2003年4月26日土曜日

☆Who:『Who's Next(Deluxe Edition)』(ユニヴァーサル/7157/8)

フーの最高傑作にして最大の謎、『Who's Next』が、 CD 2枚組の究極のコレクターズ仕様シリーズ「デラックス・エディション」で登場した。
「最大の謎」とはもちろん「ライフハウス」の事だが、ピート・タウンゼンドはこの幻の企画を再現させるべく CD 6枚組の『Lifehouse Chronicles』までリリースしたが、この CD の本人自身によるライナーを読んでも、私は未だに意図がつかめないままでいる。
まあ、もうこの「ライフハウス」の意味は抜きで、この素晴らしい曲の数々を楽しむことがいいようだ。
ディスク1の「ロック史上で最も偉大なアルバムの1枚』である『Who's Next』についてはこれ以上書くことがないのでパスするとして、それ以外のトラックについて記述しよう。
ディスク1の6曲は1971年3月16日から18日にかけてニューヨークのレコード・プラントで録音された未発表テイク集。
これらはオリンピックで5月中心に行われた『Who's Next』の録音に先駆けてのものなので、まだ原型なのだが、フーのデモ・ヴァージョンは正規ヴァージョンと見まごうばかりのクオリティがあるため、十分に楽しめる。
その中でも "Getting In Tune" と "Pure And Easy" は最高の出来。
"Baby Don't You Do It" (8分超えの編集), "Love Ain't For Keeping" , "Behind Blue Eyes" もいい。そして面白いのがまだロジャーのシャウトがなく、エンディングがまったく練られていない "Won't Get Fooled Again" 。この中では一番未完成のテイクだが、歌とサウンドのコラボレーションは見事だ。
ディスク2には「ライフハウス」の一環として、71年4月16日にロンドンのヤング・ヴィッツ・シアターで招待客を前にライブ録音された14曲がたっぷりと収められている。
フーの頂点の時期のライブだけに、4人とは思えないパワーと驚異的なテクニックを披露していて、『Live At Leeds』を超えてしまっていた。こちらがこのDeluxe Editionの華と言っていいだろう。(佐野)


2003年4月25日金曜日

Radio VANDA 第 37 回選曲リスト(2003/05/01)

Radio VANDA は、VANDA で紹介している素敵なポップ・ミュージックを実際にオンエアーするラジオ番組です。

Radio VANDA は、Sky PerfecTV! (スカパー) STAR digio の総合放送400ch.でオンエアーしています。

日時ですが 毎月第一木曜夜 22:00-23:00 1時間が本放送。
再放送は その後の日曜朝 10:00-11:00 (変更・特番で休止の可能性あり) です。

佐野が DJ をしながら、毎回他では聴けない貴重なレア音源を交えてお届けします。


第一特集Critters

1. Mr.Dieingly Sad ('66)
2. Georgianna ('65)
3. Children And Flowers ('65)
4. Younger Girl ('66)
5. Bad Misunderstanding ('66)
6. Marryin' Kind Of Love ('67)
7. Don't Let The Rain Fall Down On Me ('67)
8. He'll Make You Cry (Album Version) ('65)
9. Touch 'N Go ('68)
10. Reason To Believe ('68)
11. A Moment Of Being With You ('68)
12. Awake In A Dream ('68)
13. Cool Sunday Morning ('68)
14. I'm Telling Everyone ('68) ... Don Ciccone
作のPrancerでのシングル。録音は65年頃。



第二特集Pat Upton Part2

15. Rainbow ('73) ... Playboyでのシングル
16. Happiness Is ('73) ... Playboy
でのシングル
17. Higher And Higher ('73) ... Playboy
でのシングル

 

2003年4月18日金曜日

☆Beach Boys:『Good Timin' Live At Knebworth, England1980』(Eagle/EV30021-9) DVD

 ビーチボーイズのメンバー6人全員が揃ったこの貴重なライブ(過去2回しかないらしい)は既に CD がリリースされていたが、同時発売のように書かれていた DVD は約半年後にようやく登場した。
以前、日本でビデオ発売の話があったものの発売中止になった過去があり、また権利関係でダメになったのかと危惧していただけに嬉しいリリースである。
このネブワースでのライブは音も映像も収録されていたため、ビーチボーイズは当然それを意識して、歌・演奏ともにこの当時でのベストのパフォーマンスを見せてくれる。
少し前の79年に行われた「ジャパン・ジャム」に比べ、気合の入ったライブと言えるだろう。
何と言ってもハーモニーが、省略されずに、美しくハモってくれているのに感激だ。(裏声はサポート・メンバーの声が多いが)
特に "Lady Lynda" や "Heroes And Villains" でのア・カペラ・パートが聴きもの。
ライブはマイクとカールで支えている印象があるが、ここでは全体的にアルの存在感の強く感じるだろう。リード・ヴォーカルを取る曲が4曲あり、歌声は力強い。
77年には『M.I.U.』を中心になって制作しており、アルの力がグループの中で大きくなっていることが分かる。
残念ながらブライアンはたまにリード・ヴォーカルを一部取らせてもらっている程度で、カメラもほとんど当たらない。
ただそんな状態であったとしても、画面に6人全員が揃うのは、ファンならたまらない瞬間だ。もう決して揃うことがないだけに、感慨深い。
収録曲は CD と同じ。
ただ曲と言えるかどうか疑問だが、ファンが中心になって歌う "Happy Birthday Brian" はカットされていた。
何よりも残念なのは発売中止になったビデオには入っていたブルースのピアノ弾き語りの "I Write The Songs" がカットされてしまった事。
本来なら "Surfer Girl" の後ろはこの曲だったのに。
ブルースの声はまだハスキーでなく、十分に出ていて、内容的にカットされる理由はまったくない。
この1点だけがかえすがえすも残念だ。
(佐野)

