2005年7月25日月曜日

☆虫プロ手塚治虫長編3部作『新宝島/ジャングル大帝/鉄腕アトム』(コロムビア/XF-1707-9) DVD☆『虫プロ手塚治虫アニメ主題歌オープニング・エンディング・コレクション』(コロムビア/COBC-90380) DVD☆『ジャングル大帝ヒット・パレード』(コロムビア/COCX-33161) CD ☆由美かおるプレミアム・コレクション:『同棲時代今日子と次郎/しなの川』 (松竹/DA-0342) DVD


既に発売中のものばかりだが、冨田勲の貴重な音源が入った DVD と CD が発売されているので、まとめて紹介しよう。
まずは何と言っても『新宝島』である。まずこのアニメを見ることなどほとんどできなかった幻の作品だったからだ。1963年8月に虫プロとフジテレビの間で全26回の1時間番組として仮契約された「虫プロランド」は、制作体制が行き詰まり、翌年4月には制作中止となってしまう。既に完成していた「新宝島」のみ、65年1月に正月特番として放送されたが、それが唯一のオンエアーだった。
このアニメは手塚のデビュー作として知られる同名のマンガとは無関係の、スチーブンソンの「宝島」を動物キャラで擬人化したもの。
昔、私は『漫画の手帖』というミニコミの編集人を10年間くらいやっていたが、その時にまだブレイク寸前の宮崎駿にインタビューしたことがあった。(つてがないので、その当時所属していた会社にいきなり電話、本人に直接インタビューを依頼するというとんでもない行動が実を結んだ訳だが、快く応じてくれたいい人だった) その時に宮崎駿はこの「新宝島」に厳しい評価をしていたので、内容的には期待していなかったが、意外と面白かったというのが感想。
動物キャラの当て方は的確だし、欲望が沸き立つと4ツ足になって獣になってしまうという設定は手塚らしい。しかい何よりも冨田の音楽がよかった。ファンファーレのような勇壮な短いテーマをアレンジして展開していくのだが、冨田の音楽は重厚になりがちな映画よりも、こういうアニメの方が軽快で分かりやすく爽快でいい。話のエンディングは宮崎駿が言っていたようにちょっと拍子抜けだが、1時間楽しめたし、この1作のためにこの DVD ボックスを買う必要がある。
続いて虫プロの「アニメ主題歌集」の DVD だが、ここには冨田が音楽を担当した「ジャングル大帝」、「ジャングル大帝進めレオ」、「リボンの騎士」、「どろろ」、「千夜一夜物語」、「クレオパトラ」、そして「新宝島」のありとあらゆるオープニング、エンディング( TV シリーズ)が収められている超マニアックなもの。
歌詞のあるもの、ハミングだけのものがある「ジャングル大帝」オープニング、歌詞のあるもの、インスト版、さらに歌詞とメロディの一部が異なるオープニングがある「リボンの騎士」など分かりやすいものはベーシック・モード。
「ジャングル大帝」のオープニング後半でトランペットが被る、被らない、「進めレオ」でオープニングの字体が違う、「カルピスまんが劇場」の文字が変化して「どろろ」の文字になるオープニング冒頭 (信じられない!) など全 11 作品 65 ヴァージョンはマニアック・モードで楽しめる。
なお、この「新宝島」はほんの一部だけなので、これでは冨田の音楽は味わえない。念のため。
次に「ジャングル大帝ヒット・パレード」の CD へ移ろう。これは1966年7月にリリースされた LP の初 CD 化である。曲はTV用のサントラの歌唱者をそのまま使ってステレオで再録音したものなので、ちょっとイメージが違うものになっている。
「星になったママ」や「たまごの赤ちゃん」、「レオのうた」はどうにも馴染めないが、TVよりはるかに壮大な「ジャングル大帝」や、「ライヤのうた」は逆にこちらの方が出来がいい。
このための書き下ろしとも言えるトランペットが泣くエキゾチックな「砂漠の嵐」は冨田ファンなら是非持っていたい1曲だろう。こういう CD は、いつ再びリイシューされるか分からないからすぐに購入しておこう。
最後にアニメではないが、冨田が音楽を担当した「しなの川」が、由美かおるプレミアム・コレクションとして DVD 化されているので紹介しておこう。
ジャケットはこういうサイトなので販売用の肝心なところをうまく隠してくれるシースルー・ケースのまま掲載しておくが、もう1作の「同棲時代/今日子と次郎」のジャケットと同様に、由美かおるのヌードが拝めるというのが売りで、購買層のほとんどが由美かおるのファンだろう。
冨田の音楽目当てで買う人は少ないだろうが、ビデオ化もされていないのでこういう機会でないと入手困難な映画である。曲は男性コーラスの入った重厚なもので、いかにも映画の時の冨田。エンディングでは由美かおるの歌う「しなの川」が流れるが、これは冨田の曲ではないので要注意である。
なお、カップリングの「同棲時代」にはひし美ゆり子のお宝シーンがあるので、こちらの方が注目である。アンヌ隊員ファンよ、急げ!(佐野)




