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2019年11月27日水曜日

The Bookmarcs:『君の気配』


The Bookmarcs(ザ・ブックマークス)が、11月28日に新曲「君の気配」を配信リリースする。
 7月末にリリースした「Let' Get Away〜かりそめの夏〜」に続いて今年2曲目となるこの曲は、実力派女性シンガー・ソングライターの青野りえがゲスト参加しているのが注目に値する。
昨年11月28日のセカンド・アルバム『BOOKMARC MELODY』(VSCF-1769/FRCD-061)に続くサード・アルバムのリリースに期待しつつ、この新曲を紹介したい。


弊サイト読者は既にご存じの通りだが、彼等The Bookmarcsは作編曲家、ギタリストとして活躍する洞澤徹と、13年振りの新曲「夏のシンフォニー」を9月にリリースしたばかりのSweet Onionsのヴォーカリスト近藤健太郎が2011年にタッグを組んだ男性2人組ユニットである。
これまでに2枚のオリジナル・アルバムをリリースしており、ソフトロックとシティポップの良さを融合しながら大人が聴けるポップスをクリエイトしている。
今回ゲスト・ボーカリストとして参加した青野りえは、ゴスペルグループThe Voices Of Japanのメンバーとして東芝EMIよりリリースされた2枚のアルバムをリリースしている。また和田アキ子をはじめメジャー・アーティストとも共演している実力派で、その後シティポップ・ユニットaoyamaや現TWEEDEESの沖井礼二のソロ・プロジェクトFROGにもゲスト・ボーカリストとして参加しており、現在はCM音楽やライブ、レコーディングでのセッションなどその活動は多岐に渡っている。

君の気配/The Bookmarcs

ではこの新曲「君の気配」について解説しよう。

洞澤がプレイするマルチ・トラックのギターとプログラミングされたドラム・トラックに、セッション・ベーシストの北村規夫が加わった16ビートのR&B系サウンドはAOR~シティポップの枠を超えたセンスを強く感じさせ、デイヴィッド・T・ウォーカーを彷彿とさせるハンマリング&プリング・ハープ奏法など洞澤のフレーズが随所で光っている。
またサビの転回はウワノソラの「Umbrella Walking」(『陽だまり』収録 17年にも通じる、スタッカートで跳ねるメロディが実にプリティーだ。
近藤の高域で響く甘くソフティな声質と、レンジが広くテクニックを備えた青野の声質のブレンドは絶妙にマッチしており、この曲の歌詞が持つ不毛の恋愛観を引き出している。二人によるコーラス・ワークも合わせてじっくり聴いて欲しい。
とにかく秋から冬へと繋がるこの季節にぴったりのレイジーな曲なのである。 
最後にThe Bookmarcsの二人からのコメントも紹介しておこう。

いつか叶えたいと想っていたシンガーソングライター青野りえさんとのコラボレーション。そのために温めていた自信作をようやく発表できて幸せな気分です。
洞澤徹

「青野りえさんのソロアルバム「PASTORAL」がお気に入りで、今でも度々聴いています。そんな青野さんとデュエットできて大変光栄です。

寒い冬の訪れにぴったりな曲です。せつなさやあたたかさを感じていただけたら嬉しいです。」
近藤健太郎


配信リンク(amazonは下記画像からリンク)
Apple Music
Spotify 

(ウチタカヒデ)


2019年11月23日土曜日

山下達郎 ライヴ・クロニクル Part-1(1975~77)

 今、山下達郎さんが開催しているツアー『Performance 2019』のパンフレットには、彼がツアーを開始した2008年からの回想が掲載されている。そこで、古くからのファンである私も1977年の初ソロ・コンサートから、ブレイクする1980年までのライヴを回想しようと思い立った。私がライヴを初体験した時期は大学生で、ブレイク時には社会人になっていた。そこで今回は、Part-1として学生時代の体験をまとめてみた。


