2011年10月29日土曜日

☆Butterscotch:『Don't You Know It's Butterscotch』(Angelair/SJPCD359)

ソフトロックの名曲「Don't You Know」で知られるバタースコッチの唯一のアルバムがCD化された。VANDAと浅田洋さんだけでプッシュしてきたこのグループ、クリス・アーノルド、デビッド・マーティン、ゲオフ・モロウの作曲家トリオが作ったグループで、全ての曲がこの3人の作曲・プロデュース・歌であり、自作自演のグループだった。
1970年にリリースされたアルバムに、RCA、Bell、JAM、AMMOといったレーベルで1970年から1974年までにリリースされたシングル曲7曲を加えた仕様になっている。
ただバタースコッチ名義の最初「Surprise,Surprise」のシングルB面の「In The World Of Loving You」、「Don't Make Me Laugh」のB面「One Day I'll Write A Book」、「Sunday Won't Be Sunday Anymore」のB面「This Way That Way」が入らず、これらのシングルと並行してリリースされたArnold,Martin&Morrow名義のシングル4枚も入らなかった。最も問題なのは「Don't You Know」で、このアルバムヴァージョンはフェード・イン、フェード・アウトしてしまうため完全版ではない。20秒以上短く編集されている。肝心な看板曲の完全版を入れないのは困ったものだ。充実したライナーや、日本盤シングル3枚のジャケットを使うなどかなりマニアックなのに、音のセレクトがあまりに雑だったのは残念。「In The World Of Loving You」もシングルA面で十分いける高揚感に満ちた快作だったのだがいい曲が漏れてしまった。
ただ、このアルバムが、というよりこのグループのCDが出ただけで、快挙といえる。
キャッチーなメロディと弾むリズム、軽快なハーモニーとソフトロックの理想が詰まった「Don't You Know」がスマッシュヒットしただけあり圧倒的に優れているが、シングルになった「Office Girl」「Things I Do For You」「The Closer To You」「All On A Summers Day」「Sunday Won't Be Sunday Any More」もそれぞれいいメロディと的確なアレンジが施されており、アルバム曲でもバブルガム調の「Constant Reminder」や牧歌的な「Cow」がいい出来だった。ただヴォーカルは弱い。線が細いのだ。メロディもトニー・マコウレイやロジャー・グリーナウェイのような一回聴いただけですぐそのフックを覚えさせてしまうような、圧倒的なポップさに乏しい。そこが知名度、実績の差になってくのだが、この3人、後にバニー・マニロウに書いた「Can't Smile Without You」が全米3位になり、大きな実績を残している。(佐野)

Don't You Know It's Butterscotch

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