2016年1月16日土曜日

The Pen Friend Club:『Season Of The Pen Friend Club』(Penpal/PPRD-0001) 平川雄一インタビュー


 The Pen Friend Clubがサード・アルバム『Season Of The Pen Friend Club』を今月20日にリリースする。
 The Pen Friend Clubは漫画家の平川雄一により2012年に結成され、これまでにリリースした2枚のアルバムと2枚の7インチ・アナログシングルが、60sポップス・ファンや音楽マニアの間で常に話題となっていた。平川自身も2014年末に紙ジャケCDリイシューされた、ビーチ・ボーイズの『Today!』と『Summer Days(And Summer Nights!!)』のライナーノーツを担当するなど、一級のBB5マニアとして知られている。
 また昨年来日したゾンビーズ(コリン・ブランストーンとロッド・アージェントを中心とした現メンバーによる)や現ブライアン・ウイルソン・バンドのバンマスでビーチ・ボーイズのメンバーでもあるジェフリー・フォスケットとライヴ共演したりと、音楽マニアを地で行くバンドとしては黄金の歩みを見せており、今後の活動からも目が離せないのだ。
アルバムの詳しい解説については弊誌佐野編集長のレビューを読んで頂くとして、ここでは筆者と交流のある平川氏にインタビューをおこなったので掲載したい。

ウチ(以下U):まずはサード・アルバムのリリース、おめでとうございます。
セカンドから約1年と、コンスタントにアルバムを発表できる現状をどう思いますか?

平川(以下H):ありがとうございます。
まずメンバーに感謝です。ヴォーカルが変わってライヴのレパートリーのキーが変わったり、いろいろライヴも忙しく大変な状況の中でのレコーディングでした。でもみんなそれぞれの役割を完璧にこなしてくれました。彼らの存在抜きには考えられません。
それと応援してくれるファンの皆さんにも本当に感謝です。前作、前々作が好評だったので今回からは自分のレーベル(ペンパル・レコード)から発表することにしました。
買ってくれた皆さんのおかげです。

U:自分達のレーベルを設立したことで、今後活動の幅も広がるんじゃないですか?

H:まだ始めたばかりなので今後どうなるかはわからないんですが、他のバンドやミュージシャンの作品をリリースする予定は今のところないです。やっぱり「売る」って大変な作業ですからね。
売る側(自分)が本気を出せるようなバンドやブツじゃないと難しいと思います。
今、僕が本気で取り組めるのはペンフレンドクラブ以外ないので。 ...まあ、しがない個人事業主ですしね(笑)。

U:メンバー的にはヴォーカリストが向井はるかさんから高野ジュンさんへと 変わったことでバンド・サウンドに何か新しい変化はありましたか?

H:高野ジュンは日本語詞の歌を歌った時の情感がいい感じなので、そこは今回のサードで活かされたなあと思います。「土曜日の恋人」でのキュートな歌いっぷりや「Poor Boy」のエレガントな感じとか、高野にハマったかなと。
全体的なコンセプト、趣向は以前から変わらないんですが、僕のミックスの腕がちょっとづつ向上してきているので、サウンドの変化があるとしたら原因の多くはそこだと思います。
ライヴではヴォーカル変更の影響がかなりあります。キーも変わりますしね。

U:なるほどミックスの向上ですね。平川さんはソングライティングとアレンジからミックスやマスタリング、はたまたジャケット・デザインまでお一人でやっている訳ですが、プロデューサーとしての立場からそれらを外部に任せようと考えたことはないですか?
特にミックスやマスタリングはインディーズでも専門家にオファーする場合が多々あるんですが。

H:編集作業を外部に任せたいと思ったことは一度もありません。
だって一番楽しい作業じゃないですか。何が何でも自分がやりたいです。絶対に誰にも渡しません(笑)。
毎回、必ずミックス中に身も心もボロボロになるんですけど...それだから楽しいんです。
演奏や歌は僕以外でもいいと思います。
ジャケのデザインも自分でやりたいですね。やっぱり好きなんで。

