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1997年12月17日水曜日

☆Various:MOM Ⅱ Music For Our Mother Ocean(Surfdog/90129)

  "Surfrider Foundation" なるサーファー達による海の自然を守ろうという基金からリリースされたベネフィット CD 「MOMⅡ Music For Our Mother Ocean」に、93年6月23日のロンドン・ウィンブレイでの "Summer In Paradise" のライブが収録されていた。
まさしくコアなファン向けのアイテムだが、ビーチ・ボーイズ・フリークなら見過ごしてはおけないはず。「Summer In Paradise」のイギリス盤での再録音ヴァージョンの方で歌っており、途中からやはり同じくロジャー・マッギン(このライブ盤にはクレジットはないがそっくり)がヴォーカルを取る
(佐野)


☆ Kings Singers : Spirit Voices(RCA Victor/090266844)

来日したクラシックのコーラス・グループ、キングス・シンガーズの最新アルバム「Spirit Voices(RCA Victor/090266844)はビーチ・ボーイズやポール・サイモンなどの曲をアカペラで歌ったものであり、その中にはビーチ・ボーイズのナンバーの "Kokomo"  "Please Let Me Wonder"  "The Lord's Prayer" の3曲が収録されていた。
素晴らしいアカペラで新たな命を吹き込まれたこれらの曲のプロデューサーのクレジットには、なんと嬉しいことにブルース・ジョンストンの名前。さらにビーチ・ボーイズ以外の2曲を入れた計5曲がブルースのプロデュースで、曲によってはバック・コーラスや演奏にも参加し、 "Please~" ではガイド・ヴォーカルとしてマイク・ラブも参加、さらに "The Lord's Prayer" ではヴォーカル・アレンジメントにブライアン・ウィルソンの名前が併記されていた。もっともこの曲のアカペラはビーチ・ボーイズとほぼ同じなので、インスパイアという意味で名前を載せたのかもしれないが。キングス・シンガーズのジャンルがロック/ポップスではなくクラシックなので、忘れない今のうちに入手しておこう。 (佐野)



1997年11月26日水曜日

☆Montanas : You've Got To Be Loved (Sequel/994)

モンタナスはイギリスのグループで、65-70年の間にPiccadellyPyeMCAで9枚のシングルをリリースしたのみでアルバムのリリースはなく、ヒットも "You've Got To Be Loved" がイギリスのレコードワールドで39位、アメリカのビルボードで58位にランクされたのみだ。しかしMCAのシングル1枚以外の全音源を集めた本 CD を聴くと内容のいい曲を数多く作り出していたことが分かる。
デビューの "All That Is Mine Can Be Yours" はマージー系、セカンドの "That's When Happiness Begun" はR&B調でいまひとつあか抜けないサウンドだったが、トニー・ハッチがプロデューサーになったサード・シングル "Ciao Baby" から一気に洗練されたサウンドに変貌した。ハイトーンのヴォーカルにコーラスがからみ、アコースティック・ギターのストロークをベースに生かしながらビートの効いたサウンドを響かせる。メロディもキャッチーだったが、同時期に大ヒットしたフォーチュンズの "You've Got Your Troubles" に似ていたのが失敗だった。続く "Take My Hand" はアドリシ兄弟の書いたキャッチーなこれぞヒット・チューンという快作だが、これもなぜかヒットせず。驚いたのは、この曲はミレニウムのリー・マロリーがカート・ベッチャーのプロデュースでリリースしたセカンド・シングルと同じ曲だったのだ。両者を比べるとハッチのプロデュースの方がサウンドもクリアーだし出来がいい。2枚連続ヒットしなかったので、ついに御大トニー・ハッチが自作を提供した。それが "You've Got To Be Loved" である。流麗なメロディと聴かせどころに配される心引かれるフレーズはさすがハッチとしかいいようがない。続く "A Step In The Right Direction" もハッチ作だが、エキゾチックなメロディはいいが少々アダルトなサウンド過ぎてヒットせず。それよりもB面に多く配されているメンバーのオリジナル曲の "Someday" が明るいポップ・チューンでこちらはなかなかいい。さらに7枚目のシングルの "You're Making A Big Mistake/Run To Me" はどちらもハッチが書いた。A面は出だしのメロディはいいのだが、詰めが少々甘い。それよりB面の方がトニー・ハッチらしいポップさが出ている。ここでハッチが離れ8枚目のシングルはオリジナルの "Roundabout" で勝負したが、出来は悪くはないがやはり質の低下は否めなかった。17曲目以降は未完成のアルバム用の未発表トラックが10曲続くが、どれも出来はなかなかいい。その中でも驚いたのがロジャー・ニコルスの "Let's Ride" だ。あの爽やかさを少しも壊していない素晴らしいカバーで、ロジャー・ニコルス・ファンはこの1曲のためだけでも買う価値がある。97年のベスト・リイシューの1枚と自信を持ってお薦めしたい。(佐野)
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1997年11月21日金曜日

