロック。このディスク2のピンク・フロイドのライブ映像はロック色が強まりレコードより魅力的な演奏を聴かせてくれていた。

セット3のCD1969年の『More』『Ummagumma』関連中心である。CDのディスク1はまず『More』のアウトテイクが4曲。2曲の別ヴァージョンはよりビートが効いたもの、「Hollywood」はマイナー調インスト、「Seabirds」は曲ではないBGMで、まあ全て内容はどうでもいい代物だ。間に「Embryo」が挟まるがハーベストのサンプラー『Picnic』のみ収録されていたオリジナルで、この曲の為にコンピの『Works』を持っている必要はなくなった。そして512日のBBCセッションで、『More』から「Cymbaline」「Green Is The Colour」、『Ummagumma』から「Grantchester Meadows」「The Narrow Way」と「Careful With That Axe,Eugene」。最初の3曲はアコースティック色が強いのでスタジオ・ライブでも大きく変わらない。「The Narrow Way」は歌の入ったPart3。これは曲がつまらない。「Careful…」はたった3分半で特徴的なベースのリフがなくロジャーの叫ぶ声もない。残るは89日のアムステルダムでのライブで「Interstellar Overdrive」は後半のギルモアのギターはいいが幻想的なオルガンが長いのでいまひとつ。他はこの時代のライブ定番「Set The Controls For The Heart Of The Sun」「Careful With That Axe,Eugene」「A Saucerful Of Secrets」の3曲で、おそらくロジャーの叫び声や裏声のコーラスはあったんのだろうがこの録音には入っていない。演奏に迫力があって新鮮。CDのディスク2はこの時代ピンク・フロイドが完成しようとしていた『The Man』と『The Journey』という2つの組曲で917日のアムステルダムで披露したものが収録されている。どちらも『A Saucerful Of Secrets』『More』『Ummagumma』からの曲も使っていてこの時代の産物と分かる。『The Man』は7曲で、「Afternoon」が後に『Relics』でホーン入りのものが収録されたジャズ風で洒落たフレーズもある「Biding My Time」のことで、「Daybreak」は「Grantchester Meadows」、「Nightmare」は「Cymbaline」で、アルバムのものとは違うテイク。残り「Work」「Doing It」「Labyrinth」パーカッションだけ、「Sleeping」は即興の幻想的なインストでまさに『Ummagumma』のスタジオ・サイド、まったくつまらない。一方の『The Journey』は8曲で、「The Beginning」は「Green Is The Colour」、「Beset By Creatures Of The Deep 」は「Careful With That Axe, Eugene」、「The Narrow Way Part3」はアレンジは違うがタイトルは同じ、別の曲と言っていいほどアレンジが違うが「The Pink Jungle」は「Pow R. Toc H」、そして「The End Of The Beginning 」は「A Saucerful Of Secrets」の最後のオルガンのパートをアレンジしたもの。他は「The Labyrinths Of Auximines」は『More』でも出てきそうなBGM風曲、「Footsteps / Doors」はパーカッションのみ、「Behold The Temple Of Light」はギターコードを発展させたインストで、これも既発表の曲以外、どうといった内容ではないのでボツになって当然だっただろう。

さて映像へ移ろう。122日のパリでのモノクロのリップシンクのライブ「Set The Controls For The Heart Of The Sun」「A Saucerful Of Secrets」は編集で短くなっている。414日ロンドンのロイヤル・フィスティバル・ホールは『The Man』のモノクロのリハーサル。「Biding Time」を最後までジャズタッチで演奏した「Afternoon」、アコギの弾き語りの「Cymbaline」は非常に聴きやすく、「Beset By Creatures Of The Deep 」はベースパターンも変えて「Careful…」のイメージから遠いアレンジ、「The End Of The Beginning 」はまさに「A Saucerful Of Secrets」の最後の部分だった。続く1011日ドイツのエッセンでのモノクロのライブの「Careful With That Axe,Eugene」「A Saucerful Of Secrets」は出来が非常に良くいよいよ60年代ピンク・フロイドのライブが完成した感がある。前者は幻想的かつ迫力満点の演奏で、ロジャーの叫びの後のギルモアのアドリブのヴォーカルも聴くことができる。後者は幻想的な部分とロック的な部分のメリハリがはっきりつくようになり、エンディングにもコーラスの代わりにギルモアのヴォーカルが入って完成度が増した。そして本映像のメインの1025日のベルギーでのライブはカラー、まずは「Green Is The Colour」からスタート、「Careful With That Axe,Eugene」「Set The Controls For The Heart Of The Sun」の2曲になるがこの「Careful With That Axe,Eugene」はこのセットだけでなく、本ボックス全体の中でも最高クラスの出来のライブだ。あのロジャーの叫びまでにロジャーは4Come Onとつぶやき期待値はマックス、そこでロジャーの叫び声は今までに聴いたことがない全力の叫び声でまさに断末魔、それが5回も入るのだ。これほど狂気に満ちたこの曲のライブを聴いたことがない。曲が終わったあとのロジャーの放心した顔がライブの凄さを物語る。「Set The Controls For The Heart Of The Sun」のライブもニックのドラムと共に全ての楽器が極限まで重なり合いその迫力はまさにピンク・フロイド。本当に素晴らしい。最後はフランク・ザッパが飛び入りし、メインのギターを弾いた「Interstellar Overdrive」で終わる。演奏もザッパのギターも非常に素晴らしいが、ギルモアの弾くフレーズとはイメージが明らかに違うので、これはライブならでは産物ということだ。

セット4のCD1970年、いよいよ個人的に最も思い入れがある『Atom Heart Mother』の登場だ。そしてディスク1はいきなり1120日にスイスのモントルのライブの「Atom Heart Mother」から始まり度肝を抜かされるだろう。この曲のレコードはオーケストラとコーラス隊が入っているので、ライブではメンバーの演奏だけのバンド・ヴァージョンと、オーケストラ等を招いたオーケストラ・ヴァージョンがあり、こちらはバンド・ヴァージョン。レコードは23分あるがコーラス隊の部分などそいで18分でまとめているが迫力があってなおかつ抒情的でピンク・フロイドの最高傑作のひとつといっていい。ロジャーは嫌いらしいが、ロン・ギーシンにオーケストラ部分を書いてもらったのが嫌なのだろう。まあ偏屈なロジャーのいう事、まともに聞く必要などない。続いて716日のBBCのセッションが6曲でこちらのリアル・ライブで最高の出来だ。まずは「Embryo」、スタジオの倍以上の11分の大作となっていて、当時のこの曲へのメンバーの思いが感じられる。曲自体は中間部に幻想的なパートが入るが基本はオーソドックスな曲。アルバムからは「Fat Old Sun」で後半はヘヴィになる。「Green Is The Colour」は牧歌的な仕上がり。そして「Careful With That Axe,Eugene」の登場だ。ライブでの狂気は無いが、やはりロジャーの叫びに向かっての盛り上がりといいこの曲には異様なパワーがある。まさに代表曲のひとつ。再びアルバムから最もシンプルかつ美しい「If」を挟んで、再び「Atom Heart Mother」が登場する。今回はホーン・セクションにコーラス隊が入ったオーケストラ・ヴァージョンで、レコードに近いサウンドが再現される。メインテーマのあとがチェロではなくホルンになるが、どのパターンでもこの後のギルモアのスライド・ギターが美しい。R&Bパートのあとのミュージック・コンクレートの部分もこのヴァージョンに入るので総尺が25分、しかしまったく飽きさせない。

