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2011年10月16日日曜日

☆Hollies:『Look Through Any Window 1963-1975』(Eagle Vision/EV3-3769)DVD

ホリーズのオフィシャルで単独のDVDはやはり『Beat Beat Beat』くらいで、前述の『Beat Club』にまとめて収められていたが、これだけのキャリアがあるグループにしては少なすぎるリリースだった。しかしこのDVDで一気に解消だ。
22曲が収録され嬉しいことに18曲がグラハム・ナッシュ時代。ナッシュにアラン・クラーク、トニー・ヒックス、ボビー・エリオットの4人が当時を振り返り、ホリーズ・ヒストリーになっているので充実している。それにしても月日とは恐ろしいもので、ナッシュは当然すぐに分かるが、他の3人は最初、誰だか分からなかった。クラークとヒックスはもう老人で、時にあんなにかわいい顔をしていたヒックスの変貌ぶりにはショックを受けた。
インタビューは字幕を出せるのでだいたい内容が分かる。では内容へ。まず冒頭の「Baby That's All」と「Here I Go Again」が素晴らしいカラーの画質で驚かされる。1964年の『Swings Again』のフィルムでこの時代のカラーは珍しい。「Rockin' Robin」と「Just One Look」はNMEのPole Winnerコンサートでのリアル・ライブ。「I'm Alive」はTVショーでのライブ。(当時は口パクの方が普通なので特に口パクとは書かない)そして内容が素晴らしいのは『Beat Club』での「Look Through Any Window」「I Can't Let Go」と、『Beat Beat Beat』での「Stop Stop Stop」「Bus Stop」、そしてユーゴスラビアで行われた『Split Festival』での「Do The Best You Can」「Jennifer Eccles」「Carrie Anne」で、全てリアル・ライブだ。このうち1967年に収録された『Beat Club』と『Beat Beat Beat』は既にDVD化されたものの抜粋である。しかし1968年の『Split Festival』は初登場。1967年の演奏も含めホリーズは3声のハーモニーが完璧だし、演奏もしっかりしているし、そしてビートがあって曲がポップと本当にいいバンドだ。私はヒックスのギター・プレイが好きで、ナッシュは実質的に演奏面では貢献していないので、彼のギターがホリーズのサウンドのカラーを作っていると言っていい。小気味いいリフを弾くいいギタリストだ。エリオットもいいドラマーだし、クラークのヴォーカル、ハーモニーの中核のナッシュ、サウンドの核となるヒックスとエリオット、こんな実力者が揃ったいいバンドなのに日本ではあまりに過小評価され過ぎている。初めて見る『Split Festival』のみ記述しておくと、「Do The Best You Can」は途中の3人のアカペラが実に美しい。ヒックスとナッシュがバンジョーを弾いているのも面白い。「Jennifer Eccles」ではナッシュがあの印象的な口笛を、Jennifer Ecclesの歌詞が出てくる後に吹くように観客に練習させていて楽しい。そして「Carrie Anne」は珍しくトニー・ヒックスが一部リード・ヴォーカルを取るのだが、その時にナッシュとクラークが拍手するのがとても微笑ましいかった。また間奏のスティール・ドラムのみテープなのだが、メンバーがいったい誰が引いているんだ?みたいな顔をしているのも笑ってしまう。ナッシュは脱退する前になると自分の書いた曲(名義はクラーク=ナッシュ=ヒックス)では自分でリード・ヴォーカルを取るようになるが、その「Dear Eloise」と「Wings」のプロモはスウェーデンの『Popside』で披露された。その他では1963年と収録が一番古い「Little Lover」は、カラーである上に花屋での演奏、お客の若い女性がダンサーになって中心で踊り、面白いフィルムだった。ナッシュはいないがトニー・マコウレイの書いた「Sorry Suzanne」は『This Is Tom Jones』でのフィルムで、加入したばかりのテリー・シルベスターの演奏シーンが見られる。そしていよいよこのDVDの目玉「King Midas In Reverse」について書こう。映像は歌とは関係のないシーンなのだが、全編1968年のホリーズ日本公演でのカラーフィルムなのだ!東京と京都で撮影していて、クラークの木刀をナッシュが花で止めたり、ナッシュが甘栗を買ったり、ヒックスが三味線を弾く真似をしたりと日本を満喫しているようだ。どこかの公園の木に、そこには日本人がいくつもあいあい傘を書いているのだが、そこにナッシュがマジックでまずハートマークを書いてその中に漢字で平和、英語でPEACEと書いたのは、いかにもナッシュらしくて嬉しくなった。ナッシュは平和主義者で知られているが、今から20年くらい前にナッシュがソロで来日した時、渋谷クアトロでのライブを見に行った。人柄の良さが溢れるアトホームなライブだったのだが、「Military Madness」の歌詞を「Nuclear Madness」と歌ってやんやの喝采を浴びたのを思い出す。nuclear madness、kill the countryと歌っていたのだから、今だとさらに重い。そして一瞬、昔の渋谷の道玄坂商店街を歩くシーンがあり、懐かしくて目が釘付けになった。古本屋が映っていたが、鮮明な記憶がある。中学の友人が道玄坂に住んでいてしょっちゅう遊びに行っていた。そして坂の上の方には、当時、日本ではほとんど売っていなかった輸入盤を扱っていたヤマハがあり、行けば必ずヤマハに行き、輸入盤をチェックしたものだ。しかし1970年頃、日本盤LPが2000円の時代に輸入盤は3200円くらいしていたのだからまさに高値の花。でもビーチ・ボーイズの60年代のアルバムなんて手に入らないから、輸入盤を扱う渋谷のヤマハと新宿レコード、ディスクユニオンを歩き回っていたものだ。話は横道にそれたが、とにかくこのDVDほど充実した内容のものは珍しい。絶対購入すべきDVDだ。なお、紹介しているディスク番号のものはリージョン1。ただし安い。お金を出してもいいならヨーロッパで買えばリージョン2でPAL。PALは普通のDVDプレイヤーなら再生する。(DVDレコーダーはダメだが。)(佐野)



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