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2022年9月30日金曜日

The Courettes:『DAYDREAM / デイドリーム』(なりすレコード/TARGET EARTH RECORDS / NRSP-7103)


 デンマークの男女ロックンロール・ユニット、ザ・コーレッツ(The Courettes)が初来日公演に合わせ、記念した7インチ・シングル『DAYDREAM / デイドリーム(日本語ヴァージョン)』を10月5日にリリースする。


 彼らザ・コーレッツは、2015年にファースト・アルバム『Here We Are The Courettes』でデビューした2人組で、ヴォーカルとギター、ピアノを担当するブラジル出身のフラヴィア(Flávia Couri)と、ドラムとパーカッション類をプレイするデンマーク出身のマーティン(Martin Couri)のクーリ夫妻によるユニットである。
 ファースト以降現在までに『Alive From Tambourine Studios』(2017年)、『We Are The Courettes』(2018年)、『Back In Mono』(2021年)、『Back In Mono (B-Sides & Outtakes)』(2022年5月)と4枚のフルアリバムとミニアルバム1枚をリリースしている。
 日本では今年2月に『Back In Mono』がデビュー盤として発売され、洋楽としては異例のロングセラーになっているという。弊サイト読者なら一目瞭然だと思うが、同アルバムのジャケット・デザインやロゴのカラーリングがThe Ronettesの『...Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』(1964年)のそれを想起させてマニア心をくすぐるのだ。


 同アルバムのサウンドは、それまでのハードなガレージ・ロック路線から、ポップな曲調でリヴァーブを効かせたウォール・オブ・サウンドにモディファイした曲を主体にしたことで、日本のオールディーズや60'sポップス・ファンの心を掴んだだろう。この転換期にキーマンとなったのは、同アルバムの先行シングル「Want You! Like A Cigarette」(2020年)から彼らの共同プロデューサーとなったセーレン・クリステンセン(Soren Oakes Christensen)の存在で、彼はデンマークのブルース・ロックバンド“The Blue Van”のキーボーディストとして2003年から活動していた。セーレンがソングライター兼プレイヤーとして加わったことで、現在のコーレッツ・サウンドが形成されたのは間違いない。
 またアルバムのタイトル通りモノ・ミックスに拘り、なんと日本で作業がおこなわれ、マイクロスターの佐藤清喜が担当しているのだが、これはコーレッツのメンバーが、佐藤がミックス他を手掛けたSOLEILのアルバムを聴いてオファーしてきたのだとのことだ。
 そしてこの『Back In Mono』のヒットを受けて、彼らはこの10月に来日し各地の会場でツアーを敢行するという。

 
The Courettes "Daydream" 

 ここではその初来日公演を記念した7インチ・シングル『DAYDREAM / デイドリーム(日本語ヴァージョン)』を紹介しよう。
 この「DAYDREAM」は『Back In Mono』のアウトテイクで、同日に国内リリースのミニアルバム『Back In Mono (B-Sides & Outtakes)』(HYCA-8041)にも収録されるが、カップリングは同曲の日本語ヴァージョン!という、日本だけのスペシャル仕様となっている。
 タイトル曲はフィレス・サウンドの他、同サウンドを敬愛したジョン・レノンがフィル・スペクターと共に制作した『Rock 'N' Roll』(1975年)にも通じる、マルチトラックでウォール・オブ・サウンドを再現したスケール感のあるバラードで、メロディ・センスやコーラスのリフレインはヨーロッパ~北欧らしさを感じさせる。また特徴あるフラヴィアのヴォーカルはこの壮大なバックトラックに負けない存在感を放っており感動的だ。
 日本語ヴァージョン「デイドリーム」の日本語詞は、デンマーク在住の日系人ヒロ・モンステラ氏が担当し、元々の歌詞を意訳しているのだが、言葉のチョイスが非常にユニークである。このヴァージョンでもやはりフラヴィアのインパクトのある声質により耳に残る。

『Back In Mono (B-Sides & Outtakes)』
 このスペシャル仕様の7インチ・シングルと合わせて『Back In Mono (B-Sides & Outtakes)』もチェックしよう。
 彼らの来日公演ツアーのスケジュールも紹介しておくので、興味を持った音楽ファンは是非足を運んで欲しい。


■The Courettes JAPAN TOUR 2022 スケジュール  
          

★10/4渋谷タワーレコード
インストアイベント ミニライブ&サイン会

★10/5新宿ロフト
出演:The Courettes / The 5.6.7.8’s Opening Act:ザ・ハイマーツ  https://eplus.jp/sf/detail/3697610001-P0030001P021001?P1=1221 

★10/6京都ミューズ
出演:The Courettes / リンダ&マーヤ  https://eplus.jp/sf/detail/3700280001-P0030001P021001?P1=1221 

★10/7難波メレ
出演:The Courettes / KING BROTHERS / KiNGONS
/ 忘れてモーテルズ

★10/8島根ジェットフェス 島根県松江市 古墳の丘古曽志公園
出演:ギターウルフ/ The Courettes/ T字路s / 曾我部恵一 他 

★10/9島根ジェットフェス後夜祭 松江 ライブハウス B1
出演:The Courettes / ザ・ハイマーツ
/ ウルフ★セブンティーン 他


◎『DAYDREAM / デイドリーム(日本語ヴァージョン)』
 予約サイト ●ディスクユニオン: 

ウォール・オブ・サウンド関連・弊サイト選
プレイリスト・サブスク

(テキスト:ウチタカヒデ

2022年9月17日土曜日

『The Beach Boys』Byron Preiss著 (1979年)


今夏(2022)BrianのツアーはChicagoとのジョイント形式で行われた。


 思えば約半世紀前はThe Beach Boysのキャリア上中興の期であった。旧作のコンピレーション2作『Endless Summer』、『Spirit Of America』は大ヒットし、コンテンポラリーな進化を評価されながらも商業的な成功から遠ざかっていた彼らに皮肉にも大きな収益をもたらした。
 1975年には現在「BEACHAGO」と語り伝えられているChicagoとのジョイントライブは好評を続け、全米70万人動員かつ750万ドルの興行収入という結果につながった。