続いてディスク2は1970年の映画「砂丘(Zabriskie Point)」のサントラ。ピンク・フロイドはサウンドトラックを担当しながら、レコーディングした16曲中3曲しか監督のミケランジェロ・アントニオーニは使用しなかった。2010年の同名のサントラにはその3曲とボーナストラックの4曲が入っていたが、この16曲は全曲初音盤化だ。冒頭と最後でコーラスの歌が入る「On The Highway」と「Climbing High(Take1)」(サントラのTake1と書いていないものとは別テイク)は爽やかで、そして5つのアレンジによる洒落たインスト「Love Scene」(サントラの2つを入れると計7曲)もあれば、ロックンロール、ヘヴィなR&Bもあり、変幻自在。「Explosion」は叫びといい明るいタッチの「Careful With That Axe,Eugene」(サントラの「Come In Number 51, Your Time Is Up」とは別物)、ピアノ主導の「The Riot Scene」は後の『The Dark Side Of The Moon』で「Us And Them」になっている。「Take Off」は「One Of These Days」の原型だろう。最後に収録月は不明だがスタジオで1970年に録音したというバンド・ヴァージョンの「Atom Heart Mother」が登場する。セット4で3回目、冒頭のバンドのライブより2分半長い。どこか違うかというとエンディングでテーマが再度登場するが最初のライブは勇壮な演奏が1回だけで終わるのに対してこちらは1度収束してあの抒情的な3連符の部分が出てきて再び勇壮なテーマになるのでその部分が多い。ただ完成度的には最初の方が上で、中間部の抒情的なパートにファルセットのコーラスを入れたり、細かい工夫があった。

ではセット4の映像だ。ラストを除き全てカラー映像である。最初に430日のサンフランシスコのライブでまず「Atom Heart Mother」がバンド・ヴァージョンで登場するが映像がアメリカの穀倉地帯か何かの空撮が延々続きつまらない。ただしCD最後の初期のものではなく前半の抒情的な部分ではメンバーの姿が映りファルセットでコーラスを担当する様が見える。また空撮になるが後半のR&B風の後半からメンバーの姿が再び登場、エンディングは短く、やはり初期のライブ構成ではない。次の「Cymbaline」「Grantchester Meadows」「Green Is The Colour」は歌っているギルモアのアップが多く(「Grantchester Meadows」はロジャーとの掛け合いだが)ここではロジャーへのカメラがかなり少ないのに気づく。「Careful With That Axe,Eugene」は肝心な部分で映像が反転とかサイケデリックな処理をされてガッカリ。「Set The Controls For The Heart Of The Sun」ではいよいよ盛り上がる部分でロジャーが銅鑼を叩くようになりさらにこの曲は盛り上がるようになった。続いて88日のフランスのサントロペでの「Cymbaline」のサウンドチェック。誰もいない会場でメンバーはみな上半身裸でロジャーにいたっては海パンだけだ。Summer Of Loveというべきか自由な時代が伝わってくる。続いてバンド・ヴァージョンの「Atom Heart Mother」が前半の抒情的なファルセットの部分から登場。続く「Embryo」は完奏する。中間の幻想的なパートはリック・ライトが大活躍だ。「Careful With That Axe,Eugene」ではロジャーの肝心な絶叫シーンはみなニックのドラミングを裏から撮るカメラで、この頃のカメラアングルの酷さを痛感する。「Set The Controls For The Heart Of The Sun」はやはり盛り上がる部分でロジャーが銅鑼を叩くので、この曲はこの時代がベストの演奏をしている。ただしこのサントロペのライブも強いライト越しのアングルで画面が暗く、雰囲気優先の演出が残念だ。内容が素晴らしいのにカメラ演出が古臭くて…。そのあと125日パリでの即興演奏「Instrumental Improvisations」と短い「Embryo」が挟まる。さていよいよ最後は718日ロンドン・ハイドパークでの「Atom Heart Mother」のライブで、ここではオーケストラ・ヴァージョンで全て見られる。バンドの目の前にフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルが演奏をフォロー、コーラスはメンバーの後ろにジョン・オリディス・コワイアが控える。残念ながらモノクロで画質もイマイチだが一切の映像処理がないのがいい。レコードの完全再現ができるので、エンディングのアンサンブルがいったん出たとのリックの不協和音のようなキーボードのあとのしばらくのミュージック・コンクリートはリックのテープ操作で流れ、そこに最後はブラスが被って、最後にピンク・フロイドと合わさって勇壮なエンディングで大団円へとつながっていく。21分という長尺で、ピンク・フロイドのライブの頂点だろう。残念なのは最後がフェイドアウトだ。

なおこのセット4のみBlu-ray1枚なのにDVD2枚、尺は短いし内容は同じなのに理由は不明だ。Blu-rayDVD1に音だけの『Atom Heart Mother』の4.0 Quad mixが収録されていたが、私にとってはレコードと同じ音源なのでどうでもいい。

セット5は1971年。CDはたったの5曲で930日のBBCセッションが収録された。最初は「Nothing Part 14」と名付けられた「Echoes」のキーボードと「One Of These Days」のベースが合わさったような作品で7分ある。そのあとは「Fat Old Sun」で後半はロック。やっと「One Of These Days」が登場、この曲は日本で当時ヒットしたことを抜きにしても今聴いてもカッコいいロック・ナンバーでワクワクしてしまう。ここでまた長い「Embryo」が登場、ピンク・フロイドの並々ならぬ愛情を感じるが、次のメンバーの誰もが傑作と言い切る「Echoes」に雰囲気や構成が似ている気がしないでもない。そしていよいよ26分半の本命「Echoes」が登場する。これだけ長尺の曲なのにキャッチーなコーラス部、R&Bタッチの演奏パート、幻想的なパート、「One Of These Days」のベースを使って盛り上げるロックパート、そしてコーラス部へ戻るとまったく飽きさせない。アルバム『Meddle』が今でも高い人気を誇るキーの曲だ。