Beach Boys情報:「The Pet Sounds Sessions」、「Essential : The Beach Boys Perfect Harmony」、「Shut Down」etc

The Pet Sounds SessionsBoxのDATを私が東芝EMIの試聴室で聴いたのはもう今から1年9カ月も前のことになる。そしてリリース予定の96年6月からようやく1年5カ月を経て待望のリリースとなった。
内容についてはキリがないので詳細には記述しない。日本盤には140Pものブックレットの対訳が付き、メンバーや他の著名なミュージシャンのコメントが読めるのでそれで十分だ。本誌の読者なら黙って買うこと。ロック史上最高のアルバムを、制作の試行錯誤のヴァージョン(間奏がサックスの "God Only Knows" 、リードがマイクの "I'm Waiting For The Day" 、ブライアンやカールがリードを取る "Sloop John B" などがある)から、あまりの美しさに息を飲む全曲ヴォーカル・パートのみの「Stack-O-Vocals」、ブライアンの細かい指示も生々しいバッキング・セッションの風景など、徹底的に楽しめるファンならずとも感涙の1枚だ。長く待ち望まれた「Pet Sounds」のトゥルー・ステレオも初めて収録されている。全てのリイシュー盤の中でも、97年の最大の収穫であることは間違いない。そしてEMIの100周年記念として、アメリカのEMI?キャピトルより、「Essential : The Beach Boys Perfect Harmony(EMI-Capitol/72438-21277)がリリースされた。紙パッケージを組み合わせた非常に凝った作りの CD で、内容的にはキャピトル時代の15曲のコンピ盤。その中でちょっと面白い2ヴァージョンがある。 "Vocal Up Version" と題された "Hushabye"  "When I Grow Up" の2曲だ。ヴォーカルをぐっと大きくしたミックスなのだが、ビーチ・ボーイズのコーラスの粋をこらしたこの2曲を選んだセンスが素晴らしい。限定盤なのでコレクターの方はお忘れなく。日本の東芝EMIよりはキャピトル時代の全オリジナル・アルバムなど20枚がリイシューされた。あの2イン1ではないので、残念ながらボーナス・トラックはない。ただ、コンピ盤の「Shut Down」は初リイシュー、冒頭にエキゾーストノートが被るミックスの「Shut Down」はこの盤でしか聴けない。ビーチ・ボーイズではないが、ブライアン・ウィルソンの二人の娘カーニーとウェンディのデュオにブライアン自身も協力したウィルソンズのアルバムがリリースされた。その「The Wilsons(マーキュリー/1550)は、ブライアンが作曲で "Miracle"  "Everythig I Need" (後者の共作はトニー・アッシャー)に参加、ヴォーカルではこの2曲の他、自身の "'Til I Die" 、そしてなんとキャロル・キングが作曲に加わった "Monday Without You" の4曲に参加している。サウンド的にはウィルソン・フィリップスの延長だが、ブライアンが参加した曲はポップな舌触りがあり楽しめる。特にアルバムのベスト・トラックでもある "Monday Without You" は、軽快なサウンドに3人のコーラスがからみあい最高の出来。日本盤はボーナスで1曲多いのでこちらの方が得だ。(佐野)
 



