2006年11月1日水曜日

☆Goldebriars:『Climbing Stars』(ソニー/MHCP1136)


カート・ベッチャーがデビューしたバンドとして知られるゴールドブライアーズ。先日、CD化され、アルバム未収録シングルまで含んだ2枚のアルバムで、全てリリースされたと思ったら、196412月に録音されていたサード・アルバム用の9曲に、ファースト、セカンド・アルバムでのボツ曲8曲、サード・アルバム用の別テイク4曲が、こうして新たな1枚のアルバムとしてリリースされた。ファーストでは完璧なフォーク・グループだったゴールドブライアーズが、セカンドではハープシコードなどをフィーチャーし、ポップ・グループへと移行したのは、カート・ベッチャーのベクトルがよりプログレッシヴなものへと向っていたからだ。未発表のまま解散したものの、来るべきサードでは、さらにポップな曲にチャレンジしていた。ここで大きな力を発揮したのがボブ・ゴールドスタイン。「ワシントン広場の夜は更けて」の作者として知られるボブは、セカンドアルバムではアルバムの華である「Sea Of Tears」と「Castle On The Corner」を書き、そのポップ・センスを遺憾なく発揮していた。カートの弱点は作曲能力の不足だったが、サードでは9曲中5曲(2曲はシングルのみでリリースされた「June Bride Baby」と「I'm Gonna Marry You」)をボブが書いたため、「いい曲」がぐっと増えた。特に素晴らしいのが「Tell It To The Wind」と「Nothing Wrong With You That My Love Can't Cure」だ。どちらもティンパニーを配し、曲をドラマティックに演出していた。前者はイントロはマイナーだが歌が始まるとメジャーになり、キャッチーなフックもあり、センス溢れるカッコいい曲。後者は、イントロと曲中のギターのフレーズがサーチャーズ風の、これもポップな快作だった。ファースト、セカンドの曲は従来のゴールドブライアーズ風のフォーク・ナンバーで、カート作の「My Song」という曲もあったが、華やかなものはない。極端な話、サードの2曲のためにだけにでも購入するアルバムだろう。(佐野)

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