U:それは究極の音楽オタクだよ(笑)、テクノ・ユニットのメンバーみたいな。
でも分かる気はします。盆栽というか箱庭作りにも似た密室作業ってハマりますからね。
ところで話は新しいヴォーカルの高野ジュンさんに戻りますが、誤解を恐れずに言うと、声質がバンドのシンガーってより70年代MOR系のソロ・シンガーっぽいナチュナルな感触で凄く面白いことが出来るじゃないかと思いますね。
例えば「みんなのうた」やアニメソングとか、子供にも好かれる声質というのかな。

H:まさにおっしゃるとおりで、高野ジュンは元々シンガー志望で、これまでピアノやギター1本をバックに活動していまして、バンドでのリードボーカルはほぼ初めての経験なんです。
加入してまだ半年なのでこれからもっとバンドに馴染んでいくでしょうね。
今後オリジナルに関しては僕が作詞する曲が多くなりそうなので日本語詞の曲が増えていくと思います。
高野の良さが映えればいいなと思っています。






U:ではアルバムの収録曲についてなんですがオリジナル曲の比率が増えましたよね。バンドの活動方針とか平川さんの中で心境の変化がありましたか?

H:オリジナルとカバーの比率が5:5くらいがちょうど良いかなと。
これまでが少なすぎましたし、オリジナルがもっと聞きたいという声もありましたので。
いずれは全部オリジナルとかもあるかもしれませんね。
そのときはカバーのネタが尽きた時かなあ(笑)。

U:カバーネタが尽きた時って(笑)。確かにいずれは収録曲全てをオリジナルでまかなうのが理想かも知れませんが、カバーの選曲における審美眼って大事だと思うんです。
私なんかはそれが評価する目安になっております。

H:カバーは次回作を作りたくなる原動力なので、そう言っていただけると凄く嬉しいです。
次のカバー曲、なにやろうかと妄想するのが好きです(笑)。

U:VANDA的にも今回もそのカバー曲の選曲が非常に気になります。
ファーストやセカンドに比べても、バンドの顔だったビーチ・ボーイズ関連の曲が無くなりましたが、意図的にそうしたのかな?
前回からのジミー・ウェッブやフィレス関連の他にスペクターの弟子筋であるアンダース&ポンシア、またテディ・ランダッツォ&ボビィ・ワインスタインなんてマニア心をくすぐる選曲は平川さんの趣味ですか?

H:そうそう今回ビーチ・ボーイズ、というかブライアン・ウィルソン作品をやってないんですよね。ホントたまたまなんです。カバー曲を選んでいくうちに入れるスペースが無くなった感じです。
なので今ブライアン作品をやりたい欲がかなり沸いてきているので次回作は何かやると思います。
アンダース&ポンシア作は3作連続で取り上げていますね。ちなみに次回作の4thアルバムにも入れるつもりです。もうアンダース&ポンシアバンドと呼ばれても構いません(笑)。
ジミー・ウェッブにランダッツォ、山下達郎さんの「土曜日の恋日」なら先日亡くなったスナッフ・ギャレットですかね。
やっぱり作家やプロデューサーで聴いていく傾向は強いですね。

U:次回作ではブライアン作品のカバーを収録予定とのことですが、本作でその不在を感じさせないところは、平川さんのオリジナル曲にそのエレメントが息づいているからだと思うのね。それって恩返しみたいなものですよ。
それとアンダース&ポンシア作に至っては、これまでのアルバムで取り上げていて、解説で竹内修さんも書かれていますが、そんなバンドは他にいないですよ(笑)。
作家性とか作品主義ってやはり音楽の本質だと思うんですけど、先人の大瀧詠一氏や山下達郎氏の志を受け継いでいるという点で、平川さんやウワノソラ'67の角谷君にはかなり期待しております。

H:ありがとうございます。僕はただ自分の好きなことだけを、自分の実現可能な範囲内で、自己満足のためにやっている一介のケチなアマチュア・ミュージシャンに過ぎないので...
期待は失望のなんとやらと言いますしね。
というわけで、これからもアンダース&ポンシアバンドとして邁進してゆく所存です(笑)。

