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2015年4月27日月曜日

竹迫倫太郎:『HARMONIES~The Best Of The CLIMAX Years~』(K&T RECORDS/CRCD-5114)



昨年11月にシングル『Master Of Xmas』を紹介したシンガー・ソングライターの竹迫倫太郎が初のベスト・アルバムを今月29日にリリースする。
Climax Entertainment時代にリリースしたミニアルバムとシングルから、竹迫自身により選び抜かれた良質なポップス11曲が収録されているのでWebVANDA読者にもアピールできるので紹介したい。

前回も紹介したが、竹迫が琉球大学医学部在学中に発表した自主制作アルバムが認められ沖縄のインディーズ・レーベルClimax Entertainmentと契約したのが02年、その後05年までに4枚のミニアルバムと1枚のシングルをリリースしている。
昨年の『Master Of Xmas』のリリースを機に本格的に活動を再開するべく、これまでの集大成として本作のリリースに至ったようだ。
では主な収録曲を紹介しよう。



冒頭の「Prelude」は04年のシングル『陽炎』のカップリング曲で、後の「Master Of Xmas」にも通じるキーボードのリズム感が印象的なブルー・アイド・ソウル風味のポップスである。コーラス・パートはビーチ・ボーイズ、サウンド的には70年代後半のエリック・カルメンを彷彿とさせる。
『A LONG VACATION』(81年)~『EACH TIME』(84年)期の大瀧詠一サウンドを彼なりに消化してアプローチした「夏のエピローグ~Endless Daydream~」と「遠い夏の日のロマンス~Dreaming Driveway~」は多くのナイアガラーには聴きものである。
共に03年のミニアルバム『Endless Daydream』収録されていたが、前者は「恋するカレン」~「幸せな結末」からの影響を強く感じるメロディ・センスとサウンドで、後者はインロト及びヴァースに「Pap-pi-doo-bi-doo-ba物語」、ブリッジに「カナリア諸島にて」を各引用しており、microstarの「スウィート・ソング」(『lovey dovey plus』収録・01年)を思い起こしてしまった。
前出のシングル『陽炎』のタイトル曲は深い内容の歌詞を持つレクイエムで、山下達郎の稀代の名曲「蒼氓」にも似た崇高な曲調と、デジタル・エレピを中心としたデリケートなサウンドにデヴィッドTを意識したギターのフレーズが絡んでいく。アカペラとドラム・マシーンだけのパートなどアレンジ的にも工夫されており、筆者的にはこのベスト・アルバム中のベストとして挙げておきたい。

ソフトロック・テイストの「風の贈り物」(『Youthful Collage』収録・05年)は最もWebVANDA読者にお勧めかもしれない。心地よいシャッフルのリズムがそう感じさせるのだが、サウンドが今日的なコンボ指向であるためクリス・レインボウ(惜しくも今年2月に亡くなった)から杉真理までもイメージ出来る。
続く「秋風に吹かれて」(『Youthful Collage』収録・05年)は一転して70年代西海岸のシンガー・ソングライター風の小曲で味わい深い。手練なアコースティック・ギターのプレイは沖縄を中心に活動している伝説のロック・バンド"紫"の元メンバー佐藤圭一氏である。
敬愛するブライアン・ウィルソンの捧げたという「Hey! My Mr. Music」(『Youthful Collage』収録・05年)にも触れておこう。彼曰く"Mr. Music"とはブライアンを指しており、歌詞の端々にBB5マニアは耳を傾けて欲しい。

アルバム全体を通して整理されたアレンジではあるが、ソウル・ミュージックから裏打ちされた16ビートの洗練さがサウンドに希薄なため、竹迫のヴォーカルと歌詞に耳が集中してしまう傾向がある。またそれが昨今多く存在するネオ・シティポップ派とは一線を画す彼の魅力なのかも知れない。興味をもったポップス・ファンは是非入手して聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)

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