セット5の映像は1971年で表記のあるもの以外カラー。まずは断片なのが惜しいドイツのハンブルグでの225日のブラスとコーラスを従えた「Atom Heart Mother」が最初と最後に映る。セット4最後のイギリスのブラスより明らかに上手なので全編が見られなくて惜しい。「A Saucerful Of Secrets」も断片のみ。続いて615日のフランスの教会内での「Set The Controls For The Heart Of The Sun」はロジャーの銅鑼でもりあがっていく1970年以降のヴァージョンだが、画質の良さ、正統で均等に向けられるカメラ、そして演奏の質の高さでこの曲のベスト映像だ。続く「Cymbaline」も同様だ。71日オーストリアのTVでが、ブラス・コーラス付のモノクロの「Atom Heart Mother」が見られるが残念ながらこれもコーラス部の断片のみ。しかしボーナス・マテリアルで再登場した映像はカラーで収録され、三連符に入る部分からの映像がモノクロより長く見られる。ただ三連符の部分がチェロなので音はレコードからだろう。さらにオーストラリアのシドニーのTVでは「Careful With That Axe,Eugene」のロジャーの絶叫からの断片がモノクロ。こういう断片物はみなメンバーのインタビューとセットだ。

そしていよいよ本ボックスのメイン・イベント、197186-7日の日本初来日の箱根アフロディーテの映像だ。中1の時の思い出から語ろう。当時購読していたミュージック・ライフの「プログレッシブ・ロックの旗手 ピンク・フロイドとムーディー・ブルース」という記事を読んでまずはムーディー・ブルースの「Candle Of Life/Question」のシングルを買って大満足、しかしピンク・フロイドにはシングルがない。中学1年生にとってLP1枚は今の1万数千円の値段なのでおいそれを手が出せないがどうしても聴きたい。三軒茶屋にあった今はないスミ商会というレコード店に行くとピンク・フロイドの最新盤『原子心母』が壁にかかっていた。ジャケットには乳牛だけが写っていてグループ名もアルバム名もそこにはなく、帯でピンク・フロイドと分かるあまりに斬新なデザインに、これは買いしかないと確信した。A面の組曲「Atom Heart Mother」などにすぐに夢中になり附属中学の仲間と人(中や、坂本)と行く計画を立てた。ピンク・フロイドが登場する時間からいって、泊りがけは必須。しかしまだ中2だったので親の反対にあい泣く泣く諦めた。幸い翌1972年にピンク・フロイドは再来日、東京体育館のチケットを同級生の熊谷の父親からもらって見に行くことができた。2部構成で、第一部の冒頭でThis is our new numberとアナウンスがありいきなりまだ発売されていない『The Dark Side Of The Moon』を全曲披露して度肝を抜かれた。この時のものはプロト・タイプで、レコードで聴いた時は「これは少し違うな」と思ったもの。それだけピンク・フロイドには思い入れがあったので、箱根アフロディーテの映像が見られるなんて45年来の夢、高額な本ボックスを購入した決め手はただひとつ、「箱根アフロディーテ」の映像だった。箱を開けて真っ先に見たのはこの映像だ。前から流布していた来日時のオフショットやインタビュー、そして会場での演奏風景は同じものがあり、ブートを買わない自分としてはどこが初登場なのか分からないが、曲は一番好きな「Atom Heart Mother」であり、画質が悪かろうがもう心から満足できた。インサートされた羽田空港とJAL、空港でのメンバー、箱根登山鉄道、芦ノ湖の遊覧船、大涌谷のロープウェイ、そしてホテル(おそらく記者会見を開いたホテル・ニューオータニ)、一番気難しいと言われたギルモアは笑顔でファンが差し出した『原子心母』のジャケットにサインをしている。そして芦ノ湖畔の会場と集まる大観衆、こういった素材が箱根アフロディーテと大きく書かれたステージの上のピンク・フロイドの演奏シーンと何度かオーバーラップする。演奏シーンと曲はシンクロはしていない。そのうち会場に霧が下りてくるシーンが映る。「これが伝説の箱根アフロディーテでピンク・フロイドが演奏している時に出てきた霧か!」とこのワンシーンでも感動。「Atom Heart Mother」はバンド・ヴァージョンで15分余を完奏。これだけで十分だ。映像の最後にテレビ埼玉のリクエストの文字が出たので、この映像は一部、TVで放送されたことは間違いない。

セット6のCDの内容は1972年『Obscured By Clouds』の2016 Remixなので省略。これを聴くと1969年の『More』や今回初収録1970年の「砂丘(Zabriskie Point)」から2年で曲作りとサウンドが遥かに洗練されたのは驚異的だ。このCDは日本盤では最初から入っていたディスクと差し替え用で入っていたのだが、セット6で最初に『Obscured By Clouds』のタイトルで入っていたのは『Live At Pompei』であり、セット6Blu-rayに映像付きで5曲入っているが、この「間違いCD」はさらに35秒長く叫び声も違う「Careful With That Axe,EugeneAlternative Take)」まで入っていた。交換不要なので1枚得した勘定だ。内容は映像の方で。

映像は1972年で、まずは『Obscured By Clouds』関係のモノクロ&カラー映像でスタジオシーンがうつるのみ。729日のロンドンの「Set The Controls For The Heart Of The Sun」「Careful With That Axe,Eugene」のライブで、前者は演奏も演出もさらに磨きがかかり、最も盛り上がった部分のロジャーの銅鑼の最後には銅鑼の回りから火が出る演出でさらに盛り上げた。後者もさらに完璧な演奏で文句の付けようがない。そしてバレエとピンク・フロイドの融合という「ピンク・フロイド・バレエ」は11月に行われたそのニュース映像が収録。バレエダンサーの上でピンク・フロイドが演奏している。断片だが「One Of These Days」「Careful With That Axe,Eugene」「Echoes」を歌っているシーンが幾つかはっきりと見ることができた。そしてビデオ化されていたあの『Live At Pompei』が最高の画質で収録されたのが嬉しい。録画は1971104~7日にイタリアのポンペイ遺跡で「Careful With That Axe,Eugene」「A Saucerful Of Secrets」「One Of These Days」「Set The Controls For The Heart Of The Sun」「Echoes」と60分弱もあり、「A Saucerful Of Secrets」など実際の演奏の過程が分かるものもあって素晴らしい。演奏はこの5曲も完璧、非の打ち所がないライブ演奏(観客はいない)で、メンバーの演奏シーンにポンペイ遺跡のシーンやその他のシーンを挿入しているが、メンバー演奏シーンを基本にしているので見やすい。

