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2017年9月24日日曜日

The Bookmarcs:『BOOKMARC MUSIC』  (FLY HIGH RECORDS/ VSCF-1763)      リリース・インタビュー

 昨年紹介した小林しの『Looking for a key』(16年2月)のレーベル・プロデュースやWebVANDAの対談でもお馴染みのミュージシャンの近藤健太郎と、歌謡曲の楽曲提供をはじめ映画やTV番組の劇伴、リラクシングギターのアルバム・リリースなど幅広いフィールドで活躍する作編曲家の洞澤徹によるユニット、
 The Bookmarcs(ブックマークス)が、10月11日に記念すべきファースト・フルアルバム『BOOKMARC MUSIC』をリリースする。
2011年の結成から昨年6月のシングル『追憶の君』までに4タイトルをマイペースに配信リリースしている彼等の魅力が詰まった初のフル・アルバムだけに興味は尽きない。
 因みにThe Bookmarcsは、作編曲とサウンド・プロデュース全般、ギターの演奏を洞澤、作詞とヴォーカルを近藤がそれぞれ担当している。
 ここでは昨年の『追憶の君』に続いて、メンバー二人にこのアルバムについて聞いてみた。



●満を持してのフル・アルバムのリリースですが、これまでの活動を振り返ってみてどうでしたか?

洞澤(以下・洞):配信リリースを中心に着々と積み上げてきた ものがやっとCDというカタチになって、まずは嬉しい気持ちでいっぱいです。 マイペースでしたが濃厚な制作活動だったなと感じます。
最近ではだんだんと手伝っていただける敏腕ミュージシャンも増えてきて、そのぶん音楽の幅も広がってきたように思います。

●手練れのサポート・ミュージシャンが増えてきたのは良い状況ですよね。洞澤君自身も過去にスーツケースローズやダリヤなどにギタリストとしてサポートしていた訳で、自分が依頼する際にも経験が活かされているんじゃないですか?

洞:まさにおっしゃる通りです。自分が要望を伝える側になって、伝え方、表現方法、などサポートをやってきたからこその経験がとても役に立っていることがわかりました。

近藤(以下:近):今までデジタル配信オンリーでリリースを 重ねてきたわけですが、大事に作ってきた楽曲達をより多くの人に届けたいという欲が出てきました。
なんとなく2人の中で、「やっぱりCDを作りたいね」みたいな空気が具現化し、今回無事リリースできたことを嬉しく思っています。

●配信でのリリースが普及してきたとはいえ、やはりCDを持つという所有感は捨てがたいですよね。日本人特有の拘りかも知れませんが。

洞:確かに日本人特有かもしれませんが、個人的には大事にしたい感性だなと思います。




●フル・アルバムに用意した新曲3曲のソングライティングやアレンジについて、これまでの楽曲と意図的に変えた手法やアイデアを聞かせて下さい。

1)「I Can Feel It」
洞:これは僕の鼻歌弾き語りが原型なんですが、サビ頭の部分ができた時点でかなり手応えを感じました。とにかくアルバムのリード曲になるようにリスナー層を幅広く想定してアレンジを考えました。
リズムアレンジはギターのミュートカッティング含めて今までにないテイストになっていると思います。作曲当時、Thundercatやエヂ・モッタをよく聴いていたのでアレンジにはニュアンスがどこかに出ているかもしれません。 

●初めてラフミックスを聴かせてもらった時からイントロのギターがスタックス・ソウル(スティーヴ・クロッパー)していて、挙げてもらったミュージシャン以外にも結構リスペクトされているサウンドだと思います。UKギタポ好きにはスクィーズの「Hourglass」(『Babylon &  On』収録 87年)を彷彿させますよ。
冒頭からThe Bookmarcsの新境地だなと思いました。

洞:ありがとうございます。とても光栄です。変化はこれからも常に続けていくつもりです。

2)「Let Me Love You」
洞:よりAOR感の強いアレンジになりましたが、作曲しているときはそんなに意識はしていなかったです。歌を録音したあたりから猛烈にAOR感を欲するようになって、いろいろ参考音源を聴いているうちにこのアレンジに固まりました。
北村規夫さんの落ち着いたどっしりとしたベースに伊勢賢治さんの甘いサックスセクションが曲のカラーを強めています。

●個人的にも趣味なシカゴ・ソウルを源流とするAORだと思いました。フルートのリフはボズ・スキャッグスのあの曲かとか(笑)。
サポート・ミュージシャンのプレイも的確で完成度が高いです。山下達郎ファンにもアピールしそうですよ。この曲も新境地の域に入りそうです。 

洞:かなり寄せた感はありますが(笑)、個人的にとっても気に入っているアレンジです。達郎さんファンの方々は耳が良いですから、どういうふうに聴こえるか気になるところですね。

3)「Oh Wonder」
近:穏やかなメロディが印象的な曲ですが、サビはわりとキャッチーなので、言葉(歌詞)で曲の流れを明確に変えることが出来ないかなと試行錯誤しました。
「Oh Wonder」というフレーズが頭に浮かんだ瞬間、一気にイメージがまとまり歌詞を書きあげました。大サビは夢の中にいるような少し不思議な世界観ですが、洞澤さんが見事にアレンジしてくれて、曲がドラマチックに仕上がったと思います。

●言われるように穏やかなメロに対してパートの展開が多いからドラマチックに仕上がっています。サウンドの肝はフェンダーローズ系のエレピですかね。従来のThe Bookmarcsサウンドを発展させたというか、スティーヴィー・ワンダーの匂いもするという。

洞:そうですね、フェイザーのかかったフェンダーローズの音が好きでこの曲でもポイントになっていると思います。
たまに、”スティービーを感じる”と言っていただけるのですが、自分の血肉部分になっているのかなと嬉しくなります。


●既存曲の中でもリアレンジ、リミックスされていますが、オリジナル・ヴァージョンの固定観念に悩みませんでしたか?