 まず山下達郎さんが日本の音楽シーンに登場したのは1975年4月25日発売の『Songs』だった。当時の私はレコードと音楽雑誌に囲まれた日々を送り、そのほとんどは洋楽といった状態で、和物で聴くのはチューリップとオフコース程度だった。
 その頃の私の日課は輸入盤・中古レコード屋巡回と、パチンコ屋で景品にお目当てのレコードが並んでいないかをチェックすることだった。 そんな私の通った学校は駿河台に校舎のあった時代の中央大学で、授業の合間にはお茶の水や神保町界隈をうろつくことが常だった。
 そして神保町でよく覗く店のひとつが「ササキレコード社」、そこで衝撃のサウンドに遭遇した。それは店内にBGMで流れていた日本語には聞こえないような歌を耳にしたのだった。気になって店の視聴盤コーナーを除くと、その正体はSuger Babeなるグループだった。気になりはしたが、その日のお目当てであるStevie Wonderの『Innervisions』をゲットし、次の機会にとその場を後にした。


 その直後にFM東京の「週刊FMサウンドスペシャル」なるプログラムに登場したSuger Babeの演奏を聴き、完全にノック・アウトされてしまった。さらに、ユーミンの『MISSLIM』『COBALT HOUR』で最高のコーラスを聴かせているのも彼らだと知り、興味は深まるばかりだった。
 そして“ぴあ”でライヴ・スケジュールをチェックし始める。しかし、海外の来日公演(2/7:Eagles、3/11:Neil Youngなど)に行く友人はいても、和物ライヴに付き合ってくれる知り合いはなく、一人で行く勇気もなかった。しばらくして『Songs』は廃盤となったことを知り、入手困難となってしまった。


 そして1976年3月にFMから『Niagara Triangle Vol.1』の告知CMで<Dreaming Day>を聴き、その素晴らしさに即購入した。そのジャケット画像も気に入ったので、Tシャツに絵の具書きしてそれを着て見せびらかしていた。その後やっと一人でもライヴに行く気になるも、その直後に「Suger Babe3月31日で解散」の報道を聞く。だだ会場の「荻窪ロフト」の場所もわからず、結局Suger Babeの生ライヴ体験ははかなくも消えた。とはいえこの解散コンサートは、1978年にFM東京のスペシャル番組でオンエアされており、追体験だが(「佐渡おけさ」の掛け声ではじまる)感動のステージを聴くことができた。


 またこの年10月には週刊FM読者欄に『Songs』の交換希望者を発見、即座に連絡を取り私所有の『Live Full House/The J.Geils Band』と交換が成立、入手後は盤がすり減るほど聴きまくった。そんな達郎さんの歌を全ておぼえた私は、ゼミの合宿の親睦会で勢い余って<Ⅾown Town>をアカペラを手拍子付きで歌っている。また翌年には友人の大学学園祭で、友人の率いるバンドのギタリストがSuger Babeのファンという縁で、リハーサルの場で<Ⅾown Town>をバンド演奏付きで歌わせてもらうという最高の気分を味わっている。

 そして1977年には達郎さんのデビュー作『Circus Town』が発売され、このレコードもよく聴いた。そんなある日、音楽雑誌で「山下達郎のニュー・アルバムは全編アカペラ・アルバムになる」(実際にはB面の一部だった)という記事を目にする。



 その直後にバイトで通っていた渋谷西武A館の休憩中に、電信柱に「山下達郎Sings!」というビラが貼ってあった。それを見た私は、B館地下のCISCOプレイガイドに飛び込み、同行するパートナーのあてはなかったがチケットを2枚ゲット。そして身近にいるメンバーをかたっぱしから打診し始めた。すると「中島みゆき命」を自認するバイト先の同僚女子が「絶対行きたい!」という意外な(?)反応で、いざヤクルト・ホールへ。