 今夏(2022)奇しくも実現した「ややBEACHAGO」ツアーだが、同道しているメンバーのうちBrianサイドではAlとBlondie、しかしBEACHAGO時代Brianは自宅に引きこもっていたし、Blondieはツアーメンバーから放逐されJames William Guercioにとって代わり、当時と同じメンバーはAlのみというのが現状だ。
 James William Guercioはなかなかの策士である、いわゆるBEACHAGOの成功とともに着々とThe Beach Boysのマネジメントを自己のCaribouへと移管し、自身と友好的であったCBSとのコネクションを利用しThe Beach BoysそのものをWarnerからCBSへの移籍へとつなげる、その間The Beach Boysはスタジアムクラスの興行で満員御礼が続く全米でも押しも押されぬ人気ライブアクトとなり、CBSからも800万ドルもの契約金を勝ち取った。
   本書『The Beach Boys』は上記のキャリア上昇期に刊行された。本書の前後に刊行された『 The Beach Boys and the California Myth』(David Leaf著)と『Heroes and Villains: The True Story of the Beach Boys』(Steven Gaines著)は後年の多くの評伝類に引用され影響を与えているが、本書のみがthe authorized biography(公式バイオ)を冠している。
 映画『American Graffitti』の成功によって見直された多くのoldies actsに対して本書はThe Beach Boysはそれとは一線を画している、というスタンスを取っている。一過性のリヴァイヴァルではなくgoing concernには支障ない。何故なら本質的な価値は不変であり、市場で評価されないこともあるが、彼らの体現するCaliforniaの風土や夢は彼らを通じてこれからも多くの人々に支持されていくのだ。どんな投資にもテーマが必要である、テーマには必ず何かしらの夢がある。Californiaの夢とは何であろうか?Bing Crosbyの『White Christmas』では雪の降らない西海岸の風景を通して故郷の雪景色を想う様を描写している、これではCaliforniaには夢がない!Phil Spectorは同曲の間奏でオリジナル歌詞にない一節--So I can have my very own white Christmas–(雪がないなら自分だけのホワイト・クリスマスを迎えよう!)と、Darlene Loveに語らせることでCaliforniaを温暖な憧れの土地のイメージを印象付けることに成功した。
 The Beach BoysもカヴァーしたMamas and the Papasの『California Dreamin’』ではタイトル通りCaliforniaの夢だ、枯葉舞い散る東海岸と思しき寒気に包まれた地所で歌詞の主人公はCaliforniaの温暖な環境を夢見て終始「Califroniaに行ってればなあ」と述懐し続ける。60年代になると故郷のWhite Christmasが訪れようとも若者の頭の中はCaliforniaへの妄想でいっぱいになってしまったのだ。
 確かに60年代後半のCaliforniaは軍事からカルト宗教まで世界のトップに君臨したと言ってもいいだろう、1967年には地元エンタメ界出身のRonald ReaganがCalifornia州知事に就任し1969年にCalifornia生まれのRichard Nixonが大統領に就任する。米国の東西にCalifornia由縁の人物が君臨し、世界へ覇を唱える。The Beach BoysにはこのCalifornia神話に影響があるのだろうか?The Beach Boysの理解者たらんとしたReaganはご存知の通り知事の後大統領へと就任し、昵懇の仲であった大ブッシュは同じく大統領に就任する、続く小ブッシュも大統領へと就任するが以後大統領選挙では民主党にCaliforniaの票を現在に至るまで奪われ続けている。Mike閥のみが接近したDonald Trumpも選挙ではCaliforniaを落とすことができなかった、次回も無理だろう。
 上記のCalifronia神話が効いていた60年代以降は皮肉にもThe Beach Boysのキャリア下降期に一致する、いわゆる「夢」でいっぱいの時代(1962-1965年)とは民主党出身知事であるPat Brownの治世と一致する。Pat Brownは大規模なインフラ整備と教育改革を行った、その結果freewayの数は増え、若者は学園生活を謳歌しドライブに遠方のサーフィンスポットまで出かけ、街中を車で遊びまわることができた。
 「夢」の背景にはソ連邦と米国の宇宙開発競争が背景にある、当時米国は宇宙空間の有人飛行について完全に遅れをとっていた。その為科学技術振興を行う必要に迫られていた、その為軍都である加州は教育改革を行った。宇宙開発は精密機器無くして成立しない、加州Wilson家の家長であるMurryは英国より旋盤を多く輸入した、工作機械商の息子達はRonald Reaganの庇護を受ける。
 本書の著者Byron Preissは音楽ライターというよりは出版プロデューサーに近いスタンスの人物で、本書の構成には通常の評伝類と違うユニークさが光っている。
 バイオ本にありがちな編年体の平板な文章はあまりなく、当事者のインタビューや記事の引用で紙面は埋め尽くされ、所々挟まれるビジュアルが総合して数々の神秘を紐解いてだんだんとThe Beach Boysの実相に近づいていくような読了感がある。


 巻末のディスコグラフィはレア音源も加えて充実しており、編集には全米東西のコレクターも動員している、個人的には当方がコレクションを一部譲り受けたコレクターも掲載されており、非常に懐かしい。
 本書で特筆すべきは凡百の評伝類に先駆けて当時音源のリリースがなかった『Smile』を詳細に解説しているのだ。本書の執筆のためThe Beach Boysサイドでは『Smile』の全貌を音源でByronに示す必要性があった。そのためリファレンス用のカセットが作成されByronへ手渡された。さらにByronから他のスタッフへの音源流出が後に明らかになっており、これはこれでThe Beach Boys再発見の別の流れを作ることになる。

 Byronは本作以外でもっとも有名なのはThe Secret [treasure hunt](1982年)だ。


 表題の通り宝探しの謎解き本の体裁になっている。本作はイラストとそれに添えられた詩をヒントにして解読し、全米及びカナダの公園(全12箇所)に埋められている宝箱を得ることを目的とする。その宝箱には鍵が入っており、それと引き換えに宝石をByronからもらえるのだ。
 Byronは2005年に物故し、文字通り秘密を墓場まで持っていってしまった(宝物は遺族が管理しているようだ)。現在に至るまで発見に成功したのはわずか3箇所のみである。

