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2017年11月22日水曜日

佐野邦彦氏との回想録2・鈴木英之

Jigsawは佐野さんがVANDAにコラムを発表したことがきっかけとなって、19986月にテイチクよりオリジナル・アルバム4タイトル、7月には(佐野さん選曲)新装版ベスト『Soft Rock Collection』の計5枚がリイシューとなった。当時、彼からの依頼で発売元よりサンプル盤が届き、解説の末尾には「音源を提供していただいた鈴木英之氏に感謝いたします。」とあり、自分が彼の役に立ったことをうれしく思った。

ただリアル・タイマーの私としては、当時と同じジャケットでの発売となった第4作『I’ve Seen The Film, I’ve Read The Book(邦題:愛の想い出)』以外はオリジナル・ジャケット仕様で、初めて対面する心境だった。また第6作『Pieces Of Magic(邦題:愛のマジック)』は収録曲もかなり違っていたので、違和感を覚えてしまった。とはいえ、研究熱心な佐野さんのおかげで実現したこのリイシューを喜んだものだった。

私はこのお礼として、以前彼が「価値はないんだろうけどこにも見当たらない」と言っていた日本のみ発売となったLPJourney In To Space』を「私が持っているよりも、佐野さんのところにあった方が価値はあると思う」と伝えてプレゼントした。その後、2006年にはビクターより紙ジャケ仕様で、再び佐野さん主導で(微妙に選曲が違う)4枚がリリースされ、今回ウルトラ・ヴァイヴからパーフェクト・リイシューとして全6作が発売されている。今回のリイシューでは、『Journey ~』も完全収録することになり、約19年を経てこのアルバムが役に立つことになり、本当に良かったと思っている。



ここで話を私がどのようにJigsawを知ったのか紹介させていただく。まず初めて彼らの曲を聴いたのは、FM東京(現:Tokyo FM)の「ダイヤトーン・ポップス・ベスト10」にチャート・インした「夏の歌をいつまでも(My Summer Song)」だった。当時はベスト10番組が数多く放送されていたが、この曲がチャート・インしていたのはこの番組だけだったので、新し物好きの自分としては気になる存在となった。その後、「悲しみのヒーロー(Billy Don’t Be Are Hero)」でブレイクしたBo Donaldson & The Heywoodsの第2弾「恋のあやまち(Who Do You Think Are)」のオリジナルとしてJigsaw版を聴き、完全にはまってしまい、この曲が収録された『I’ve Seen The Film, I’ve Read The Book』を手に入れたのが始まりだった。




その後も(人知れず)彼らを聴き続けたのは、第6作『Pieces Of Magic』(日本盤は『恋のクラウン~君にさようなら/ジグソー愛の詩』)に収録された「If You Have To Go Away(君にさようなら)」があったからだ。この曲は彼らにとって最後のヒット(1977年全米93位、全英36位)で、当時の音楽雑誌に「日本人作曲家がビルボード・チャートにランク・イン」と掲載されていた。なお、その日本人とは後にヒット・メーカーとして活躍する林哲司氏で、当時まだ無名だった氏の快挙は、もっと大々的に報道されてもいいはずだった。しかし、この曲の日本発売日(325日)の3日後に、ミル・マスカラスの登場テーマ(219日の試合より使用)として大評判となっていた「Sky High」がオリコンの第4位(前週11位)にランクされるタイミングに重ってしまった。そんな経緯で、この話題は一部の関係者に注目されるに留まっている。



 その後、VANDAに参加して4年目の2000年、初めて私が中心となって企画した『Soft Rock In Japan』(音楽之友社)で、ご本人と対談の機会を持たせていただき、当時の話を伺うことが出来た。またこの御縁から、彼のデビュー30周年記念企画『林哲司全仕事』(音楽之友社)のオファーを受け、この制作過程では竹内まりやさんはじめ、氏と関わりの深い著名人と対談の機会をまかせられたが、その中に「If You Have To Go Away」をJigsawに売込んだフジパシフィック音楽出版(PMP;現フジパシフィックミュージック)社長朝妻一郎氏も組まれていた。こんな夢のような体験ができたのは、ある面Jigsawのファンでいたおかげだと思っている。

 
話は佐野さんとの共同作業となったJigsaw3回目のリイシューの件に戻るが、この仕事は20176月中頃に彼から「Nさんという方からJigsaw の復刻企画について協力依頼の連絡が入るのでよろしく」というメール連絡から始まった。そして6月下旬になって、そのN氏から「BS.TBSの「Song To Soul」で「Sky High」特集が組まれており、Jigsawのメンバーへのインタビュー取材で渡英します。そこで彼らへの質問をあげていただけませんか?」という要請が入った。日程も迫っていたので、大慌てで10数項目ほどまとめてメール送信した。このことを佐野さんに連絡すると「私も10問程度連絡しましたよ。」とのことだった。その後、選曲に関する質問が何回かN氏から届き、それと入れ替わるように発売元の担当者より最初のリリースとなる3作の収録内容等についての連絡が入った。このあたりから佐野さんと頻繁にやりとりが続いた。ここでは、「収録時間をめいっぱい使う」「各アルバムには最低でも1曲は未発表を収録」を念頭に、「多分今回が最後のリイシューになると思うので、これまで収録できなかったものを全て収録」という佐野さんの意向を尊重して進めた。佐野さんはかなり意気込んでいたものの体調のすぐれない事も多く、作業は二人三脚状態で進行させた。結果、担当者より「内容がすごくわかりやすく、ファンの方への訴求力も上がった」と評価いただけるまでにまとめることが出来た。

そして、「最初の3タイトルのうち鈴木さんには『Sky High & Rera Trucks~』の解説をお願いしたい。」との依頼を受けた。佐野さんからも「僕よりはるかにマスカラスに詳しいはずだから適任だね!」と連絡を受けた。ただ、私が佐野さんレベルに仕上げるには当時のプロレス情報が希薄だったので、当時のプロレスに詳しい従弟について話を聞くも、「マスカラスは全日(本)だろ?俺、猪木の新日(本)派だから、そんなに詳しくないよ。でも、「Sky High」のシングルは持ってるけどね」と、ただ「登場テーマは、マスカラスよりもモハメド・アリと猪木戦(1976年)のアリが最初だよね。」など興味深い話が確認できた。また、「Sky High」発売当時にテイチクでJigsawを担当者されていたS氏を紹介いただき、「マスカラスのテーマは当初全日本プロレス・サイドが、発売元に無断で使っていた」等、当時の真実を伺うことが出来た。さらに、19761977年の時代背景の文献をあれこれ調査し、無事「リアル・タイマー」らしい内容の原稿をまとめる事が出来た。
                 

その後は、ラフ原稿のチェックに入り、当初よりこだわっていたジャケットや画像レイアウトについて要望を入れ、9月初旬どうにか完成に辿り着いた。この完成サンプルCDが届く前、佐野さんから連絡があり、その際にライナーには文字数の都合で書けなかった諸説内容を伝えた。それを聞いた佐野さんから「そんな面白い話、企画書を作ってメディアに売り込まないとだめだよ!」とはっぱをかけられてしまった。
そして、「次回の発売は11月だけど、曲目さえ決まれば書き始めたい。遅れるほど体調が悪くなる可能性が高いので早くにスタートしたい。今回のような泥縄にならないようにしてほしいと、鈴木さんから担当者によく頼んでください。」と伝言を受けた。ということで、その第2回発売分のJigsaw回顧録は、次回に回して完結にさせていただくことにする。




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