Pages

2008年8月8日金曜日

☆Frankie Valli & The Four Seasons:『The Motown Years』(Hip-O Select/B0010777-02)

2008年のベスト・リイシューがもう決定してしまった。そう、以前より、私がフォー・シーズンズの中で最高の楽曲はモータウン時代に作られていたと強くプッシュ、VANDA26号で特集を組み、Radio VANDAでもプログラムを組んで、普及に努めていた1972年から1975年までのモータウン時代の楽曲が、2枚組のCDとして、コンプリートにリイシューされたからだ。久々にまとめて聴いたが、あまりの素晴らしさに言葉を失うほどで、何度も紹介した甲斐があったなと、ちょっと自己満足してしまった。これから初めて聴くリスナーの方に、ね?最高でしょう?と言ってみたくてうずうずしてしまうほど。
しかしこの時代は、その内容と反比例してフォー・シーズンズとフランキー・ヴァリの歴史の中で最もヒットがない時代だったので、オフィシャルでリイシューされていたのは、モータウンからのオムニバスのCDのみで、オリジナル・アルバム2枚、グループの『Chameleon』とヴァリのソロ『Inside You』は一度もリイシューされることなく、現在まで至っていた。実は『Inside You』に至ってはヒットがないという理由で発売が差し止められていたものの、ヴァリがレーベルを移籍してリリースしたあの「My Eyes Adored You」がメガ・ヒットになったのを見たモータウンが便乗してリリースし、ようやく陽の目を見た経緯すらあった。しかし、この時代はボブ・クリューとボブ・ゴーディオが多くの曲の作曲・プロデュースを行い、ヴァリがすべての曲のリード・ヴォーカルをとる黄金の三角形によって作られていたので、楽曲のクオリティは最高だった。運がなかったとしか言いようがない。
フランキー・ヴァリの大ファンだったモータウンの社長のベリー・ゴーディは西海岸への進出のために「モーウェスト」というレーベルを作り、そのレーベルの目玉としてフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズを三顧の礼を持って迎えたので、製作に対して予算も多くかけられたのだと思う。モータウン時代の特徴として、フランキー・ヴァリの美声を最大限生かす曲作りが施されていて、厚くドラマティックなサウンド、ステレオタイプではないリード・ヴォーカルに合わせたコーラス・ワークによって、曲に気品がプラスされていた。それがモータウン時代の最大の魅力と言えよう。
さて、これから曲をセレクトして紹介するが、本CDはフォー・シーズンズ名義のものとフランキー・ヴァリ名義の曲でディスクが2枚に分けられているものの制作スタッフが同じなので、その区分けはしないで紹介していく。まずそのモータウン時代で特徴的なドラマティックなナンバーとしてはレーベルの第一弾シングルとなった「Love Isn't Here」が挙げられる。ゆったりとした歌いだしが、サビで女性コーラスと共に一気に盛り上がっていく。『Chameleon』の「When The Morning Comes」は荘厳なイントロから始まるスローなバラードが、途中からミディアムに変わるのだが、その時のアコースティック・ギターとハーモニー、ストリングスが絶妙にからむ部分が聴きもの。同アルバムの「A New Beginning」も歌いだしはスロー、そして中間部のミディアムの部分でヴァリのヴォーカルがハーモニーとストリングスと一体となって上昇していく。どれも感動的なほど美しい。そして最もドラマティックなのは『Inside You』収録の「With My Eyes Wide Open」で、こちらはパワフルなロック・ビートに乗って始まるが、エコーたっぷりのブリッジからぐっとタメを作ってコーラスと共に解放される、私の理想が結実した傑作中の傑作となった。
次に緊張感のあるナンバーとしては「The Night」が素晴らしい。緊張感漂う8ビートの歌いだしが、16ビートのサビで一気に解放される胸がすくような快作で、後にイギリスでヒットもしている。嬉しいことにグループとソロでの2ヴァージョン収録。コーラス・グループとしての実力を感じさせてくれるのが、幾重にも重なるコーラスを操る「How Come?」で、こちらはもともとシングルとしてリリースされた。ファンキーな「Sun Country」もサビでは親しみやすいメロディが現れ、出だしとの対比がポイントだ。
ヒットがないため、軌道修正し、かつてのフォー・シーズンズ・スタイルを復活したシングルも魅力的だ。まずは「Walk On,Don't Look Back」だが、鼻にかかったヴァリの歌い方、ハンドクラップにカウンター・コーラスと、往年の黄金のスタイルで作られ、安定した出来になった。さらに魅力的なのが、イントロはスローでモータウン風、そしてハンドクラップと共にキャッチーなメロディが飛び出す「Hickory」だ。静と動の対比が素晴らしい。
その他ではキャッチーなフックが魅力の「Thank You」、「Life And Breath」を挙げておきたい。なお、「Life And Breath」のシングル・ヴァージョンにはイントロにナレーションが入っていて驚かされた。さらに「Charisma」は1分近く長いロング・ヴァージョンで、初登場。
まずは購入すべし。これ以上、いい音楽を堪能できるCDには、まずお目にかかれない。(佐野)



 

 











0 件のコメント:

コメントを投稿