Byronの宝発見を伝える記事(1983年)

我こそはと思われた方は挑戦あれ!
筆者はThe Beach Boysの宝を掘り続けるとしよう。

2022年9月10日土曜日

FMおおつ 音楽の館/Music Note(2022年8月号)~西城秀樹特集(Part-3)Set List

 「音楽の館~Music Note」、8月は5,6月に続きヒデキ特集Part-3。今回はライヴ音源を中心にしたプログラム(8月27&28日放送済み)でした。そのプレイリストを紹介します。

 “秀樹の真骨頂はライヴ”という声にお応えしたもので、トップは彼の歌声を世界にとどろかせた<傷だらけのローラ>フランス語ライヴ・ヴァージョン。 この音源は1978.6.25. に発表の第8作Liveアルバム『バレンタインコンサート・スペシャル/西城秀樹 愛を歌う』から。1978.2.14. の日比谷公会堂で開催、演奏は藤丸バンドと服部克久氏が編曲・指揮を担当した新日本フィルハーモニー交響楽団。

 曲の序曲イントロはクラシック<未完成交響曲第一楽章>で、才人服部氏らしい雰囲気に仕上がっています。この曲は朝日新聞の土曜版(5/15)に掲載の「今こそ!聴きたい西城秀樹」の人気投票でも堂々の第1位曲。

  
 BG-1はオーティス・レディングの<Try A Little Tenderness>を白人として初めてカヴァー・ヒットさせたThree Dog Nightの1969年サード・シングル(U.S.29位)。この曲のヒデキ・ヴァージョンは1975.11.3.ソロ歌手史上初日本武道館第1回リサイタル『MEMORY - 西城秀樹20歳の日記』収録。演奏は永尾公弘とザ・ダーツ, 芳野藤丸とU.F.O.。「日本語詞」で歌われ後半の盛り上がりはヒデキらしい仕上がり。そしてシャンソンのスーパースター、ジャック・ブレルのスタンダード・ナンバー<If  You Go Away>日本語訳詞<泣かないで>。


 BG-2は1975.7.20.~8.24.開催の全国初縦断コンサート「BLOW UP! HIDEKI」の富士裾野でのパフォーマンスから<青春に賭けよう>。ふじ丸バンド(Dr.金沢順一、B.渡辺和義、Key.中島正雄)の実質お披露目。ここでのヒデキのパフォーマンスは「一人Summer Sonic」「一人Fuji Rock」風。


私はここでのフランキー・ヴァリの全米1位曲<瞳の面影(My Eyes Adored You)>を歌唱するヒデキを見て彼のライブに注目。この曲はTBSで放映された『セブン・スター・ショー』でも披露、またヒデキのシングル50枚目発売記念の1985年武道館コンサートではゲストの藤丸さん登場時、ヒデキが″もおいちど~”と鼻歌交じりに呟いている。そしてエロスミス1974年セカンド・アルバム『Get Your Wings』からのサード・シングル<S.O.S.(TOO BAD)>。スティーヴン・タイラーを意識したヒデキ、ジョー・ベリー然とした藤丸さんのギター・プレイは特に聴きもの。さらにグランド・ファンク・レイルロードの定番で<Heartbreaker>。 


 BG-3はフランク・シナトラが1966年に全米1位に送り込んだ大ヒット<Strangers In The Night(夜のストレンジャー)>。この曲をベット・ミドラーが1976年サード・アルバム『Songs for the New Depression(ベット・ミドラーⅢ)』に収録されたカヴァーテイクから。




 続いては第8作新日本フィルハーモニー交響楽団共演Live『バレンタインコンサート・スペシャル』から。まず「阿久悠=三木たかし」コンビによる情緒溢れるメロディの<ラストシーン>、続いてイントロにビゼーの<カルメン>を合体させた<君よ抱かれて熱くなれ>という服部氏の指揮によるクラシックとドッキングさせた粋な構成。そしてベット・ミドラー風アレンジによる<Strangers In The Night(夜のストレンジャー)>。さらにポール・マッカートニー&ウィングス1975年の世界的大ヒット<Silly Love Song(心のラブ・ソング)>、ラストは<You Keep Me Hangin' On>。これは1966年に全米1位に輝いたシュープリームスのオリジナルというよりも、翌年のヴァニラ・ファッジのカヴァー印象が強い。


 BG-4は前パートのラスト<You Keep Me Hangin' On>のロッド・スチュワートのカヴァー。これは1977年リリース第8作ソロ『Foot Loose & Fancy Free(明日へのキック・オフ)』に収録されたもの。時期的にヒデキはここでのロッド・ヴァージョンを意識して服部克久氏にアレンジを依頼したかも。氏もそれに応えクラシック・ベースの気品溢れるものに。

 ここでは翌年のコンサートを連想させる<若き獅子たち>や、洋楽カヴァーの<What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの)>を披露。後者はエスター・フィリップスのカヴァー(1975年全米.20位 R&B. 10位)のダンサブル・ベース(オリジナルはダイナ・ワシントン1959年全米8位 R&B. 1位)、さらにメンバー紹介をはさみコンサートのハイライトになっています。

 BG-5は<What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの)>のエスター・フィリップスのヴァージョン。続いては1976年の武道館第2回コンサートを収録した『HIDEKI LIVE '76』から。今やブラス・バンドによる応援ソング定番<African Symphony>。この曲は<The Hustle>のヴァン・マッコイが1974年にSoul City Symphony を率いた『Love Is The Answer』の収録曲。そして、ドゥービー・ブラザースのライヴでオープニングに演奏される定番1972年のヒット曲<Jesus is Just Alright(希望の炎)>。

 BG-6は桑名正博さんのソロ・デビュー曲<哀愁トゥナイト>。ヒデキもお気に入りナンバーだったようで、第 9作目ライヴ・アルバム『永遠(とわ)の愛7章/西城秀樹』と1981年の『HIDEKI SONG BOOK』にも収録。