2005年7月24日日曜日

Radio VANDA 第 64 回選曲リスト(2005/08/04)



Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


特集Lovin' Spoonful

1. Do You Believe In Magic ('65)
2. You Didn't Have To Be So Nice ('65)
3. Fishin' Blues ('65)
4. But You're Mine ('65) Sonny & Cher
5. Did You Ever Make Up Your Mind ('65)
6. Younger Girl ('65)
7. Daydream ('66) Demo
8. It's Not Time Now ('66)
9. Didn't Want To Have To Do It ('66)
10. Summer In The City ('66)
11. Rain On The Roof ('66)
12. Pow ('66)
13. Coconut Grove ('66)
14. Lonely(Amy's Theme) ('67)
15. Darling Be Home Soon ('67)
16. She Is Still A Mystery ('67)
17. Six O'clock ('67)

 

 



2005年7月18日月曜日

クノシンジ:『FULL COURSE OF POP SONGS』 (abcdefg*record/a-g029) クノシンジインタビュー














昨年10月に『オレンジジュース・グレープフルーツジュース』でデビューした、若く才能溢れるクノシンジのセカンドアルバムが早くもリリースされた。 前作から9ヶ月という短いインターバルながら一曲一曲のクオリティは更に磨かれたものになっており、次世代ポップスの新星の名に恥じないアルバムと云えよう。 往年のブルーノート・レーベルの作品を彷彿させる、センシティヴでクールなジャケット・デザインも印象的だ。 ここではリリース前に行ったインタビューの模様を紹介したい。 

(クノシンジ:以下括弧内同じ)「僕がなぜ60~70年代のポップス、ロックに填っていったかというと、やはりビートルズとの出会いがきっかけです。その出会いもやはり父がビートルズのベストを持っていて、それを中学生の頃に聴いたからですね。ビートルズに行く前には、邦楽、とくにスピッツに填っていたんですが、並行してビートルズに填っていきました。丁度、ポールが『Flaming Pie』(97年)というアルバムを出したころで、確か発売日に買いに行きました(笑)」 

CDリイシューによる過去音源発掘でカタログ化された作品群を、クノの世代では普通にコンプリートで聴ける好環境で育ったといえる。そこからポップス・マニアへと成長したのは云うまでもない。 きっかけがビートルズだったというのが、結構後々のマニア心に影響していると思える。何故なら彼らはポピュラーミュージックの要素をほぼ網羅したといっても過言ではない程、多用なアイディアをサウンドに取り入れてしまったから。 筆者は収録曲の中でも「恋泥棒」に、ロジャー・ニコルスとのコンビで知られるポール・ウィリアムスの「Mornin' I'll Be Movin' On」(『Someday Man』収録曲)的な匂いを感じ取り、その辺りのシーンへの感心も聞いてみた。