◎1977年5月27日(金) 『Sings! From Circus Town To Spacy』 新橋ヤクルトホール

 18時開場ながら1時間前に到着すると、既に相当数の行列ができていた。初参戦の私は 会場のキャパ(574人)も知らず「山下達郎って人気あるんだ!」と改めて驚き。開場時間となり入場すると、近隣の席にはバード・ウォッチングでもするかのようなステレオ・マイクをセットしてSONYのデンスケで収録を準備する来場者もいた。他人事ながらここまで堂々と録音しても大丈夫?と思わずにはいられなかった。
 ざわついているなか、照明が落ち<Love Space>でコンサートがスタートした。ただ、新譜を手に入れてなかった私には何を歌っているのかさっぱり解らなかった(-_-;)ところがこの曲の間奏で「キーボード、坂本龍一!」と達郎さんが叫び、ダイナミックで力強いグランド・ピアノが響き渡ると、その迫力あるプレイを聞かせている人物が、少し前に道玄坂のヤマハ店頭で見た「大貫妙子ミニ・ライヴ」でバックを務めていたピアニストだとわかった。
  なおこのコンサートのセット・リストは、ソロ二作と<God Only Knows><Ooh Baby Baby>という構成だった。曲間のトークではアメリカでの『Circus Town』のレコーディング時の話があり、「向こうのスタッフに「T.V.Trackはいらなのか?」と聞かれたんです。要するに「カラオケ」のことで、「お前、日本に戻ってT.V.に出るとき必要だろ?」と言われ、せっかくなので作ってきました。」(会場内大爆笑)、「ただ録音したものの使う当てがないので、ここで披露します。」と<Minnie>を歌っている。
 そんな中、この日一番の盛り上がりは、「では皆さんにお馴染みの」といってアカペラが流れ、<サイダー’76>を披露、これには割れんばかりの拍手と大喝采が起こった。 そして当初のアカペラ・アルバムにするという名残は、続いて披露した<朝のような夕暮れ>で聴かれる重厚感ある多重録音のコーラスだった。
 また私の席周辺では、その後で歌った<Candy>について「あのオルゴールはどこで作ったんだろうね?」という小声が飛び交っていた。<Circus Town>で本編が終わり、アンコールでは坂本龍一さんとともに登場。その際、ファンの一人が坂本さんにプレゼント!その光景に達郎さんは「龍一、人気あるね!」。そして愛用のテレキャスターで、Lovin’ Spoonful<Daydream>風の弾き語りで<Last Step>(後に『JOY』収録のアレンジ)を披露して幕は下りた。

 これが私の達郎さんの初体験ライヴだった。そして翌日、佐々木レコード社に駆け込み、発売されたばかりの『Spacy』を手に入れた。その日から朝昼晩と毎日昼夜を問わず、その素晴らしさに感激して朝から晩まで聴きまくっていた。さらには吉田美奈子さんのシングル<恋は流星>をお手本に、『Love Space』のジャケットをベースに歌詞カードの達郎さんスナップをあしらった<Love Space>のシングル・ジャケット(B面朝のような夕暮れ)を制作し、それを勢い余って当時の発売元RVC社に郵送している。

 それからは「ぴあ」で、達郎さんのライヴ情報もまめにチェックしていた。すると翌月18日の中野公会堂でのSentimental City Romance(以下、センチ)「Sentimental Party Vol.2」に、ゲスト参加するという記事を発見した。ただ、このライヴは急な発見だったので、パートナーを見つけられず、一人で参戦することになった。


◎1977年6月18日(土)  『Sentimental Party Vol.2』 中野公会堂
 
 センチはデビュー時から“名古屋のEagles”と音楽雑誌で話題となっており、以前からレコードは聴いていたが、ライヴはこの日が初めてだった。 まずオープニングはアコースティックでのコーラスを活かしたセット・リストだった。ただ、私は前年2月に本物のEaglesの初来日公演で、完璧なコーラスを聴いており、それから比べればやや物足りなかった。
 そしていよいよ達郎さんの出番となる。さっそうというより、飄々と登場してファースト・コンサートのアンコールで披露した<Last Step>が始まった。演奏が終わるとピアノに向かい、いきなり「とぉ~~びちるぅ~あいのぉ~つぶてぇ~~は、きぃ~みにもすぐにぃ~とどくぅ~はず♪♪な~んて曲を収録したアルバムを先月発表しました!」とコメント。一瞬唖然としたが、彼のファンもかなりいたようで会場内は大拍手が起こる。
  ところがその後は「なにやろうかな~」とつぶやく達郎さん。そこに、会場から「Down Town!」というリクエストがあり、会場中拍手喝采で大興奮。それを受けた達郎さんは「Down Town?そんなのピアノで出来るわけないだろ!」と切り返すも、ギターに持ち替え「な、ないろのぉ~」と歌いだす。するとステージ袖から、当時センチに加入していたSuger Babeのオリジナル・ドラマー野口明彦さんが加わり、会場は興奮のるつぼに。Suger未体験の私にとっては夢の共演であり、この光景が見れただけでも来たかいがあったというもの。
 続いて達郎さんが披露した曲は、ヤクルト・ホールでもコメントした「T.V.Track」の話題にふれ、ここでは<Circus Town>を披露。歌い終わると、「ちっとも歌った気がしないのでもう1曲やります。」と、ピアノに向かいドゥーワップ・ナンバーを熱唱。演奏後は大きな拍手に送られて舞台袖に消えていった。
 こんな興奮気味の後に、再びセンチが登場。この時期は名盤『City Magic』のリリースをひかえ、SONY時代よりはかなりソリッドな演奏をきかせてくれた。またゲスト・プレーヤーには後に吉田拓郎さんのバックにも加入する青山徹さん(元愛奴)が飛び入り。そこで聴かせたハードな<ポテトチップスかじるすりる>などは、これまでの印象を一新とさせる新鮮な驚きがあった。それは当時の “めんたんぴん”をもしのぐような迫力があった。  
 