 このパートではヒデキと藤丸さん書下ろしの意欲作1978年12月20日リリースの第10作『ファーストフライト』と連動した『永遠(とわ)の愛7章』から。11月3日日本武道館で開催された第5回コンサート「永遠の愛7章」収録曲を。


 ここに収録されたヒデキの自作曲<Sweet Half Moon><その愛は>等は、彼の非凡さを感じさせます。また萩田光雄氏のスコアで<哀愁トゥナイト>が収録。桑名版での高中正義さんのギターと、藤丸さんのギター・プレイとの聴き較べも惹かれるところ。

 BG-7はザ・ピーナッツの<Epitaph>。この曲はプログレッシヴ・ロックの最高峰キング・クリムゾンが1969年にリリースした金字塔『In the Court of the Crimson King (subtitled An Observation by King Crimson)(クリムゾン・キングの宮殿)』の収録曲。このヴァージョンは1972.8.19.の文教公会堂での山本とおる氏の奏でるギターに乗せたピーナッツの名唱。


 次のパートはヒデキ・ライヴの中でも“伝説”として語り継がれている1979.8.24.後楽園球場の第2回コンサート<「BIG GAME '79 HIDEKI」から。このコンサートは雷鳴とどろく激しい雨の中で敢行されたものです。その悪天候の中でもヒデキのパフォーマンスはゆるぎなく、ビリー・ジョエルの<HONESTY>、続いて雨を吹き飛ばす勢いでクィーンの<DON'T STOP ME NOW>、ヴィレッジ・ピープルの<Go West>。

 このライヴでのハイライトは響きわたる雷名や豪雨をBGに歌い上げる<EPITAPH>。ファンの間では「秀樹に神が降りた」と評されたる伝説的なステージ。バックの鈴木武久とアルバトロスも感電を恐れない献身的演奏でヒデキをサポート。

 BG-8はアメリカのブギ・バンド、フォガット1975年のヒット<Fool For The City>です。この音源は1978年の第一回後楽園球場でのもので、このライヴは藤丸さんが「One Line Band」結成により、サポート参加した最後のライヴ。

 このライヴではアラン・パーソンズ・プロジェクトの<Some Other Time(哀しい愛の別離)>、1977年リリースのセカンド・アルバム『I Robot』の収録曲。そしてバリー・マニロウの大ヒット<Copacabana (At The Copa)>。 

 BG-9は後楽園球場1980年7月18日第3回コンサート「BIG GAME '80 HIDEKI」からユーライア・ヒープ<July Morning>。収録曲はジェファーソン・エアプレインから発展したジェファーソン・スターシップの1979年リリース第5作『Freedom at Point』から<Rock Music>。そして、山下達郎さんのブレイクきっかけとなった<BOMBER>。

 BG-10は『J・U・S・T・R・U・N'84/HIDEKI』のオープニング<パシフイック>(1984.7.5. 48th Single <背中からI Love You>カップリング曲)。このアルバムのセット・リストはかなりユニーク、まずは女性ヴォーカルWakazukuriを大きくフューチャーした<Once Love Touch's Your Life>。この曲はスティービー・ワンダーの元伴侶Syreeta 1983年リリースの第9作『The Spell』から。続いて<My Male Curiosity>、米米CLUBがお手本としたバンドKid Creole & The Coconutsの映画『Against All Odds(カリブの熱い夜)』への提供曲。オーラスは、ヒデキの第17作『GENTLE・A MAN』に収録の角松敏生さん書下ろしによる名ファンク・ナンバー<Through The Night>。

 といったところで今回のヒデキ特集Part-3は1997年にリリースされた『西城秀樹ROCKトリビュート KIDS' WANNA ROCK!』収録のシークレット・テイク<Claps: Thank You>でおしまい。

 さて次回の「音楽の館/Music Note」9月号は、ヒデキさんも採り上げた<Bomber>の作者で、現在3年ぶりに全国をツアー中の「山下達郎」さんの特集をお届けします。これからツアーに行かれる方も多いかと思いますので、彼の音楽センスについての予習を兼ねたプログラムをお届けします。次回もお楽しみに。

※FMおおつ 周波数79.1MHz 

 ※FMプラプラ(https://fmplapla.com/fmotsu/)なら全国でお楽しみいただけます。


 <「ヒデキ特集」パート3☆セット・リスト> 

Opening B.G.~ Gems1(A Cappella)/ esq( 三谷泰弘 ) 

1. 傷だらけのローラ(フランス語ライヴ・ヴァージョン) 

BG: Try A Little Tenderness/ Three Dog Night  

2. Try A Little Tenderness(ライヴ・ヴァージョン)

3. 泣かないで(If  You Go Away:日本語訳詞/ライヴ・ヴァージョン)  

BG: 青春に賭けよう(ライヴ・ヴァージョン)

4. 瞳の面影(My Eyes Adored You/ライヴ・ヴァージョン

5. S.O.S.(TOO BAD) (ライヴ・ヴァージョン)

6. Heartbreaker(ライヴ・ヴァージョン) 

BG: Strangers In The Night(夜のストレンジャー)/Bette Midler

7. ラストシーン(ライヴ・ヴァージョン)

8. カルメン~君よ抱かれて熱くなれ(ライヴ・ヴァージョン)

9. Strangers In The Night(夜のストレンジャー) (ライヴ・ヴァージョン)

10. Silly Love Song(心のラブ・ソング) (ライヴ・ヴァージョン)

11. You Keep Me Hangin' On (ライヴ・ヴァージョン)

BG: You Keep Me Hangin' On/Rod Stewart

12. 若き獅子たち(ライヴ・ヴァージョン)

13. What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの) (ライヴ・ヴァージョン)

BG: What a Diffrence a Day Makes(恋は異なもの)/Ester Phillips

14. African Symphony(ライヴ・ヴァージョン)

15. Jesus is Just Alright(希望の炎) (ライヴ・ヴァージョン)

BG: 哀愁トゥナイト/桑名正博

16. Sweet Half Moon(ライヴ・ヴァージョン)

17.その愛は(ライヴ・ヴァージョン)

18. 哀愁トゥナイト(ライヴ・ヴァージョン) 