 「ここ1、2年前までは周りにも60~70年代のポップス好きは居ませんでしたので、ほぼ自分一人で突き詰めていきました。良くも悪くも、ここまでマニアになったのは多分好きな音楽以外に興味が少なく、さらに良い曲を作るという事に生活の大部分を費やしてきた結果だと思います。 「恋泥棒」はロジャニコを意識して作った曲だったりしますが、『Someday Man』は聴いたことがないです。ただロジャニコ・プロデュースっていうことで何か繋がりがあるのかもしれないですね。 コーラスに関しては、本当に感覚だけで作っているので、まだ何々風にとかいったことは出来ないんです。ただ思いついたコーラスラインを、2、3声でハモってるだけっていう。でも出来る事なら、というか今後はそういった名盤を徹底的に研究して、意識してアレンジ出来る様になりたいとかなり思っていますそれこそ日本で、完全に当時のソフトロックを消化した現代版ソフトロックをやって、且つそれが一般ポピュラリティーを持つ位なものを作りたいって思ってます」

 周りに音楽仲間が少なかったのでコアに追求していった結果、シンガーソングライターなってしまったというのが面白い。ただそれだけ現代の若い世代は、音楽に興味を持てなくなってしまったという裏返しでもあるのだが・・・。 「恋泥棒」の他にもクノの曲には様々な音楽資産が見え隠れして面白い。例えば「君のお気に入り」にはクイーンからの影響を強く感じさせる。ギターの重ね方やソロの音色等はブライアン・メイをかなり意識しており、ブリテッシュロック・マニアの心を擽りそうだ。 一回り以上も下の世代であるクノの作品に惹かれるのは、これら嘗てのポップス、ロックへのオマージュが惜しみもなく表れているところなのかも知れない。 勿論、彼ならではの個性とアイディアのフィルターを通しているので、単なるオマージュで終わらせない努力にも注目したい。 何でも彼は、デビュー前からポスト小沢健二と称されている様だが、筆者はそれ以上の可能性を信じており、これを機にさらに大きく成長して欲しいと願っている。ともあれ作品毎の変化が楽しみになる、若く有望なアーティストに出会えた事を心より喜びたい。

 「「君のお気に入り」のギターは完璧にブライアン・メイを意識していますまだまだ甘いですが。いつかは完璧なオマージュを目指しています音色、ボイシング、フレージング。僕自身、誰かが誰かのオマージュをやっているのを聴いたとき、思わずニコってしちゃうのが好きですから聴いてもらった方に気づいてもらうのも、かなりの楽しみではあります(笑)。今回のアルバムを完成させて思ったのは、やっぱりまだ色んな部分が甘いなという事です。演奏や歌も勿論、こういった過去の音楽へのオマージュだったり、研究だったりが。これからは、よりソフトロックやジャズ等の研究をして自分の中に消化したいです。それでしっかりとしたアレンジ、コーラスワークを身につけた上で、更にポップで現代の人にも自然に伝わるモノを作るっていうのが、今後僕が目指すポップ・ミュージックです。今は既に制作意欲が高まってきているので、いろいろ研究しつつ出来るだけ早く新しい曲をリリースしたいとも思っています」
 (ウチタカヒデ)



2005年7月15日金曜日

☆Gary Lewis & The Playboys:『Gary Lewis & The Playboys』 (SRO/D2943) DVD


 ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのライブDVDだが、これは最近のオールディーズ・ショーのライブ。まあ、コアなファンのみのアイテムである。
ゲイリー・ルイスは1999年に六本木のスウィート・ベイジル139でライブを行い、その時に私はインタビューをしているが、その時のカーリー・ヘアはバッサリと切っていて短くなり、60年代の面影が感じられるようになっているのはビジュアル面でグッド。
曲は「This Diamond Ring」,「Everybody Loves A Clown」,「She's Just My Style」,「Green Grass」,「Count Me In」、「Save Your Heart For Me」,「Sure Gonna Miss Her」など、往年の大ヒットを中心に取り上げ、そつなくこなしている。楽しそうなゲイリーの表情が印象的だ。
曲間にはゲイリーへのインタビューが挿入されているがこれはなかなか面白い。
クロージングでは父親のジェリー・ルイスとまだ子供のゲイリー・ルイスの出演シーンなどが入り、けっこう凝った作りになっていた。(佐野)