最後のセット7だがこのセットは1から6に入りきれなかったものを収録したので時代はメチャクチャである。CDではまずバレット時代のBBCライブが並ぶ。1967925日の6曲で、「Flaming」「Scarecrow」「The Gnome」「Matilda Mother」は録音も良く完奏。「Reaction in G」は断片、この時代にこの曲があったのかと驚かされた「Set The Controls For The Heart Of The Sun」は音質が悪い。19671220日のBBCは未発表の「Scream Thy Last Scream」「Vegetable Man」と「Pow R. Toc H.」「Jugband Blues」はレコードやセット1に比べスタジオ・ライブなのでシンプル。1968122BBCは後に『Ummagumma』の「The Narrow Way Part 1」で使われたインスト「Baby Blue shuffle In D Major」と、いかにも即興のR&Bインスト「Blues」、マンフレッド・マンのポール・ジョーンズ主役の1968年の映画『The Committee』のサントラ用のインスト「Music from The Committee No.1」「Music from The Committee No.2」と、1969BBCTV用「Moonhead」は未発表で、前者はいかにもサントラ用の軽いインスト、後者は音質は悪いが人類初の月面着陸に合わせてピンク・フロイドが即興で演奏した彼ららしい幽玄な曲だった。ラストは1974年イギルスのウェンブリーでの24分を超す「Echoes」のライブで、サックスが入っているのが面白い。

映像は2枚ありディスク1には19675月にロンドンで放送された演奏なしの「Arnold LayneAlternative Version)」、1969722日にドイツで放送された演奏なしの「Corporal Clegg」と演奏シーンも含めた「A Saucerful Of Secrets」はどちらも音源はレコード。70年にイギリスのバースでのライブにホーン・セクション&コーラス付きで出演した「Atom Heart Mother」の一部、1970728日にオランダのロッテルダムのライブに出演した時の「Set The Controls For The Heart Of The Sun」と「A Saucerful Of Secrets」の一部を集めたものは画質はイマイチだがカラー。1972522日にオランダのアムステルダムのライブに出演した時のナンバーは「Atom Heart Mother」「Careful With That Axe,Eugene」「A Saucerful Of Secrets」で、「Atom Heart Mother」はバンド・ヴァージョン、カットは無いが回りの話し声が入ったりカメラが1カメでふらついていたりと完全なオーディエンス画像。1972年という最も充実した時代のライブなので、ブートを商品化したのは英断だ。ディスク2は映画『More』と映画『LaValleeObscured By Clouds)』が丸ごと収録され、カルト映画ファンにはたまらない贈り物だろう。

あとコロンビア時代の初期アナログ・シングル5枚のオマケあり。(佐野邦彦)


 


2016年11月16日水曜日

☆Rolling Stones :『Havana Moon』(Eagle Vision/EVB335549)Blu-ray+2CD


今年の325日、アメリカと劇的な国交回復した社会主義国キューバに、自由の象徴と言えるローリング・ストーンズが一夜限りのコンサートを行った。なんと集まった観客は120万人!どこまでも広がる人の波に、ストーンズにとっても特別の思いのあるコンサートになった。アメリカの54年に及ぶ経済制裁は、ある意味キューバの時間を止めた。それまでアメリカの植民地のようだったキューバは、社会主義革命でアメリカと国交断絶、その当時町に溢れていた数多くのアメ車は買い変える方法も金もないのでそのまま大事に維持するしかなく、今になればキューバの町中がレトロなアメリカのクラシック・カーで溢れ、タイムスリップしたかのような非常に魅力的な光景が味わえる。ただ冒頭で、俯瞰で映るハバナの街並みは老朽化が進み、まるでスラム。ただ南国の良さというか、キューバの社会主義は、ソ連式の抑圧、中国式の拝金、北朝鮮の王朝ではなく、おおらかで、やる気が乏しい反面人生を謳歌しているようで、暗さがない。リズムがあれば体が動くラテンの血。ストーンズのロックはもちろん初体験になるわけだが、みな心から楽しんでいるようだった。ストーンズも他に類を見ない大観衆を前に、歌も演奏も超人的なパワーを発揮し、特に73歳のミックとキースのエネルギーとスマートさには驚くばかりだ。(先日、ついに長編アニメーションをスタートさせる宮崎駿は75歳、神様はその道のトップで意欲のある人だけに力を授けてくれるようだ)曲はBlu-rayCDともに18曲収録され、これは2月からチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、ペルー、コロンビア、メキシコ、キューバと続く中南米ツアーと同じパターン。共通するのはアンコールの「You Cant Always Get What You Want」「Satisfaction」で、セットリストも「Jumpin’ Jack Flash」「Its Only Rock’n’ Roll」「Paint It Black」「Out Of Control」「Honky Tonk Women」「Tumblin Dice」「Midnight Rambler」「Miss You」「Gimme Shelter」「Sympayhy For The Devil」「Brown Sugar」「Start Me Up」はずっと共通でその他の曲が変わる。曲順とかはハバナ前の317日のメキシコシティのものが似ていて「You Got The Sliver」「Angie」は同じで、「Before They Make Me Run」「All Down The Line」がハバナ用に歌われた。みないい出来だが、個人的にはキースとロンのボトルネックのブルース「You Got The Silver」がカッコ良かった。ハバナ用と言えるのは、「You Cant Always Get What You Want」のコーラスがキューバのコーラスグループEntrevocesを使っていたこと。「Satisfaction」のあとのカーテンコールが非常に丁寧で長いのにストーンズのコンサートへの思いが感じられた。最後にひとつ。これだけの大観衆なのに会場の光が少なく寂しく見える。お隣の国の大統領退陣デモは26万でもクリスマス・イルミネーションのような光の波。これはスマホを持っていてそれを光らせているかの差で、キューバの貧しさをふと思った。楽しそうなのでいいけどね。(佐野邦彦)

2016年11月7日月曜日

☆「手塚治虫表紙絵集」(玄光社)


「手塚治虫表紙絵集」は、これはマンガファン、特に手塚ファンにとっては涙ものの本だ。フルカラーで掲載1200点以上。この本に掲載された本の総額は数千万円は間違いなく、逆に1億払っても揃えられない、要は幾ら払っても手放すコレクターがいないウルトラ・レア本がずらりと揃っていて驚いた。単行本の表紙は時系列に並んでいるので前半にそのウルトラ・レア超高額本が揃っている。これらは拝むだけでいい。出版社の変更、そして初版・再版・3版で表紙も裏表紙も完全に変わっている単行本がいくつかあって、手塚治虫の大ファンだが手塚コレクターではない自分にはこの昭和20年代の単行本はとても手が出せない高値の花だったので初めて見たものもある。