1997年11月18日火曜日

☆Zombies : Zombie Heaven (Big Beat/ZOMBOX7)

 待望久しいゾンビーズの CD 4枚組ボックスが遂にリリースされた。今まで発表されたすべての音源を含む全119曲が収録され、1曲ごとの各メンバーのコメントやディスコグラフィーまで完備した68Pものブックレットがついた、まさにパーフェクトな内容のボックス・セットである。
ディスク1、2は既発表のスタジオ音源を集めたものだが、 "Tell Her Know" やアルバム「Odessey & Oracle」の曲を聴くと、ゾンビーズのサウンドがいかにモダンであったか改めて驚かされるだろう。ロッド・アージェントとクリス・ホワイトの作る美しいメロディに、ジャズのエッセンスも加わった洒落たサウンド。ポイントはアージェントのキーボードだ。そこにコリン・ブランストーンの魅惑のヴォーカルが入るのだから、これはたまらない。ブリティッシュ・ポップの最良のサウンドがこのゾンビーズといって間違いない。このスタジオ音源はオリジナル・モノ・モックスで収められたため、 "She's Not There" は驚くほどドラムが大きいし、 "Is This The Dream" に至ってはそれまでの馴染みのステレオ・ミックスとは違って "Hey Hey Hey" のコーラスがカウンターで入りビックリさせられた。ディスク3はデモ集で、既発表の曲のプロト・タイプの曲や、未発表の曲まで楽しめる。ディスク4は BBC でオン・エアーされたスタジオ・ライブ集。過去「Five Live Zombies」のタイトルでが6割程度がまとめられていたが、ここでは計10回の出演の音源がすべて収められ、10曲が追加された。その中にはキャロル・キング作の "Will You Love Me Tomorrow" やバート・バカラック作の "The Look Of Love" が登場し、ゾンビーズのポップ・フリークぶりが伺えて楽しい。ゾンビーズは既にテディ・ランダッツォ作の "Goin' Out Of My Head" やホランド=ドジャ?=ホランドの作品が多くあり、カバー・センスの良さにも注目だ。とにかくこのボックスは買う以外ない。日本盤はVivid Soundから出ている(VSCD1427~30)が、膨大な解説を対訳した分厚いブックレットが付いているので、少々高いがこちらをお勧めする。(佐野)
Zombie Heaven
 



1997年11月6日木曜日

☆Simon & Garfunkel : Old Friends(Sony/8490)

以前 "Bridge Over Troubled Water" のデモなども含まれたポール・サイモンのボックス・セットがリリースされたが、サイモン&ガーファンクルのボックス・セットはこれが初。なぜか日本のロック評論家には軽視されるS&Gだが、そういう連中は「ポップだから」「売れ過ぎたから」というあたりにこだわって、いい音楽というものが分からないのだからかわいそう。
さてこのボックスは彼らの偉業を味わうのに十分な内容だが、我々コレクターにとって嬉しいのは数多くの未発表トラックだ。 "Bleecker Street" のデモ、65年の「Sounds Of Silence」のアウトテイク "Blues Run The Game" 67年のライブ "A Poem On The Underground Wall"  "Red Rubber Ball"  "Blessed"  "Anji"  "A Church Is Burning" 67年録音したクリスマス曲 "Comfort And Joy"  "Star Carol" 68年のライブ "Overs"  "A Most Peculiar Man"  "Bye Bye Love" 69年のデモ "Feuilles-O" 69年のライブ "Hey,Schoolgirl/Black Slacks"  "That Silver Haired Daddy Of Mine" に加え、今まで一度もアルバム収録されなかった "You Don't Know Where Your Intrest Lies" ( "Fakin' It" のB面)も収録された。デモと未発表曲はどれもアコースティック・ギターのみのバッキングのシンプルなもので、ライブも同様の2人だけのレコーディングなので、内容的に驚かされるようなクオリティの音源はない。ただ、サークルで知られる "Red Rubber Ball" やトム&ジェリー時代の "Hey Schoolgirl" のライブなんて嬉しいではないか。それにしてもポール・サイモンの曲は、アート・ガーファンクルの透明感のあるハイトーンの声によって最も映えるなあと改めて感じた。
(佐野)
Old Friends [Box]

