2009年4月3日金曜日

Cowsills:『Captain Sad And His Ship Of Fools』(New Sounds/crnow7)

カウシル一家によるファミリー・バンドのカウシルズ(The Cowsills)は、一見、企画ものに見えるが、地元のクラブでのライブ活動を見初められてデビューしているので決してポッと出のバンドではない。
ただし兄弟4人に加え母親、妹が順に加入するなど、当初のプロデューサーのアーティー・コーンフェルドの意向が透けて見え、シングル曲はプロ・ライターが書くなど、プロの手によって演出されたバンドでもあった。その中でカウシル兄弟のオリジナルも多く、言いなりではなく、アーティスト志向は当初から強かったといえよう。このカウシルズで価値あるアルバムはデビュー作の『The Cowsills(67)、セカンドの『We Can Fly』(68年)、そしてサードの本作(68年)の3枚で、その中でも最高傑作は文句なしにこの『Captain Sad And His Ship Of Fools』だった。アーティー・コーンフェルドの書いた全米2位の大ヒット「The Rain,The Park And Other Things」を核にしたファーストはコーンフェルドのプロデュースのもと、12曲中、純粋なオリジナル1曲、プロ・ライターとの共作が6曲で全米31位だったが、コーンフェルドのソフトロックを代表する超名曲「We Can Fly」をメインにしたセカンドではアルバムのプロデュースはカウシル兄弟が担当、純粋なオリジナル3曲、プロ・ライターとの共作6曲と、オリジナル色を強めたがチャートは89位と下がってしまった。そこでこの『Captain Sad And His Ship Of Fools』ではプロデュースをウェス・ファーレルに依頼、純粋なオリジナル3曲、プロとの共作1曲のみと、残りの2/3を外部ライターに発注して、トータル・アルバムとして仕上げた。残念ながらチャートはさらに下がってしまったものの、ポップで価値ある曲が並んだ、ソフトロックを代表するアルバムの1枚になった。飛びぬけた曲はないものの全ての曲のレベルが高い。これらの3枚は当時、MGMからリリースされているので、現ユニヴァーサル系のレコード会社が直接出せばいいものの全て切り売りしていて、ファーストが1994年にRazor&Tieから、セカンドが2005年にCollector's Choiceから、そして本作が2009年にNow Soundsからと、15年もかけてようやくCD化が実現した。なぜこの傑作がCD化されないのか、切歯扼腕していたのでこれは朗報、やっと胸のつかえがおりた。
なお、43日現在で日本のamazonでは在庫切れになっているが、海外では在庫がある。特にamazon.co.ukでは約9ポンド弱と安く、送料を入れても日本より遥かに安い。購入日のレートの日本円で買えるようになったし、数日で届くので海外での購入がオススメだ。(佐野)
Captain Sad & His Ship of Fools



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