BG: Epitaph/ザ・ピーナッツ

19. HONESTY (ライヴ・ヴァージョン) 

20. DON'T STOP ME NOW (ライヴ・ヴァージョン) 

21. Go West(ライヴ・ヴァージョン) 

22. EPITAPH (ライヴ・ヴァージョン) 

BG: Fool For The City(ライヴ・ヴァージョン)

23. Some Other Time(哀しい愛の別離) (ライヴ・ヴァージョン)

24. Copacabana (At The Copa) (ライヴ・ヴァージョン)

BG: July Morning (ライヴ・ヴァージョン)

25. Rock Music (ライヴ・ヴァージョン)

26. BOMBER(ライヴ・ヴァージョン) 

BG: パシフイック(ライヴ・ヴァージョン)

27. Once Love Touch's Your Life (feat.Wakazukuri : ライヴ・ヴァージョン)

28. My Male Curiosity(ライヴ・ヴァージョン)

29. Through The Nigh(ライヴ・ヴァージョン)

30. Claps:Thank You / Various Artist  

鈴木英之


2022年9月3日土曜日

The Pen Friend Club:『The Pen Friend Club』(サザナミレーベル/ SZDW1105) リリース・インタビュー


 The Pen Friend Club(ザ・ペンフレンドクラブ)が、オリジナル・レコーディング・アルバムとしては7作目となる『The Pen Friend Club』を9月7日にリリースする。(※ライヴアルバムを入れて8作目)
 『Merry Christmas From The Pen Friend Club』(PPRD0004)はカバー主体のクリスマス企画アルバムだったがそこから約4年、『Garden Of The Pen Friend Club』(PPRD-0003)からだと実に4年半振りというインターバルになる。


 その間に7インチ・シングル2枚とCDシングル1枚をリリースしており、キーボーディストとバンドの看板であるヴォーカリストの交代があったが、リーダーでギタリストの平川雄一を中心にバンド・カラーを維持してその魅力を継続していた。
 そして本作であるが、バンドの歴史で初となる全収録曲をオリジナルで構成しており、平川以外にも弊サイトでお馴染みのベーシストの西岡利恵、アコースティック・ギター兼コーラスのリカが曲を提供しているのは注目に値する。作風的にも先行配信されたリード・トラック「The Sun Is Up」(作曲:西岡)を聴いた音楽ファンなら理解出来ると思うが、バンドとして新たなフェーズに移行したと言っていい。 

 
 【全曲試聴MV】『The Pen Friend Club』
ザ・ペンフレンドクラブ 【Official Trailer】

 では本作の収録曲を解説していこう。冒頭の「Our Overture」は、黄金期のストーンズを彷彿とさせる怪しくクールなビートに釘付けになるが、祥雲貴行のドラムと西岡のベースによるリズム隊の巧みなコンビネーションが肝になっている。またMegumiと平川のダブル・ヴォーカルはお互いの異なる声質がこの曲に広がりを持たせており、間奏とコーダの大谷英紗子のアルト・サックスのソロも非常に効果的だ。平川の作曲で、作詞はYouth Yamadaが担当している。
 続く「The Sun Is Up」は前文通り先行配信されたリード・トラックで、本作全体を象徴している。曲作りの詳しい経緯はインタビューを読んで欲しいが、昨年8月にラフ・ミックスを聴かせてもらった時点から、この本格的なサイケデリック・ロック・サウンドには驚いた。Megumiの陰りのあるヴォーカルもマッチしていてペンフレンドクラブ(以降ペンクラ)の新たなサウンドとして注目している。エレクトリック・シタールとラーガ・スケールのリード・ギターは平川のプレイだ。西岡の作曲で作詞は彼女とYamada、Megumiの共作となっている。
 アップテンポの「Ketzal」では、祥雲のドラミングと西岡のベースの巧みなプレイにまず注目したが、Megumiのヴォーカルにリカが巧みなハモリを入れていて聴き応えがある。平川の作曲、作詞はYamadaである。

 「Mind Connection」は昨年6月にリリースされた7インチ・シングル『Chinese Soup(チャイニーズ・スープ)』(荒井由実のカバー/SZDW-1105)のカップリングで、リカによるソングライティングだ。『Friends』期のビーチボーイズを彷彿とさせるカントリー系の曲で、リカのアコースティック・ギターにそいのハモンド・オルガンが絡んで、平川のエレキのリフがアクセントとなっている。間奏のマンドリンも平川のプレイだ。
 「Floating To You」は平川が主導して西岡が作曲でサポートし、廣田幸太郎が作詞を担当したトーチソングだ。『Today!』から『Pet Sounds』へ移行する時期のビーチボーイズに通じるサウンドやコーラスが夏の終わりを想起させている。中川ユミによるグロッケンやパーカッションも効果的である。


 西岡が作曲した「At Least For Me Tonight」は、リカ作の「Mind Connection」にも近い曲調だが、コード進行やアレンジ、転調するパートなどでサイケ度はこちらの方が高い。サウンド的にはジャン&ディーンの『Save For A Rainy Day』の影響下にあり、夢想的な歌詞はYamadaによるものだ。 
 本作中比較的ストレートで親しみやすい「My New Melodies」は平川の作曲で、夏を終えて秋の始まりを讃えたラブソングといえる。溌剌としたMegumiのヴォーカルには平川、リカ、そいのコーラスが絡んでいる。こういったサウンドの中にも間奏のギター・ソロの音色や多重録音したマンドリンといった10cc趣味は平川のアイディアだろう。作詞は平川とYamadaの共作である。 
 本作でリカが提供したもう一曲が「Jump Over Time」で、無垢な世界を表現した英語歌詞まで一人で書いており感心してしまう。しっとりとしたカントリー・ロック調のこの曲でもMegumiのヴォーカルに絡む3人のコーラスが美しい。平川が弾くバリトン・ギター、そいによるウーリッツァー系エレピが効果的だ。 