洞:自分の過去作品を何回か聴いているうちに、やり残したこと、改良すべき点が明白になっていたので方向性という意味ではそんなに苦労はしなかったです。より聴きやすくという方向性でした。
「消えない道」はリズムをもっと強調するバンド路線か、ソフトロック路線で行くのかで悩みましたが後者を選びました。結果、とても満足のいく出来となりました。

●「より聴きやすく」というのは、やはり職業作家である洞澤君の姿勢が出ていると思います。
挙げられた「消えない道」ではコーラス・パートの追加やサウンドに厚みを持たせたことでより黄昏感が出ていますね。その他の曲でリアレンジして成功したなと満足している曲はありますか?

洞:「遥かな場所」はベースとドラムを生に差し替え、それに伴いミックスもやり直したのですが、配信リリースのバージョンより曲の推進力が増して、スムーズに各パートが繋がる感じが出て気に入っています。

●「遥かな場所」はファーストEP『Transparent』(12年)収録の作品なので5年経っている訳ですが、リアレンジとリズム隊が生に差し替わったことですごく新鮮に聴けました。
では今回のレコーディング中で何か特質すべきエピソードを聞かせて下さい。

洞:「I Can Feel It」ではコーラスが多用されていますが、近藤くんと相談しながらいろいろ試しつつ、Bメロのオクターブ重ねは今回初めての試みでハマって楽しかったですね。近藤くんのコーラス・ワークの音色は凄いです。手持ち音源のプリセットにしたいくらい(笑)。

サックスの伊勢賢治さんとは、ネットのやり取りで譜面と、どういう風に演奏して欲しいかのリクエストを伝えて伊勢さんのプライベートスタジオでの録音をお願いしたのですが、あまりに素晴らしくて データが届いたとき小躍りしました。
特に「Transparent」のオブリガートは気持ちよくて聴いてもらいたいポイントの一つです。また伊勢さんは、「Let Me Love You」では当初僕のリクエストになかったフルートとパーカッションまでダビングで入れていただいて感激でした。彼はユーミンのツアー・メンバーでパーカッションから鍵盤までこなすマルチ・プレーヤーです。

ドラムの足立浩さんとベースの北村規夫さんは、前回のシングル「追憶の君」から レコーディングをお願いしているのですが、今回も素晴らしいコンビネーションで楽曲の屋台骨と潤滑油になってもらっています。
お二人のリズムが入ると楽曲がより滑らかに進行するというか。このコンビなしで今回のアルバムは 成り立たなかったと思います。
そして、レコーディングは1年以上前なのですが、アルバムラストを飾る「真紅の魔法」でイントロから響く和田充弘さんの甘いトロンボーンの音色は録音中、まるで他人の曲を聴いているようで酔いしれてしまいました。  

近:今回、既存曲のヴォーカル再録がいくつかあるのですが、これは自ら洞澤さんにもう一度歌いたいと希望を出しました。より曲を理解した上で、今のテンションで、当時自分で書いた歌詞を噛みしめながら歌うことが出来たのは嬉しい経験でした。 コーラスに関しては、いつもお互いアイデアを出しあい歌入れする作業が毎回楽しいです。 

●エピソードに出てきた近藤君のコーラス・ワークやサポート・ミュージシャンによる数々の名演はこのアルバムを聴いてのお楽しみですね。

洞:そうですね、ぜひ実際に聴いていただいて感じ取ってもらえたらと思います。 


●リリースに合わせたライブ・イベントがあればお知らせ下さい。

洞:11/11に北参道ストロボカフェで開催される、philia records presents 「11月のフィリアパーティー」という イベントにオープニングアクトとして出演しますのでぜひ遊びに来て下さい。
http://philiarecords.com/event/ 

近:10/1に東京八重洲にあるとっても素敵なスペース、「ギブソンショールーム」にて、「BOOKMARC MUSIC」レコ発 イベントをおこなう予定です。 極上の音響システムでアルバムの先行試聴、 トークやミニライブを交えた楽しいイベントです。観覧無料なので、日曜の昼下がりふらっと遊びに来ていただけたら嬉しいです。
http://gibsonsr.jp/ 


●では最後にこのファースト・フルアルバム『BOOKMARC MUSIC』のピーアールをお願いします。

洞:ファースト・アルバムにしてベスト・アルバムのような「BOOKMARC MUSIC」ですが、僕的には何と言っても新曲3曲に特に注目してもらいたいです。
全体的には6年間の活動のエキスをぎゅっと凝縮した内容になっていますので、AORやソフトロック・ファンのみならず幅広い方々に聴いてもらいたいです。

近:懐かしくも新しい、透明感溢れる大人のサウンドプロダクションというキャッチーを掲げ、約6年間活動してまいりました。
まさにその言葉がしっくりくるような作品に仕上がったと自負しております。 こだわり丁寧に作り上げた僕達の作品を是非聴いてください。
(インタビュー設問作成/文:ウチタカヒデ)
 

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