2005年7月4日月曜日

Brian Wilson:『Brian Wilson Presents Smile(With Bonus CD)』(from LSL) DVD


 もうとっくに発売されたスマイルの DVD だが、LSL からの通販のみに2500枚限定のシリアル・ナンバー入りボーナス CD が付くので、それが届くのを待って一緒に紹介しようと思っていたら、LSLの配送ミス(ほぼ全員が遅れた)で、1カ月以上経った7月になってようやく届くハメになった。
 まずこの DVD の紹介だが、1枚は『Smile』のライブ。小規模な会場に観客を入れて収録してあり、歌、ハーモニー、演奏共に完璧。このライブで初めて『Smile』を聴いたら、どれだけ感動したことだろう。満面の笑みを浮かべながら歌うブライアンがとても印象的だ。  そしてもう1枚がブライアンと『Smile』との関係を描いたドキュメンタリー『Beautiful Dreamer』である。このDVDは前半がブライアンがビーチ・ボーイズ時代に『Smile』を作りそして放棄するまでを、後半が現在の『Smile』を作ると決意してから実際のライブまでに至るまでのブライアンをカメラが追い続けた。  まず前半だが、当時の友人やスタジオ・ミュージシャン、そしてヴァン・ダイク・パークスの証言で浮かび上がったのは、今までのドラッグが原因でブライアンが『Smile』をほうり出してしまったという定説が誤りだったというだ。  ブライアンが誰よりもエネルギッシュに『Smile』に取り組み、かなり長い間、正常な状態で制作に没頭していた。しかしビーチ・ボーイズ抜きで作った『Smile』はメンバーに全面否定され、ビートルズとのクリエイティビティのトップ争いの中にいたブライアンは不安、苛立ち、焦燥に悩まされ、そして遂に断念してしまう。『Smile』放棄の原因はマイク・ラヴが (Smile』を) 嫌いだったからと、ブライアンは断言していた。全能のミュージシャンでありながら、自分の思うようにさせてくれないグループ、父親、レコード会社に、ブライアンは一人で闘い続けることはできなかった。  そして精神が崩壊してしまう。  後半は30年にも続いた長い鬱からようやく脱出できたブライアンが再び『Smile』へ挑むドキュメンタリーで、録画テープは50時間にも及んだという。  ヴァン・ダイク・パークスが再び呼び寄せられブライアンの自宅へ来た時のやり取りまで入っているのには驚かされた。ブライアンの自宅で行われた最初のリハーサルでのブライアンの苦悶の表情は見るのが辛い。ブライアンの心は常に病気を表裏一体で、いつ、また鬱に落ち込んでしまうかもしれない。ダリアンやバンドのメンバーの献身的な励ましと、リンダ夫人の的確なフォローで、ブライアンは過去の『Smile』への恐怖を乗り越えていく。  そしてロンドンでのプレミア・ライブ。『Smile』が終わった時の大喚声、スタンディング・オベーションで迎える観客の中にはポール・マッカートニーやジョージ・マーティンもいた。放心状態で座り込んでいたヴァン・ダイク・パークスの姿に誰もが感動を覚えただろう。  このDVDのブライアンの最後のコメント、「僕の中から悪魔が去った。とても癒された。」という言葉はあまりに重い。  この『Beautiful Dreamer』は『The Beach Boys An American Band』と並ぶ最高のドキュメンタリーになった。ブライアン自身が見て涙が出そうだったという迫真の真実が、その価値を高めている。ライブとドキュメンタリー、これだけ充実したDVDは他にはないだろう。  全ての音楽ファンなら必ず見るべき。  そして最後にLSLの限定CDだが、ブライアンの会話やインタビューも入っているが、その価値はこれでしか聴くことができない「Surf's Up」のカラオケにある。昔、「Child Is The Father Of The Man」と言われていた前奏のインスト部分から収録されていた。  これで様々な形でリリースされた『Smile』のカラオケは計7曲、今のうちに集めておこう。(佐野)