 フォーク・ロック調の「People In The Distance」は、コード進行やベース・ラインからUKのネオアコースティック・ロックのファンも魅了しそうだ。本作でサイケ・ソングの名曲を手掛けた西岡の作曲で、弊サイトで連載コラムを担当している程、幅広い音楽趣味を持つ彼女らしいセンスである。コロナ禍の生き方を反映した歌詞はYamadaによるものだ。大谷はこの曲ではテナー・サックスのソロを披露している。
 続く「You Know You've Heard That Before?」は複数のアコースティック・ギターのアルペジオが美しく、前曲からの流れが非常にマッチしている。平川の作曲でYamadaの作詞だが、フィフス・アヴェニュー・バンドやアメリカにも通じるフォーキーで転調が多いサウンドは筆者も好みである。アコギのリフと呼応する中川のグロッケンや変拍子となる間奏などアレンジ的にも完成度が高い。その間奏の幻想的なフルート・ソロはヴォーカルのMegumiが自ら演奏している。

 
The Pen Friend Club / Beyond The Railroad
 (Official Music Video) 

 70年代初期の西海岸ロック風の「Beyond The Railroad」は、西岡作の「The Sun Is Up」に続いて8月17日に配信された平川の作曲、Yamadaの作詞で、曲作りの経緯はインタビューを読んで欲しい。やはりこの曲の醍醐味は、Megumiのヴォーカルに絡む3人のイーグルス・スタイルのコーラスではないだろうか。巧みなギター・ソロの他バンジョーも平川のプレイだ。
 そして本作のハイライトとなるのが12曲目の「Dawn」だろう。この曲の構成力の素晴らしさは、4月にアルバムのラフ・ミックスを聴かせてもらった時から注目していた。インタビューでも触れているが、1960年代末期の英国ロックの魅力が平川によってオマージュさせた傑作と言える。4分14秒と決して長くないが、ピアノ1台をバックにしたMegumiの歌唱から徐々に楽器がプラスされドラマティックに展開していく様は圧巻である。廣田とYamadaの共作による歌詞も「Dawn(夜明け)」と題されたタイトルを深く読み取れる感動的な内容である。
 ラストの「A Better Day」は西岡の作曲、Yamadaの作詞による小曲で、『Abbey Road』における「Her Majesty」と同様に、「Dawn」で大団円を迎えた後のアンコール曲といえる。アコースティック・ギターとベースにタンバリンというミニマムな編成で、アクセントでバンジョーとグロッケンが入る。軽快で爽やかな曲がこの位置であることで、アルバム冒頭に戻って幾度も再生したくなる効果があり、良く考え抜かれた曲順である。

 

 ここからはソングライティングを担当した中で、オリジナル・メンバーの平川と西岡へのインタビュー、そして彼らが曲作りやレコーディング中にイメージ作りをしていた楽曲をセレクトしたプレイリスト(サブスクで試聴可)を紹介するので聴きながら読んで欲しい。

~「1960年代後半の洋楽の名盤」然としたものを作る、
というのが大きなテーマだった~

 ●まずは本作『The Pen Friend Club』で、バンド初の全曲オリジナル曲を収録に至った経緯を聞かせて下さい。

◎平川雄一(以下平川):現在のヴォーカルのMegumiがバンドに加入したのが2020年の3月。そこから間もなくコロナ禍に突入し、思うように活動出来ないどころかメンバーの私生活上も自粛期間に入りました。
その持て余した期間に各々が本作に収録されることになるオリジナル曲を作曲したという感じです。

●成る程、このコロナ禍などの活動自粛期間を作曲に充てられたことで多くのオリジナル曲が生み出されたということでもありますね。因みにメンバー以外に作詞を依頼した経緯を聞かせて下さい。Youth Yamada氏と廣田幸太郎氏はどういった方々でしょうか? 

◎平川:今回の作詞は1stアルバムの頃から共作している廣田幸太郎に加え、初共作となるYouth Yamadaを迎えて制作しました。
まず廣田幸太郎は僕が20代の頃にやっていたビートバンドのメンバーで、解散後、廣田はヨーロッパに移住、現在はイギリスのトゥイッケナムで自身の音楽活動をしています。これまで僕の曲の英語詞の多くを書いてくれています。本作では「Floating To You」、「Dawn」を担当してくれました。
Youth Yamadaも20代の頃からの音楽仲間の1人で、日本でミュージシャンとして活躍後、ニューヨークに活動の場を移しています。彼もまたコロナの自粛期間だったこともあり、本作の僕や西岡の曲の多くの英詞を担当してくれました。多数、執筆していることもあり、彼の作家性が今回のアルバムに及ぼした影響は大きいです。 

●廣田氏はファースト収録の「I Sing A Song For You」や「I Fell In Love」から組んでいましたね。Yamada氏とお二方の歌詞の世界観は本作への貢献度が高いのも理解しました。では主な曲の作曲した時期とモチーフ、アレンジのアイディアなども可能な限り教えて下さい。 

◎平川:作曲時期は先述した通り2020年のコロナ自粛期間中が主です。 M1「Our Overture」は元々インスト曲として作曲しました。インストが出来た後に歌メロ、歌詞を入れた形です。このアルバムの方向性を決める一曲として最初に着手しました。
モチーフはザ・ローリング・ストーンズの「Gimmie Shelter」(『Let It Bleed』収録)です。

西岡と共作したM5「Floating To You」は全体のコード進行とAメロを僕が作りました。Bメロの歌メロをどうしても作れず、西岡にその部分を作ってもらいました。西岡が提出してきたそのメロディを聴いたときは本当に驚きました。個人的には一番自分らしい曲が出来た気がしています。その曲が西岡、廣田との共作である点も感慨深いです。
モチーフはグレン・キャンベルの「Guess I’m Dumb」(同名シングル)です。

M11「Beyond The Railroad」は僕が在籍していたザ・ヤング・フォークスというバンドの為に作った1970年代初頭の西海岸ロック的な曲で約10年前には構成とメロディは出来ていました。その時点での発表はなく、ペンクラを結成してからずっと発表の機会を探っていましたが、本アルバム収録曲のジャンルの多様さの中なら成立すると判断し、改めてYouth Yamadaに英詞を依頼し完成させました。
モチーフはPoco「A Good Feelin' To Know」(同名アルバム収録)、イーグルス「Take It Easy」(同名デビュー・シングル)です。