1997年11月1日土曜日

☆Four Seasons : Edizione D'Oro (Ace/642)



Aceのフォー・シーズンズのVee-JayPhilips時代のリイシューは、2イン1で完璧に進みもう終わりと誰もが思っていたのに、ついに68年にリリースされたコレクターズ・アイテムとなっていたこのベスト盤までも CD 化された。このアルバムの価値はもう別ヴァージョン集とも名付けたいミックス違いのオンパレードにあり、特にイントロのスロー・パートがなく "Dawn" のコーラスから始まる名曲 "Dawn" は驚くほど違うし、頭からコーラスが被る "Girl Come Running" も印象がかなり異なる。その他 "Ain't That A Shame"  "Save It For Me"  "Let's Hang On" のステレオ別ミックスも注目で、 "Let's~" はアナログでカットされていた冒頭のスロー・パートを編集で復活させていた。そして解説書だが、1曲ごとヴァージョンの違いも含めて表になるなど、マニア心を満足させてくれる。このAceを始めとする海外のリイシュー・メーカーの徹底的なリイシュー計画を目の当たりに見るにつけ、カタログがあるのにつまみ食い程度に出さない中途半端な日本のレコード会社の担当は爪の垢を煎じて飲んでもらいたいものだ。(佐野)
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☆Small Faces:The Definitive Anthology Of The Small Faces(Repertoire/REP4429)



スモール・フェイセス・ファンにとってまさに究極のコレクションが登場した。ディスク1はシングルのAB面を順に集めて行ったもの。スモール・フェイセスはB面に気合の入ったR&B系ロックナンバーが集中、「It’s Too Late」「Understanding」「I Can't Dance With You」「E Too D」「Wham Bam Thank You Mom」なんて明らかにA面よりはるかにカッコ良く、ヘヴィ・ローテーションになってしまう。ディスク2は夢のコレクション。まずはスティーヴ・マリオットがソロとしてデビューした時のシングルでA面の「Give Her My Regards」はまさにバディ・ホリー。そしてついに聴くのを夢にみていたMomentsのシングル「You Really Got Me」の登場だ。あのキンクスの名曲をマリオットのヴォーカルなら…とワクワクして聴いたが、リフの後は粘着質の歌い回しでこれってマリオット?って感じ。間奏はハーモニカだし、期待したほどではなかった。B面の「Money Money」はシンプルなR&B。そして続いてスモール・フェイセスをクビになったジミー・ウィンストンが1996年にJimmy Winston & His ReflectionsWinston’s Fumbs名義で出したシングル24曲も収録された。このシングルもウルトラ・レアで嬉しい収録だが、スモール・フェイセスのナンバーである「Sorry She’s Mine」以外は、なんともパっとしないR&B系ナンバーでこりゃダメだとすぐ分かるだろう。それにしてもこのディスク2のシングル4枚は絶対入手しておくべきレア・ナンバーのため、そのためだけにも購入しておこう。(佐野)
Definitive Anthology




1997年10月22日水曜日

日本のソフト・ロックの夜明け、スプリングスの傑作「Picnic」を聴こう!

