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2023年4月8日土曜日

Hack To Mono-Philles盤への一考察


 先般、音楽家坂本龍一の死が公表された。1989年リリースの『Beauty』ではBrian Wilsonと共演している。母方の祖父は軍都佐世保で艱難辛苦の末立身出世し、Brianの父Murryも軍都Los Angelesで苦労の末栄達した。軍港は革命と英雄を産んできた、歴史は因果の連続である、かの世界的注目を浴びた氏の作品群の意義と成果は没却することはできない。冥福をお祈りしたい。

  トリビュート・イベントGrammy Salute to The Beach Boysは無事開催

(2月8日)となった。

setlistは以下の通り

『Darlin'』 – Andy Grammer
『Sloop John B』 – Beck
『Good Vibrations』 – Beck and Jim James
『In My Room』 – Brandi Carlile
『God Only Knows』 – Brandi Carlile and John Legend
『Wouldn't It Be Nice』 – Charlie Puth
『Do You Wanna Dance』 – Fall Out Boy
『Do It Again』 – Foster the People
『Barbara Ann』 – Hanson
『The Warmth of the Sun』 – Norah Jones
『Surfer Girl』 – Lady A
『Sail on Sailor』 – John Legend
『Help Me Rhonda』 – Little Big Town
『Surfin' USA / Fun Fun Fun"』– Luke Spiller and Taylor Momsen
『Don't Worry Baby』 – Michael McDonald and Take 6
『I Know There's an Answer』 – Mumford & Sons
『I Get Around』 – My Morning Jacket
『Heroes and Villains』  – Pentatonix
『Caroline No』 – LeAnn Rimes
『You Still Believe in Me』 – St. Vincent
『California Girls』 – Weezer

 選曲は全盛期〜Pet Sounds以降の曲が取り上げられており、The Beach Boysの功績を讃えるに相応しいものとなっている。The Beach Boys自身は残念ながらステージ上の共演はなかったようだ、しかし顕彰当人であるメンバーは当日観覧席にいるBrian,Mike,Al,Bruce,そして筆者の見込みの通りDavidの姿が確認できた。50周年ツアーのようにこのままこのメンバーでツアーを期待したいところだが未だ未定である。本番組は4月9日に米国内でオンエア予定及び配信予定でMTVで短縮版での配信も予定されている。


 

 先日、モノラル再生環境の再構築のためトーンアーム内部の配線交換に取り掛かった。カートリッジが60年以上前のため、それに応えるケーブルも同時代かそれ以前のものに合わせるのがいいのかもしれない。

 ケーブルのこだわりに嵌ると、愛好を超えてオカルティックな信仰に陥りがちなので、ケーブルの選択を必要最小限なものとした。しかしながら選択したのは20世紀初頭の単線エナメル線という、世間から見ればファナティックなこだわりの逸品となった。エナメル線の被覆がコーディングのみなので内部配線としては心許ないと考え、トーンアーム内部に緩衝材を入れることとした。

緩衝材としてヴィンテージ着物の内部に使われていた真綿を線の周りに包んでみた、文字通り「真綿で包む」状態であってこれぞファナティックなオカルトケーブル信仰ではないか?と自問してしまう出来となった。現行機種のトーンアームにも何某かの緩衝材が入っていて振動を防ぐ効果があるため、これも許容範囲としよう。


 早速再生したところクラシックの欧州系のモノラル盤の再生には効果があり、力強い音像が得られた。

 Pops/Rock系はどれがいいか?モノラルなのでPhilles盤に登場願おうではないか。

PhillesレーベルといえばWall of Sound総本山であり、再生時に発生する圧倒的な「壁」の存在である、モコモコ/モヤモヤのなかを突き破るHal BlaineのドラムやCarol Kayeのベースが定番となっている。

 近年ネット環境の発達により過去のGold Star出自のアウトテイクやラッカー盤音源を容易に聴くことができるようになってきた。

 これら音源群の印象は従来レコード盤の音像よりはややエッジの効いたメリハリのあるものが多い。以下は筆者の一考察ではあるが、レコード盤にカットされる直前のSpector達が承認した最終マスター音源は既知の音源よりはよりクリアーなものではなかったか?で、あれば何故相違が出るのか?という点について考察してみた。

 レコード盤のマスターとしてラッカー盤がありこの盤に刻まれた溝がレコード再生の基礎となる。Spectorの根城としたGold Starにはラッカー盤が作成できるカッティングマシンがあり、マスターテープから即時カットしたラッカー盤をプレス工場へ時には地元主要ラジオ曲へ提供できる体制にあった。
Tina Turner自伝『My Love Story』に掲載されている
『River Deep-Montain High』レコーディング風景の写真、
背後にカッティングマシンが2台あるのがわかる

