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2021年12月18日土曜日

Francis:『反撥 / 可愛い玩具』(Unchantable Records / UCT-042)


 9月にリリースされたセカンド・アルバム『Bolero』が好評中のFrancis(フランシス)が、同アルバムから「反撥(はんぱつ)」を7インチで12月22日にシングル・カットする。約27年振りというアルバムの勢いもあり、このリリースは嬉しいニュースだ。
 
 FrancisはThe Red Curtain時代からのオリジナル・ラブの最初期メンバーで、90年の脱退後翌年から2014年までザ・コレクターズのベーシストだった小里誠(おり まこと)のソロユニットだ。94年にはファースト・ミニアルバム『Burning Bear!』をリリースしている。
 65年生まれの小里はThe Red Curtainと平行して、テクノユニット“Picky Picnic(ピッキー・ピクニック)”を結成し、85年にはドイツのAta Takよりファースト・アルバム『Ha! Ha! Tarachine』をリリースした。後に『シニカル・ヒステリー・アワー』の作者で女性漫画家の玖保キリコもメンバーとなり、当時のサブカル・シーンでは話題になっていた。
 このように幅広い音楽スタイルの趣向と、小里の柔軟なスタンスが、Francisの活動にも大きく影響していると考えられる。

『Bolero』 【Trailer】Francis New Album "Bolero

 『Bolero』にもドイツのポスト・パンクやニューウェイヴ・シーンを牽引したD.A.Fに通じるサウンドをはじめ、ユニット名のインスピレーション元と思われるフレンチポップ、チープでニッチなライブラリー系のモンド・ミュージックなど欧州ロマンティシズムを漂わせた数多のヴァリエーションを誇った曲が収録されており、一筋縄ではいかない強烈な個性を放っているので、アルバムの方も是非チェックして欲しい。 

 ここからはこの7インチ・シングルの収録曲を解説する。
 A面タイトル曲の「反撥」は『Bolero』のリード曲で、D.A.Fに通じるアタックの強いシンセ・リフと分厚く肉感的でファンキーなシンセ・ベース、プログラミングされたチープなドラムトラックが有機的に絡み合い、ヒプノティックなグルーヴを形成している。そこに小里のダンディな歌詞とボーカルが乗るという独自性が非常に新鮮で、9月初頭に送られてきたアルバム音源を一聴して虜になってしまった。
 間奏のエキセントリック且つ奔放なギターソロは、セッションマンとしてYUKIからカーネーションなどをサポートする名手の松江潤のプレイで、このサウンドの中でいいコントラストを醸し出している。因みに彼は、弊サイト企画でもお馴染みのドラマー西浦謙助(元相対性理論集団行動)と、“誰でもエスパー”というユニークなバンドも組んでいるのでチェックして欲しい。
 とにかく令和3年度の問題作と言える『Bolero』を象徴するこの曲を、7インチでシングル・カットしようと提案した、Unchantable Records主宰のグルーヴあんちゃんのセンスにも脱帽してしまった。またジャケット・デザインはアルバム同様に小田島等で、2年前に弊サイトで紹介した鈴木恵TRIOの『come here my dear』でもそのセンスを発揮しており、ここではミリタリーアートの手法でダンディな小里の姿をとらえている。

 
     【MV】Francis “反撥 Repulsion” 

 一方B面の「可愛い玩具」は、セルジュ・ゲンスブールに通じる退廃的でキッチュな歌詞を持ち、ファーストテンポの2ビートで演奏したフレンチ・ロカビリーと言えばいいだろうか。この曲ではGREAT3のメンバーで多くのセッションでも高名な白根賢一が巧みなドラム・プレイを聴かせている。
 小里の非凡なソングライティング・センスには注目で、軽快なバースとサビのノベルティ感から間奏を経て、甘美な大サビへと導く流れはポップスを知り尽くした故になせる技である。4分44秒の中で繰り広げられるドラマティックな展開は聴く者を決して聴き飽きさせないだろう。



 Francis=小里誠の唯一無二の魅力を7インチに凝縮したこの作品は、自分へのクリスマス・プレゼントとしても最良かも知れないので、多くの拘り派音楽ファンは是非入手して欲しい。
(テキスト:ウチタカヒデ

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