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2010年7月7日水曜日

JIMMY WEBB:『JUST ACROSS THE RIVER』(E1 Music/E1ECD2068)

 

バカラックやブライアンと並び称されるソングライター兼アレンジャー、そしてシンガーのジミー・ウェッブのニューアルバムがリリースされた。
96年の『Ten Easy Pieces』同様に主はセルフ・リメイク集(+新曲1曲)であるが、今回は豪華アーティストのフューチャリング・ヴォーカルでの参加と、『Angel Heart』(82年)以降ウェッブ作品に貢献してきたフレッド・モーリンのプロデュースによるナッシュビル・レコーディングが功を奏し味わい深い名作となった。

スタジオ・アルバムとしては『Twilight of the Renegades』(2006年)から4年振りとなるが、前作は新録4曲(国内盤は5曲)と80、90年代からの未発表曲8曲を編集した変則的体裁だったため、トータル的なニューアルバムとしては『Ten Easy Pieces』以来実に14年振りとなる。
今作でまず目を惹くのはフューチャリングされたゲスト・アーティストの豪華さだろう。
以前からウェッブが楽曲提供している盟友のグレン・キャンベルをはじめ、ウィリー・ネルソンやリンダ・ロンシュタント、ポピュラー界ではビリー・ジョエルやマイケル・マクドナルド、ジャクソン・ブラウンといったビッグネームの名前も見られる。また70年代ウエストコースト・ロックを支えたJ.D.サウザーや元ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーなど通好みのアーティストから、カントリー系シンガーソングライターのヴィンス・ギル、現代フォーク界の女王と称されるルシンダ・ウィリアムズが一挙に参加しているので、アルバム1枚を通してウェッブ・ソングの新たな魅力を発見出来る。これも偏にレジェンド・オブ・ミュージシャンズ・ミュージシャンたる、ウェッブの才能と人望の賜だろう。



リズムセクションのレコーディングとオーバーダビングはナッシュビルの複数のスタジオでおこなわれ、マスタリングはニューヨークのSterling Soundで名匠グレッグ・カルビが手掛けている。
2001年にナッシュビル移住後ロブ・ガルブレイスの『Too Long At The Fair』など名作を手掛けているフレッド・モーリンの元、現地ミュージシャンによるバンド・アンサンブルはナッシュビルの土地の音というべき芳潤な響きを持って、このアルバムのサウンドの要となっている。
ビリー・ジョエルとヴォーカルの掛け合いをする「Wichita Lineman」は、マンドリンの刻みにスティールギターやドブロ、フィドルが有機的に絡み合うサウンドが絶品で、特に思い入れのあるウェッブ・ソングで新たな感動を得ることが出来た。
キャンベルとの再演が嬉しい「By The Time I Get To Phoenix」は、漂うウーリッツァーとアコギの刻みにハモンドオルガンとアコーディオンが空間の奥行きを演出し、スティールギターがアクセントを加える。やや長いフェイドアウトで燻し銀のギターソロを弾くのがマーク・ノップラーというのも憎い演出で、最良のロード・ソングとして蘇った。そのノップラーは「The Highwayman」でヴォーカルを掛け合っており、ギタープレイ同様に円熟の歌声を聴かせる。アレンジ的にはティン・ホイッスルによるアイリッシュ・サウンド風のコーダが非常に美しい。
最新のウェッブ・ソング「Where Words End」は、歌詞の一節「JUST ACROSS THE RIVER」がアルバムタイトルにもなっているキー・ソングで、曲調は今回リメイクされたクラシック群に比べ洗練されているが、じわじわとフックへ登りつめていくコード転回など随所にウェッブらしさを感じさせる。ここではマイケル・マクドナルドの深みのあるハスキーヴォイスのコーラスも聴きどころだ。
ニューレコーディングされたウェッブの名曲群は、どれも聴く人を選ばないエヴァーグリーンという言葉が似合う曲ばかりなので、是非とも多くの音楽ファンに聴いて欲しい。
(ウチタカヒデ)


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