日本でソフト・ロックといってもニューミュージックになってしまうのが関の山で、個人的にもこれが日本のソフト・ロックと推薦できるものはなかった。ところが10月22日にユニヴァーサル・ビクターからリリースされたSpringsのアルバム「Picnic」(MVCH/29010)は見事なソフト・ロック・アルバムに仕上がっていて、正直言って驚かされた。
VANDAがレコード会社の広告などに頼らない運営をして、また個人的には業界に自分の方からはアプローチをしないようにしているのは、ひとえに自分のいいと思う音楽だけを紹介出来る自由な本にしたいからであって、他の音楽誌のようにレコード会社とのしがらみで無理にディスクを紹介してほめることはこのVANDAにはない。だからこのアルバムへの私の賛辞は心からのものだ。グループのプロフィールなどは本誌の佐々木氏の紹介文を読んでいただくとして、私にとってこのアルバムのどこに引かれたかを一言で言うと、ソフト・ロックの根源的魅力である「メロディ」と「ハーモニー」が極めてハイ・クオリティだったことだ。アルバムはヴァン・ダイク・パークスのようなストリングスによる短いインストから導入され、いきなりこのアルバムの最高のナンバー "心の扉" が始まる。リズミックで軽快な完璧なリズム隊に乗って、転調を繰り返す素晴らしいメロディと厚いハーモニーがボーンズ・ハウがプロデュースしたような華麗なサウンドの上で展開される。間奏のホーンはニック・デカロをイメージしているのか。そして曲をトータルで聴くと、これはジム・ウェッブ。 "The Magic Garden" へのオマージュだ。続く "パラダイス" はこれはブライアン・ウィルソン。それもソロの「Brian Wilson」のサウンドだ。ブライアンのようにシンセでベース音を取らないので、サウンドは軽快になり、クリアーな音のフィル・スペクターといった印象だ。もちろんハーモニーは幾重にからみあい、ベースはルート音を避けるこしゃくさだ。ここまで聴いただけで、このアルバムの価値は存分に伝わってくるだろう。以降はA&M調のボサノヴァあり、ヨーロピアン・テイストのスキャット・ナンバーあり、スウィング・ジャズ調ありと、バラエティに富んだ洒落た曲を次々楽しめる。もちろん曲は全曲オリジナル。やっと日本でもこんなポップスが作られるようになったのかと嬉しくなったのは私だけではあるまい。(佐野)

1997年9月29日月曜日

☆Kinks : Kinks The Singles Collection/The Songs Of Ray Davies Waterloo Sunset (Essential/592)

  このアルバムをただのコンピレーションと思ったら大間違い、 CD 2枚組の後半、 "The Songs Of~" には未発表デモ、ライブ、リミックスが新たに収録され、我々キンクス・フリークは絶対買い逃してはならないアイテムだ。
まずは何といっても未発表デモだが、その中でも6分近い "The Shirt" がこの CD の中でも最大のハイライトである。次々とパターンを変えながらジャズっぽいフィーリングを漂わせてドラマティックに歌われる。ホーンも交えたポップな "The Million-Pound-Semi-Detached" 、レイらしいギターに乗せた軽快な "My Diary" も爽快で、この3曲はどれも素晴らしく、はっきり言ってキンクスの最近のアルバム収録曲より出来は上だ。他 "Rock And Roll Fantasy" のライブ、 "Return To Waterloo" のデモ、 "Voices In The Dark"  "Art Lover" のリミックスが収められていると聞いては、買わないわけにはいかないでしょ。(佐野)
THE SINGLES COLLECTION / THE KINKS