U:そんなバンドはこの平成の世に凄いよ(笑)。
でもアンダース&ポンシアやスナッフ・ギャレットが手掛けたゲイリー・ルイスのサウンドへのオマージュ(「土曜日の恋日」)は予想出来ましたが、テディ・ランダッツォの曲までとは想像がつきませんでしたよ。ロイヤレッツの後にローラ・ニーロもカバーしてよく知られる「It's Gonna Take A Miracle」じゃなくて、「Poor Boy」っていうのが渋いよね。
他のランダッツォ作品では「Going Out Of My Head」(リトル・アンソニー&インペリアルズ)なんか高野さんの声質にハマると思います。僕の個人的希望としては「Hurt So Bad」をBPM上げたガレージバンド・アレンジでカバーして欲しいけどね(笑)。

H:「Going Out Of My Head」いいですね〜。そういえばゾンビーズもやっていましたしね。
いずれにせよランダッツォ作品はこれからも取り上げたいと思っています。

U:昨年はそのゾンビーズや現ブライアン・ウイルソン・バンドのバンマスであるジェフリー・フォスケットとライヴ共演してかなり充実したバンド活動を送りましたね。
そんな自分達が敬愛するミュージシャン達と共演した率直な感想をお聞かせ下さい。
また今年2016年の抱負も聞かせて下さい。

H:ゾンビーズとの共演は貴重でしたし、グッとくるものがありましたね。舞台袖から見る彼らのステージも格別でした。
やっぱり曲がよくて演奏がうまかったら、もうそれ以外何もいらないなと改めて思いましたね。
楽屋でも本当にいい人たちで優しく接してもらいました。

昨年末のジェフリーとの共演も素晴らしかったです。
ジェフリーは1980初頭以降のビーチ・ボーイズ達を支えてきた僕の憧れの人です。
僕の20代は2000年代なんですが、ブライアン・ウイルソン・バンドがとても精力的に活動していた頃です。その頃ずっとブライアンの傍らにいた人と一緒にやれるなんて夢のようでした。
共演の当日、ペンフレンドクラブのサウンドチェックも見てくれて、「How Does It Feel」、「Don't Run Away」、「Newyork's A Lonely Town」とかやったんですが、拍手して褒めてくれるのが嬉しくて。
ジェフリーボーカルでのステージでは「Darlin'」、「Don't Worry Baby」、「Little Saint Nick」、「Guess I'm Dumb」、「Fun, Fun, Fun」を僕たちがバックでやりました。この選曲だけで感無量です。
楽屋ではジェフリーからいっぱいピックを貰ったり、お返しにVOXのカールコードをプレゼントしたり、スマホの中のお互いのギターコレクションの写真を見せ合って驚いたり(笑)、趣味のすごく合う友達ができてよかったです(笑)。

U:もうジェフリーとダチじゃないですか(笑)。音楽によって世代や立場を超えて繋がるって美しいことだと思いますよ。今後共演したい国内外のバンドやミュージシャンはいますか?また今年初頭の決定しているライヴ情報を教えてください。

H:もちろんジェフリーのことは尊敬しておりますよ。共演した後に僕がジェフリーにインタビューしたんです。その模様が2016年2月発売のレコードコレクターズ誌に掲載されます。
あんまり大したことは聞けなかったんですけどね(笑)。是非ご覧くださいませ。
1/24(日)高円寺HIGHでジューシィフルーツさんと対バンします。
2/7(日)タワレコ新宿店、2/28(日)HMV record shop 渋谷でインストアLIVEをやります。
3/20(日)東京倶楽部 目黒店でサード・アルバムのレコ発ワンマンLIVEをやります。
こんな感じですかね。どなた様も是非是非。
...今後共演したいミュージシャンですか?うーん...あんまり高望みはしないようにしておきます(笑)。 とりあえず日常会話くらいの英語を喋れるようにしたいですね。
(インタビュー設問作成:ウチタカヒデ)



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