2008年11月13日木曜日

Lamp:『ランプ幻想』(IN THE GARDEN/XNHL-16001)

 

2003年のアルバム・デビュー以来、ここWEB VANDAでは新作毎に紹介してきた若きポップグループLamp(ランプ)。この度待望のニュー・アルバムが12月3日にリリースされる。 純粋なオリジナルアルバムとしては、2005年の三作目『木洩陽通りにて』から3年半振りとなるのだが、実質的なレコーディング期間が十数ヶ月に渡った成果が、こうして聴けると思うと感慨深いものである。 僕が音源をもらったのは9月半ば頃だったが、今でも手放せなく聴き続けており、聴き込む毎に新しいLampの世界に引き込まれている。とにかく良質なポップスを求めている音楽ファンは、この前文を読んだだけで直ぐに予約すべきだ。 

まず本作『ランプ幻想』の大きな特徴は、アルバム一枚を通したトータル性を強く感じさせることだろう。青春の幻想と喪失感を描いた11曲の物語の1コマ1コマが、一つの大きなストーリーへと紡がれているようである。
アルバムの幕開けとなる染谷作の「儚き春の一幕」から、永井作の「密やかに」と「夕暮れ」への流れはストリングス・アレンジの施し方を含め、コリン・ブランストーン『One Year』を思わせるトータル感が美しく心地よい。特に「儚き春の一幕」は、コーラスのリフレインがない複数のパートから構成されたクラシックのソナタ風で、作者の染谷によるとこの曲の構成は、ブラジルのミナス系音楽の影響が強いとのことだが、印象的なカウンターラインを奏でるアコーディオンの音色も相まって、画も知れぬサウダージ感を受けてしまう。

   

アルバム中最も洗練されたシティポップの「雨降る夜の向こう」は、イントロから高い完成度を誇っており、ヴァースへ掛けての不思議なムードは、スティーリー・ダンの「The Fez(トルコ帽もないのに)」もかくやと思わせるほど格別である。 またこの曲同様にリズミックで円熟した演奏が聴けるのが、後期ビートルズやポール・サイモン風の「白昼夢」だ。染谷による独特な歌詞の世界や、永井と榊原のダブル・ヴォーカルの感触は『風街ろまん』(はっぴいえんど)あたりにも近い。 Lampのカラーの一つである、女性ヴォーカリスト榊原のナイーヴな魅力は、「ゆめうつつ」や「日本少年の夏」(作詞も榊原)で聴けるだろう。オリエンタルな「二十歳の恋」も含め、このような世界観は彼女のヴォーカルなしではありえない。 めずらしくストレートなバラードで、永井がリードを取る「冬の影は哀しみ」(染谷作)は、ジョージ・ハリスンの「Isn't It A Pity」あたりがモチーフになっていそうだが、かつての「ひろがるなみだ」(『恋人へ』収録、永井作)を思い起こさせる青春の喪失感に泣けてくる。

アルバム全体を通して感じたのは、染谷と永井のソングライティングから醸し出される60~70年代洋楽ポップス(そういえば、ジャケットはトッドの『Something/Anything?』を和風にした感じだ)のgene(遺伝子)から得られるカタルシスと、日本語の美しさを秘めた繊細な歌詞の世界感だ。 また綿密に練られたアレンジと、レコーディング(アナログ録音らしい)やミキシングのレベルの高さもさることながら、永井と榊原による美しいコーラス・ワークが、Lampサウンドの核となっているのも聴き逃せないポイントである。
さて本作を聴くまで、本年度の個人的ジャパニーズ・ポップス・ベスト1は、以前紹介したマイクロスターの『microstar album』だと確信していたが、ここにきて順位が変わりそうだ・・・。
(ウチタカヒデ)

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