自分がマンガに目覚めたのは遅く、高217歳、1974年の時だ。体調が悪く自分が病気と思い込みあらゆる病院を回っていた。ドクターショッピングだ。心身症になってしまったので、治らない。高校は病院へ行くので欠課の嵐、高2、高3でそれぞれ200時間以上欠課していた。よく卒業させてくれたものだが、大病院の待ち時間は長く、そこで何か時間つぶしで楽しく読めるもの…と思い、自分のお金で最初に買ったマンガ単行本が「W3」だった。理由はアニメは見なかった(裏番組が『ウルトラQ』だったのでほとんど見た人がいない不遇なアニメ)がタイトルを知っていたから。さて読みだしたらあまりの面白さに順番待ちなんて逆に早く呼ぶなと思うほどで、最後のタイムパラドックスの絶妙なエンディングに、感動で震えてしまってマンガって何て面白いんだ、手塚治虫って天才だとその日から手塚マンガを貪るように買って読み始めた。手塚作品の中でも最も好きな本を最初に買ったなんてこれは運命としかいいようがない。まだ講談社の手塚治虫漫画全集が出る前だったので秋田書店と朝日ソノラマしか単行本がなかったがそこで「ノーマン」「どろろ」と未だに手塚マンガで好きなトップ5に入るマンガを読めたのでますます夢中になる。この当時、ある程度揃っていたのは小学館の手塚治虫全集で1968年~72年に40冊出たが既に絶版、虫プロ商事の倒産で虫コミックス7冊の市場から姿を消し、絶版になったばかりなのに既に古本屋では高かった。まあ中目黒の書店兼貸本屋みたいな店で店の隅の最下段で見られない棚に手を突っ込んだら大量の虫コミックスが出てきて定価で買えることもあった時代だった。思い出すのは、期末試験の時に気分転換にとふと「火の鳥」を読みだしたら、再読なのにあまりの面白さに止まらなくなり、朝になってしまって、勉強できなかった上に徹夜なってしまった失敗談だ。長編に手を出しちゃいかんね。

自分は手塚の入手できる本を買えるだけ買ったあと、その頃、渋谷のディスクポートの本屋で買っていたので手塚の隣が石森章太郎、そのとなりがちばてつやで、絵柄が1968年までが好みと分かりそれ以前のものは手塚と同じく面白く大好きで一気に集めたが、ただ手塚が違うのはどの時代も全て面白かったところだ。手塚は講談社の手塚治虫漫画全集400巻が1977年から始まり、手塚はこれで読めると、古本のコレクティングは他にシフトしていく。というのもすっかりマンガコレクターになった自分は、古くは水野英子、新しくは吾妻ひでお、諸星大二郎、大友克洋や、萩尾望都などの24年組の少女漫画など集めるようになっていたので、高額な手塚治虫本に手を出せなかった。高校卒業後3年間も大学に行かず、友人達と毎日古本屋、貸本屋を回っていたが、勝負はその頃週に1度デパートで開催された古書展だった。ここではオリジナル単行本や雑誌が当時の古本屋より安価で買えたし、何より出る時は大量に手に入った。(今は高額な60年代のミュージックライフやティーンビートも数百円だったので、今考えるともったいないが、音楽雑誌は必要な部分だけばらして保管してしまっていた)この古書展ではライバルの早大グループがいて、ひとりは手塚治虫しかコレクティングしないクールながらフレンドリーなT1君、もう一人は吾妻ひでお専門の若干とっつきづらいT2君だった。T2君とは最近の『ワンダーAZUMA HIDEOランド2』の制作過程の最後の方で、出版社経由で協力を依頼しメール交換をしていたが、私が本の内容に口を出し過ぎると出版社に嫌われ以降これっきりのまま。ただのアイデア提供でおまかせ…程度の仕事なら出版社とする必要もないのでもうどうでもいい。そしてT1君とは今でも年賀状のやり取りを続けていたが、この本の協力者に名前があってとても嬉しかった。高松直丘さんだ。高松さんは特に昭和30年代の雑誌を集めていたと思うが、少女クラブなどに水野英子が載っているとバッティングしてしまっていたが、重複したものを手にしたときは回していた。この頃の古書展はその手の本が出るのはだいたい1~2店くらい、一人で総取りしてしまうので、そこはトレードや分配もある。しかし一番乗りを果たすためデパートの店員の制止など一切無視、エスカレーターを駆け上がり、早く上がった方が勝利をほぼ引き寄せていた。

つぶれた貸本屋もねらい目で、ある時本はみな倉庫にしまってあるというので頼み込んで連れて行ってもらったら開けると3mくらいの高さまでマンガの貸本が積みあがっている。みなA5版と古くまるで金の鉱山だ。その山によじ登って上から穴を掘るように探すとまあ98%はゴミ(貸本劇画は無知だったのでいいものがあったはず)だったが、手塚本を見つけたり、埃まみれになりながら午後の数時間、至福の時を送らせてもらったこともあった。金の大鉱脈はなかったが、金を探すという貴重な体験を送ったという意味だ。

高校を含めると5年間もロクに学校に行かず、古いマンガ三昧の日々を送ったことは今も少しも後悔していない。日課のようにまず高田馬場と早稲田の中間にある古本街へ行き、神田の古本屋街も少し見る。神田(お茶の水)は専門書中心、高田馬場は一般書が多く圧倒的に高場馬場が良かった。まんだらけが出来てからは中野へ行き、さらに八王子など中央線の古本屋を狙う。もちろん遠征も多数。古書展がある日は1日のスタートはそのデパートから。事前に店の配置を下見して、エレベーターの方が速い場合があるのでそのシュミュレーションもしておいた。回る順番でお昼はお茶の水の書泉グランデ先のキッチン南海のカツカレーを毎度のように食べていたが、今もまだ残っていて名店として行列店だそうだから驚かされた。

集めるだけでは満足できなくなり、1980年代はマンガとアニメのミニコミを10年間に30冊作って多くの著名なマンガ家やアニメーターに会えて色々協力いただけたからだ。コミケも10数年出店、いわゆる壁を背にする「壁サー」だったのでコミケもずいぶん楽だった。

90年代以降は音楽ミニコミのVANDAをはじめ、社会人になって十数年、まあよく両立できたもの。月1回の職場の半休はRadio VANDAというスカパーの番組の収録のためのもので、そのおかげで、家族4人で10年以上沖縄離島へ旅行できた。もちろん職場にはナイショでね。年休は20日使用しないと間に合わず、年休を使わない部下には最低月に1日使えと言っていたっけ)

