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2016年3月17日木曜日

☆吾妻ひでお:『ワンダーAZUMA HIDEOランド2』(復刊ドットコム)


出版の計画を立ててから約一年、ようやく待望の続編が出版された。この一冊で吾妻ひでおの単行本未収録作品の9割以上がカバーされたことになり、またここに収録された雑誌や同人誌、業界誌などの原本を集めるのはほぼ不可能に近いので、本のコスト・パフォーマンスの高さは比類なきものがある。高校時代の投稿カットまで入れた徹底ぶりだ。本の構成順だとレア度が分かりづらいので、発表年順にポイントを押さえておこう。まず初期作品だが、高校時代の投稿カット、アシスタント自体のカットまで入れた徹底ぶり。デビューの1969年から1973年までのショートショート10本が『デビューの頃』に入っている。ギャグマンガとしては非常に素朴だが、「ベトナム和平」「沖縄問題」(返還こと)「国電」などネームに時代を感じられる。続く作品は『青年マンガ』のコーナーの方が早い。そのコーナーの中では1974年のカラーや2色が入った作品も入れた4編、19751本、19771本が初期。そして『少年マンガ』のコーナーとも重なり1972年の「おーマイパック第3話」、197476年の「ふたりと5人」番外編4編はどれもエロ・グロ・ナンセンスで、初期吾妻ワールドを感じさせてくれる。ちなみに青年マンガコーナーの「ゴタゴタマンション」は他に3編単行本未収録があるが、「アニマル・カンパニー」の1編と含めて吾妻先生の方で余りに下品とNGが出てしまった(笑)さて、ここから紹介する部分が、多くの吾妻ひでおフリークの目玉となる、一番絵柄も内容もいい、「アズマニア発生」の部分である。やはりこれは同人誌作品が核となっていて、主なものは『ワンダー1』などに収録済みのだが、ここでは『無気力プロのころ』と題して77年の「吾妻ひでお伝!」、78年の「無気力日記」、84年の「良いファン悪いファンとんでもないファン」といったコマを割った作品は貴重だし、当時のコミケでスターダムにいた「はーどしゅーる新聞」などへのカットの数々、あの伝説の吾妻先生本人が売り子をやっていた「シベール」の番外編の「プチ・シベール」に描いたイラスト2点、さらに「少年マンガ」コーナーにページ合わせで入れられた77年「吾妻ひでお不滅のキャラクター特集!」(注:奥様のカット付き。黒マクさんのこと)の同人誌17Pは激レアである。さらに巻末の吾妻先生と高橋葉介先生の対談に入っている「葉介先生ご結婚おめでとう」のカットは1983年に高橋葉介先生のファンクラブに描いたものでレア度はさらに上がるのでここにも注目。諸事情で入れられなかったイラストやマンガがあるのが残念だが、これだけ入れられればまずは十分だろう。あと『青年マンガ』に入れられてしまった78年に「高2コース」に連載された「いちヌケくん」計3回12Pは、貴重度はマックスだ。学年誌がまずレア、そして78年という発表年だ。同時期に「パラレル狂室」を描き「やどりぎくん」を連載していた。翌年にはあの「不条理日記」を描くなどSFマインドも爆発を初めていた。この作品はギャグだが、最も単行本収録を望んでいた作品のひとつである。以降は『近作と友人たち』『近作と美少女』と題されたコーナーに収録されているがこのコーナー立てにはあまり意味がなく、古いものでは83年の作品から、90年代、2000年年代の激レア作品が揃う。特に予告編的な、96年にCD-ROM本を出した時の予告マンガや、青年誌での「うつうつひでお日記」の予告編4コマ3編とか「コスプレ奥様」を出した時の雑誌の予告4コマなんて、まあ普通の人は気づくこともないディープなものだ。そして2005年にあの名作「失踪日記」を出した時に、新宿の「まんがの森」で配った内容予告の宣伝マンガ「失踪日記のこと」など、知ることすらなかった非売品。(当初、先生は掲載NGにしていましたが…。特に問題ない内容でしたから。)その2回目の失踪時代はガス工事屋になっていた事は有名だが、その業界誌に1Pマンガ「ガス屋のガス公」を書き、本名・写真付で掲載されていたものがあるのだが、さすがに作業着姿の写真をカットして掲載している。93年のことだった。そしてこの「ガス屋のガス公」は2011年に8Pマンガとなって。吾妻ひでおマニアックス展」の展示として公開され、この本に収録された。先生は定期的に「癒しとしての自己表現展」「心のアート展」に描き下ろしマンガを展示しているが、こういうアート展の収録はまさに超マニアック。その中でも「ガス屋のガス公」は「失踪日記」のエネルギーを内包する、この本のハイライトの作品だった。その他、親交があり共作本も出している新井素子との単行本未収録3編(ひとつは抜粋版)や、コミケの創始者で親交があった故・米沢嘉博への追悼同人誌3冊への3編も貴重だ。自分自身の想い出だが、80年代に「漫画の手帖」という同人誌をコミケに出していた時に、米沢さんは毎回必ず挨拶に来られていて、律義でとても好印象を与える方だった事を思い出す。本書は本当に落ち穂ひろい。そのため非常にバラエティに富んだ内容になったが、コンプリートを目指す人にはマスト・バイ・アイテムだ。この本はセレクションだけ済ませたところで諸事情から離れて完成したものだが、各扉のカットなど気が効いていて良い出来である。まだこの『ワンダー2』だけでは単行本1冊分の抜け原稿があるので、いつか最終版『ワンダーAZUMA HIDEOランド3』が出ることを待つことにしよう。(佐野邦彦)

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