2009年10月24日土曜日

流線形 クニモンド瀧口 インタビューVol.1

流線形と比屋定篤子:『ナチュラル・ウーマン』(HAPPINESS RECORDS/HRAD-00041)



06年のセカンドアルバム『TOKYO SNIPER』が各方面で話題となり、高い評価とセールスを上げたシティポップ・ユニットの流線形が、今回ヴォーカリストに比屋定篤子を迎えたサードアルバム『ナチュラル・ウーマン』を11月4日にリリースする。
ここではリリースを控え、海外出張から帰国したばかりの多忙なクニモンド瀧口氏へのインタビューを2回に渡ってお送りしたい。

クニモンド瀧口のオウンユニットとなって2作目にあたる本作は、彼一流の審美眼に裏打ちされたプロデュース・センスと前作から定着したバッキング・ミュージシャンによるステディな演奏に、ソロアーティストとして実績のある比屋定篤子のナチュラルなヴォーカルが融合したシティポップの傑作に仕上がった。
今作のラフミックスから最終マスターまでを聴いた筆者個人の率直な感想としても、09年度邦楽ベスト1候補だと確信している。AORやシティポップ・ファンは元より、良質なポップスを追求している音楽ファンも是非入手して聴いて欲しいと願っている。

ウチタカヒデ(以下U):前作『TOKYO SNIPER』が、"ポップ・カルチャー・アワード2006"の「音楽部門BEST1」(次点の『Perfume~Complete Best~』を抑えて)を受賞して、音楽マニア以外の層にもアピールするなど、ファーストの『シティミュージック』以上の評価を得ましたが、その後の創作活動に及ぼした影響などはありましたか?


クニモンド瀧口(以下T):無いです(笑)。Perfumeに先を越されちゃいましたね。サブカル人脈から人気が高いのは嬉しいことです。以前はウチさんのような(笑)、ヘビーリスナーの支持が高かったんですが、『TOKYO SNIPER』は20代の若い方からも支持を得たみたいですね。
Perfumeの足下にも及びませんが・・・。

U:Perfumeは音楽性(「NIGHT FLIGHT」はトニー・マンスフィールド的サウンドだ)もあるけど、一時的な社会現象が後押ししていますからね(笑)。
今回ヴォーカリストに比屋定さんを迎えた訳ですが、そもそものきっかけは? 
またこれまでソロアーティストとして彼女がリリースしていた作品への思い入れなどは?

T:比屋定さんの歌はソニー時代の頃から好きで、まさかアルバムを作るなんて夢にも思っていなかったです。レーベルが一緒になったということもあり、レーベル主催のイベントでご一緒することになったんです。
それがきっかけで、今回の制作に繋がった訳です。比屋定さんがデビューした頃、大貫妙子さんのカバーを聴いたのが初めてだったんですが、その曲を聴いて以来、比屋定さんのファンになりました。中でもアルバム『ささやかれた夢の話』(99年)はよく聴きましたね。

U:ヴォーカリストのタイプとして、比屋定さんと前作の江口ニカさんでは異なる点が多いですよね。なんというかアルバムタイトルそのままに、比屋定さんはナチュナルで透明なイメージ、江口さんは個性的なハスキー・ヴォイスで独特なメロウネスを醸し出していた訳ですが、プロデューサー的視点としてサウンド・アプローチはどの様に変化させましたか?

T:江口さんは大学生の色気というか(笑)、艶がありましたね。そう考えると比屋定さんの歌は違うベクトルにありますね。
今回のサウンドの裏テーマとして"トロピカル"という部分があります。比屋定さんの育った沖縄の明るさだったり、彼女のストレートで飾らない歌を気持ち良く聴きたいということが一番大事でした。流線形でやる以上はシティな楽曲という気持ちはありますが、80年代のトロピカルブームも、僕の中ではシティ感覚なので。

U:確かに前作は、色気(笑)=コケティッシュなヴォーカルというエレメントが、アルバムのカラーにもなって、若い層にも分かり易くアピールしたのだと感じますね。
また今作では、これまでのアルバムと異なり、初めて5曲のカバーを取り上げていますよね。
比屋定さんと組むのを前提にしたことで、生まれたコンセプトでもあったのですか?