 と2ヶ月連続で達郎さんのライヴに接することができ、ますます夢中になっていった。3ヶ月目は千葉県南房国定公園内で開催されるフェスのメンバーにラインナップされていた。さすがにこんな遠隔地まで一人でいくのはたまらないと、中学時代からの親友を説得して向かった。ちなみに彼は1972年の幻のRolling Stonesコンサート・チケットを求め、学校をエスケイプして静岡から2泊3日野宿で並んだ仲間で、Keith Richardを崇拝する悪友だった。そんな彼の趣味はStonesのブートレックを手に入れてKeithのフレーズを研究するマニアで、説得には「美乃屋の土屋君や、四人囃子に新加入したギタリストは、Keith好きなら絶対に見ておくべき!」という恩義せがましいトークを使って引っ張り込んだ。


 ◎1977年7月29日(金) 『FM東京開局7周年 グリーン・グリーン・ポップ・フェスティヴァル』千葉マザー牧場
出演:四人囃子、山下達郎、吉田美奈子、来生たかお+深町純グループ、 大橋純子&美乃屋セントラルステーション(出演順)

 抜けるように晴れ上がった解放感に満ちた郊外牧場でのフェスだ。最初に登場した四人囃子は中心メンバーだった森園勝敏さん脱退後の初披露ということで話題となっていた。オープニングはリリース直前の新作『PRINTED JELLY』から<ハレソラ>。新メンバーの佐藤ミツルさんはギターもヴォーカルもフレッシュな感じだった。このお披露目公演では<空飛ぶ円盤にお弟が乗ったよ>や<カーニバルがやってくるぞ>といった森園さん在籍時のナンバーもそつなくこなしていて、ライティングの効果が得られない昼のステージだったのがもったいない気がした。

 そして次に登場したのが達郎さんだった。オープニングにはウォーミング・アップのように弾き語りで<Surfer Girl>を披露した後に、ファースト・コンサート同様に<Love Space>からスタートした。バック・コーラスは次の出番になっている吉田美奈子さんで、演奏も達郎さんのヴォーカルも絶好調で、ヤクルトホールでのライヴとほぼ同様に<素敵な午後は>や<Solid Slider>といったレパートリーで進行。半ばにファルセットで歌った<Ooh Baby Baby>では、「裏声で歌うとよだれが出すんですよ」とのコメントに会場の笑いを誘う。そんな彼のステージは<Circus Town>にて約一時間のパフォーマンスは終わった。 フェスなのでアンコールはなしだった。

 続いては当日達郎さんのコーラスを担当していた吉田美奈子さん。彼女のライヴは初めてだったが、この年にリリースした『TWILIGHT ZONE』は達郎さんが共同プロデューサーで、かつ演奏メンバーも達郎さんのバックそのままだったので、興味深く見ていた。そのステージの袖には達郎さんが残っていたので、「どこかで加わってくれるのではないか?」とほのかに期待したが、それは当てが外れた。とはいえ、聴きたかった<恋は流星>も演奏され充実した内容だった。とはいえ、ただ『FLAPPER』的なポップな世界観を予想していたファンには少々ヘビーだったかもしれない。
 この3組のステージが終わったところでセットの入れ替えで小休止となり、夕暮れが近づいてきた。

