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2010年11月8日月曜日

☆Paul McCartney & Wings:『Band On The Run』(Super Deluxe Edition)(ユニヴァーサル/UCCO9951)

 先月のジョンに続き、今月はポールのボックス・セットの登場だ。ジョンのボックスがスカな内容だったので、今度は『Band On The Run』の焼き直しかよーと期待をしていなかったのだが、そんな思いは嬉しく裏切られた。

このボックスはCD3枚+DVD1枚で、そのうちのCD2枚は『25th Anniversary Edition』とまったく同じものなのでそれは割愛。先に「Bonus Film」と題されたDVDの方から紹介しよう。目玉は『One Hand Clapping』で、この番組は1974年8月15日に録画されながら未発表で終わったポール・マッカートニー&ウィングスのドキュメンタリーだ。『Band On The Run』の大成功に気を良くしたポールは、ライブツアーを見据えて新生ウィングスのメンバーのオーディションを行い、新たに加入したギターのジミー・マッカロックとドラムのジェフ・ブリットンがここではお披露目とばかりに大きくフィーチャーされている。彼らのモノローグのナレーションまで入り、ポールのバック・ミュージシャンではない扱いをされている。フィルムではポールを中心にこういったメンバーのナレーションが随所で被るが、基本的にスタジオ・ライブ集。演奏はレコード・ヴァージョンではなく、完全なスタジオ・ライブなので聴きごたえ十分だ。「Band On The Run」「Jet」「Bluebird」「1985」が『Band On The Run』の曲だが、レコードの音源よりシンプルなだけに迫力があり実に新鮮だ。それ以外の曲では「Soily」が迫力満点で二重丸。それまで甘すぎて苦手だった「My Love」もライブで聴くとかなりいい。ハーモニーがキチッとついたバンド・サウンドの「Maybe I'm Amazed」はもちろん素晴らしい。その後のポールのピアノ弾き語り3連発「Let's Love」「All Of You」「I'll Give You A Ring」はキャバレー風などとエクスキューズを入れているが、ポールらしさが溢れていて個人的には大好き。オーケストラをフィーチャーした豪華な「Live And Let Die」を入れて、「1985」のあと、最後はポールがピアノを弾き語りしながらちょっと間違える(わざと?)「Baby Face」で終わる。他にも「C Moon」「Little Woman Love」があり、こんなに充実した番組が未発表だったなんて本当に信じられない。そしてこのDVDには、ポールがナイジェリアのラゴスにいた時のプライベートフィルムが入っているのだが、そのバックにポールがBBCで演奏したというドローン効果を使ったインド風に聴こえる斬新な「Band On The Run」を聴くことができる。そしてあの有名なアルバムジャケットの撮影の時のフィルムもたっぷりと見ることができた。ジェームス・コバーンやクリストファー・リーが現れると、日本人の我々も「おお、すげえ!」と興奮してしまう。記念撮影の時のカメラマンのリンダが「ジェームス(コバーン)、顔が見えないわ。右にずれて」なんて指示を出しているのを見ると、やっぱり大物だなあと、改めて思ったしだい。そして「Bonus Audio Tracks」の名づけられたCDも紹介しよう。このCDの中では先の『One Hand Clapping』からの「音」が入っているのだが、まず映像ではナレーションが被っていた「Bluebird」をナレーションなしで聴くことができ、非常に繊細な出来のいいトラックだったのでそれだけで感激だ。「Jet」「Band On The Run」「1985」はもともとナレーションがなかったので映像と同じものだが、迫力が増している上にサウンドがDVDよりクリアーなのですっかり気に入って何度も聴いてしまった。そして「Let Me Roll It」「Country Dreamer」はフィルムにはない選曲なので、収録したものの使用されなかったボツテイクのようだ。このCDだけでも十分に価値がある。(佐野)





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