M12「Dawn」はザ・ビートルズ「Happiness Is a Warm Gun」(『The Beatles』収録)、ポール・マッカートニー「Band On The Run」(同名アルバム収録)のような組曲形式の曲を作りたいと思い、作りました。
歌詞は「抑圧からの解放、変革、大団円。コロナ禍がバックボーンにある、と受け取られてもおかしくない内容。ただ一応、抽象的にぼかす感じで。」などという意図を歌詞に反映させるように廣田幸太郎に注文しました。アルバムを締めくくるような曲が必要だと感じ、そこに当てはめました。


●具体的なモチーフ曲まで挙げてくれてありがとうございます。リスナーもモチーフというかオマージュ元の曲に興味を持って聴いてくれるので、結果的に恩返しになりますよ。
「Our Overture」の怪しくクールな感触はコード進行も重要ですが、リズム隊のコンビネーションもあってのサウンドですね。また西岡さんと共作した「Floating To You」や以前のバンド用に作っていた「Beyond The Railroad」の経緯も興味深いです。
個人的には「Dawn」の構成力に惹かれました。先ほど触れた「Our Overture」のヴァースのパートが挿入されていて、モチーフで挙げていた曲以外にもサンダークラップ・ニューマンの「Something in the Air」、ビートルズだとポールが主導した『Abbey Road』後半のメドレーの匂いもしました。

これら本作全体を聴いて感じたのは、前作からの間にリリースしたアソシエイションのカバー・シングル『Along Comes Mary』(PPRD-0005)や『Chinese Soup』(SZDW1092)のカップリング「Mind Connection」(本作にも収録でリカ作)から兆候はあったので、ソフトランディングと捉えてもいいかも知れませんが、ポップス然としたストレートなMOR系の曲が減って、60年代~70年代初期の英国ロックや米国西海岸ロックをルーツとした曲の比重が増えてきましたね。
アルバム毎にバンドが成長していくのは当然ですが、バンド・カラーが変わってきたことに対して、ペンクラのリーダー兼プロデューサーとして今後の進む方向をどの様に考えていますか? 

◎平川:ありがとうございます。このアルバムでは「邦楽感」を無くしていきたい感じですね。日本語曲はリカの「Mind Connestion」のみであとは全部英詞ですよね。日本語の詞でも制作は出来たのですが、「1960年代後半の洋楽の名盤」然としたものを作る、というのが大きなテーマだったので、自ずとそうなっていきました。
ペンフレンドクラブで今までオリジナルアルバムを5作、あとライヴ盤、クリスマスアルバム、ベスト盤等を作ってきて、「あと足りないのは、、、名盤だな」ということで、このバンドの名盤を作っておこうというコンセプトになっていきました。 

 ●本作は名盤を作りたい(笑)というのがテーマだったというのは、ミュージシャンシップとしてごく当然でポジティブでいいと思います。バンドを結成してからテーマ別のアルバム制作のプランをしていたというのも平川君らしいです。名盤とするためにこれまで以上に凝っている曲作りやアレンジを感じさせるサウンドでしたからね。
西岡さんもご自身の作品でのモチーフ、アレンジのアイディアなどを聞かせて下さい。

The Pen Friend Club / The Sun Is Up
 (Official Music Video) 
 
◎西岡利恵(以下西岡):M2「The Sun Is Up」は2年くらい前、藤本有華がヴォーカルだった第5期の頃に作りました。Pentangleの「Let No Man Steal Your Thyme」を聴いていて思いついたフレーズから作り始めましたが、途中からはBuffalo Springfieldの影響が大きかった気がします。平川にアレンジしてもらう段階でもBuffalo Springfieldがイメージ共有のキーワードになっていました。
歌詞は私が日本語で書いたものを基に、Youth Yamada、Megumiが加筆修正して英詞に仕上げてくれました。 ペンクラでの作曲は初めての体験でしたが、歌詞をつけてもらって、アレンジしてもらって、演奏してもらって、形になっていくごとに期待以上のものができあがっていって、すごく恵まれた環境にいるのを実感しました。

●「The Sun Is Up」は昨年8月初頭に平川君からラフミックを聴かせてもらった際、これまでのペンクラのオリジナル曲とは異なるサイケデリック色が強いサウンドだったのでやはり驚きました。
ご自身がリーダーのガレージ・バンド、Schültzのサウンドとも違いますが、こういう作風はバッファローやペンタングルが好きで聴いていて着想的にも自然に湧き出た感じですか? 

◎西岡:複数バンドをやるならそれぞれのバンドでしかできないことをやりたいというのがあって、バッファローやペンタングルも聴いていた音楽の一部なので影響はありますが、自分が作れるものの中で、ペンクラでやるならこういうのをやりたい、と思ってできた感じです。


~アルバム制作はまずジャケ写から作る。
そのジャケ写に見合ったアルバム内容にしていく~

●レコーディングやミックス中の特質すべきエピソードを聞かせて下さい。

◎平川:元々このアルバムは2021年秋に発売する予定でした。『The Sun Is Up / People In The Distance』の先行シングルも予定していました。
しかしドラマーの祥雲貴行が2021年中に腰痛やプライベートの事情でライヴやレコーディングに参加出来ず、その間このアルバムは制作途中で放置されていました。「本当にこのアルバムは完成するのだろうか」という不安から、いっそアルバムごと放棄することも考えました。
その後2022年初頭に祥雲が復帰してから一気にレコーディングを進め完成に至りました。
あの時のことを考えるとこのアルバムがこうして完成したことが信じられません。

当初、アルバムタイトルは『The Sun』でした。西岡作曲の「The Sun Is Up」を表題曲とする考えだったのです。 
※「The Sun Is Up」も当初は「Sun」や「The Sun」等、曲名が不確定でした。

制作が長期に及んだこと、全曲オリジナル、メンバーの曲も含んでいたり、このアルバムへの様々な思いを込めてセルフタイトル『The Pen Friend Club』としました。 

レコーディングはコロナ禍の中でメンバーそれぞれが宅録出来る状況を促進させたりして音源を集結させていました。ドラムやサックス、グロッケン等はスタジオで録音しています。
ミックスに関してはメンバーの意向をたくさん反映させて作りました。