 そして登場したのは、<赤毛の隣人>で気になる存在だった来生たかおさん。Gilbert O’sullivanを崇拝している彼らしいポップなナンバーで心地く聴くことができた。同行してくれた友人からも「俺は好みじゃないけど、ヒデが好きそうな感じだね!」と、図星だった。そのステージで一番気になったのが、バックでギターを演奏するメンバーにMoonridersを脱退したばかりの椎名和夫さんがいたことだった。

  そして日も暮れ、このフェスのトリを取ったのが、<Simple Love>のヒットで一番勢いのあった大橋純子&美乃屋セントラルステーション。大橋純子さんのパワフルなヴォーカルとともにギタリスト土屋昌己さんのプレイも冴えわたっていた。そんな土屋さんはCharさんを意識したような白できめたスーツやハットがかなり目立っていた。なおこの日最大の収穫は、後に私が制作のオファーを受けることになる林哲司さん作の<Rainy Saturday & Coffee Break>に魅了されたことだった。


 私は達郎さんがブレイクする1980年までかなり熱心に彼のコンサートに足を運んでいた一人だと思う。この「Part-1」では私が『Song』を聴いてSuger Babeのファンとなり、達郎さんがソロ活動を始めた時期に通った学生時代のライヴ体験をまとめてみた。
 次回のPart-2では、社会人となった1978年から彼がブレイクする1980年までのライヴ体験を、今ではお約束となっている<Let’s Dance Baby>の「クラッカー」初登場なども交えてまとめる予定だ。当時、一緒に聴いていたのは静岡にいた弟だけで、東京には仲間はいなかった。この時期はある面、「達郎ライヴ暗黒の自分史」なのかもしれない。ただ、私がリアルで記憶している達郎さんのトークも、ファンにとってはセット・リスト以上に興味深いはずなので私がボケて忘れてしまう前に披露しておきたいと思う。
(鈴木英之)

2019年11月10日日曜日

『11月のフィリアパーティVol.3』のご紹介

9月に13年振りの新曲『夏のシンフォニー』を配信リリースしたthe Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)の近藤健太郎と高口大輔が主宰するインディーズ・レーベルphilia records(フィリア・レコード)が、今月16日にライヴ・イベントを開催するので紹介したい。
今回で3回目ということで出演はスウィート・オニオンズをはじめ、レーベルメイトで9月に配信リリースした「SUNSET」が好評のKNIT RED RUM。
先日紹介したクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』に収録でイケミズマユミのThree Berry Icecreamの楽曲に参加した奥田英貴が率いる京都を中心に活動する男女ユニットSucrette、ヴォーカル兼ヴァイオリニストの梶山織江を配するガール・ギターポップのswiss cameraMiki NishidaとKoichi Nishidaによるユニットthe vegetablesとバラエティーな面々である。
11月のアフタヌーンを有意義に過ごしたい音楽ファンは是非足を運んでみては。


【11月のフィリアパーティVol.3】 
11/16(土)開場 12:45 開演 13:15
 @早稲田RiNen
https://waseda-rinen.com/ 

前売 2500円+1drink / 当日 3000円+1drink
 (小学生迄のお子様入場無料)
出演 : the Sweet Onions / KNIT RED RUM / Sucrette /
swiss camera / the vegetables
DJ : tarai(Happy Day,Happy Time!)
お菓子 : milky pop.

the Sweet Onions

KNIT RED RUM

milky pop.によるスイーツ

興味を持った読者はphilia recordsの下記サイトからチケットを予約してほしい。
(テキスト:ウチタカヒデ)


2019年11月4日月曜日

VA:『Natale ai mirtilli』(*blue-very label* / blvd-006)


 クリスマスを前に素敵なコンピレーション・アルバムの音源を入手したので紹介したい。
弊サイトで紹介している多くのアーティスト達も度々プロモーションで訪れる杉並区高円寺のDISQUES BLUE-VERY(ディスクブルーベリー)。このレコード・ショップのオーナー、中村慶氏が立ち上げたレーベル【*blue-very label*】から11月13日にクリスマス・コンピレーション・アルバム『Natale ai mirtilli』がリリースされる。