ただし古書展で昭和20年代の描き下ろし単行本は出てこない。この当時から非常に高額で、手塚一本じゃないと集められるようなものではない。その当時、神田の中野書店という所が常設店では先駆けだったが、ほどなく中野ブロードウェイに小さな店舗のまんだらけが出現、ここは今までの古本屋は11冊の値踏みをせずまとめていくらなどのいいかげんな買い入れをしていたが、まんだらけは、11冊値段を付け、手塚など高額で売れる本は他の店を圧倒する高額で買い取ってくれた。そのため全国から手塚の高額本が集まるようになり、店はどんどん拡張していった。店主の古川さんの家も昔行ったことがあるがその頃は国領の小さなアパートだったが、今はプール付きの豪邸だというからまさにサクセスストーリー。それもやはりいいものは高額で買うという姿勢と目利きが生み出したものだ。

さて、ずいぶんと思い出が長くなってしまったが、この表紙だけの本に興味を持ってもらうためと勘弁していただきたい。

昭和20年代のB6単行本は目も眩むほど貴重だが、描き版だったり絵の魅力という点では個人的にはイマイチだ。「漫画少年」連載の「ジャングル大帝」の単行本から魅力が出てくる。以降は雑誌の時代になり、雑誌付録表紙も網羅しているので絵を見ていても実に楽しい。そして1958年から1963年まで鈴木出版で刊行されたA5の手塚治虫漫画選集は25冊まで出たが、これは表紙も最高に美しく、そして冒頭が色指定だが42色が交互で作られ、個人的には一番魅力的だった。自分も昔集めたので非常に懐かしかった。1980年頃だったと思うが池袋西武デパートで3日連続サイン会があり、初日の手塚が先着20名、2日目の石森章太郎が先着50名、3日目の松本零士が先着100名で3日並んでみなサインをもらった。手塚先生には確か鈴木出版の「虹のとりで」を持っていって友人が「バンビ」を持っていきそれぞれ凄いねーよく持ってるねと声をかけていただいたが、美本マニアの友人は、手塚先生のサインが裏抜けして本が汚れたと後悔していたのを思い出す(笑)石森先生にも曙出版の「少年同盟」を持っていき「君はISFC(石森章太郎ファンクラブ)でしょ!」などすごく声をかけてくれたが、松本先生は本人が嫌いな少女漫画の「銀の谷のマリア」を持っていったので無視された(笑)今は「少年同盟」しか残ってなくどこかへ行ってしまった。知識のない自分は手塚治虫が単行本を出すたびに大幅に加筆訂正するのを知らず。全集が出ると資金稼ぎに貴重な古い本をみな売ってしまった。今となっては惜しい限りだが、もう集めなおすことなど不可能なのでこの本を見て我慢しよう。講談社の全集の表紙全部まで入っているという徹底ぶりだ。絶対におススメしたい。(佐野邦彦)

 

2016年11月5日土曜日

☆『SONGS松任谷由実 宇宙がつなぐ歌と記憶』と『SMAP×SMAP』でのコラボか感動的。そしてユーミンの最新アルバム『宇宙図書館』(Universal/UPCH29230)を紹介。


113日放送のNHKの「SONGS松任谷由実」が感動的だった。そして1031日の「SMAP×SMAP」も。『SONGS』ではユーミンは3曲、ストリングス付の生バンドで歌ったが、心を打ったのは、NHKからNASAを通してソユーズにいた日本人宇宙飛行士の大西さんとの宇宙中継だった。そこでの大西さんはユーミンの「地球にいるどなたかを思い浮かべるとしたら?」の質問に対して「やっぱり家族ですね。幸い(クルーがいるので)宇宙に来て孤独を感じることはありません。でも「孤独を感じないということ」イコール「さみしさを感じないということ」ではありません。大切な人に会うためにしっかりと元気に帰りたいと思います」と答え、ユーミンは大きくうなずき、このあとユーミンは「ああーなんか涙が出そうになりました。いくつかの答えに。本当にハートウォームな時間を過ごせました。」と目を潤ませていた。その前のユーミンの質問の「宇宙でも人は音楽を求めるものでしょうか」に対し大西さんは「宇宙ではとっても無機的な音で満ちているんです。地球で感じるような風の音だったり、雨が窓を叩く音だったり、雷の音だったりそういう自然の音がここにはまったくないんです。で、音楽っていうのも人が作った人工的なものなんですけど、そこには曲を作った人の血が通っていて、音楽は宇宙ではとても生きているように感じます。私にとって音楽は無くてはならない存在です」と答え、続けてユーミンが「私の歌を宇宙で歌うとしたらどんな歌が思い浮かびますか?」の質問には「そうですね、「瞳を閉じて」のように聞いているだけで地球の自然が、情景が思い浮かんでくる曲は、自然に頭の中に流れてきますね」、ユーミンはじゃあちょっと歌ってみますね、とア・カペラで「瞳を閉じて」のAメロを即興で歌った。この受け答えで大西さんのただの科学者ではない、文学的な表現力、感受性を感じて、自分もユーミンのように感動させてもらった。歌った歌もシングル曲でオリジナルアルバムには入っていない1984年の「VOYAGER~日付のない墓標~」、そして1983年のアルバム『VOYAGER』から「不思議な体験」、そしてニューアルバム『宇宙図書館』から「宇宙図書館」の3曲を歌い、とても歌詞に意味のある3曲で、選曲の良さが溢れていた。番組内ではソユーズからの地球の昼と夜の光景が実に美しく、昼は青く輝き白い雲が帯をなし、夜は人間の住む場所の明かりが大陸や島を縁取る。そして昼も夜も雷の光の瞬きがアクセントを添えていた。

そして「SMAP×SMAP」ではメドレーで『宇宙図書館』から「Smile For Me」、そして1981年のシングル「守ってあげたい」を6人で歌い、始終ユーミンは満面の笑顔でメンバーの一人一人の目を見ながら歌っていた。最近の「SMAP×SMAP」はクイズで回答者のリアクションのみ映し他のメンバーのリアクションを一切映さないなど、不仲の部分を隠すカメラアングルに終始していて実に冷え冷えとしていたのだが、最後の「守ってあげたい」ではユーミンを中心に5人がユーミンを見るように囲んで、つまりメンバーのお互いの顔をはっきり見るアングル、そこでユーミンは満面の笑顔で「so don’t you have to worry,worry 守ってあげたい あなたを苦しめる全てのことから ‘couse I love you」と歌ったのでこれは感動的だった。

自分は日本の音楽はユーミンと山下達郎、大滝詠一、そして甲本ヒロト&真島昌利の5人が本当の天才と確信しているのだが、この両番組を見て改めてそのことを再確認した次第。