1997年9月22日月曜日

ユニヴァーサル・ビクターからソフト・ロック・シリーズ10枚リイシュー


ユニヴァーサル・ビクターは前のMCAビクターで、MCAUniKappABCDotDunhillといったレーベルを持っていて、ことソフト・ロック系では豊富な音源を抱えていた。そして今回オリジナル・タイトル8枚、コンピレーション2枚がまとまってリイシューされたのはまことに喜ばしい。
まずその8枚だが、目玉はEighth Dayの「On(MVCE/22014)。本誌と本誌が編集した「ソフト・ロックA to Z」以外外国を含めて何の記述もされていない超マイナー・グループだが、セッション・ヴォーカリストとして知られるロン・ダンテが全面的に作曲・プロデュースを担当し、爽やかなハーモニーと軽快なメロディに彩られた傑作に仕上げていた。こうしてリイシューされると、紹介したかいがあるというもの。そしてメンバーにロブ・ロイヤー、プロデュースにデビッド・ゲイツというブレッドの原型ともいうべきPleasure Fairの唯一のアルバム「The Pleasure Fair(MVCE/22013)にはシングルのみの2曲がプラスされた。ボーナスの2曲の出来はそこそこだが、貴重だ。ちなみにこの2枚の解説は本誌の江村氏。先のロン・ダンテがリード・ヴォーカルを取ったポール・ヴァンス=リー・ポクリスのポップなプロジェクト、Cuff Linksの「Cuff Links(MVCE/22011)と、 "Younger Girl" のヒットなどで既に有名なフォーク・ロック・グループ、Crittersの「Younger Girl(MVCE/22012)は、それぞれCastleTragonからリイシュー済みのアルバムなのでお持ちの方も多いはず。ただ前者はシングル曲 "Run Sally Run" (2ndアルバム収録曲)がプラスされ、後者はシングル曲8曲がプラスされたのはTragonとまったく同じだが、Tragonがわざわざ "He'll Make You Cry" についてはシングル・ヴァージョンを収録したのに比べ、こちらはサウンドの薄いアルバム・ヴァージョンをそのまま収録したので、ここのみ違いが生まれている。そしてポップ・サイケに移行したためサイケ・ファンからは冷遇されていたのだが、ソフト・ロックとしての視点で再評価したところ注目度が高まったStrawberry Alarm Clockは、オリジナルの1st?4thの4枚、「Incence And Peppermints(MVCE/22007)、「Wake Up...It's Tomorrow(MVCE/22008)、「The World In A Sea Shell(MVCE/22009)、「Good Morning Starshine(MVCE/22010)が一気にリイシューされた。特に3枚目はソフト・ロック・ファンにお薦めだが、サイケ、ソフト・ロック、どちらのフィールドで聴いてもチープな感覚があるのがこのグループの特徴と言えば特徴だ。あとの2枚はコンピレーション、「Melodies For You(MVCE/22005)、「Morning Glory Days(MVCE/22006)、内容的には両方で全46曲中37曲が「ソフト・ロックA to Z」などで本誌が紹介したものばかりで、個人的には1曲を除いて目新しいものはなかった。Sundowners "Always You" (こちらはVenese~と違ってアルバム・ヴァージョン) "Edge Of Love" Fun & GamesOrange Colored SkyPeppermint RainbowTwinn ConnexionThee Prophets、さらにTommy RoeMama CassBrian HylandAmerican Breedなども入れてしまう選び方は本誌とまったく同じ。高名な選者による新しい「発見」を期待したのに、前述のVenese Sarabandeのシリーズと同じで我々の「おさらい」をしてくれただけであまりに芸がない。ただし、一般的には前から本誌がお薦めしているアーティストばかりなので出来はいい。Fun & Gamesのようにアルバムの中からの選曲をもう少し考えてもらいたかったアーティストもいる。収穫はSalt Water TaffyRod McBrienSalt?の前にPebbles & Shellsの名前でリリースした自作のシングル "Let's Be More Than Friends Tonight" 、流麗なメロディと心地良いハーモニーの傑作で、さすがRod McBrienと嬉しくなってしまった。(佐野)
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1997年8月6日水曜日

☆Roger Nichols & The Small Circle Of Friends : The Complete Roger Nichols & The Small Circle Of Friends (ポリドール/2065)

ついにというか、やっとというか、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの全曲集が実現した。正確にはAVAでリリースされたロジャー・ニコルス・トリオ名義の "St.Bernie The Sno-Dog" で全曲なのだが、こちらは彼らがアルバイトでやったどうでもいいレコードなのでその範疇にいれてはいけない存在、よってこの CD でコンプリートと言って間違いない。(厳密には"Snow Queen"Single Mixも残っているが)"I'll Be Back" / "Just Beyond Your Smile" のシングルはアレンジャーがロジャー・ニコルス本人でアルバムとは異なるアレンジが施されていたことは本誌11号で宮治氏の記事により明らかになったのだが、5曲のアルバム未収録曲だけではなく、その2曲の別ヴァージョンも含めた事が素晴らしい。音質もいい。加えて今まで "The Drifter" のステレオは CD で発表されていたのだが、 "Let's Ride"  "Trust" もステレオで収録された。ということはこの3曲のマスターはもともとステレオで、シングル化の際にモノにされていたのだろう。内容については本誌の読者ならもはや耳タコだろうから別に書かないが、このアルバムを聴かない人は VANDA の読者ではないと断言しておこう。(佐野)









