2009年8月26日水曜日

☆ダークダックス:『ダークダックス大全』(キング/KICS1493/4)

 さてダークダックスである。なんだ、なんて思っていたのはこのCDを聴く前までの私、年末年始のTVで見ていたあのダークダックスは、彼らのほんの一面だけだったのだ。
 こんなオシャレな、ソフトロック系のナンバーを歌っていたなんて、まさに目からウロコである。 テレビで見ていたロシア民謡や「山男のうた」を歌う、重厚なコーラスではなく、軽快で美しいそのハーモニーは、まさにヴォーグスやアーバース、サンドパイパーズといったソフトロック系そのもの。いやー知らなかった。勉強になりました。

 このCDは1955年から1982年にかけて録音された曲のコンピレーションで、ディスク1は33曲にも及ぶ貴重名CM/ラジオ挿入歌篇、ディスク2は24曲の主題歌/オリジナル篇で、特に権利が複雑にからむCMをクリアするのは至難の業、こんなCDを作れるのは濱田高志さん、やはり彼しかいない。濱田さんにはいつも教えられてばかりだ。
 まずディスク1だが、作曲の多くが三木鶏郎で、そのセンスの良さを痛感させられるだろう。でも一番好きなのは「光る東芝の歌」(光―る光―る東芝...、ただこの曲の作曲は越部信義)と「明るいナショナル」(...ラジオ、テレビ、なんでもナショーナール)。もう懐かしくて、ただ涙だった。TVで散々聴いた曲だが、キャッチーで本当にいい曲だ。ダークダックスの軽快なハーモニーが曲の良さを引き立てている。
 こういう時代の曲を聴くと、ほっとしてしまうのはなぜだろうか。実家の居間で今は亡き父や祖父母と一緒にTVを見ていたいつまでもずっと続くと思っていたあの日常の光景が浮かんでくるだろうか。となりのおばさんとおすそ分けを届けあっていたあの時代、外へ出ると近所の人にみんな挨拶していたあの時代、牛乳屋さんの配達に自転車でくっついて「冒険」をしていたあの時代、実家のある三軒茶屋はまだ空き地だらけで、平屋の実家の屋根に上れば富士山が見えていた時代だった。なにかいい思い出だけが残っているから不思議だ。

 そしてディスク2、こちらはソフトロック系のナンバーが多く、オススメのナンバーばかり。フランシス・レイの曲が2曲あり、「銀色の道」や「どこまでも行こう」もあって言うまでもなくいい曲ばかりなのだが、その中でも最も気に入ったのはボサタッチでストリングスアレンジも素晴らしい平岡精二の「鎌倉の夜」。じつにオシャレなナンバーだ。そしてワルツの山下毅雄の「しあわせの部屋」、「白い恋人」をモチーフにした同じく山下毅雄の「白い羊」もいいし、三沢郷の「エベレスト」、高井達雄の「アルプスは招く」はイメージが雄大で素晴らしかった。
 もう1曲、特に気に入ったのが中村八大の組曲のような「煙が身にしみる」。スウィングする歌いだしから次々と曲想を変え、中村八大の曲作りのセンス作りが全開だ。ただタバコを吸わない濱田さんは、ちょっと歌詞を間違えていた。「ピース 桃山 ハイライト ホープ 新生 すみれ」という部分があるが、「すみれ」ではなく「スリーエー」である。あの赤いパッケージのヤツだ。もうひとつ「新生」はひらがなで「しんせい」(パッケージはSHINSEIで黄色のパッケージ)。
 10年前までタバコを吸っていたので、そのあたりには詳しい。と言っても自分が吸い出した時にはすでに過去のタバコだったのだが、父が吸っていたので、タバコのパッケージを集めた時があり(コレクターの血がそのあたりから...)それで知っている訳だ。話がそれてしまったが、これらのハンセンスな曲を歌いこなすダークダックスの実力があってからのこそ、先入観にとらわれずまずは聴いてみよう。(佐野)

ダークダックス大全

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