もうとっくに発売されたスマイルの DVD だが、LSL からの通販のみに2500枚限定のシリアル・ナンバー入りボーナス CD が付くので、それが届くのを待って一緒に紹介しようと思っていたら、LSLの配送ミス(ほぼ全員が遅れた)で、1カ月以上経った7月になってようやく届くハメになった。
まずこの DVD の紹介だが、1枚は『Smile』のライブ。小規模な会場に観客を入れて収録してあり、歌、ハーモニー、演奏共に完璧。このライブで初めて『Smile』を聴いたら、どれだけ感動したことだろう。満面の笑みを浮かべながら歌うブライアンがとても印象的だ。  そしてもう1枚がブライアンと『Smile』との関係を描いたドキュメンタリー『Beautiful Dreamer』である。このDVDは前半がブライアンがビーチ・ボーイズ時代に『Smile』を作りそして放棄するまでを、後半が現在の『Smile』を作ると決意してから実際のライブまでに至るまでのブライアンをカメラが追い続けた。  まず前半だが、当時の友人やスタジオ・ミュージシャン、そしてヴァン・ダイク・パークスの証言で浮かび上がったのは、今までのドラッグが原因でブライアンが『Smile』をほうり出してしまったという定説が誤りだったというだ。  ブライアンが誰よりもエネルギッシュに『Smile』に取り組み、かなり長い間、正常な状態で制作に没頭していた。しかしビーチ・ボーイズ抜きで作った『Smile』はメンバーに全面否定され、ビートルズとのクリエイティビティのトップ争いの中にいたブライアンは不安、苛立ち、焦燥に悩まされ、そして遂に断念してしまう。『Smile』放棄の原因はマイク・ラヴが (Smile』を) 嫌いだったからと、ブライアンは断言していた。全能のミュージシャンでありながら、自分の思うようにさせてくれないグループ、父親、レコード会社に、ブライアンは一人で闘い続けることはできなかった。  そして精神が崩壊してしまう。  後半は30年にも続いた長い鬱からようやく脱出できたブライアンが再び『Smile』へ挑むドキュメンタリーで、録画テープは50時間にも及んだという。  ヴァン・ダイク・パークスが再び呼び寄せられブライアンの自宅へ来た時のやり取りまで入っているのには驚かされた。ブライアンの自宅で行われた最初のリハーサルでのブライアンの苦悶の表情は見るのが辛い。ブライアンの心は常に病気を表裏一体で、いつ、また鬱に落ち込んでしまうかもしれない。ダリアンやバンドのメンバーの献身的な励ましと、リンダ夫人の的確なフォローで、ブライアンは過去の『Smile』への恐怖を乗り越えていく。  そしてロンドンでのプレミア・ライブ。『Smile』が終わった時の大喚声、スタンディング・オベーションで迎える観客の中にはポール・マッカートニーやジョージ・マーティンもいた。放心状態で座り込んでいたヴァン・ダイク・パークスの姿に誰もが感動を覚えただろう。  このDVDのブライアンの最後のコメント、「僕の中から悪魔が去った。とても癒された。」という言葉はあまりに重い。  この『Beautiful Dreamer』は『The Beach Boys An American Band』と並ぶ最高のドキュメンタリーになった。ブライアン自身が見て涙が出そうだったという迫真の真実が、その価値を高めている。ライブとドキュメンタリー、これだけ充実したDVDは他にはないだろう。  全ての音楽ファンなら必ず見るべき。  そして最後にLSLの限定CDだが、ブライアンの会話やインタビューも入っているが、その価値はこれでしか聴くことができない「Surf's Up」のカラオケにある。昔、「Child Is The Father Of The Man」と言われていた前奏のインスト部分から収録されていた。  これで様々な形でリリースされた『Smile』のカラオケは計7曲、今のうちに集めておこう。(佐野)