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2013年10月8日火曜日

Peggy Lipton:『Peggy Lipton』(VIVID SOUND/VSCD2536)


 キャロル・キングの希代の名盤『Tapestry』(71年)や彼女を中心に結成されたザ・シティの『Now That Everything's Been Said』(69年)のリリースで知られる、ODE RECORDSの幻の名盤とされていたペギー・リプトンの唯一のアルバム『Peggy Lipton』(68年)が韓国のBeatballに続き国内リイシューされた。 キャロル・キングとローラ・ニーロのカバー曲に加え、リプトン自身がソングライティングした4曲を収めたこのアルバムは、ルー・アドラーのプロデュースのもと、ハル・ブレインを筆頭とするレッキング・クルーやザ・シティのチャールズ・ラーキーまでもレコーディングに参加している重要作である。 ザ・シティの世界初リイシューから20年、長年このアルバムのリイシューはもうないだろうと諦めていただけに紹介しない訳にはいられないのだ。 
 46年生まれのペギー・リプトンは、ニューヨーク郊外のロング・アイランドで育ち、弁護士の父親と芸術家の母親を持つ典型的なアッパー・ミドルクラスの出身で、その容姿を活かしモデルを経て女優となり、TVドラマ『モッズ特捜隊』(68~73年)の主演で人気を博した。 
 本作『Peggy Lipton』はそのドラマの放映されて間もない時期にリリースされているが、劇中にはなんとハル・ブレインとロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズのマレイ・マクレオド!をバックに、ザ・シティの「Now That Everything's Been Said」をリプトンが歌うというシーンもある。これを3年程前にたまたまYouTubeで発見した時はかなり驚いてしまった。
 その後リプトンは、当時から大物プロデューサーだったクインシー・ジョーンズと結婚し二女を授かるが85年に離婚し、再び女優として『ツイン・ピークス』(91年)に出演して注目されたのはご存じの通りである。 

  さて本作に話を戻そう。アルバム中キャロル・キングの作品は、67年にアレサ・フランクリンに提供した「A Natural Woman (You Make Me Feel Like)」や新曲の「Who Needs It」など5曲、ローラ・ニーロ作品は『More Than a New Discovery』(66年)収録の「Stoney End」と「Hands off the Man (Flim Flam Man)」の2曲をそれぞれカバーしている。 アドラーのアドバイスも多少あっただろが、この選曲にも彼女の審美眼の鋭さを感じさせて興味深い。 
 リプトンの自作曲ではシングル・カットされたアルバム冒頭の「Let Me Pass By」が白眉の出来であり、アメリカン女性シンガー・ソングライターの両巨頭に引けを取らないと感じるのは筆者だけではないと思う。 
 AOR世代にはTOTOのデヴィッド・ペイチの父親として知られ、メル・トーメやアンディ・ウィリアムスなど数々の名編曲を残しているジャス系ピアニスト兼アレンジャーのマーティー・ペイチによるオーケストレーションが美しい。ブレインらしいタムさばき、ハープシコードはラリー・ネクテル、フルートはジム・ホーンだろう。

   

 レッキング・クルーの演奏で最もエキサイティングなのは、キング作でペトゥラ・クラークが66年にアルバムで取り上げた「Wasn't It You?」のカバーだろう。リチャード・ハリスが68年に英米でヒットさせたジミー・ウェッブ作の「MacArthur Park」でのプレイを彷彿させる名演だ。 このアルバムではブレインがディレクションとしてクレジットされているのだが、この曲をはじめとするバンド・アンサンブルを聴いて察するに、恐らく彼がヘッドアレンジを仕切っているからだろう。 またウェッブといえば、本アルバム未収録の同時期のシングル曲が4曲存在しており、中でも彼がソングライティングとアレンジを担当した「Red Clay County Line」(Ode ZS7 118/69年)がいたく素晴らしい。

 Red Clay County Line 今回のリイシューで唯一不満だったのは、これらシングル曲をボーナス・トラックとして収録しなかったことである。CDリイシューの原盤がBeatballということで諸事情もあるのだろうが、こういったタイミングで権利をクリアにして発掘して欲しかった。 なおアナログのリイシュー盤も既にリリースされている様なので、興味のある人は文末のアマゾン・リンクから早めにチェックしよう。 

(テキスト:ウチタカヒデ

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