Good Timin: Live at Knebworth England 1980 [DVD] [Import]

2003年4月11日金曜日

☆Cyrkle:『The Minx』(ウルトラヴァイヴ/CDSOL7063)

待望度という点で、最高評価のアルバム『The Minx』が遂にリイシューされた。
それも8曲もの未発表トラック付きの快挙である。
このアルバムはサークルが表舞台から姿を消した70年にリリースされた X-Rated Movie、つまりポルノ映画のサントラだ。今見ると、胸がチラっと見えるくらいの濡れ場でTVで今すぐオン・エアーできる程度の内容なのだが、当時は日陰の存在であったことは間違いない。
これらの曲は67年に録音されていたが、映画の公開が延びたため、3年もの間オクラ入りになっていた。
その間にサークルは解散、このサントラ盤には裏ジャケットに小さく "performed by THE CYRKLE" と書かれていただけで、寂しい扱いだった。
しかし解散間近のサークルは、トム・ドウズ=ドン・ダネマンのコンビが作曲の腕を上げていて、ここに収められたいくつかの美しいトラックは本当に素晴らしく、「やれば出来るじゃん」と思わずうなってしまうほどの出来だった。
ハーモニーのからみが聴きものの緊張感のある "Squeeze Play" 、美しいスキャットによるボサノヴァ "The Minx(vocal)" もいいが、ベスト・トラックはピアノとアコースティック・ギターのみのシンプルなバッキングに乗せて歌われる極上のボサノヴァ "It's A Lovely Game,Louise" 。
数あるサークルのナンバーでも傑作中の傑作である。ボーナス・トラックは、映画のサントラ用にアレンジを変えた BGM や、フィルム用トラック、アルバム未収録 BGM を集めたものだった。(佐野)
Minx Soundtrack

☆Brian Wilson:『On Tour』(Sanctuary/06076-88348-9) DVD



ブライアン・ウィルソン初のツアー DVD がリリースされた。
収録されたのは先日のツアー。
アーそのもののフィルムだけなら追体験はできるが一度見たらそれまで、になってしまうものだが、この DVD はオフ・ステージの練習風景や息抜きのセッション、他のミュージシャンのコメントなどが中心で、実に楽しめる内容になっている。
ツアーメンバーとブライアンでの即興アカペラ "Auld Lang Syne" なんて嬉しくてぞっとしてしまうほど。
「ファーム・エイド」のリハーサルでニール・ヤングが "Good Vibrations" を練習しているシーンも嬉しいし、「ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム」でポール・マッカートニーがプレゼンターになってブライアンに賞を渡し、肩を組んで歩くシーンなんて夢みたいだった。
そしてピート・タウンゼンドのコメントのシーンにも感激。
ロニー・スペクターがブライアンにベタベタ寄り添うシーンにはちょっと引けてしまったが。39年前なら美男美女だったけどね。
信じられない豪華メンバーからの賛辞は、我がことのように嬉しくなってしまうのが我々ブライアン・ファン。
さらに日本公演のオフでの模様も収録されていた。
日本的な名所旧跡をバックにしたものが多い編集はトラディショナルでいいし、六本木のキャバーン・クラブでブライアンが "We want Beatles!" と叫んでいるシーン、 HMV でのサイン会の模様まであった。
実際のライブは、いいテイクが収められているの内容はいい。
何よりも日本公演ではあまり見られなかった満面の笑顔が印象的だった。
(佐野)

オン・ツアー [DVD]

☆Spiral Starecase:『More Today Than Yesterday:The Complete Columbia Recordings』(ウルトラヴァイヴ/CDSOL7066)

 ついにスパイラル・ステアケース唯一のアルバムが CD 化された。
「ソフトロックA to Z」の単行本で最高評価の五つ星を付けた13枚のアルバムはこれですべて CD 化されたことになる。
それも未 CD 化の6曲に加え7曲の完全未発表曲、パット・アップトン名義のシングル2曲まで加えた究極の仕様で。今年リイシューされた数多くのアルバムの中でも本作が文句なしのベスト、自信を持っておすすめしたい。
みなさんの多くは Taragonの『The Very Best Of The Spiral Starecase』をお持ちでしょうから、それ以外の曲について紹介していこう。(ちなみに前述の CD は売らないこと。そこでの名曲 "More Today Than Yesterday" のイントロのスタジオノイズは本作ではカットされている)
未 CD 化の6曲とはすべてカバー・ナンバーで、中でもダンサブルな "For Once In My Life" と解放感のある "The Thought Of Loving You" はパット・アップトンのオリジナルに匹敵するベスト・ナンバーだ。
未発表曲では高揚感に満ちた "Love's The Only Answer" が最高だ。
爽快な "Good Morning New Day" もいいし、ベース・ラインが強調された "Walk On By" もいい出来だ。
そしてグループ解散後の71年にリリースされたパット・アップトンのソロ・シングル "A Lifetime Of Love" はドラマティックな傑作で、作曲はレス・リード&ゲオフ・ステファンズで思わず納得。
全体を聴いて感じるのはやはりパット・アップトンのヴォーカルの魅力だ。ハイトーンで力強い彼のヴォーカルは我々を浄化してくれるよう。
そしてソニー・ナイト(ソロはジェリー・フラー)のプロデュース、アル・キャップスのアレンジが、高揚感に満ちたサウンドを作り出し、パット・アップトンのヴォーカルの魅力を最大限引き出していた。
ともかく捨て曲がパット以外が歌った "Proud Mary" のみ。
絶対、買いましょう。(佐野)


More Today Than Yesterday: The Complete Columbia Recordings