さて、では最新アルバム『宇宙図書館』を簡単に紹介しよう。アルバム12曲中5曲がアル・シュミット・プロデュースによるLAの録音となっている。「宇宙図書館」は宇宙がテーマではなく失った人に対する思いを歌った美しいバラードだ。サビの展開の心地よさがさすがユーミン。全体的に染み入るような曲が多い中、自分の好みはLA録音で、オールドタイミーなジャズタッチの「月までひとっ飛び」そして前述の「Smile For Me」はシャッフルビートが心地よい開放感溢れる曲で大サビの見事な転調とアコギの使い方は最高。そして60’sを思わせる軽快なポップナンバー「君(と僕)のBIRTHDAY」が、高揚感があってまさに自分の好みそのもの。ミディアムのバラードの「私の心の中の地図」もなかなかいいし、5曲中4曲がおススメとなった。(佐野邦彦)


2016年11月1日火曜日

大人気の「真田丸」。その真田丸の実証実験、真田の戦いの歴史、なぜ日本政府と豊臣が同じ桐紋なのか、そして日本各地の戦国武将や古今の武将の祭りについて紹介しよう。


家族で夢中になって見ている番組はNHKの「真田丸」だ。もともと「週刊江戸」という雑誌を全巻買ったほどの江戸時代好きだがそれは日本独自の文化が好きなのであって特に戦国武将のファンという訳ではなかった。しかしその中でも真田幸村(本名は信繁だが以降この名中心で表記する)の勇猛果敢さと知力、忠義ぶりに魅かれていたが、その真田家の大河ドラマが始まるというので、今まで一度もまともに見たことがない大河ドラマを、「真田丸」では初回から録画もしつつ、家族で揃って見始めた。妻は戦国時代に興味はなかったが、長野出身である。信州の英雄である真田幸村なので妻のほうから見なくちゃという話が出た。息子は戦国時代をはじめ、日本の戦い全てと古代中国の戦いが好きな戦記マニア。これでSF系とゲーム以外に興味がないもう一人の息子以外の3人で夢中になって見ることになった。現在は大坂城に入場した真田幸村が大坂冬の陣のために、タイトルにもなった出城の真田丸を築城するところだ。圧倒的な徳川勢を迎え撃つ豊臣方の中心となった幸村が、その作戦を豊臣の中枢に否定されてしまうが、幸村の力強い支えとなる後藤又兵衛(基次)、毛利勝永と心が通じ合い、血沸き肉躍る瞬間が始まるところ。
最近この真田丸の真実をまずBSテレビ朝日が特集し、そしてNHKBSプレミアムで「大坂冬の陣・真田丸徳川撃退の秘密」で実証実験を行った。ここでは真田丸は今まで言われた大坂城の城壁の一部ではなく、徳川勢を迎え撃つために大坂城の弱点である南側に、幸村が出城として構築したもので、天王寺区にあったという事が分かったという。戦闘用の出城なので天守閣など作らず、宿営地として既存の寺を使った。ここからのNHKの実証実験が面白い。当時の火縄銃の射程は30mなので堀幅は40mで堀の向こうからの徳川の弾丸は当たらない。堀の深さは8mで真田丸の塀は2mで計10mの高低差がある。堀に降りると①「まきびし」に先を尖らせた木を組んだ「乱杭」がありまず容易に進めず、②次に火縄銃の命中精度が高い20m先に柵があり、それを超えると③に徳川の進行を妨げる先を尖らせた木を組み合わせた「逆茂木」がある。さらにその先には④土を格子状に掘った「障子堀」も抜けないといけない。この実験のため①のかわりにペットボトル、これを倒したらそこで負傷離脱、②は簡易に作った高い鉄柵、③は「逆茂木」をどけないといけないので積んだタイヤをパイロンに移し替えないといけないとし、④はトラックの荷台を乗り越えることにした。迎え撃つ真田軍は塀に縦横15㎝の隙間しかない「鉄砲狭間」からサバゲーの銃を1発撃つが、当時の火縄銃と同じで20秒間隔としタイマーを渡される。場所は実験の舞台となった学校の3階。さらに真田丸の塀は2階建てだったので2階部分は火縄銃を持った塀が自由に走って撃てる「武者走り」があり、そこは一つ上の屋上部分だった。真田丸の火縄銃は2階建てなのでそれぞれの角度で死角を補い、障害物にてこずる徳川勢を狙い撃ちできる。実験では真田軍は12階に5人ずつ配した計10人、徳川勢は50人。これは実際の大坂冬の陣での真田軍3000人、徳川勢15000人の5倍の兵力差を当てはめたものだ。するとこの実験で徳川勢は42人が討ち死に、8名しか生き残ったものはいなかった。まるで「風雲たけし城」を見ているかのようで爆笑しながら見れて楽しい。

もうひとつの実験は門。門は真田の得意とした最初門は破られると仮定して「桝形」と呼ばれた90度曲がったところに作った第2の門だ。徳川軍は丸太を4人で持って5歩下がって10回門をつけば徳川軍の勝ち。長野の松代城(「犬伏の別れ」で徳川方に付いて幕末まで大名として残った兄の信之の城)を使い、真田軍は第2の門の上の左右前方と3方向から攻撃ができる。城を傷つけられないのでサバゲーの銃の代わりにカラーボールを20秒毎に投げるのだが、真田軍10名に対して最初は徳川軍30名で門を破ろうとしたが5回突いたところで全滅、次に徳川軍を50名に増やすと狭いところに徳川軍のしかばね累々で身動きできず逆に4回突いただけで全滅してしまう。実際に大坂冬の陣で徳川軍は真田丸で大きな敗北を喫して撤退し、和睦の代わりにこの真田丸の破壊も条件とした。

戦上手の父の昌幸は2回にわたり上田城で、大軍の徳川軍を打ちのめしている。最初は2000人の手勢で徳川軍7000人を死者1300人と葬り、真田の死者は10数名と圧勝だった。関ヶ原の戦いでは2000人の真田軍に対し徳川秀忠は38000人で攻めたが完膚なきまでに叩きのめされ、秀忠軍は小諸へ撤退を余儀なくされている。幸村は父と共に戦い、その知恵をしっかりと吸収していた。