T:流線形名義のアルバムの場合、カバーはあまりやりたくないんです。やはりオリジナルって偉大なので。ただ今回は比屋定さんのアルバムという部分もあったので、セルフカバーを大胆に変えてみたり、僕の好きな曲を歌って貰って楽しみたい、というところからカバーを取り上げました。

U:次にアルバム収録曲について、先ずはカバー曲からお聞きしますが、比屋定さんのオリジナルで『ささやかれた夢の話』収録の「まわれ まわれ」は、マッシュアップ(mash up)的手法を生演奏でやった感覚が凄く新鮮でした。
原曲はホーンとストリングスが入っていて、ポップスのアレンジとしては完成されていたのですが、今回のデヴィッド・ペイチ的アプローチは意表を突くものですね。狙っていましたか?

T:こんな質問するのはウチさんだけですよ(笑)。「Low Down」(ボズ・スキャッグス『Silk Degrees』(76年)収録)にするか、「George Porgy」(『TOTO』(78年)収録)にするか迷いましたね(笑)。「まわれ まわれ」はオリジナルがゴージャスなので、音数を減らすことと、それでいて保てるアレンジを考えた時、リズムをベースに考えました。周りは最後まで完成系が見えなかった曲だったと思います。

U:踏み込んだ質問ですみません(笑)。でも「Low Down」も候補に挙がっていたのは興味深いです。同じくペイチが作曲した曲ですが、あのハネ方での「まわれ まわれ」も面白そう。
同じく『ささやかれた夢の話』収録の「メビウス」ですが、アレンジ的には07年9月のライヴイベントで披露したアレンジと同じでしょうか。Deodato系のブラジリアン・フュージョンをベースにしたアレンジは、オリジナルのアルバムヴァージョンにも近い訳ですが、瀧口さんが特に拘ったポイントはありますか?



T:ライブでは、僕がソリーナとアナログシンセを弾いていました。おっしゃるように、オリジナルがDeodatoの「Skyscraper」(『Deodato 2』(73年)収録)をモチーフにしたものだったんですが、これはインパクトが強すぎて、アレンジを変えるにもどうしようもなかった曲です。
というか、「Skyscraper」は僕も大好きなので、ただやりたかっただけなんですが。ベースとかホント気持ちいいですもんね。アルバムでは、弦を使ったことと、ギターの山之内くんにはジョン・トロペイになって貰いました(笑)。

U:「Skyscraper」のベースラインは本当に気持ちいいですね。これってよく聴くと、Archie Bell & The Drellsの「Tighten Up」(68年)的ファンクネスなんですよね。山之内さんのトロペイ風ファズを利かせたギターソロにもにんまりです(笑)。それとやはり「メビウス」はオリジナルから既に名曲でした。
「オレンジ色の午後に」(『ルア・ラランジャ』(99年)収録)はオリジナルのジョビンの「Wave」を思わせるクラウス・オガーマン的サウンドとは異なる、シャッフルを基調にしたコンボバンド系アレンジが新鮮ですね。

T:これはマイケル・フランクスの「Don't Be Blue」(『Sleeping Gypsy』(77年)収録)的なアプローチで考えてみました。小粋な感じにしたかったんです。サックスのヤマカミさんがいい味出していると思います。

U:成る程、ではヒットミー(ヤマカミ)のアルトサックスはサンボーンのあれなんだ。
このアレンジはケニー・ランキンにも通じるし、日本ではシュガー・ベイブ~初期の山下達郎的ピースフル・サウンドで清々しいですね。

以下Vol.2へ続く


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