 楽曲を提供しているアーティストは、昨年弊サイトでも高評価した小林しのの「人魚の夜」を手掛けた元melting holidaysのササキアツシのポプリをはじめ、元BRIDGE(ブリッジ)のイケミズマユミ(キーボーディスト)のソロプロジェクトThree Berry Icecream、ドイツのミュージシャンBrent Kenji(ブレント・ケンジ)によるTime Between。


 元ARCHの中村大を中心としたvacation Three(ヴァケーション・スリー)、マルチ・プレイヤーの小園兼一郎のソロ・ユニットsmall garden(スモールガーデン)、女性シンガー・ソングライターsugar meと作曲家エンドウシンゴとのコラボレーション、The Laundriesの木村孝之とネオアコ・ユニットalvysingerによるデュオ・ユニットDiogenes Club(ディオゲネス・クラブ)。


 フランス人ミュージシャンのジェローム・ディドゥロによるOrwell(オーウェル)、そのOrwellと交流のあるanoneのキーボーディスト松岡奈津紀によるソロ・ユニットSweet Port.、そして9月25日に13年振りの新曲を配信リリースしたthe Sweet Onions(スウィート・オニオンズ)という多彩な10組である。 
ジャケットの写真には元Dream Academyのリーダーであるニック・ライアード・クロウズ!の作品が使用されているというから、嘗ての英国ギターポップ・ファンも気になるところだろう。

 

 では弊サイトでも過去取り上げたアーティストを中心に、気になった収録曲を解説していこう。
 冒頭の「初雪が降った日」はポプリの曲でササキによるソングライティングだ。melting holidays時代を思わせる生楽器と打ち込みによる「Up, Up and Away」(The 5th Dimension)系ソフトロックで、ヴォーカルのreinaの個性的な声質とマッチしている。reinaはコンピの最終曲のソングライティングも手掛けている。 
 続く「christmas snow dome」はイケミズの作曲センスが滲み出ているThree Berry Icecreamの曲で、パート毎に異なるアレンジが配置され凝っていて聴き飽きない。この曲にはCM音楽でも知られるSucretsの奥田英貴がギターとプログラミングで参加しており、作詞はRed Go-Cartのmiki hiroseが手掛けているなど、交友の幅広さはイケミズの人徳ゆえといえる。

 vacation Threeの「christmas time again」はこれまでの彼等のカラーとは異なる凝ったアレンジで、トット・テイラー経由のブライアン・ウィルソンと言うべきスケールの大きい曲調でティンパニー以外にパンデイロやクイッカがアクセントになっていて新鮮だ。 続く「blue very x’mas!!」はsmall gardenの新曲で、The Bookmarcsの「雲の柱」(2018年)に通じるR&B系のシャッフル・リズムが心地よく、唐突に入る三連符のアクセントも違和感なく聴ける。弊サイトの「名手達のベストプレイ」シリーズでも執筆参加してくれている小園の巧みなベースのプレイも細かく聴いて欲しい。なお彼はコンピ全体のマスタリングも手掛けているというから貢献度は大きい。

 そしてこのコンピの中でも出色なのが、diogenes clubによるNRBQカバーの「christmas wish」だろう。オリジナルはアコースティック・スイングのアレンジだが、ここではThe Laundries木村のヴォーカルをフューチャーしたアカペラ・ヴァージョンで、alvysingerこと小野剛志の多重コーラスとの絡みがとにかく素晴らしい。両者ともインディーズ・シーンにおける歌唱力はトップに位置する実力を持っているのが理解出来る。
 またバーバーショップ・スタイルのアカペラなので、出だしを聴いて、嘗てのThe Housemartinsの「Caravan Of Love」(86年/ Isley-Jasper-Isleyのカバー)を想起するギターポップ・ファンもいるだろう。筆者的にはこの曲をコンピのベストとして挙げたい。
 the Sweet Onionsの「a place of love」も触れぬ訳にはいかない名曲だ。
 近藤健太郎によるポール・マッカートニー系譜の新曲で、ヴァースにはダン・フォーゲルバーグの匂いもする、まさしくこの時期にピッタリのウィンター・バラードなのである。近藤のギターとヴォーカルに、マルチ・プレイヤーの高口大輔が残りの全パートをプレイしている。

 楽曲提供アーティストのカラーの違いを楽しみながら、一足先にクリスマス気分を味わいたい読者や音楽ファンは是非チェックしてほしい。 
(ウチタカヒデ)