大坂冬の陣後の和睦で豊臣方は、真田丸を壊され、大坂城で最も大事な堀をすべて埋められ防御がなくなった夏の陣で、六文銭の旗に真っ赤な甲冑の「赤構え」の真田軍が一気に徳川軍を切り裂き、徳川家康の本陣へ突入、馬印まで倒し、徳川家康に2回自害を覚悟させた総攻撃が行われる。当時の絵図にも真田軍のみ真っ赤で覆われ、まるでシャアだ。カッコ良さに惚れ惚れしてしまう。結局多勢に無勢、幸村は討ち死にするわけだが、家康は何度も「これは真田の首か?」と尋ね、都合父子で4回も煮え湯を飲まされた真田を恐れ続けた。事実、大坂夏の陣の前、家康は幸村に徳川方についたら信濃一国を与えると調略したが、幸村は「日本国の半分を与えると言われてもお断りします」と男気を見せた。この幸村の最後に薩摩の島津忠恒は「真田日本一兵(つわもの)古よりの物語にもこれなき由」と絶賛、諸大名は真田の武勇にあやかろうとその首から遺髪を争って奪い合い、守り神にしたという。徳川家康の懐が深いところは、豊臣と石田三成の事は徹底的に弾圧したが、散々やられた真田幸村に関しては、「負けと分かっていても最後まで主君に尽くした忠義者」としてその勇猛果敢さを伝えることを禁止しなかった。そのため江戸時代でも「真田十勇士」などとして庶民の心に残っていった。

たとえ幸村が家康の首を取ったとしてもすでに征夷大将軍は秀忠に譲っており、大将ではなかった。そして幸村の最初の名案である、秀忠軍が来る前に、籠城と思っている家康の裏をかいて撃って出て京都をおさえ伏見城にいる家康の首を取るという策を、真田達を浪人者と軽んじた豊臣上層部が拒絶、大坂冬の陣の真田丸でも徳川に裏切るための出城ではないかと疑われ、大坂夏の陣では城は無防備にされ、大将の秀頼が出陣すれば士気が大いに上がると進言しても息子可愛さの淀殿に断られ、まあ豊臣中枢ははっきりいってボンクラ揃い、豊臣の滅亡は必定だった。

ちなみに豊臣家の桐の紋章は、日本政府の紋章と同じだが、これは朝廷では菊紋に次ぐ紋章で、足利尊氏、豊臣秀吉らが用いていたが、現在は日本政府が用いている。

この「真田丸」で本編の後に真田ゆかりの地が紹介されていくのだが、関ケ原合戦のあと西軍で秀忠軍を破った真田昌幸・信繁(幸村)親子に秀忠は強硬に死罪を主張したが、昌幸の長男の信之とその妻の父である徳川の重臣・本田忠勝の必死の嘆願で、和歌山の九度山村に流罪となり14年間(徳川の許しはなく昌幸は死去、残る幸村が脱出するまでの期間)幽閉され、信之は生活に困窮する昌幸・幸村に援助を続けたのだが、その九度山村では今でも真田の祭りを行っていること、高野山の蓮華上院に真田の位牌が祀られていることが紹介され、母親から興奮して電話がかかってきた。母の実家は九度山の隣の和歌山のかつらぎ町であり、ここら一体では住民が亡くなったあとはみな蓮華上院に戒名を付けてもらうように1日待つことが習慣であって、東京にいた母親の父が亡くなった時は和歌山まで送って蓮華上院で戒名を付けたということを嬉しそうに語っていた。(父と私は東京生まれだがまだ2代、息子2人から3代となるのでそこから江戸っ子。ただし厳密には下町生まれなので、世田谷生まれの我が家は微妙である)

そして別番組では、大阪では今も真田幸村は英雄で、銅像が建てられるなど愛されていることが嬉しかった。長野だけでなく、大阪、和歌山でも愛されていたのだ。

ただ私は徳川家康も高く評価している。応仁の乱から100年続いた戦国時代を終わらせ、262年も続く戦争のない太平の世を作り、外国の侵略を許さなかったからだ。

最後に日本各地で行われる武将の祭りを紹介して終わりとしたい。

真田幸村の人気は高く、戦国ゲームや戦国武将好きのアンケートでは織田信長を抜き首位、そしてこの2人に続くのは上杉謙信、伊達政宗、武田信玄が常に上位を占めるが、父の真田昌幸も続く。最近は石田三成も上位に入っていた。徳川家康、豊臣秀吉はその下であり、戦国時代ファンの間では後塵を拝している。真田家は各地で愛されていて長野の上田真田祭り(昌幸・幸村)、松代で松代藩真田十万石祭り(信之・幸村)、和歌山の九度山真田祭り(昌幸・幸村)、さらに群馬の上州沼田真田祭り(信之)と4か所で行われ、その高い人気を誇る。他では岐阜と滋賀の安土町で織田信長、愛知の岡崎と静岡で徳川家康、名古屋・京都で豊臣秀吉、そして名古屋市まつりでは織田、豊臣、徳川が名古屋ゆかりと三英傑まつりとして総取りしている。甲府では武田信玄(小学校の頃に武田信玄の風林火山の旗印に惚れて習字の作文はこの長い漢文の旗印を書いた。ちなみに祖父母は山梨)、で武田勝頼のまつりもある。上越市ではもちろん上杉謙信だが、関ヶ原後に跡継ぎの上杉景勝が山形の米沢に移封させられたので米沢でも上杉祭りが行われる。宮城の大崎市で伊達政宗、熊本では加藤清正、金沢で前田利家、小田原で北条(早雲から氏直まで5代)といった有力武将があるが、福井で朝倉義景、大分で大友宗麟、高知で長宗我部元親など若干地味な武将も数多くあり、古くは源平で源頼朝は鎌倉ではひっそりだが頼朝が上陸した千葉の鋸南町で行われ、平清盛は広島で行われている。平家を倒した立役者でありながら頼朝に殺された源義経の方がずっと人気があり、鎌倉、岩手の平泉の藤原まつり(奥州藤原氏)のメイン、そして福島の国見町とゆかりの3か所で行われている。茨城では戦前では考えられなかった平将門まつりがある。戦前の皇国史観では朝廷に逆らった足利尊氏、平将門らは大悪人と教えられ、まつりもなかった。今も足利氏のまつりはないが、京都の時代まつりに戦後から室町幕府も加わった。徳川家康→狸親父といったネガティブなイメージングは明治政府が前政権を貶めるための行ったものだ。戦前は大英雄の楠木正成は神戸の湊川でまつりがある。幕末の中心の薩長では、鹿児島で島津家を祀った照国神社の六月灯で目立たずひっそり(祭りはないが鹿児島では西郷隆盛が圧倒的な人気で、子供用の偉人伝から揃っている。一方、大久保利通は人気なし)行われるだけ、萩では萩時代祭として毛利の大名行列があるが奇兵隊の方が人気があるもよう。坂本龍馬は個人で高知・京都で、負けた幕府側では会津まつりで会津藩を偲び、箱館五稜郭祭では官軍VS榎本・土方軍とあるが土方歳三に人気、東京の日野市でそのハンサムぶりで圧倒的人気がある土方歳三の出身地としてひの新選組祭りが行われている。(佐野邦彦)