1997年7月31日木曜日

「THE BEACH BOYS COMPLETE」(VANDA編/シンコーミュージック刊)

 VANDA編集部が送る、2冊目の単行本「ビーチ・ボーイズ・コンプリート」が6月30日に出版される予定。私が個人的にも最も作りたかった、ビーチ・ボーイズの詳細な資料が網羅されたビーチ・ボーイズ本の決定版である。
まずカラー・ページには日米の全シングル盤と EP 盤、そしてヨーロッパ盤のピクチャー・スリーブとプロモ、レア盤189枚のジェケットがずらりと並んで眺めているだけでも楽しい。全385曲の紹介、全アルバムをヒストリーを追いながらの紹介、パーフェクト・ディスコグラフィー(ソロや参加曲も含む)、過去3回の来日の会場・曲目まで網羅したレポート、レア・トラック分析、「Pet Sounds」と「Smile」、ソロ活動徹底紹介、関連人物のWho's Who、ビーチ・ボーイズ・フォロワーの膨大な紹介、ステレオとモノの違い、使用楽器紹介、オフィシャル映像紹介、プロモ盤紹介、日本盤の違い紹介など、これい以上ないと思われるほどの研究を行った。ライターは私を含め本誌でおなじみの小林さん、鰐部さん、藤本さん、伊藤さん、江村さん、竹内さん、中原さん、マンガ家のとり・みきさんに加え、森さん、山崎さんにご協力いただいた。どれも一騎当千のビーチ・ボーイズ・フリークばかりの構成だ。日本ではビーチ・ボーイズについて資料面を充実させてまとめた事は一度もなく、音楽誌のビーチ・ボーイズ特集は不満足なものばかりだったし、単行本はスキャンダラスな暴露本的な内容のもの中心というお寒い日本のビーチ・ボーイズ事情をこの1冊で打破出来たと自負している。日本のビーチ・ボーイズ・フリークを増やす一助となれれば幸いだ。(佐野)



1997年7月29日火曜日

☆Various : Sunshine Days/Pop Classics Of The 60's Volume1~3(Varese Sarabande/5801~3)


こと音楽の選曲に関してアメリカが日本から影響を受けることは、そうそうあるものではない。しかしこのVarese Sarabandeの作ったコンピレーション3枚は、日本でのソフト・ロック人気を意識して作られたもので、はっきり言ってコピーと言っていいほど本誌の影響が大だった。
というのも3枚合わせた計42曲の内、34曲が本誌と音楽之友社より出した「ソフト・ロックA To Z」で紹介したもの、アメリカ人でもほとんど知らなかったサンダウナーズの "Always You" (収録のものはシングル・ヴァージョンで必聴)やフリー・デザインの "Kites Are Fun" なんていう選曲は、本誌の影響以外考えられないだろう。ライナーの中では "Soft Pop" と言っているが、ラインナップがHappeningsClassics IVBuckinghamsYellow BalloonTommy Roe5th DimensionCrittersKeithSpanky & Our GangMama CassLove GenerationInnocenseTrade WindsChad & JeremySagittariusBrooklyn BridgeStrawberry Alarm ClockなどからRonnie & The DaytonasHondellsArborsまでこの範疇に入れてしまうのはまったく同じ、ここまでそっくりだともう苦笑するしかない。このVarese Sarabandeの社長にかつて会った人から、この社長はM&Mから出ていた「Melodies Goes On : Soft Rock」シリーズの大ファンという話を聞いてはいたが、その後も VANDA をよく読んでいらっしゃるらしい。まあそういういきさつはともかくとして、こういう内容だけに曲のグレードは極めて高い。購入する価値は十分だ。(佐野)
Sunshine Days 1: 60's Pop Classics
 