Eddie CochranがGold Star での
レコーディングの際のフォトセッション
Spectorの時代より前からカッティングマシンがあったことがわかる、
マスターテープから送られた信号をカッティングマシンが溝に刻んだ
Spector時代のGold Starにあったと思われる
同型のScully社カッティングマシン

 カッティングマシンが作成するラッカー盤の音を決めるのはトーンアームのヘッドシェルに相当するカッターヘッドだ。音の大小が溝に刻まれることになるが、原音通りだと溝が波打ってしまいレコードプレーヤーが再生困難となり確実に針跳びを起こす。
 MARK RIBOWSKY著『HE'S A REBEL PHIL SPECTOR』 の中でも東海岸のレコーディングではSpectorの要求する録音音量が通常のものより高すぎるため、スタジオ内でカッティング等を危惧するスタッフと衝突を繰り返したエピソードが収められている。
           
日本のバンドThe Modsの1981年のアルバム
『News Beat』のライナーより
原音ギリギリでカットされていることが記載されている

 したがって、脈打つような溝を避けるにはフラットな溝にして陸上競技場のトラック状のものが理想である。そのためには低音を抑えて高音を持ち上げた音に加工して溝を刻めば比較的緩やかな溝となる。しかし、そのまま再生した場合シャリシャリしたコシのない音となってしまう。そのためレコード再生時には低音を抑えて高音を持ち上げた音を反転させれば元の音となればいいので、フォノイコライザー装置が作られた。現在でも内臓または外付けで用いることで針跳びのリスクは低減した。カッターヘッドがかける周波数特性が溝の形を決めているということになる。しかし、各自バラバラな周波数特性でカッティングした場合レコード再生環境が千差万別なため収拾がつかなくなりかねない。現に1940年代から50年台はColumbiaが33回転のLP盤を発売しRCAが45回転盤を発売し、再生環境は回転数から周波数特性(以下、eqカーブ)まで乱立していた。モノラルからステレオ時代まで混乱は続いたため、統一再生フォーマットRIAAが設けられた。以後民生機はRIAA再生仕様で統一され再生環境の混乱は収まったことになっている。
 Philles盤のモコモコの原因はこのeqカーブの差異にあるのではないかと考える。
AESでかけた音源をRIAAで再生した場合の差異
 低域が持ち上がり高域が沈んでいるのがわかる

 カッターヘッドの回路がeqカーブを設定しカッティング→レコード盤はRIAAカーブで反転し再生→本来のカーブから乖離して再生の流れとなることが考えられる。と、なるとRIAAカーブから本来もっと高域を持ち上げ低域を下げ気味のeqカーブに合わせるのが最良な周波数特性なのではないか?検証は通常のアンプでは不可能なため、当時のeqカーブに切り替え可能なフォノイコライザーで行った。RIAAから広域が乖離しているeqカーブの候補としては英国のFFRR,米国ではAES,Capitol,が候補となった。FFRRはキンキンしすぎで却下、やはり西海岸の雄Capitolか?と思いきやまだモヤモヤする。結果RIAAより古いAESが合格点に達した。AES(またはそれを加工したカーブ)は西海岸の各レーベルが採用しているようで、Gold Starのカッターヘッドの回路にも採用された可能性は高い。再生はクロちゃんの上位機種を入手したため、同機を用いて針圧6gで行った。
手元のPhilles盤等で検証を行った

GE社のクロちゃんの上位機種なので「大黒様」にしよう

いざ再生


 当方蔵の盤に難ありか?Philles盤は中々いい状態のものは少ないのか再生時ノイズが乗ることが多い。一見しても塩化ヴィニールより劣後すると思われる素材の盤も見受けられる、実際我が「大黒様」で再生したら黒い粉が針先にこびり付く盤が数枚あった、このまま再生すると文字通り「レコードが擦り切れるまで」を地で行く事になる。Spectorは録音には莫大な費用を惜しみなく使ったが、肝心のプロダクトには予算がまわらなかったのか?と皮肉を言いたくもなる。
 しかしながら、比較的良好な盤質をテストした結果は発揮された。AESに合わせると初期〜後期のサウンドが立体的に聴こえる、モヤモヤしていた音像がシャキッとしている。苔むした壁を掃除したらさらに巨大な壁がそそり立っている印象だ。
 とはいえ、これも凡夫の聴覚と思い込みによる凡俗なる主張であり、SpectorやLarry Levineが実際指示したどうかは彼等が真実を墓場へ持っていってしまった以上現代では検証不能だ。実際Gold StarのコンソールからAM送信機でラジオに音声を飛ばし、ラジオからモニターを何度も繰り返してマスターを決定した程だ、RIAAで再生したサウンドがヒットを産んだのだからRIAAで結局いいではないか?あくまでシャレの内ということで。
 
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Bob B. Soxx And The Blue Jeans-Zip-A-Dee Doo-Dah
The Ronnettes-Born To Be Together
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