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2014年11月23日日曜日

☆Barry Mann:『Barry Mann』(Vivid Sound/VSCD2388)


これは価値あるリイシューだ。バリー・マンはプロ最高峰の作曲家だが、その魅力が最も伝わるのはシンガー・ソングライターとして出した3枚のアルバムであり、特に1975年にRCAイクイノックスからリリースしたサード・ソロ『Survivor』を最高峰として一押ししてきた。このアルバムはビーチ・ボーイズを離れていたブルース・ジョンストンが盟友テリー・メルチャーと作ったイクイノックスのプロダクションでリリースしたアルバムで、カリフォルニア・ミュージックからカリフォリニアなど、ブルースが最もクリエイティヴな時期のワークスだったので、力強く渋みのあるバリー・マンの歌声、ドラマティックなメロディ・ラインに、ブルース達の繊細で緻密なプロダクションが施され至高の1枚に仕上がった。このアルバムはシングルのみの曲やアルバムが2種類あって選曲が違ったが、それらとアリスタのシングルまで(「Jennifer」が嬉しい)収録されたCDが出て、またもう1枚の傑作1971年のセカンド・ソロ『Lay It All Out』もシングル曲2曲を入れて(ただし「Carry Me Home」は中間の上昇部が長い別ヴァージョンだったが)リリースされ、残るは1980にカサブランカからリリースされたこの4枚目のソロ『Barry Mann』だけが残されていた。今回のリリースで、シンガー・ソングライター、バリー・マン黄金時代の3枚のソロ・アルバムが全てCD化されたことになる。全て日本のみのCD化で、高く評価したい。さて、この4枚目、出来はいいのだが、前の2枚が素晴らし過ぎたので比較するとちょっと見劣りするのは事実。まあ比較する相手が悪いのだが...
個人的なお気に入りは「Don't Know Much」と「In My Own Way」。前者はリンダ・ロンシュタットとアーロン・ネヴィルのデュオで全米2位まで上がった大ヒット曲、後者は洒落たバラードだが、シンプルな演奏の中に光るホーンやシンセのアレンジはどちらもフリー・デザインのクリス・デドリック。ヒットには縁遠かったクリスだが、ちゃんとバリー・マンのお眼鏡にはかかっている。いい仕事だ。B.J.トーマスが歌った「We're Over」も落ち着いた静かなバラードで、なかなかいい。ブリル・ビルディング時代の盟友、キャロル・キングと歌もピアノも共演した「You're The Only One」は、アップテンポで2人のエモーショナルなハーモニーが楽しめ、曲の出来よりも、この2人の共演というだけでも満足。2人のデュオはもう1曲ある。これでバリー・マンのソロでみんなに聴いてもらいたいのは同時期のワーナーのシングル「Almost Gone」と、セプターからのシングル「Feelings」、そしてキャピトルからの「I Just Can't Help Believing」。あとキャピトルのシングルでは「She Is Today」と「Angelica」あたりもCD化して欲しいところ。歌手バリー・マン卒業後のシンガーソングライター・バリー・マンは、ヒットがほぼないだけに、シングルごとレーベルが変わる感が強いので、残りはコンピに入れてもらうしかないのかな。しかしCDが売れないこの時代、昔のようなヒットしなかった曲でも選曲してくれたコンピなどもう出ないかもしれない。レーベルがカタログを順に配信してくれる時代は十分想像できるので、そちらに期待した方がいいのかも。(佐野邦彦)

 





 

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