 
















1997年7月1日火曜日

☆Paul McCartney : Oobu Joobu-Ecology (MPL)

ポール・マッカートニーのラジオ・シリーズ「ウブ・ジュブ」は、ポールの未発表曲やデモ、リハーサル・テイクなど貴重な音源が聴けるので、ジョンの「ロスト・レノン」シリーズと並んでブートレッグが既に多数出されている。その中でMPLがプログラムの5にジャケットも付けてハイ・クオリティのプロモ盤を制作した。それが本ディスクである。
詳しいいきさつは私自身も分からず、ビートルズ専門誌などを参照してもらいたい。ここでは "We All Stand Together" のデモや、 "Looking For Changes"  "Peace In The Neighbourhood"  "Off The Ground"  "How Many People" のリハーサル・テイク、リンダの書いた "Cow" が楽しめるが、何と言ってもハイライトは "Mother Nature's Son" 。ビートルズとはまったく違うストロークのギターのアレンジが施され、トラディショナルな雰囲気も漂う。「Unplugged」のアウトテイクかもしれないが、やはりビートルズ・ナンバーは格別だ。(佐野)
Oobu Joobu - Widescreen Radio - Ecology



☆Royal Teens : Let's Rock(Mighty Power/300)

 フォーシーズンズの音楽的中心であるボブ・ゴーディオが在籍していたグループとして知られるロイヤル・ティーンズはこれまでCollectableで CD 化されていたものの、一部しか収録されず、その全容は分からなかったが、本 CD で遂にそのすべてが明らかになった。
未発表も含め全32曲、フォーシーズンズを愛する我々にとっては絶対必要なアイテムである。何しろ57年から62年頃までの音源なので、曲想はオールディース、フォーシーズンズのそれを期待するとガッカリしてしまうだろう。しかし「タモリ倶楽部」のテーマソングとしてあまりにも有名な "Short Shorts" は今聴いても錆び付かない斬新なロックンロールであり、ボブ・ゴーディオの才能の一片を感じることが出来るはず。(佐野)
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☆Neil Sedaka : Neil Sedaka Timeless Classics Live(Going For A Song/063)

VANDA 22号で大特集を組んだ70年代のニール・セダカだが、現在 CD で入手できる70年代の音源はVarese Sarabandeのコンピ盤だけと思っていた。
しかしイクイノックスの照井さんと中根さんからの情報によりこの時期のライブ盤 CD を入手、70年代にはライブ盤は「Live At Royal Festival Hall」と「Solo Concert」の2枚がリリースされていたが、この CD は何のクレジットもないものの、前述の2枚とは違う録音のライブだった。選曲では "New York City Blues"  "Sad Eyes"  "Lonely Night"  "Bad Blood" が初めてで、なんといっても "New York City Blues" が嬉しい。音質はいいし、内容的にも先のライブ2枚と比べて特に遜色はなく、これはお薦めできる。選曲からいって75年のものだろう。「Neil Sedaka(Wise Buy/866582)も内容は同じ。(佐野)
Timeless Classics Live





1997年6月20日金曜日

☆Buffalo Springfield:Buffalo Springfield (Elektra/62080)

 VANDA 今号の特集であるバッファロー・スプリングフィールドのファーストは既にUSのみでリイシューされていたが、また同じものの焼き直しかと思ったらビックリ、モノとステレオで2ヴァージョンずつ入っているコレクター感涙ものの CD だった。
レパトワールがタートルズでこの手のカップリングをやってくれていたが、まさか大手がやるは、さすがアメリカだ。そして嬉しいことにモノの方は "For What It's Worth" がヒットする前のモノ盤なので、ステファン・スティルス作の "Baby Don't Scold Me" が収められたのだ。正規のリイシューはこれが初。出来のいい曲とは言えないが、 "Day Tripper" のフレーズが一瞬出てくるなど、スティルスのルーツがかいま見られる。もちろんステレオ盤の方には "For What~" が収められ、バッファロー・ファンは全員買い直しだ。(佐野)
Buffalo Springfield