◎西岡:第5期の終わりに「The Sun Is Up」を作った後、バンド的にも世の中的にも大きな変化があり、第6期になってからはまもなく自粛生活に入りました。その期間にその他の曲を作ったり自宅での録音を進めたりしていましたが、メンバーとも自由に会えず先の見えない中での制作だったので無事に完成して本当に嬉しいです。

●紆余曲折があったようですね。バンドを牽引しているお二人の苦労話も聞けて、更に興味が沸きましたので改めて聴き直したいと感じましたよ。
続いてジャケット・デザインについて、またブックレットのイラストを西岡さんが手掛けていますが、アイディアやモチーフを聞かせて下さい。

◎平川:ブックレットには英詞と日本語の対訳を載せています。そこに曲から着想するイラストを西岡に描いてもらいました。
西岡なら洋書の挿絵のようなイラストが描けるような気がして。
所々相談しながらでしたが、ほぼ全て西岡のセンス、判断で描いてもらいました。素晴らしい出来だと思います。

◎西岡:アルバムジャケットの写真を撮ったのは2020年の秋。本格的に音源の制作にも入っていない時期でしたが、撮影したのは明らかにこれまでと違う雰囲気の写真で、今思えばすでに平川の中には完成に向けた具体的な構想があったのかもしれないです。
その後思うように進められない中で、平川がこのジャケット写真を携帯の待受にして制作のモチベーションを保ち続けていたのが印象的でした。

ブックレットの挿絵に関しては平川から歌詞カードの余白部分が寂しいので、洋書の挿絵みたいな絵を描けないかという話をもらって、面白そうだったのでやってみたいと言いました。曲から着想して描く過程でより曲や歌詞の魅力を感じたし、その作業はとても楽しかったです。

●洋書の挿絵風というのは本格的ですね。趣味の域を超えていると思いますが、西岡さんは美術を学んでいたとか?

◎西岡:絵は時々趣味で描いていました。今回は美術教材やアンティーク・イラストなどを参考にしたりしながら描きました。 

 ●趣味のレベルを超えた画風だったのでこれはもう才能というしかないですね。
それと平川君にお聞きしますが、これまでとは異なるバンド・カラーのジャケット写真ですよね。まさかMegumiさんが加入して半年ほどの早い時期に撮影されていたとは思いませんでしたよ!撮影当初からジャケット用として考えていたんですか?ジャケ写が本作の「キービジュアル」になっているということですね。

 アルバムと色違いの先行配信シングル
「The Sun Is Up」と「Beyond The Railroad」
ジャケット画像

◎平川:はい、そうなんです。実はアルバム制作はまずジャケ写から作る方なんです。後でそのジャケ写に見合ったアルバム内容にしていくっていう(笑)。
最初に「ペンクラには次はこんなジャケのアルバムが欲しいな」って。 今回シリアスなジャケ写でしたが、やっぱりコロナの真っただ中だったからですかね。 もちろん、その後にそれぞれが持ち寄った曲の雰囲気によってアルバム内容は変わっていきますが、アレンジとか、アルバム全体の方向性、作品性をジャケ写の雰囲気に寄せていくという作り方をしています。
モチベが上がるんですよね。「早くこのアルバムを世に出したい。」って。


●ソングライティングやレコーディング中にイメージ作りで聴いていた曲をお一人5曲、合計10曲ほど挙げて下さい。

◎平川雄一 選曲(アー写はライヴでベースをプレイ中)
■ Gimmie Shelter / The Rolling Stones(『Let It Bleed』/ 1969年)
■ Band On The Run / Paul Mccartney
(『Band on the Run』/ 1973年)
■ Friends / The Beach Boys(『Friends』/ 1968年)
■ For What It's Worth / Buffalo Springfield
(『Buffalo Springfield』 / 1966年)
■ A Good Feelin' To Know / Poco
(『A Good Feelin' To Know』/ 1972年) 

◎西岡利恵 選曲(アー写はライヴでギターをプレイ中)
■ Let No Man Steal Your Thyme / Pentangle
(『The Pentangle』/ 1968年)
■ For What It's Worth / Buffalo Springfield
(『Buffalo Springfield』/ 1966年)
■ Before And After / Chad & Jeremy
(『Before And After』/ 1965年)
■ Pocket Full of Rainbows / Jan & Dean
(『Save For A Rainy Day』/ 1966年)
■ High / Eric Clapton(『There's One in Every Crowd』/ 1975年)



●リリースに合わせたライヴなどイベント情報があれば紹介して下さい。

◎平川:9月のライヴ・イベントは以下の予定です。
 興味を持った方は是非お越し下さい。

■9/6(火) 18:00~
ディスクユニオンお茶の水店
お渡し会&ポップアップスペースにてペンクラ特集

■9/11(日) 15:00~
HMV record shop 渋谷
インストア観覧無料ライブ&サイン会

■9月24日(土)
下北沢LIVE HAUS
『Add Some Music To Your Day : 10 BIG ONES SPECIAL CONCERT』
【BANDS】
The Pen Friend Club
CHARLIE & THE HOT WHEELS
【DJ】
ジミー益子
開場(DJ START) PM19:00
前売:¥3,000 / 当日:¥3,500 [共に+1D]
※前売りご予約は各出演者の窓口から。整理券なし。


●最後に本作『The Pen Friend Club』のアピールをお願いします。

◎平川:今はイレギュラーな期間に作られたイレギュラーなペンクラ作品という感じで捉えていますが、敢えてセルフタイトルにもしたように、「これがペンフレンドクラブだ。」と自信をもって言える作品でもあります。
このような雰囲気のペンクラのアルバムはもう作られない?ような気がしています。

◎西岡:セルフタイトルにふさわしくバンドとしての要素が強く出ているアルバムだと思います。今回全オリジナル曲ということ、平川の他、アコギ・コーラスのリカと私も作曲に参加していることはこれまでと違う部分ですが、作曲したことでよりメンバーと関わりながらの制作になったこともあり、思い入れの深い作品になりました。ぜひ聴いていただきたいです。 


 (設問作成・編集・テキスト / ウチタカヒデ